せっかくだから2daysに参戦したいということで、大阪名古屋のチケットをとってしまったのだが、いやはや。大阪と名古屋って意外と距離があるんだな。もうちょっと近いものだと思っていたよ。
そんな地理に疎い人間による初めての大阪参戦記、というほど大したものではない。移動以外は基本のライブと同じであるので書き記すことも普段通りだ。と、いうことでセットリスト。記憶に間違いが無ければ以下のはず。
サンフランシスコ
タチムカウ~狂い咲く人間の証明
ハッピーアイスクリーム
パリ・恋の都
トゥルー・ロマンス
小さな恋のメロディ
僕の歌を総て君にやる
機械
フィスト・オブ・ヒューリー
愛のためいき
蜘蛛の糸
おもちゃやめぐり
SAN FRANCISCO(Be Sure To Wear Flowers In Your Hair)
これでいいのだ
カーネーション・リインカーネーション
サーチライト
221B戦記
~アンコール~
山と渓谷
さらば桃子
再殺部隊
モコモコボンボン
釈迦
昨年の初期曲限定レアライブに続く、後期曲中心お座敷ありライブ。一番の期待と注目はやはり、ツアータイトルに冠されているサーチライトをやるか否か、ということだった。このツアータイトルを目にするまで、まさか今後ライブでサーチライトを演奏される可能性が出てこようとは思っていなかっただけに、期待感と不安感で心躍らされたものだ。筋肉少女帯にとっても、大槻ケンヂにとっても特別な位置づけにある曲ではないか、と個人的には思っている。これをやるのか。やれるのか。
そしてついに、己の目と耳で、今のサーチライトを体感した。
それはとても豪華で楽しく、健康的なサーチライトだった。
やれるのか、と思った所以はここにある。同時になるほどと納得した。筋肉少女帯は本当に健康になったのだ。それをしみじみと実感し、サーチライトで語られる言葉は、当時のオーケンの心情を表したもので、今のオーケンの言葉とは少し違っているのではないか、と思わされた。
具体的に言うと、今のオーケンは「俺みたいになるなよ」とは思ってないんじゃないかな、と感じたのである。いや、あくまでも自分の主観であるのだが。その主観のままに語るのなら、既にオーケンはサーチライトの閉塞感と狂気と自虐を通過して、「やあ詩人!」と語りかける声に対し、「そうだねぇ~」と笑いながらにこにこと受け止められるところまで来たのではないかと感じさせられたのである。だから自分には、あのサーチライトの語りを聴いて、現在の大槻ケンヂの語りでは無く、当時のオーケンの言葉を語る現在の大槻ケンヂ、というものが見えたような気がした。誤解を恐れず言うならば、他者の言葉を他者になりきって語っているように見えたのだ。
「サーチライトは月の光と共に」の部分で観客がゆらゆらと手を左右に振る動作が、和やかで楽しげな雰囲気を作り出し、視覚的にもサーチライトの雰囲気を変えたのかもしれない。同じ曲でもこうも印象が変わるのか、と驚きながら自分も左右に揺れていた。
正直に言えば、物足りなさを感じもした。ちょっと寂しくもあった。とはいえ、予想していたことでもあり、あぁ、本当に筋少は健康になったんだな、と安心しもした。自分は当時を体感していないので本やMC、ライブレポートによる情報でしか知らないが、凍結前の後期筋少はそれは危うい状態だったらしい。だからこそ一度凍結するはめになり、再結成まで八年かかったのだ。その当時の空気を脱却した証拠が健康的なサーチライトである。逆に、サーチライトの頃の筋少が、再結成後の筋少曲を演奏することなるとしたらどのような仕上がりになるのだろう。それこそ空想の話でしか無いが、無理が出るだろう、と己は思う。
さて、サーチライトばかり長々と語ってしまったが、他にも語りたいことがあるので、そろそろ最初から順を追って語るとするか。スタンディングでもお座席でも照明が落とされると歓声が沸くのは変わらない。メンバーが登場。第一曲目はまさかのサンフランシスコ! いきなりのド定番で盛り上がらないわけがない。ここのベースソロで内田さんに透明感の無い、紫がかったドピンクのライトが当たっていて、それが何とも怪しげで格好良かった。何度も言うがベースソロはもっとあっても良いと思う。いや、たまにあるからこそ際立つ良さというものもあるかもしれないが、もっと聴きたいと思うのだよ。
サンフランシスコの次がタチムカウ。タチムカウは思い入れのある曲なので感慨深い。これを浪人時代に聴いて受験にタチムカっていたのだよ。懐かしいなぁ。あの頃は生で筋少の音楽を聴けるなんて夢にも思っていなかった。あの頃からも時は流れているのである。変わるというのは良いものだ。
タチムカウの後には何と盛り上げるためにビールにイッキが行われた。これは確か、初めて参戦した中野サンプラザの復活ライブでも行われたので、イッキコールに参加するのはこれで二回目になると思う。嬉しい。嬉しいが、大槻さん大丈夫っすか。通風平気なんすか、とハラハラしてしまう。大阪名古屋のどっちだったかは忘れたが、後期に比べて心は健康になったが体は不健康になってしまったとオーケンが語っていた通り、年齢も年齢だし、あまり無理はしないで欲しい。いつまでも元気で筋少をやって欲しいのだ。
お次は亡霊ゾーンとでも言うべきか、ハッピーアイスクリーム、パリ・恋の都、トゥルー・ロマンスの三連打。ハッピーアイスクリームの合いの手が綺麗に決まったときの快感といったら無い。パリ・恋の都ではエディが変なダンスを踊っていたのだが、具体的にどんなダンスだったかは忘れてしまった。揺れていたような気がするのだが。
この後のMCで紳士協定が結ばれた。「ジプシー男爵」という宝塚か何かの劇のポーズらしきもの、という大変曖昧な認識なのだが、脇を締めて右手の肘を折りたたみ、右の手の平が左側を向くように指をそろえて右耳の前あたりで立てるポーズが、タチムカウの後のMCのときから流行っていて、何かに付けてメンバーがジプシー男爵ポーズを決めていたのである。だが、あまりにも笑いを誘うのでオーケンによって「真面目な曲のときにやるのはやめましょう」と約束されたのである。余談だが、このジプシー男爵ポーズは東京公演のときにも行われていて、大阪で爆発的ヒットをし、名古屋で飽きられたようである。とにかく今回の大阪ライブでは、何度も何度もジプシー男爵ポーズが色々な場面で決められていたのだ。
しかしニコニコな筋肉紳士達、紳士協定は守られ、お次のオーケン曰く「神セトリ」三曲中ではジプシー男爵は封印された。小さな恋のメロディ、僕の歌を総て君にやる、機械の三つである。小さな恋のメロディ以外は準定番なのでよく聴いたことがあり、あまり目新しさは無いが、「機械」のキーが原曲キーよりも低くなっていたという驚きがあった。「天使、その羽」のところだったかな。この歌い方は確か今回が初めてでは無いだろうか。少なくとも自分が参戦しているライブでは初めてのはずである。
恒例のアコースティックゾーンではお座席を有効活用してしっとりと聴き入る。ステージからおいちゃんがいなくなり、オーケン、内田さん、橘高さんの三人になる。内田さんがいるのは珍しいなと思っていると、オーケンが「あ、内田はいてもいいんだ」と確認をしていた。しかし内田さん、楽器は持っていない。いったい何をやるのだろうか。
アコースティック一曲目はまさかの! オーケンのギターによるフィスト・オブ・ヒューリー! ……あれ、このときはおいちゃんいたっけか。この後においちゃんが退場したのか? 記憶が曖昧である。
内田さんの役柄の謎は「愛のためいき」で解けた。ギターは橘高さん。ボーカルはオーケン。内田さんは指揮。ゆるやかな曲調でありながらも観客との掛け合いがある曲なので、客の「入り」を合図する必要があるのだ。その前にオーケンが初っ端の入りを間違えたのでオーケンを導く仕事もあったのだが。愛のためいき終了後、内田さんはジプシー男爵ポーズを決めながら退場し、しっとりした空気に笑いを起こして去っていった。
入れ替わりでおいちゃんが登場。アコースティック三曲目は蜘蛛の糸! おお! 蜘蛛の糸は初めて聴いた筋少曲で思い出深い! でも、一度アコースティックではない形式でも聴いてみたいものだ。「笑ってろ、見てろよ」の担当はおいちゃん。後日、おいちゃんの歌う「笑ってろぉ、見ぃてろぉよ、ぉお~」が耳に残ったまま、アルバムの蜘蛛の糸を聴いたら、やけにさっぱり終わるように聴こえて違和感を覚えた。おいちゃんバージョンに耳が慣れてしまったようである。
内田さんが入場し、おもちゃやめぐりへ。ここで観客は立ち上がったのだが、オーケンはおもちゃやめぐりでも座ったままやるつもりだったらしく、慌てて立ち上がったそうだ。おもちゃやめぐり終了後、これくらいの曲が盛り上げ曲なポップスもあるのに、やっぱり筋少は激しい、とオーケンが言っていた。
ここでまたオーケンによるギター演奏が。ベストアルバム「SAN FRANCISCO」一曲目、片仮名ではない方の「SAN FRANCISCO(Be Sure To Wear Flowers In Your Hair)」だ。ギターを構えるオーケンを、おいちゃん、内田さん、橘高さんがドラム台に座って保護者のように眺めている。それに対し、「この後続くんだから前に出た方が良いよ!」とオーケンが良い、三人はドラム台から腰を上げて定位置に。
オーケンのギターに合わせて、自然と観客の手拍子が始まる。が、手拍子を止めるオーケン。人にリズムをとられるとわからなくなってしまうらしい。橘高さんが「好きにやらせてやって!」と言っていて、まるで本当に保護者のようで笑ってしまった。
オーケンのSAN FRANCISCOは、原曲よりもややテンポが速めではあったが、予想以上に上手い。ちょうど去年に行われた、初期曲ライブでのルリヲ前のギターとは比べ物にならない。これがオーケンなのだろうか、と思ってしまうほどである。
しかしオーケンはちゃんとオーケンだった。SAN FRANCISCOの終わり、思いっきりシャウトした次の曲名が「SAN FRANCISCOからの………サンフランシスコー!!」だったのだ。サンフランシスコは本日一曲目にやっている。何だ? これはどういうことだ? またサンフランシスコをやるのか、もしかして仏陀Lバージョンをやるのか、と頭上にハテナを浮かべながらステージ上の動きを待つも、見てみればメンバーも困っているようであり、何故か悶絶しているオーケンに「からの? からの!?」と橘高さんが軌道修正をしようとしていた。
流石にサンフランシスコを二回やるとはなく、これでいいのだが正解だった。オーケンが悶絶していたのは外そうとしたギターを鼻にぶつけたせいだったそうだ。せっかく格好良かったのに、全く、実にオーケンらしいなぁ。
と、一時ぐだぐだっと和やかになったが、ここからは怒涛の展開である。これでいいのだ、カーネーション・リインカーネーション、そして本日の目玉サーチライト! 本編ラストは221B戦記で締め! どこかにジプシー男爵ポーズがあったかもしれないが、全く覚えていられなかった!
アンコール一曲目は和やかに山と渓谷。ライブハウスでやっほーコールなんてもんをすることになろうとは思わなかった。メンバーが各々好き好きにやっほーやっほー言っていて楽しい。橘高さんのやっほーは非常に漢らしかった。
和やかムードから一転して次がすごい。さらば桃子と再殺部隊のこの二曲。今回のライブで一番良かったのは個人的にはこの二曲だ。さらば桃子は絶対にCDよりも格好良くなっている。再殺部隊は語りに力がこもっていてゾクゾクした。実はこの二曲とも、アルバムでしか聴いていなかった頃は筋少曲の中での好きさ加減で言えば普通くらいだったのだが、橘高さんの二十周年記念ライブで聴いて以来グンと急上昇したのである。そしてまたこうしてアルバムを聴き返すと印象が変わるのだから面白い。
モコモコボンボンでは内田さんがボーカルをとり、全身キンキラキンの謎の衣装に身を包んだオーケンが曲の途中に登場するという演出があったのだが、何よりもエディである。エディが! ステージを下りて! 無表情で客席を練り歩いてくれたのだ! 位置が良かったおかげで二回もエディに触れてしまった! 予想出来なかったサプライズに大興奮してしまったよ。間近で見るエディはとても大きかった。背中にチャックは無かった。
ラストはキラーチューンで釈迦。大盛り上がりの大団円で終了し、終演のアナウンスによる一本締めで綺麗に幕が閉じられた。去年の初期曲ライブほどのレアさは無かったが、やはり筋少のライブは楽しい。変化を再認識することも出来た。はるばる大阪まで足を運んだ甲斐があったというものだ。
しかしまだ終わらない。明日は名古屋が待っているのだ。大阪に続き人生初の名古屋の地。無事に辿り着けるかな。