日記録3杯, 不死鳥, 水戸華之介, 非日常

非常に素晴らしいライブだった。

水戸さんのライブは今までにも何度か参戦したことがあったが、曲の盛り上がりのわりに観客が落ち着いていて、押しもほとんど無く、まったりと自分のスペースを確保しながら騒ぐことが出来る。それは快適でありつつも、いつも小さく物足りなさを感じていた。無論アコースティックライブでそれを求めることはしないが、バンドなら、この曲なら、こんなに格好良い曲なんだから! もっと弾けたい! と常々思っていた。

そして二十五周年記念のこの興行。当日券は若干数販売の大入り満員。己の整理番号は百番以内。入場後しばらく経つと後ろの方まで人人人。さらに、開演前にスタッフから、入り口付近が混雑しているので一歩ずつ前に詰めてください、とアナウンスがあった。

これはもしかして、今回はすごいんじゃないか?

予想は的中。ステージに水戸さんが現れた途端前へ押し寄せる人、そして「祈り」「すべての若き糞溜野郎ども」で初っ端から爆発する観客。やったよ! これを望んでいたんだよ! と心の中でガッツポーズをしながら、しかしいつもの様子を想定して来たと思われる、あのご年配の方は大丈夫だっただろうか、と右前方に立っていたご婦人を思ったが、気付けば自身もぐんぐん押され、あー念の為ロッカーに荷物を預けていて良かったと思いつつ、拳を振り上げ、押しに耐えながら力の限り叫んだ。

楽しかった。

水戸さんは冒頭で「デビュー二十五周年」なんて所詮自称だからね、デビュー二十五周年と言ったって、デビューする前から頑張ってるわけだから、ここをスタート地点と思っているわけでは無いと思う、と話し、二十五周年に駆けつけた観客に対し、皆キリの良い数字が好きだな! と茶化して笑っていたが、やっぱり二十五周年、四半世紀ってのはすごいよな、と思った。

これは後の方のMCだったが、水戸さん達がデビューした頃は四十代のロックミュージシャンなどいなかった、ロックは若い人の音楽で、それをいつまでもやっている姿など想像が付かなかった、だから今この世代のロックミュージシャンは前人未到の領域に到達しつつある、という内容のことを話していた。

会場には水戸さんと同年代か、それよりも少々下の人達が多く見られた。筋少よりも年齢層が高い印象を受けた。しかし若い人もたくさんいた。水戸さんではなく、ゲストを目当てに来た人もいるだろう。だがそのゲストも皆水戸さんとほぼ同年代。いわゆるアラフィフのロックミュージシャン達だ。

筋肉少女帯の大槻ケンヂ、レピッシュのMAGUMIに杉本恭一、人間椅子の和嶋慎治、そしてアンコールで飛び入り参加の橘高文彦。橘高さんは本日XYZ→Aのライブがあったが、終演後わざわざ水戸さんのために駆けつけてくれたのだ。水戸さんはそんな橘高さんに対し「律儀な子なので来てくれました!」と言って大喜びしていた。

各々が自分の音楽の道を歩みながら、その中で築かれた縁。二十五年間自身の道を進みながら築いていった縁。特に今回集まった人達に関して言えば、戦友であり盟友のようなものだよな、と思う。

自分は今年二十七歳。何も考えていない赤ん坊の頃から数えてようやく二十七年経つが、自我が芽生え、育ち、自立して生きていく二十五年はまだまだこの先にある。五十歳になったとき、己は自信を持って二十五年を振り返ることが出来るだろうか。特に自分は結婚をする気も無ければ子供を作る気も無いので、何の節目も迎えずに、だらだらと生活し続けてしまいそうな恐ろしさを若干抱いているのである。

などと思うのはあくまでもライブが終わって落ち着いてから。ライブ中はそれどころではなく、大いに盛り上がって楽しんだ。

今回一番グッと来たのは「ゴルゴダ」だ。「ゴルゴダ」はゲストでワジーが参加し、ギターを思いっきり弾き鳴らした。これが美しいのなんのって! また、あのワジーの独特の歌声が実に絶妙に合っていたのだ。「ゴルゴダ」はアンジーのアルバムでも聴いていたが、これはこんなに美しい曲だったのか………と驚きながら再認識させられた。直後にゲストで登場したオーケンが絶賛したのも納得である。

オーケンは「蝿の王様」「31のブルース」を歌ったが、MCも出番の一つとして数えられていたのではないか、と思うほどよく喋った。MCの内容は主に「ミミズ」の話。水戸さんはオーケンに「ミミズ」を歌ってほしいと依頼したが、「生理的に受け付けない」という理由で断られたというもの。ここだけ聞くとオーケンがひどい人のようだが、「生理的に受け付けない」理由は曲がどうこうじゃなくて、「ミミズ」という生き物自体がどうしても苦手なためとのこと。オーケン曰く、「ミミズ」という言葉を口にするのも耐え難いそうで、「ミミズは畑を耕しているんだよ!」「役に立っているんだよ!」と水戸さんが言うたび、顔をくしゃくしゃにしてイヤイヤしていた。

いやーでもオーケンのミミズ聴きたかったなぁ。オーケンは女言葉のボーカルが合うから、絶対ぴったりだと思うんだよなぁ。

あと面白かったのが、オーケンがステージに登場するや否や、オーケンは水戸さんに「今日人見知り大丈夫?」と心配されていた。何でも数ヶ月会わないと人見知りしてしまうらしい。だが今回のオーケンは自信満々。「ワジーとは一緒にバンド(白髪鬼)やってるから大丈夫だよぉ!」とニコニコしていたが、あろうことか内田さんに対し人見知りを発動していた。内田さんに「一昨日会ったよ」と言われるとパァッと顔を綻ばせて「そうだぁ!一昨日会ったねぇ!」と元気になっていたが、三十年以上付き合っている幼馴染くらい慣れてくれよと思わざるを得なかった、例えネタだしとしても。

「蝿の王様」では「銭ゲバ!」と叫び、「31のブルース」では「ヘイユウブルース」を熱唱し、オーケンは退場。まさか不死鳥のライブでヘイユウブルースを聴くとは思わなかったのでびっくりした。オーケン本当にヘイユウブルース好きだなぁ。

「天井裏から愛をこめて」を中盤にやり、大盛り上がりの後MC。今はアコースティックとバンドを半々くらいでやっている。アコースティックは若い頃には出来なかったこと。でも、出来るか出来ないかは別として、自分の中ではまだまだ「やりたい」気持ちがある。そして今回二十五周年記念ライブをやるにあたり、一番やりたいことがあった。

と言って始まる次の曲は、重たいベースの音が地響きのように振動する曲。「ミミズ」だ!

中盤で天井裏をやるのはもったいないんじゃないか、と思った自分が愚かだった。まさかの「ミミズ」「¥10」「分解マニア」「バンビはどこだ」のメドレー! このあたりはほんっとうに……楽しかった!!

本編ラストは「袋小路で会いましょう」。良い曲だが、「え、二十五周年の本編ラストで袋小路………」と思ったのも本当の話。

和やかに終わってアンコール。アンコールでは内田さんが帽子を脱いで、不死鳥バンダナを頭に巻いて登場。アンコールの曲は何だったか。楽しすぎて忘れてしまった。

そしてダブルアンコールでは橘高さんが駆けつけてくれたってんだから驚きだ! ギターも持たずに歌うために駆けつけたギターヒーローを大笑いするオーケン。完全にリラックスしている(ように見える)オーケンは自身の携帯電話を取り出して記念写真を撮影。写真は公開せず、待ち受けにすると言い張っていたが、ちゃんと大ブログにアップしてくれていた。

最後は全員で「素晴らしい僕ら」を熱唱。この曲はとにかく何もかもを全肯定してくれる多幸感がある。それこそ「金もないコネもない体は病弱で頭も悪い」どうしようもない人間も「素晴らしい」と言い切ってくれる。現実的でシビアな歌を多く歌う水戸さんが歌うからこそ、グッと来る歌である。ただ違和感もあった。とても有難い曲だけど、どうしてそこまで言い切ってくれるんだろう? と言うような。

もし同じ疑問を抱く人がいるなら、「不死鳥Rec.」のインタビューに「素晴らしい僕ら」に対する水戸さんの思いが語られているので是非ご覧頂きたい。ライブはあまりに盛り上がりすぎて、途中後方の人の歌声ばかりが耳に入って水戸さんやゲストの声が聴こえないことすらあったが、それもどうでも良くなるくらい夢中になってしまった。「一緒に歌おう」と促されたところでは大声を出し、アンコールも全力で叫んだので咽喉が枯れてしまっている。その結果がまた嬉しい。

「二十五周年を半分と考えて、五十周年を目指すから、お前ら死ぬなよ!」と言い切る水戸さんはバツグンに格好良く、頼もしかった。三十年、三十五年どころか五十年! 何て有難いんだろうか! はまったミュージシャンのほとんどが、二十も三十も年上なので尚更嬉しい。たまに、あと何年この人達の活動を見られるのだろうか、と思わされてしまうから。例えリップサービスだとしても、すごく喜んでしまうのである。

終演後には水戸さんがサイン会を開いてくれて、一言二言お話しする時間があったのだが、そのとき初めて自分の声がガラガラになっていることに気付かされた。水戸さんの手は大きくて温かかった。

未分類不死鳥, 初参戦, 水戸華之介, 非日常

どうすっかなぁ。魅力的なライブだとは思いつつ、当初は行かない予定だったがやはり行きたくなってきた。しかし前売り券の販売はとっくに終了しているし、当日券は前売りよりも五百円高い、今月は卒業旅行があるから出費も多い、それに月末には既にチケットを購入済みの筋少のライブがある、と否定要素を挙げつつもそれでも行きたい気持ちがじわじわしている。

で、まぁ、結局行ってきた。水戸華之介ライブ【不死鳥007】! ヤマザキ春のパン祭りならぬ春のギタリスト祭り! The Dominatorsの杉本恭一、筋肉少女帯の橘高文彦、人間椅子の和嶋慎治をゲストに迎えた豪華ライブだ!

このゲストが本当に魅力的でね。橘高さんは言うまでもないが、ちょうど最近レピッシュと人間椅子も聴き始めたところだったので、そりゃ行きたくもなるわなぁ。特に人間椅子。人間椅子のアルバムはまだ一枚しか聴いてないが、そのきっかけはオーケンとみうらじゅんと人間椅子がコラボした「君は千手観音」という曲で、これは初めて歌詞でも歌声でもなくギターの音が気になって好きになったって曲なのだ。そのギターを弾いたギタリストが来るのだよ。俄然行きたくなるよなぁ。

とはいえ入場順は販売順というわかりやすい仕組みであるからして、当日券ではそうそう前の方にも行けないだろうから本日は後ろでまったり観るかぁ、でも見えるかわからんなぁ、だが見えなくても音は絶対聴こえるからまぁいっか、と思って当日券を購入したのだが、意外や意外、まあまあ前の方に行けた。順番通りの入場ではあったのだが、開場時間になっても未だ来ていない人が多かったらしく、さっさと中に入れてもらえたのである。土曜日だから忙しくしていた人が多かったのかもしれない。

さらに、見た感じステージが高く、前方はなだらかな斜面になっていて、後ろの人も見やすい工夫が凝らされていた。また、会場内は横長のつくりになっているため一列一列により多くの人が立つことができる。このライブハウス良いな。好きだな。

入場してからしばらくは自分の後ろに並ぶ人が少なく、何だよ何だよ人は来ないのかよと不安を抱いたが、ある時ふと振り返った頃にはびっしりと人が入っていて安心した。後は開演を待つばかりである。

開演時間を十分ほど過ぎたあたりだろうか。照明が落ち、身構えるが雪崩のような押しは無い。これは前回行った3-10Chainでも同じだったな。するとステージの上のスクリーンにライトが当たり、突如映画が始まった。………何だこれー!?

まずタイトルと「この映画はオカルト信仰を何々するものではありません」とお断りが入って笑いが起こる。このお断りの文章をきちんと覚えていないのがまことに惜しい。そして始まったのは、マイケルのマスクを被った謎の男性と黒人女性のデートシーン。女性はマイケルに愛を語る。マイケルはそれが真実かどうか女性に問う。女性が己のそれは真実の愛であることを訴えると、なんと! 謎の男はマスクを脱ぎ、そこに現れたのは―――水戸さんだ!

悲鳴を上げる女性! マスクを中途半端に脱いだままドアップで映し出される水戸さん! 悲鳴を上げる女性! そして映画が終わり、スクリーンが徐々に昇っていくとその裏には三人の人影が。高台に立つ中央はその名も水戸華之介! そして彼の両脇に立つ男は、マイケルに扮する…誰だ………?

仮面をつけた謎の男二人はダンスマンと言うらしい。二人が軽快に踊る中他のメンバーも続々とステージに現れ、そのままライブスタートとなった。最初の曲はまだ聴いたことのない曲で、「そっちの調子はどう」みたいな歌詞があったことを記憶している。以下、大変曖昧な曲目である。

「そっちの調子はどう」みたいな歌詞のある曲
君と瓶の中
「ラブ!」と叫ぶ曲
愛に愛はあるのかい?
唇にメロディ、心に牙を
これっぽっちの悲しみで
蝿の王様
誰だ
サイクリング
全ての若き糞溜野郎ども
でくのぼう
天井裏から愛をこめて
「キムと~」という歌詞の曲
世界が待っている
祈り
( )
~~アンコール~~
地図
( )
イエイエ

うーん、前半は「唇にメロディ、心に牙を」までは合っているはずだ。アンコール一曲目が「地図」、ラストが「イエイエ」ってのも間違いなかろうが、いつにも増してしっちゃかめっちゃかだ。三分の一ほどは知らない曲だったな。だけれども! ものすごーく楽しかった!

特に嬉しかったのは「蝿の王様」「誰だ」「全ての若き糞溜野郎ども」「でくのぼう」、後追いでアンジーの曲が聴けるなんて! しかも「蝿の王様」と「誰だ」は橘高さんのギターでだ! 今日は特別なお祭りなんだってことを感じた瞬間だった。

そして! イントロを聴いて、もしやこれはまさかあれか! とドキドキして、思わず叫びそうになったほど嬉しかったサイクリング! そうだよ! 水戸さんと杉本さんと橘高さんが揃うってことはこの曲をやる可能性があったってのに、露ほども予想してなかったんだ! だからこそ自分にとっては予想外の喜びで、いつかライブで聴きたいものだと漠然と考えていただけに、飛び上がるような思いだった。

水戸さん曰く、レピッシュと筋少のいいとこどりだそうで、水戸さんと杉本さんがボーカルをとり、橘高さんがあのギターソロを弾き、内田さんの野太いコーラスが格好良く、せかされるような怪しげな曲調にぐんぐん引き込まれた。。

そういえばこの日、自分は下手側にいたのだが、位置が良く内田さんも水戸さんも良く見えた。残念なことに橘高さんは少々見えづらかったが、今日の金髪はいつにも増してふわんふわんしていたように思う。出演を待つ間にふわふわに磨きをかけていたのだろうか。

最初のMCで水戸さんはマイケルの遺志は俺が継ぐ! と冗談を言って観客を笑わせ、今日はヤマザキ春のパン祭りならぬ春のギター祭りだと語ってくれた、ような気がする。それで、最初だったか次だったかは忘れたが、ギターの思い出を話してくれた。

水戸さんは昔ギターを買うために一所懸命新聞配達のアルバイトをしたそうで、それでようやくギターを手に入れたのだけれど、ギターを手にした瞬間に弾けるつもりでいたのに全然弾けない、何だこれは、なることを友人に話すと、そりゃ練習しなきゃ弾けないよと返される。水戸さん、俺はギターを買うために一所懸命新聞配達を頑張ったのに、この上まだ頑張らなければいけないなんて嫌だ! ってことで早々とその友人にギターを売ってしまったのだそうだ。わはははははは。練習なんて言葉はこの世から無くなれば良いとか言ってたなぁ。

ゲスト一人目の和嶋さんに水戸さんが「練習したの?」と質問をする。この答えがすごかった。和嶋さん、中学生の頃にギターを手に入れて、一日十二時間近く弾いていたそうだ。夕方から弾き始めて夢中になっているうちに、気づくと夜が明けているという状態だという。すげぇ。これには水戸さんも舌を巻き、才能とは努力を努力と感じないってことだ、というような話をし、俺も良い話をするのは苦じゃないから! 努力してないから! とオチをつけていた。

どの曲だったかな。和嶋さんと内田さんが並んで弾いているときに、弾きながら何かを話すか確認するかをしているようで、とても楽しげだった。その最中で内田さんがベースの上の方の弦に口を寄せていて、あれは何をやっているのだろうと思ったのだが、和嶋さんの弾き方を真似していたらしい。歯で弾くってすげぇな。

橘高さんの登場時にも水戸さんは「練習したの?」と質問をしたが、橘高さんは「練習? そんなの生まれて一度もしたことない」と一度とぼけてみせて、直後否定したくさん練習したと話した。

橘高さんは今回初めて不死鳥に出演することになったのだが、水戸さんは橘高さんに電話をして出演依頼をする前に、一度内田さんに打診してもらっていたそうである。曰く、二つ返事で断られたら俺傷つくからとのこと。わはは。

ゲストは和嶋さん、橘高さん、杉本さんの順で、次のギタリストを呼ぶ際に先に来たギタリストがソロを弾き、呼び出したら一緒に一曲やって、一曲終わったら先に来た方が退場する、といった形式だった。杉本さんが登場して橘高さんが退場すると、「杉本は半分メンバーのようなものだから気が抜けそうになる」と語っていた。

「愛に愛はあるのかい?」はこの間の3-10Chainのライブと合わせて聴くのは二回目になるが、今までの曲の中でも澄田さんのコーラスがかなり目立ってきて、メインボーカルである水戸さんの声を追いかけ追い越すようで、そこに内田さんの合いの手のような低く短いシャウトが入って、重なり方がとても楽しい。「唇にメロディ、心に牙を」は歌詞がこれだけで驚いた。ライブじゃ全然気づかんかったなぁ。まさに水戸さんを指すタイトルだと思う。

「蝿の王様」の「銭ゲバ! 銭ゲバ!」がすげー楽しかった。「全ての若き糞溜野郎ども」の「あの」箇所の盛り上がりったらなかったなぁ。ワーッと皆で手を上げて左右に振った。初めて聴いたときはこのメロディに何て歌詞をつけるんだとびびったものだ。

今回のライブで一番印象深かったのは何だろう、と考えると「世界が待っている」だろうか。好きな曲というのもあるが、これは素晴らしかった。照明が落とされ、まずはピアノの編曲でアコースティックっぽくゆったりと始まり、一番が終わったところで、かな? 突如演奏が元のバージョンに切り替わり、照明がステージを真っ白に照らし、天井から赤や青、緑、白、黄色の色とりどりの風船が降ってきた。見上げれば鮮やかな色が視界いっぱいに下りてきていて、落ちてきた風船を手に取るとビリビリと振動する音が手のひらに感じられた。

昔、耳の聞こえなくなったピアニストの少女が、風船から伝わる音の振動を感じて再び音楽を取り戻す漫画を読み、以来、一度そいつを体感してみたいなと思っていた願いが唐突に実現されて、こんなこともあるのかと思った。降ってきた風船を観客はポンポンとステージの方にはたき、弾んだ風船はあちこちの頭の上に戻ってきて、ゆるやかなバレーボールをしているみたいだった。

アンコール一発目の「地図」は、3-10Chainの中でも特に気に入りの、胸にガツンガツンと突き刺さってくる曲で、今日聴けたことが本当に嬉しい。前回の3-10Chainで聴けたときも嬉しかった。

最後の最後はギタリストが全員集合し、何の曲にしようかと思ったがシンプルなロックでということで「イエイエ」。このとき橘高さんが一人衣装を変えて登場した。それも不必要にヒラヒラとした真っ白のドレス。水戸さんがしばらく凝視していたのが面白かった。何となく、橘高さんは「格好良いから」ではなく受け狙いでこの衣装を選んできたような気がする。あえて不調和を作り出そうとしているというか、インパクトのためというか。フェスで白いドレスを着ていることが多いのもそういう理由ではあるまいか。

そんな橘高さんと書生姿の和嶋さんが並ぶと不調和どころの話ではない。そこに澄田さんもやってきて三人並んで立ったところで水戸さんが「同じ職業の人達とは思えない」とつっこんだ。全くである。

あぁ、そういえば、ここじゃなくてどこだったかなぁ。上手側で澄田さん、橘高さん、和嶋さんが並んだときだっけ。内田さんが一人高台の上に上ってベースを弾いていて格好良かったなぁ。内田さんが一人で目立つことは少ないので印象深かった。それと同じく高台で、本編終了直前だったかな、ダンスマンが再登場し、クラッカーを観客に向けて鳴らしたのだが、クラッカーから出た紙くずが内田さんに降りかかって紙くずが内田さんとベースに絡まり、絡まったまま演奏を続ける内田さんが面白かった。あれ邪魔じゃなかったかな。邪魔だっただろうな。ネックに思いっきりひっ絡まってたしな。

そういや橘高さんが登場直後、くるっと回ったときにギターが水戸さんの頭にぶつかりそうになったことがあった。慣れてないと危ないね。

ラストのイエイエでは四人のギタリストが順番にソロを披露。盛り上がらないわけがない。欲を言えば内田さんのソロも欲しかったところだが今日はヤマザキ春の、ならぬ春のギタリスト祭り。終演後もしばらくアンコールの拍手が鳴り止まず、トリプルアンコールが熱望されたが、ボーカリストが物販にいるため不可能であるとの放送がなされて笑った。

さて、何故水戸さんが物販にいるのかと言えば、何と! 本日先行発売される3-10Chainのベストアルバム「鎖の肖像」を購入すると、水戸さんからサインと握手をしていただけるとのサービスが! そりゃーもう、そりゃーもう、もちろん買いましたよ。買わないわけがない。家を出る前、財布にチケット代とドリンク代しか入っておらず、そのまま出ようとしたのだが思いとどまって追加をしてきて良かった。流石にそれだけでは不安かと思ってやめておいたのであるが、ここで追加しなかったらアルバムが買えないところであった。危なかった。

物販購入後、サインを待つ人々の長蛇の列に並び、ライブの余韻を噛み締めながら順番を待った。何か話そうか、どうしようか、と緊張した挙句、水戸さんを目の前にしてつい「こんにちは」と挨拶をしてしまった。挨拶、大切である。人と人とを繋ぐのは挨拶だ。しかしこの場では何か違う気がする。

慌てつつも気を取り直し、水戸さんにサインをしていただく間に「グレーゾーンの客なのでベストが発売されて嬉しいです」「欲しいけど、手に入らなかったので」と告白をした。ベスト盤の発売で、自虐と冗談を交えつつ、「コアなファンしかいないバンドだから皆ベストなんか出さなくてもアルバム持ってるよ!」「これからはグレーゾーンの客を増やしていこう!」と水戸さんが話していたからである。実際、自分はせいぜい半年程度のファンで、3-10Chainのアルバム四枚のうち初期二枚は廃盤になっているためレンタルでしか聴いておらず、アンジーも少しずつ集めている状態。まさにグレーゾーンと呼ぶにふさわしい。

水戸さんはにこやかに「珍しい! これから濃いゾーンに!」と言ってくださり、握手をしていただいた。舞い上がって「はい! 濃いゾーンに入っていきたいです!」って元気良く返事をしちゃったよ。水戸さんの手は温かくて柔らかかった。

サインしていただいたアルバムを大事に鞄にしまい、駅へと歩みを進めながら「客じゃなくてファンって言えば良かったなぁ」と反省したりしつつ、ニッコニコに笑いながら電車に乗って帰宅した。ライブの後はいつも満面の笑みを抑えきれなくなる。筋肉の動きがニヤニヤじゃなくってニコニコなのだ。あぁ、迷ったけど行って良かったなぁ。楽しかった。

そうそう。今回は前回の3-10Chainより水戸さんの声がよく聴こえた。この間は内田さん前の最前付近に立っていたからベースの音はズンズン響いてきたが、水戸さんの声はやや聴こえにくかったんだよな。これくらいの位置だと観るのも聴くのもちょうどが良いね。

後日、水戸さんのブログにセットリストが掲載されたので転載を。

[オープニングビデオ]~BGM
~水戸 with ダンサー
~メンバー IN
1.生きてるうちが花なのよ
2.君と瓶の中
~ダンサー OUT
3.霧の中
MC
4.愛に愛はあるのかい?
5.唇にメロディ、心に牙を
MC~和嶋 IN
6.孤独の叫び
7.これっぽちの悲しみで
MC
8.蠅の王様(~橘高 IN)
~和嶋 OUT
9.誰だ
MC
10.サイクリング(~恭一 IN)
~橘高 OUT
11.キムとキリムのダイジョーブ!
12.すべての若き糞溜め野郎ども
13.沈没船
~恭一 OUT
14.世界が待っている(~ダンサー IN)
15.でくのぼう
~ダンサー OUT
16.天井裏から愛を込めて
17.センチメンタルストリート

En.1
地図
祈り
En.2
Yeah! Yeah!(G.×4)