未分類0杯, M.S.SProject, 非日常

昨日は居住まいを正してオーケストラを聴き、今日はペンライトを振り回してライブを楽しむ。音楽を楽しむ点こそ共通するものの、随分色が変わるものだ、とその違いの楽しさを噛み締めながらふわふわと帰路に着いた。

もしかして新譜発売記念ツアーかしらん、と期待したもののそういった告知はなく、しかしライブがこうして定番化したのは嬉しいなぁ、と思っていたら新曲発表のサプライズがあり、いやーもうこういうのってどうしたって嬉しくなっちゃうからね。きっくんの発表にわあっと盛り上がって、黄色に輝くペンライトを高々と掲げたのだった。

いろいろな意味で面白いライブだった。それは個人的なことも大きく影響する。ちょうど一ヶ月前に筋肉少女帯の新譜「Future!」が発売され、それから家にいる間は寝るときと風呂に入るとき以外、ひたすら「Future!」を聴き続ける生活をしていた。移動中もエンドレスリピートしていて、「Future!」以外の曲は何も耳に入らない状態をほぼ一ヶ月間続けていた。それはそれほどまでにそのアルバムに魅入られ取り付かれたためであるが、ふと冷静になってみるとまるで中毒患者の如く夢中になって聴き続けていたと思う。

そうして昨日、平沢進の楽曲をカバーするオーケストラに行ったとき。久しぶりに「Future!」以外の曲を聴いて、ざぁっと景色が広がるような、かつては知っていたのにすっかり忘れていた色彩を思い出したような、不思議な感覚に囚われたのだ。あぁ、そうだ、自分はこういった音楽も愛してるんだ! と視界が開けた感覚があった。

しかし家に帰ってからはまた「Future!」「Future!」「Future!」で、お前は中毒患者か何かかよ、といった勢いでエンドレスリピートし、今日、M.S.S. Projectのライブに行って。オープニング映像でわははと笑い、ほほうとゲーム実況を眺め、幕間動画で「わかるわー川崎と言ったらヴェルディ川崎を連想するわー」とうんうんと深く頷き、音楽ライブが始まった瞬間。パキッと目の前の空間にヒビが入り、ガシャンと勢い良く割れて、「あ、そうだ、これ! 好きなやつだ!!」と世界が広がる感覚を抱いた。それはまるで洗脳を解かれたかのような感覚。いや、洗脳されていたわけじゃあないんだが。好きな音楽を自発的に聴いていただけなのだが。ただ、あまりにも囚われていたので。

一つのアルバムに囚われている状態で他のミュージシャンのライブを楽しめるだろうか、という小さな不安が胸の底にあったが、杞憂であったとわかって嬉しい。そうだ、そうなんだ。自分は好きなものをいくつも持っていて、その一つを堪能できる日が今日なんだ!

屈託なくわははと笑えるのはとても幸せなことだと思う。特に今回のライブのオープニング映像は実に凝っていて素晴らしかった。メンバーのそれぞれが担当の色を持つM.S.S. Projectは確かに戦隊もののそれに似ている。しかしまさかあそこまで本格的に、着ぐるみの怪人と爆薬を用意して演出しようとは誰が想像できただろう! 各人が変身するときの決め台詞も面白く、中でもeoheohの「自然が憎い! グリーン!」という台詞には腹を抱えて笑ってしまった。変身して衣装をチェンジしたのに、もともと着ていた衣装がきちんとハンガーラックにかけられていて、変身を解くために普通に着替える演出も面白い。あの草がわさわさ生えた空き地にハンガーラックが置いてある光景だけでも笑いを誘うのに、時間をかけていそいそと着替えるシーンが挿入されては笑わないわけがない。

オープニングの後はゲーム実況タイムへ。今回プレイされたのはドット絵が懐かしいアクションゲームと「地球防衛軍」の二つ。アクションゲームの方はプレイしたことこそないものの、慣れ親しんだ画面だったため楽しんで観ることができた。キャラクターを選択し、四人同時に戦って勝者を決める単純な内容だ。最初はサッカーの会場が舞台で、ゴール前でサッカーもせず殴り合いをするなんて不思議なゲームだな……と思っていたら、シュートを決めたら他のプレイヤーにダメージを与えられるシステムだとわかりびっくりした。なるほど、ちゃんと意味があったんだな。

二つ目のゲームは「地球防衛軍」。これは十年ほど前に友人の家で観たことがあってぼんやり知っている気分であったのだが、思っていたのと全然違うゲームでびっくりした。記憶では人類が巨大なアリに立ち向かうゲームだったような気がするが、アリもいるがもっとすごい化け物もいて、人類の方も何か格好良い姿になっていて、「あれ? どっちかって言うとカルトなゲームだと思っていたけどもしかして違うのか……?」と混乱した。

ゲーム実況が終わり、メンバーがステージからいなくなると幕間動画へ。以前にも書いた記憶があるが、こういう動画を用意してくれるのは非常にありがたい。待ち時間にも楽しませてくれようとする彼らのサービス精神に感謝である。

内容は川崎のヒーローと怪人を各々作り、勝者を決めようというもの。あろまほっとが描いたのは干し柿を持ったラガーマン、KIKKUN-MK-IIは右肩に川崎フロンターレ、左肩にヴェルディ川崎のマスコットをつけたラモス瑠偉。あー、小学校の頃ラモスの大ファンだったんだよなぁ自分……としみじみ。で、この二名がヒーロー。怪人を描いたのはFB777とeoheohで、FB777はやたらパースのきいたかりんとう饅頭の化身に、eoheohは湘南の……言わぬが花でしょう。「(モチーフに)有名人多すぎねぇ!?」という突っ込みがなされ、様々な裏切りの挙句、最終的に勝ったのはあろまほっとの描いたヒーローだった。ちなみにこのヒーローにも「けんぷファー」というモチーフがあるらしいが、詳しくないのでわからなかった。

そしてついに、音楽ライブへ! ちなみに本日のセットリストはこんな感じだ。わからないものもあるがご容赦を。


かっこいいインストゥルメンタル(知らない曲)
ENMA DANCE
ボーダーランズのテーマ
Egoist Unfair
THE BLUE

Glory Soul
Phew!
KIKKUNのテーマ

WAKASAGI
ReBirth
M.S.S.Party
M.S.S.PHOENIX(新曲)

~アンコール~
L4Dのテーマ(ダンス)
M.S.S.Phantasia
We are MSSP!


全体的に定番曲で固められたセットリストであったが、その中に「WAKASAGI」「ReBirth」、そして新曲「M.S.S.PHOENIX」があったのが嬉しい。二曲目の「ENMA DANCE」ではあろまほっととeoheohによるマリオネットのパフォーマンスも。

「ボーダーランズのテーマ」はライブでしか聴いたことがないのにコールの一部を覚えてしまった自分自身にびっくりしつつ、思いっきりペンライトを振り、「ぶっとばせーー!!」と叫ぶ楽しさよ。そうだそうだ、ぶっとばせー!!!!

「Egoist Unfair」を聴いて思ったのは、初めてライブで聴いたときよりもずっと声が出るようになっているなぁ、ということ。嬉しい発見である。これはどうにも歌いにくそうな印象があったのだ。

「THE BLUE」で視界が青色に染められるのを楽しみつつ早口の初音ミクの歌唱に聴き入る。この日自分は二階席で、「立ち上がらないでください」と指定された位置であったために腰を下ろしたまま観戦していて、立ち上がりたい衝動に何度駆られたかしれないが、この美しいペンライトの海を堪能できるならまぁいいか、とも思った。

「Glory Soul」はあろまほっととeoheohが剣を取って戦う演出があり、実に海賊らしくて格好良かった! 映像演出も素晴らしい。ステージに設置された大画面に映るのは舟の舳先と大海原に、青い空。まるでステージが甲板であるかのように見えるのだ。いいなぁ、こういうの。楽しくならないわけがないよなぁ。

「Phew!」では一転、草原が映し出され、パントマイムを演ずるあろまほっとeoheoh、そして最後ゾンビに襲われる二人。襲い掛かるゾンビが映像に映し出されることで、この和やかで楽しい曲がゾンビ曲だったことを思い出す。しかし何でこれがゾンビ曲なんだろうなぁ。

毎度お馴染み「KIKKUNのテーマ」はいつだって楽しい! 黄色いペンライトを振って「きっくん! きっくん!」と叫ぶときの多幸感! シンプルイズベストってこのことだなぁ、とつくづく思う。特にきっくんファンにはたまらないだろうなぁ。

「川崎」に似ている曲を……ということで始まった「WAKASAGI」は、己の大好きな一曲で、今日この日にフルで聴けたことがたまらなく嬉しい。「M.S.S.Phantasia」が発売されたとき、何度エンドレスリピートしたことだろう! この曲の他には何も音楽を知らない、と思われるほど聴いていた。キュートな歌詞とFB777の伸びやかな歌声がたまらなく心地良いのだ。

前半は声が出づらい様子もあったが後半はのびのび歌っていて、あぁ、聴けて良かったなぁ嬉しいなぁ……と思っていたら「ReBirth」まで! これも大好きで、初音ミクの歌声を今まで「音」と感じていたのに、「声」として聴き取った初めての曲なのだ。この曲のとき、あろまほっととeoheohが絵を映し出す光る棒をくるくる回していて、その演出がまた可愛らしくて、心がふわっとなった。

「M.S.S.Party」で盛り上がり、本編最後の一曲は新曲「M.S.S.PHOENIX」。曲に入る前にきっくんが新曲の披露をサプライズで発表しようとしたものの、うっかり自分で曲名をバラしてしまうシーンがあり、FB777がフォローすることで時間を巻き戻す寸劇も発生して微笑ましかった。「M.S.S.PHOENIX」はきっくんの曲かな? ロックテイストの楽曲に思えた。

アンコールでは驚いた。拍手に呼び込まれステージに登場するサポートメンバー。真っ暗な視界。しかしいつの間にかM.S.S. Projectのメンバーもステージに待機していたらしい。パッと放たれるスポットライトの中心にFB777、KIKKUN-MK-II、あろまほっと、eoheoh。そして四人が息を合わせて踊り出す! わっと湧き立つ会場! 「ゾンビ!」と叫ばれる合いの手! これには本当にびっくりした。

彼らが音楽ライブとは違うライブを行っていることは知っていて、そこでダンスを披露していることも耳にしていた。しかしそれを目の当たりにしたのは今日が初めてで、ゲーム実況と言うインドアな取り組みからスタートしたとは思えない動きとアクション。一挙一動が全て揃っているわけではないものの、ここに至るまでの努力を思うと計り知れないことは予想される。だって、己は彼らとほぼ同年代で、ここ最近がっつり体力の低下を感じているんだぜ。すごいよ、本当に。

「M.S.S.Phantasia」で楽しく盛り上がり、「We are MSSP!」で締め。毎度のことながら、カラフルなテープがバーンと空間に放出され、舞い落ちる様のなんと美しいことか。二階席の目の高さまでテープは昇り、その影は脇の壁に色濃く映った。揺れながら落ちる影を目で追って、カラフルに染まる会場を見下ろして、あぁ、綺麗なものを観ると心が洗われるなぁ、と思った。

最後は写真撮影をしておしまい。あの写真に写る光の一粒が、もしかしたら自分かもしれない、と思うと嬉しい。名残を惜しむようにステージに残ったメンバーは客席に結んだタオルを目一杯投げた。eoheohとKIKKUN-MK-IIのタオルは二階席に届かんばかりの勢いで、それを目で追うのも楽しかった。

ということで非常に楽しかったのだが、一つだけ、一つだけ! あろまほっとさん、あの、下顎なくなったじゃないですか。いや、チャンネル放送で下顎がなくなった件は知ってたのだが、生で改めて見るとやはり寂しい。いやでも髪型変えるようなもんか。改造だもんなぁ。

そのうえで気付いたこと。あれは般若というよりも骨に近い印象を己は抱いていたらしい。言うなれば、ポケモンのカラカラのような。漫画「BLEACH」のアランカルの面々のような。顔の上に乗るドクロの仮面。あれが実に格好良いなぁと思っていたようだ。そうして今、下顎が無くなってちょいと寂しいなぁと思っている。人間の顎を覆う骨の顎、あの構造って結構魅力的じゃあないかしら。そんでもって今の下顎を落とした姿は、般若と言うよりもマスカレードのそれのようで、また印象が変わるなぁと感じるのである。

ちなみに自分は週に一度一週間分の常備菜を作ることを習慣にしていて、その際にM.S.S. Projectの面々が飲み食いしながら喋っている動画をラジオ代わりにすることが多い。調理にはおよそ二時間かかるので耳で楽しむのにちょうど良いのだ。あの動画、良いよね。



日記録0杯, 14周年企画, M.S.SProject, 日常

2017年6月3日(土) 緑茶カウント:0杯

さしもの夜型人間の己であっても、二十一時に目が覚めたら驚くのである。しかもそれは携帯電話の振動音によって無理矢理覚醒されてのもの。かの振動音が無ければいつまで寝続けていたかわからない。

疲労の自覚はあったがここまでとは。我ながら驚くばかりである。

さて、睡眠と読書以外にろくろく何もしていない今日。せっかくなので日記を書こうかな、ということで14周年企画でいただいたラストのお題「M.S.S.Phantasia感想と、M.S.S. Projectの現在の印象」について書いてみようか。「M.S.S.Phantasia」が発売されてからおよそ四ヶ月。エンドレスリピートの日々を過ぎ当初の興奮は落ち着いている今、感じることとは何だろう。

聴き始めの当時を思い出してみると、最初の印象は「随分ポップになったな」というものであった。「M.S.S.Planet」「M.S.S.Phantom」と違い、ライブの存在が大きく意識されているように感じる。それは前作「M.S.S.Party」にも感じたもので、より一層顕著になったのが今作「M.S.S.Phantasia」である。いかに皆で盛り上がるか、盛り上げるかということが要になっているように思う。

その象徴たるものが「MISSING LINK」と「I’ll be…」である。前者はあろまほっと、後者はeoheohによる歌唱だ。今までCDにおいて、彼ら二人は無駄トークとコーラスの一部でしか姿を見せていなかったが、ついにこの二人が音楽にも身を乗り出した。彼ら二人はライブにおいてはパフォーマーの役割を担い、初めて観たライブでは各々が思い思いに動いていたが、二回目のライブでは曲に合わせた振り付けのもと、世界観を演出していた。そして三回目に行った武道館ライブではメドレーで代わる代わるソロを披露。たどたどしさもありながら、役割の幅が広がった瞬間を見せてくれ、大いに驚いたことを覚えている。

そこに至る過程を己は知りえないが、活動をする中で「もっとやりたい」という思いが生まれ、その結果であるのなら、それはとてもわくわくするもので、素敵だ。自分の領域以外のところへ踏み込み進んでいく、それは「今後、いかに変化していくか」期待させるものである。

M.S.S. Projectとは不思議なグループだ。音楽がやりたかった二人が集い、四人でゲーム実況を始め、ゲーム実況によって名を馳せた。そうしてCDを発売し、ライブを行いつつゲーム実況も続けながら、それぞれが書籍を発売し、様々なメディアとコラボレーションを組む。その軸はきっと音楽とゲーム実況なのだろうが、やろうと思えば何にでも進出できるのではなかろうか、と思わせるところが面白い。

アルバムでは「Glory Soul」「プロトレジエム」「WAKASAGI」「ReBirth」を特に気に入っている。中でも一等好きなのが「プロトレジエム」で、この系統の曲だけ集めたアルバムを作って欲しい!! と思うほどだ。中盤の「ベーンッベーンッ……」と続くところが気持ち良く、いつまでも聴いていたいと思う。

「Glory Soul」はまず、「貴方がたは海賊だったのかい」と突っ込みつつも、ミュージカルのような曲調が楽しくてたまらない。この曲はライブでも楽しかったなぁ。何となく、彼らの頭の中の海賊はONE PIECEの世界観のそれのように感じる。冒険をして、戦って、宴会をして大笑いをする陽気な奴ら。家族ではないが擬似的な家族に近い存在。M.S.S. Projectにも通じるところがあるだろう。

「WAKASAGI」は何と言ってもFB777の伸びやかな声が耳に心地良い。何度か書いているが、あらゆるものから解放された歌のお兄さんを彷彿とさせる清清しさが大好きだ。とても気持ち良さそうに歌っているなぁ、と思うのだ。この曲は頭の中に映像が展開される。昔観たNHKの「みんなのうた」のような素朴でカラフルな映像が頭の中のテレビ画面に映し出されて、楽しい。

「ReBirth」はちょっとした発見があった。初音ミクの言葉が最初から聴き取れたのだ。M.S.S. Projectの音楽を聴くまで初音ミクとは縁が薄く、電子的な声に慣れていないせいか、歌と言うよりも「音」として聴こえていたため、言葉として認識するまで結構な時間がかかっていた。しかしこの「ReBirth」については最初から「初音ミクの声」としてその言葉を聴き取ることが出来たのである。M.S.S. Projectの音楽を聴くうちに耳が慣れたこともあるだろうが、はっきりくっきり発声されていることも大きいだろう。この曲は聴いていると頭の中に青空が広がる。爽やかで綺麗な曲だ。

「音楽をやりたい」から始まり、作りたい音楽を作る中で、音楽を聴くオーディエンスの存在がだんだんと意識されるようになっているように感じる。ファンを楽しませたい、喜ばせたい、一緒に楽しみたい、そんな思いが創作に反映され、変化しているように思う。

ニコニコ動画は視聴者が投稿したコメントが動画に反映されるシステムだ。もともと彼らの活動の場所は、視聴者やファンの声が届きやすい環境で、その存在を意識しやすい。だからこそ、視聴者やファンをいかに楽しませるか、ということは常から意識されているものだろう。それがライブでより一層ダイレクトに届くようになり、受け取ったものを咀嚼し、飲み込み、新しいものができる。「ライブ」の影響を受けてできたであろう「M.S.S.Phantasia」から、次回作でどのように変化するかが興味深い。

M.S.S. Projectの印象自体は、実は当初から今に至るまで大きく変わらない。彼らは一つの憧れであり、己にとっての幻想である。彼らの活動を見ていて思い出すのは学生時代の仲間達とのふざけ合い。毎日のように顔を合わせ、学食で安いカレーを食べながら何時間も話し、誰かの家に集って酒を呑んで笑い合う他愛の無い日々。社会人になってからはなかなか得られない時間を懐かしみつつ、生じるのは憧れとうらやましさ。それは小さな夢である。そしてまたその夢を、いつまでも見せて欲しいと願う。ONE PIECEの海賊のような、擬似家族のような関係性。そこに映し出されるものこそがある種のファンタジーであり、はたまたユートピアかもしれない。



日記録0杯, 14周年企画, M.S.SProject, 日常

2017年4月9日(日) 緑茶カウント:0杯

ゲーム実況なるものを見むとて見るなり。

ゲーム実況なるものを見たのは今までに三回。二回はパシフィコ横浜で、三回目は武道館。どちらもM.S.S. Projectのライブの一幕で催された。大きな会場でテーブルを囲み、ちんまり集まる四人を眺めつつ、巨大なスクリーンに映し出されたゲームの行く末を見守るのはなかなか奇妙な体験だった。

そもそもゲーム自体と縁遠くなって久しい。一番遊んだゲーム機はスーパーファミコンで、初めて触れたのはスーパーマリオコレクション。両親がある日スーパーファミコンと一緒に買ってきて、家族で夢中になってプレイした。両親はマリオ2、自分はマリオ3を熱心に遊んだ記憶がある。マリオUSAは追いかけてくる仮面が怖くてついにクリアできなかった。

初めて親にねだって買ってもらったゲームは同じくスーパーファミコンのサムライスピリッツ。小学校一年生の頃だったか、友人の家で遊ばせてもらい、その面白さにやみつきになって欲しい欲しいと頼んだのだ。クリスマスに枕元の包みを開いてこれを手にしたときの喜びと言ったら。今でも実家の物置を探れば箱と取扱説明書が出てくるはずである。メインで使っていたキャラクターはナコルルで、彼女をきっかけにアイヌ文化に興味を持った。

以降、星のカービィスーパーデラックス、ヨッシーアイランド、スーパーマリオRPG、パネルでポン、ワンダープロジェクトJ2、ポケットモンスター(青)などなど、様々なゲームを楽しく遊んだが小学校高学年の頃に転機が訪れる。ぷよぷよSUNにはまってからゲームをプレイする以上に攻略本集めに夢中になり、中古屋をめぐってぷよぷよ関連の書籍とみれば例え自分が持っていないゲームでも片っ端から買い集めては熟読し、ほんの一文でも他の本にない情報や裏話、小ネタを見つければにやにやと喜ぶようになったのである。

最後にどっぷり遊んだのは初代プレイステーションのヴァルキリープロファイルとわくわくぷよぷよダンジョン決定盤。その後はたまに、今でも現役のゲームボーイアドバンスでポチポチとテトリスやもじぴったんを年に数回プレイする程度である。

そんなありさまなのでゲーム実況という文化にも縁遠く、またもう一つの理由でも自分とは無縁のものと思っていた。

ある日知人に己のはまっているアニメについて話したところ、「それじゃあyoutubeで観てみますね」と言われ、苦笑いを浮かべつつ「youtubeはダメですよ」と返したところ、「そんなことないですよ。最近はすぐにyoutubeにアップされるんですよ!」と朗らかに笑われ頭を抱えたことがあった。「youtubeはダメ」という言葉をこのように解釈されるとは悩ましい。また別の場面では反対に、己が「このアニメ気になるな、観てみようかな」と呟いたところ、「ここで観られますよ」と無断アップロードされた動画のURLを教えてくれた善意の人もいた。参ったなぁと思いつつその人には形式ばかりの礼を伝え、目当てのアニメはレンタルショップを利用して視聴した。

悩ましいなぁと思う。ゲームそのままではなく実況と言う新しい要素が加えられているとはいえ、これをどのように解釈すべきか。ゲーム実況とは作り手側が本来想定していなかった新たな要素を加えることで、新しい価値が生み出されたものだ。その予期されていなかったものにより化学反応が起こる事象そのものは大変好みで興味深い。が、しかし……。

念のため断っておくと、己はゲーム実況と言うジャンルとそれを楽しむ人々を頭から批判しているわけではない。戦後の闇市が盛り上がった結果地域が活性化し、観光名所となることもある。著作権的にはグレーな同人誌即売会が、企業にその価値を認められることもある。そしてそれはサブカルチャーを語るうえで度外視できない日本の文化の一つである。本来のルールに則ればダメであっても、ルールを逸脱することで新たな価値が生まれることもあるのだ。

よって懸念すべきはただ一つ。自分自身の整合性だ。他者の価値観はどうであれ、自分自身が納得できないといけないのである。

さぁ、どうしたものかと頭を悩ませつつゲーム実況について調べていたら驚いた。なんと、今はゲーム会社公認のものもあると言う。一定のルールに則れば投稿が承認されるゲームもあるようだ。こいつぁすごいな、面白い。本来は「ダメ」だったものが大きな価値を形成することで認められ、新たなルールが作られて推奨される。いいじゃん。素敵じゃん。

安心したところで、ではそれを観ようかと探したところ、「マインクラフト」なるゲームが会社公認で、ちょうど今リアルタイムで投稿されているようだったのでこれを観ることにした。初代プレイステーションで止まっている自分はもちろん、このゲームをプレイしたことはない。

初めてゲーム画面を観てまず思ったことは、己がゲームにはまっていた頃よりも技術が進歩しているはずなのにやけにカクカクしてんな、ということだった。しかしマリオ64のように、画面の端々に時折不安定さが感じられるポリゴンではなく、角ばっているのに世界の隅々までなめらかだ。程なくしてこの世界は人も木々も動物も建物も、全てブロックで構成されていることを理解した。そして人々は土を掘って家を作り、ベッドで眠り、畑を耕して作物を味わい、化け物に襲われてアイテムをバラ撒き、魔法によって超人的な力を得て、その力で土を掘ったり家を作ったり化け物を襲ったり化け物に襲われたりするのである。

動画の投稿は毎日行われ、週が新しくなるごとに一週間のテーマが変わり、その目標達成を目指してM.S.S. Projectの四人は活動する。広大な世界にはあらゆる化け物と数多くの砦があるようで、それらを攻略してレアアイテムを手に入れて自身を強化していくことが一貫した行動指針のようだが、今のところこの世界に何が起きていて、何を持ってすればゲームクリアになるのかは読み取れない。もしかしたら己が知っている昔ながらのゲームと違い、ゴールのあるストーリーは用意されていないのかもしれない。

パシフィコ横浜でゲーム実況を観たときにも思ったが、友達の家に集まって、交代交代でプレイしながらゲームで遊んでいるときの感覚に似ている。いつだったか大学時代の友人同士である一人の家に集まり、酒を呑みながらロックマンをプレイして、わーわーやーやーはしゃいだことがあった。あの感覚にとても近い。まるで画面の前に座ってコントローラーを握るM.S.S. Projectのメンバーの後ろで、座椅子に背中を預けながらビールを呑み、わーわーやーやー言っているような気分になるのだ。この感覚が面白いのかもしれない。

ゲームはそもそも疑似体験の遊びである。プレイヤーはキャラクターの姿を借りてゲームの世界に降り立ち、冒険にしろ格闘にしろパズルにしろ、その世界で遊びまわる。対してゲーム実況は、コミュニケーションの疑似体験と言えるかもしれない。子供の頃友人と並んでテレビ画面の前に座り、コントローラーを握った感覚。時には協力プレイをし、時には殴りあいをし、「あのアイテムをとるからお前あっちの敵倒してよ」「わかった」とやりとりする楽しさ。そしてその子供達の後姿を見守る母親の姿。

思い返してみると、今は亡き己の母親がゲームの観戦が好きで、自分がヨッシーアイランドなどで遊んでいると「あっちに敵がいるよ」「上にアイテムがあるよ」「強かったねえ!」と語りかけてきた。時にその声はプレイの邪魔になることもあり、「わかってるからちょっと黙って!」と怒る場面もあったが、そうして観戦する母の声を聴きながら遊ぶのもまた楽しかった。

あの友人や家族と一つのゲームを一緒に遊ぶ感覚を疑似体験できる楽しさ。そして隣に座る友人に感じる親しみと同じものを画面の先の実況者に抱き、より一層彼らを好きになっていくのではなかろうか。実況動画で観る彼らは書籍やライブ、音楽で知るものとはまた違った一面もあり、新たな発見もあった。ライブで観る彼らのやりとりは講義のない時間の大学生のような気安さで、それが非常に好ましいと思っていたが、さらにそれが如実に表れているように思う。

とはいえ、やっぱりゲームは他者のプレイを観るよりも、せっかくなら自分でプレイしたい。そういえばMSX版魔導物語が再発されたとき、せっかく買ったのに寝かしすぎていざプレイしようとしたら所有のパソコンでは起動しない、なんてこともあった。あれも近年になって改めて再発されているようなので今度こそと手にとってみようか。また寝かせてしまったらどうか笑って欲しい。



日記録0杯, M.S.SProject, 平沢進, 日常, 筋肉少女帯

2017年4月2日(日) 緑茶カウント:0杯

サイト創設十四周年を迎えてアンケートを実施し、いただいた回答を眺める中でふと気付いた。今でこそ日記サイトとして定着しているが、そもそも始まりはイラストの公開を目的にしていたはずで、オリジナルイラストや当時はまっていた漫画の絵の他に趣味で描いていた昆虫のイラストを公開していたが、もしや今は己が昆虫を描いていたことを知らない人の方が多いのではないか? と。

と言うことは。本来メインコンテンツだったものを今公開したら、それだけでエイプリルフールとして成り立つのではないか? 結構びっくりされるんじゃないか?

という思いつきのもと企画を決めた。架空の人物が採集した架空の昆虫を紹介するサイトにしよう、ということで昆虫のモチーフを音楽に決め、誰をどの昆虫にするかを考え、絵に起こし、設定を考え、サイトを作った。架空のサイトの管理人は散歩と音楽が好きな人間ということで「Mr.Walkman」と命名。もちろん携帯音楽プレーヤーが名前の由来である。

思いついたは良いが、間違いなく今までの企画で一番大変だった。昆虫の絵に時間と労力がかかるのである。まずコピー用紙にあれこれデザインを考えつつ昆虫の絵を描き、いったんそれをコピーする。そしてコピーした紙の裏を鉛筆で黒く塗りつぶし、水彩用の紙に乗せて上から線をなぞってトレースする。トレースした線を若干整えたら下塗り。徐々に色を重ねて完成。

企画を思いついたのが二月末。線画が出来たのが三月十日あたりで、以後休日はライブに行く以外はひたすら机に向かって色塗りをする日々が続いた。そうして絵が完成したのが三月三十一日の二十一時。そこから急いで絵をスキャンして、トリミングして、色調補正して原画の色合いに近付け、ダカダカとキーボードを叩いてサイトを作った。流石に日付が回って即公開は出来ず、二時間遅刻したがまぁ頑張った。頑張ったよ……!

あとはそれぞれの絵や設定について語っていこうかな。
ちなみに各画像をクリックすると嘘サイトの該当ページに飛ぶ。よろしければ。




オオヒビワレクワガタオオヒビワレクワガタ(モチーフ:大槻ケンヂ)
獲物をがっつり捕らえてムシャムシャする虫は違うな、ということで、格好良くて強そうな見た目をしているけど主食は樹液なクワガタをチョイス。オーケンの顔面のヒビを描きたかったので、大顎と足でヒビを表現した。格闘観戦が好き、という設定はプロレスや道場見学を趣味としているところから。



ウチダモノカミキリウチダモノカキミリ(モチーフ:内田雄一郎)
内田さんは難しかった。黒い触角は内田さんの髪の毛を表現し、黒の紋はサングラス、背中の紋は内田さんの物販「ウチダモノ」に。「地に響くような低い声で鳴く」設定はベースの音を表した。



タイヨウオイスズメバチタイヨウオイスズメバチ(モチーフ:本城聡章)
おいちゃんも難しかった。おいちゃんと言うと自分はドピンクのスーツのイメージが強いのだが、常にその衣装を着ているわけではないので共通認識にはなりえないのである。悩んだ結果、おいちゃんの衣装に多い原色と黒の組み合わせをチョイス。また、腹部の黒と白の配色はおいちゃんのギターをイメージ。
「タイヨウ」はおいちゃんの太陽のように眩しい笑顔から。



レースシロタテカマキリレースシロタテカマキリ(モチーフ:橘高文彦)
図鑑らしく、上からのショットで統一したかったものの、カマキリを上から描いてもつまらないのでレースシロタテカマキリは横から描いた。
イメージはすぐに湧いたものの、レースを描くのに苦戦。三百円ショップや靴下専門店を回り、網タイツや黒レースの靴下を探し回った挙句、東急ハンズの手芸コーナーで黒レース単体を購入して事なきを得た。



ヒラサワスズメガヒラサワスズメガ(モチーフ:平沢進)
ヒラサワといえば黒尽くめの衣装。とはいえ、ただ真っ黒じゃつまらないな、ということで、進化と変化を続ける彼の様相を表したいと思い、芋虫をチョイス。スズメガにしたのは名前が似ていることと、自分自身がスズメガスキーだから。
「幼形成熟幼虫」の設定は楽曲「幼形成熟BOX」が発想のもと。「MODEL ROOM」「ENOLA」「BIG BROTHER」はそれぞれのアルバムジャケットのデザインをモチーフにしている。「STEALTH MAJOR」が黒味がかった赤なのは、黒では隠れきれない情熱と溢れる魅力を表現した。



シッコクノダテンシモドキシッコクノダテンシモドキ(モチーフ:KIKKUN-MK-II)
漆黒の堕天使的存在ということは、漆黒の堕天使のような存在ということだろう、と解釈。そこでまず、「シッコクノダテンシ」という架空の毒蛾が存在することにして、その擬態をしている設定にした。
翅の色合いはKIKKUN-MK-IIのギターから。黄色の紋はギターのつまみをイメージしている。



ウェイウェイピルピルゼミウェイウェイピルピルゼミ(モチーフ:FB777)
「ぴるぴるちゅーん」という歌声が頭に残っていて、それがいつの間にかセミの鳴き声に変化したのですぐにセミに決定した。黒の紋はサングラス、その下の白は口と十字架をイメージ。また、翅はジャケットのつもりで描いた。



ハンニャアカアリハンニャアカアリ(モチーフ:あろまほっと)
「あろまさんぽ」から、よく歩く昆虫が良いな、ということでアリをチョイス。「あろまさんぽ」で日本全国を旅しているなら巣とは無縁だろう、ということで設定を練った。こういう設定を考えているときが一番楽しい。
般若はあえてうっすら見える程度に留めた。実際にこのアリがいたら何らかの伝承が生まれているかもしれない。



エオエオトンボエオエオトンボ(モチーフ:eoheoh)
告白すると、実はずっと前から「eoheohさんをモチーフにしてトンボを描きたい……」と思っていた。あの人を見るたびにトンボを連想していた。よってここで描けて満足である。
ちなみに今回一番苦労したのがエオエオトンボの翅である。すごく大変だった……。



以上。他にも水戸華之介モチーフの「ミトハナバッタ」、町田康モチーフの「マチダマチゾウムシ」といった構想があったが間に合わなかった。しかし久方ぶりに虫を全力で描けたので楽しかった。また時間を作って虫の絵も描いていきたいものである。

ところで今回の「MR.WALKMANの昆虫図録」で、エイプリルフール企画を始めてから十年目になったようだ。我ながらよく続けているものだ。来年も余裕があればやりたいものだ。


170326_2142



未分類6杯, M.S.SProject, 非日常

会場に着いて思ったことは、まるで祭りのようだなぁ、ということだった。

九段下駅から徒歩数分で辿り着く日本武道館。改札を出て歩を進めるにつれ、般若の面をキーホールダーの如くぶら下げた人や、メンバーのぬいぐるみや缶バッジをつけた人々が己と同じ方向へ進むさまが目に入るようになる。ここまでは良く見る光景だが、流れに乗ってさくさく歩いて門をくぐった先は普段と異なる様相だ。祭りのように人がごった返し、物販用のテントが連なる先には長蛇の列。テントには「物販の整理券の配布は終了しました」との文字があり、親類縁者関係者仕事先から贈られた花輪の数々の前にも人が集まっていて、拡声器を持った係員があちこちで誘導の声かけをしている。おおおおおお……!

あぁ、そうか、武道館ってのはただのライブではなく、祭りなのだ。祭りなのか! 見渡せばこれまでに観た二回のライブよりも年齢層が広いようで、自分と同年代、それ以上の方々も多く見受けられた。武道館という特別な会場でやるなら是非と意気込んで来た人、せっかくだから都合をつけてどうにか来たいと思った人、いろいろな人がこの場に集まったのだろう。武道館という地の特別さを感じた一シーンであった。

座席は二階席の南西エリアで、売店でコーラを購入してよいよいと席に着いた。荷物を置くのも一工夫いる狭さで、人が行き来するのも一苦労。この広い会場いっぱいに人がぎゅんぎゅんに詰められて、巨大な日の丸の旗の下に設えられたステージに注がれる熱視線の熱量たるや。前回の反省を踏まえ余裕を持って着席した自分は、コーラを傾けながら周囲の興奮に何とはなしに耳を傾けていた。

程なくして暗転し、歓声とともに灯がともるスクリーン。ファンタジーな装いの四人が映り、正体不明の魔王を退治するためにだらだらと旅に出る。途中eoheohがおかしなテンションになって、擬音を駆使してセグウェイに肩車で四人乗りする描写を声だけでしていて、そのテンションとセグウェイ四人乗りの異常さがおかしくてゲラゲラ笑った。

映像が終わるとM.S.S. Projectのメンバーが登場! さてついに! 前回の公演で購入したペンライトをここで振ろうじゃないか! 袋からは取り出してあり、電池も確認済み。動作も家で数度チェックした。よっしゃーペンライトを振るぞ! と思ったものの己の手は止まった。

四人、突出して目立っている人がいない場面では何色を振れば良いんだ……?

例えばKIKKUN-MK-IIのテーマでは黄色にするのはわかる。FB777が歌っているときに青にするのもわかる。しかしこういうこれと言って何もない場面では何色にしとけば良いのだろうか。いわゆる「推し」がいる人であれば通常時には常にその色にしておけば愛と応援をアピールできてよろしいだろう。ペンライトにはそういった使い方もあるはずだ。しかし自分は……赤か? それともここは光の三原色を混ぜて全員カラーを白、と解釈すべきか……?

迷った挙句両隣の人の中間色にした。調和がとれて満足である。

そして満足している間に毎度の如く魔王を倒すためにゲーム実況を開始する宣言がされ、わーっと盛り上がる会場。ここでペンライトを振ろう、と思いつつまた手が止まる。

これって……縦に振るのか? 横に振るのか?

今までずっと盛り上がるときは拳を突き上げることしかして来なかったため、「何かを振る」ことで興奮を表現しようとすると体が混乱するらしい。言ってみれば、自分の体には「興奮」の表現として「ペンライトを振る」動作がプログラミングされていないため、エラーが発生するのである。縦に振ろうが横に振ろうがどっちだって良いじゃないかと今となってみれば思うのだが、エラーの結果自分は「え? え?」と混乱しながら眼下のペンライトの動きを確認していた。横だった。

そんな中で催されたゲーム実況。一つ目はカードゲームの「ナンジャモンジャ」で、単純明快で面白かった。ポップな化け物が描かれたカードをめくり、出た化け物に名前をつける。そして新しいカードをめくったときに既に名前をつけられた化け物が出た場合は、その名前を叫び、一番早かった人がカードを取得できる。カードの枚数が一番多い人が勝ち、というルールだ。これ、自分で作ることも出来そうだしやってみたい。

そうして名づけられた名前は「ライオン丸」「みるからに馬鹿」「うちのおかん」「バブルボンバー」「すね毛がすごい」「小さい方が本体」「バイバイ」などなど。あとうろ覚えなところで「キューティーピンキー」か「プリティーピンキー」、「ブルーサウザンドなんちゃら」「足長男」「もじゃお」と、黄緑色の化け物には白色要素が無いのに「ホワイト」が名前に含められていた。

このゲームは以前にもプレイしたことがあるようで、隣の席の男性がちょくちょくと改名前の名前を呟いていた。

次のゲームはビデオゲームで、M.S.S. Projectがテーマのゲームのようである。詳細は知らないが、小説とコラボしていたことを考えればゲームとのコラボも不思議ではない、と納得しつつステージを観ていると、きっくんに何かを囁かれたあろまほっとが口に含んだ水を勢いよくぶはあと吐き出してびっくりした。わざとやったようだが、何だ? 何か元ネタがあるのか? 衣装びっちゃびちゃだが良いのか???

タオルで拭くこともなくプレイを開始するあたりが潔い。ちなみにコントローラーも水で濡れていたようだ。すごい。勢いが。

ゲームは固定された画面の中で、M.S.S. Projectのメンバーを模したキャラクターが殴り合いをしつつポイント集めをし、ポイントが多い人が勝ち、といった内容だった。何回死んでも良いらしく、死ぬたびにキャラクターの肉片のようなものが画面外から四散されるが、次の瞬間には蘇って殴り合いを再開していた。

ゲームが終わったらメンバーはステージから退場。幕間に流される映像のテーマは「武道館のファンタジー」。なんと今回、eoheoh、FB777、あろまほっとの三人がネタ被りをし、三人とも頭部が武道館の怪人ないしはロボットを描いていた。そんな中で「ブドウ●カーン」という、頭部がブドウで逆日の丸カラーの怪人を描いたきっくんは一線を画していて見事だった。

さて、映像が終わりステージがしんと静まれば……ステージの前方と後方を区切る壁が門を開くように動き、現れるサポートミュージシャン。そして何とステージ中央、何も無い床からKIKKUN-MK-IIがせり上がり、登場する演出が! おおおおお! これは格好良い!

興奮しつつ、これは黄色にせねば! とペンライトを操作するも不慣れゆえうまく動かせない。そしてわちゃわちゃしていたらいつの間にか全員ステージに現れていた。振り回すべきペンライトに振り回されてどうするのだ、自分。

ちなみにペンライトの操作に慣れたのは本編後半に差し掛かった頃だった。そんなこともあり、曲順の記憶はあやふやであるがご容赦を。

一曲目は「Over Road」で、ソリッドなギターが格好良くも気持ち良い。そして二曲目はお約束の「踊れ!」のシャウトとともに始まる「ENMA DANCE」で、大人気「ボーダーランズのテーマ」へと続く。

「ボーダーランズのテーマ」ではステージの上手と下手に設置された櫓のようなものにあろまほっととeoheohがそれぞれ乗り、人力で押される櫓はアリーナ席に作られた通路を進み、大興奮の客席。二人は水蒸気を噴射する銃を構えそれを噴射していて、その様子が何かに似ていると思ったがすぐにわかった。除草剤を撒く仕草だ!

しかし撒かれるのは除草剤ではなく水蒸気。良いなーあれ、あの席の人嬉しかろうなぁ。通路の真ん中では櫓と櫓がくっつき、あろまほっととeoheohは柵を乗り越え乗り換える。ここでまたわーっと歓声が起こり、櫓はゆるゆると元来た道へと戻っていく。黒いジャンパーを着て真面目に櫓を押す人と周囲の空気の対比も面白かった。

四曲目ではちょっと珍しいことが。照明がワントーン暗くなり、サポートベーシストにスポットライトがあたる。一、二、と数を数えるように奏でられるベースソロ、そしてスポットライトはその隣のドラマーを照らし、激しいドラミングが終わるや否や、パッと灯りがついて始まったのは「幾四音-Ixion-」! このアレンジは面白い! 無機質なイントロから始まるイメージが強いだけに意外性があって楽しかった。また、この曲のときにだけ、ペンライトをピンク色に変える人がちらほらいるのも印象的だった。「幾四音-Ixion-」のイメージの由来する何かがあるのか、それともサポートミュージシャンに向けたものなのか。わからないが綺麗だった。

そして今まで思い思いの色で振られていたペンライトが一色に染まる瞬間! 「THE BLUE」だ! この一体感は気持ち良い。今回初めて二階席でM.S.S. Projectのライブを観たので、これまでペンライトによる絶景は後方を振り返らないと見られなかったが、実際目にするとすごい。オーケンが「大槻ケンヂと絶望少女達」の企画でアニメロサマーフェスティバルに出たとき、サイリウムの海の美しい景色を筋肉少女帯のメンバーとファンにも見せたいと思ったそうで、数年後筋肉少女帯でのアニサマ出演が叶い、それを実現できたとき喜んでいた話を思い出した。これか。この景色か。

初音ミクによる現実味のない早口の歌唱が非現実感を盛り上げて尚一層心地良い。暗い海の底から明るい光が差し込む水面を見上げているようだった。

非現実感を味わったあとはFB777が大活躍の「M.S.S.PiruPiruTUNE」! 別の曲でも思ったが、歌、上達してるよなぁ……。初めて観たライブにあった初々しさが徐々に削ぎ落とされて、自信を持って楽しく歌っているように見えて、それがまた素敵なのだ。アンコールの新曲メドレーの「WAKASAGI」でもそうだったが、あらゆるものから解放された歌のおにいさんのような清清しさがある。のびのび歌っていて気持ち良さそうだ。

ゾンビ曲「Phew!」ではあろまほっととeoheohが前回と同様にストーリーを演じるパフォーマンスを披露。狩りのシーンであろまほっとは普通に狩りをしていたが、eoheohはきっくんやベーシストに矢を放つ仕草をし、きっくんは倒れ、eoheohはその肉を喰らっていた。怖い。

この曲のキーボードソロのとき、キーボーディストの周りにメンバーが集まってその指先を眺めているシーンもあって、それが微笑ましかった。あのあたりの音色美しいよなぁ。ゾンビっぽくないよなぁ……。

ちょっと記憶が曖昧なのだが、「KIKKUNのテーマ」のときだったかな? キーボーディストがキーボードを弾きながら楽しそうに拳を振り上げていた姿が印象に残っている。バンドによってサポートミュージシャンの役割の度合いは違うが、自分はこんな風に、ステージにいる皆が楽しそうにしているのを見るのが好きなので何だか嬉しくなってしまった。

「KIKKUNのテーマ」は言うまでもなく盛り上がった。始まる気配がした途端ポツポツとペンライトの色が黄色に変わっていき、あっという間に黄色に塗り上げられる! そんな中でちょこちょこと黄色以外のカラーを固持する人もいて、徹底したこだわりを感じつつ、ふと、自分のペンライトが何色なのかわからない人もいるかもしれない、とも思った。

と言うのは昨日、日記に色覚異常を持つ友人の話を書いたばかりゆえの連想もある。ペンライトのボタンは三つで、「電源」と「色の確定」を指示する四角のボタンと、その左右に色を順繰りに変化させる三角のボタンがついているだけで、色の名称は表示されないのだ。色は全部で十二種類で、濃淡により見分けがつきにくいものもあってややこしい。色の見分けができなくても、今何色が表示されているかわかるペンライトがあったら良いな、と思った。

そして思うのは、この美しい青や黄色の景色もかの友人には別の景色に見えるだろうと言うことで。ライブの帰り道、今まで友人から聞いた話をもとにその景色を何とはなしに想像したのであった。

閑話休題。「KIKKUNのテーマ」が始まる前に、きっくんよりコールの練習タイムが設けられる。その間ずっとリズムを刻み続けるドラマーの仕事たるや! 日常で大声で叫ぶ機会はなかなか無いので、「きっくん! きっくん!」と大声を出してペンライトを振るのは実に楽しい。また、きっくんだけでなくメンバーのコールも行った。「きくえおきくえお!」「あろえびあろえび!」と楽しく叫びつつ、カップリング名称みたいだな、と思った。

特に格好良いと思ったのは「Glory Soul」! 舞台音楽のような曲調で、まるで今にもミュージカルが始まりそうで心が躍る。M.S.S. Projectのメンバー全員が上手と下手に分かれて先ほどの櫓に乗り、KIKKUN-MK-IIとFB777は楽器を担ぎ、あろまほっととeoheohは剣を持って殺陣を演じるパフォーマンス! おお、前回にはない動きも取り入れられている!

しかしこの櫓結構揺れるらしく、酔いそうになったとステージに戻ったKIKKUN-MK-IIは語っていた。

本編最後は「M.S.S.Phantasia」で締め。メンバーがステージからいなくなり、客席から湧き起こるアンコール。これがすごかった。ちゃんと「アンコール!」と叫んでいるのだ。と言うのも自分が行くライブでは「アンコール!」というコールはほとんど無く、手拍子だけでアンコールを要望することが多いのである。こんなアンコールらしいアンコールを聞いたのは久しぶりのような、もしかしたら初めてかもしれないような……。

そうして始まったアンコール一曲目は予想外! 新曲メドレーだった。KIKKUN-MK-IIから始まり、あろまほっとにバトンタッチし、eohoehへと繋がってそれぞれがソロを歌う! あろまほっとはよく通る声だが歌いなれていない様子が感じられ初々しく、eoheohは密閉空間から出しているとは思えない歌声が響いてきてびっくりした。「息もできないくらい」と高らかに歌ったときは「そりゃなあ」と思ったが、息ができているからすごい。

メドレーラストはFB777の「WAKASAGI」。さきにも書いたがすごく気持ち良さそうだった。

最後の最後は明るく楽しく「We are MSSP!」でおしまい。射出された色とりどりのテープが目線の高さまで飛び上がり、一度中空でわだかまった後、キラキラと光を反射させながら下りていく色のかたまりの美しさったら。下から見上げるのも良いが、こうして同じ高さから見下ろすのも美しい。

終演後もしばらくメンバーはステージに残ってくれた。恐らく一番武道館への憧れが強かったであろうきっくんは特にステージを去りがたいのか、ここでも、またその前の場面でも一つ一つ吐き出すようにしながら言葉を語っていた。そこには照れ隠しも混ざりつつ、隠し切れない喜びも滲み出ていて、故に言葉がまとまらず、まとまらない欠片がそのままにポロポロと漏れ出しているようだった。

外に出れば日はすっかり落ちていて、時計を見れば二十一時前。開演時間を思うと、何と長くこの空間に滞在したのだろう! 興奮冷めやらぬ人々がそこかしこで輪を作り感想を語り合う中、祭りの余韻を感じつつ九段下駅へと向かう。あぁ、楽しかった。

しかし最後の最後。うっかり道を間違えて反対方向へと進み、街灯が少なくやけに暗い車道の脇をほてほてと歩いていたら目の前にぼうと浮かぶ般若の面! ぎょっとして目を見開くとリュックサックにキーホールダーの如く般若の面をぶら下げた女性が闇の中で立ち止まり、携帯電話をいじっていた。びっくりした。怖かった。いつか都市伝説が生まれるかもしれない。