未分類4杯, インストアイベント, 橘高文彦, 非日常

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押入れに仕舞いっぱなしで、滅多に使われないオリンパスのごついデジカメ。充電のためパソコンにコードを繋げば過去に撮影した写真が表示され、履歴を見るに軽く数年は使っていない。

そんな使用頻度の低いデジカメをわざわざ取り出した理由は一つ。だってこんな機会、滅多に無いから。

デジカメを活用した帰り道、夢のようなふわふわとした気持ちを噛み締めながら、それでいてずっと脳は興奮していて、口元が緩むのを抑えらず、ただひたすら「うわあ、うわあ、うわあ、うわあ!」と心の中で唱え続けていた。うわあ!

撮ってもらったよ! 橘高さんと! ツーショット写真を! 橘高さんと!

およそ十年前に筋肉少女帯を知ったことで「音楽」というものにはまった自分にとって、橘高さんのギターこそが己にとってのギターの音色である。橘高さんのギターが全ての基本になっている。故に自分が知る中で一番心地良く一番格好良い。その音色を奏でる橘高さんと。橘高さんと写真を撮れるなんて!

夢のようだった。しかし夢ではなかった。夢ではないかと確認するたびに並んだ写真が現実であることを教えてくれる。うわあ。うわあ。うわあ。

タワーレコード新宿店七階のイベントスペースに集う人々の前に颯爽と現れた橘高さんは、金色の髪をふわっふわに飾り立て、レースの華やかな黒のステージ衣装を身にまとい、爪は真っ黒でメイクもバッチリ。インストアイベントでは黒い帽子にサングラスに黒の私服というスタイルが常であるにも関わらず、この撮影会のために! 時間をかけて「橘高文彦」に変身してくださったのである! このサービス精神が嬉しい!

ちなみに今日のイベントは昼の十二時からだったので、橘高さんは朝の五時から用意をしなければならなかったそうである。「次やるときにはもっと遅い時間にやりましょうね」と言っていた。

今回、橘高さんのデビュー三十周年記念ライブ「AROUGE」「Fumihiko Kitsutaka’s Euphoria」「X.Y.Z.→A」「筋肉少女帯」の四公演が、それぞれ一枚ずつのブルーレイディスクとなって発売された。当初橘高さんはこの四枚をボックスにすることを考えていたらしい。ただ、子供の頃に欲しいファミコンのソフトが別のソフトとセットになって販売されてがっかりした経験があるので、せっかくのアニバーサリーでファンにそんな思いをさせるのは……ということで別々の販売にしたそうである。「ただ、四枚買ってくれた人だけの特典も用意しているからね!」と。ちなみに特典の内容はフォトブックと、五種類のピックセット。近くに立っていた男性が「ピック……良いなすごいな欲しい……」とつぶやいていた。

トークでは映像の内容にも触れていた。今回ブルーレイで発売し、クリアな音とクリアな映像でお届けしたが、「そこまでクリアである必要があるか……?」ということで、次回からはアートな感じの映像になるかもしれない、と冗談めかして語っていた。もしかしたら今回のディスクがクリアな映像を楽しめる最後の一枚になるかもしれないそうだ。

また、ブルーレイは橘高さんの記念ライブとして開催されたものを収録したものだが、同時にそれぞれのバンドの最新作であり、どれも充実した内容になっているとのこと。「ここにいない大槻さんのファンにも勧めといてね」と笑いながら話す橘高さんは実にキュートであった。

トークが終わったら撮影会に。ステージとオーディエンスの間に仕切りが作られ、順番に並んで一人ずつ入っていき、仕切りの奥で撮影が行われる。恐らく撮影の際に他者が写り込まないよう配慮してのことだろうが、写真に慣れていない人間としては人の目が遮断されるのは実にありがたかった。

並びながらカメラをチェックしたり、何を言おうか考えたりと、ドキドキしながら順番を待つ。そうしてついに自分の番がやってきて、カメラをスタッフのお姉さんに預けると、すぐそばに橘高さんが! 差し出される手を緊張しながら握り、うわあ橘高さん橘高さん、格好良いなぁ……! 間近で見るとすごい迫力だなぁ……! と感動する。

さて、ついに撮影を……というところで橘高さんからポーズの希望を聞かれた。ポーズ。何も考えていなかった。むしろリクエストが出来るなんて夢にも思っていなかった。思わず動揺して何も答えられない。すると橘高さん、「じゃあ、はい!」と言って、ポン、と優しく肩に手を置いてくれた。

肩に手!!

撮影後、お礼を言ってその場を離れ、数歩歩いて立ち止まり、カメラをチェックすると自分の真横に橘高さん。いつも見上げるステージの上にいる橘高さんが、自分の真横に。あの音色を奏でる指が自分の肩に。うわあ。うわあ。うわあ。

撮影会から既に数時間経っているが、未だ脳がふわふわしている。余韻に浸っている。一生の思い出である。

あぁ、嬉しい。



未分類橘高文彦, 非日常

橘高文彦とは筋肉少女帯のリードギタリスト。そして筋肉少女帯とは己にとって音楽にはまるきっかけとなったバンドであり、これまでの人生の中で一番聴いた音楽である。つまり、自分にとってのギターの音色とはこれ即ち橘高さんの音ということ。その後にも範囲は狭いもののいろいろな音楽を聴いたが、やはりギターと聞いて連想するのはあのギュゥ~ンと唸り、駆け上るような音色である。

そんな橘高さんのデビュー二十五周年を祝うめでたいライブ、行かないわけにはいかなかろう。しかも今回はオーケンもちゃんと参加するのである。二十周年の時はまだ、筋少が活動凍結中、仲直り前で、オーケンは参加予定だったもののドタキャンしてしまったのだ。しかし今度はその心配が無い。ははははは。その点においても嬉しいなぁ、めでたいなぁ。うきうきしながらライブへ出かけた。

前日、久し振りにサークル仲間と集まって馬鹿騒ぎをし、そのまま友人宅で一泊して当日を迎えたのでライブ前に銭湯に行き、ひとっ風呂浴びてからリキッドルームへ向かった。銭湯で頭に塗りたくったワックスを落とし、さっぱりした頭にまたワックスを塗りたくろうとする己を見た友人達から「何の意味があるのか」「そのままで良いじゃないか」なる意味のことを言われたが、どうせライブが始まったらボッサボサの汗みどろになるってのはわかっていたって、最初っから湯上がりそのまんまは嫌だよ、己は。

して、到着リキッドルーム。ゆっくり風呂に浸かっていたせいか少々ギリギリになってしまったが、モスコミュールを飲むくらいの余裕は持てた。さて、開場後はどこへ向かおうかな。やはり橘高さんのお祭りだから上手かな。ヘドバンはやり慣れていないため得意じゃないが頑張ってみようじゃないか。と、決めて、実際上手に立ったのだが、ここに来るまでちょっとしたトラブルがあった。

入場はファンクラブのFC番、A番、B番という順番で、己はAの半ばよりちょい手前、くらいの番号だったのだが、いつまで経っても己の番が来ないのである。いや、己の番というよりA番が。いや、正確に言えばFC五十五番より先が。何故か知らぬがどうしたわけか、ずーっとFC五十五番で止まっているのである。

「FC五十五番までの方、お入りくださーい」
「FC五十五番までの方、お入りくださーい」
「FC五十五番までの方、お入りくださーい」

FC五十五番に何が起こっているのか。この人ごみの先、整理番号を呼ばう人の身に何が起こっているのか。それも五分や十分じゃない。結構な時間FC五十五番様コールが続いていた。「聞こえませーん!」「もっと大きな声でー!」と横の人が叫ぶ。その反対側ではベテランと思われるスタッフがFC五十五番を呼ぶ人に指示を出している。確か、この時点で開場から三十分近く経っていたのでは無かろうか。我々は開演前に中に入ることは出来るのだろうか。リキッドルームが屋内では無く、屋外で待つタイプのライブハウスであったら寒さのために暴動が起きていたかもしれない。いや、実際結構、空気がピリピリしていて、恐ろしかったよ。なかなか。

ついにFC六十番が呼ばれたときには歓声と拍手が起こり、それからは今までの様子が嘘であったかのように、スルスルと淀みなく入場が進んでいった。中では橘高さんがプロデュースしたバンド、Pan-d-raがライブを行っている。開演前のお楽しみ、ということらしい。外見が全員橘高さんのバンドのようであって驚いた。おおおおお。何やらわからん迫力があるな…。

Pan-d-raのお次はこれまた橘高さんプロデュースのバンドZig+Zagの演奏だ。開演前にこういったサービスがあると待ち時間も楽しめて良いなぁ。いつも一人で行くから時間潰しが大変なんだよね。Zig+Zagは眼鏡をかけたまま勢いよくヘドバンしていたことが印象的だった。あと小物というか、アイテムがやたらと多い様子であったな。

さて、前座も終わり、暗闇の中で開演を待ち続け、ついに始まった橘高文彦二十五周年記念ライブ! しかし、だ! 己は筋肉少女帯は全部聴いているが、X.Y.Z.→Aは「Learn from Yesterday! Live for Today! Hope for Tomorrow!」だけ。他は「NEVER ENDING STORY」しか聴いておらず、今回発売されたベストも終演後の物販で買うつもりであり、実際物販で購入したため予習が出来ていないため、知らない曲が盛りだくさんだったのである。つまりAROUGEとEuphoriaは完全未聴の状態でライブに臨んだのだ。

そんなわけでセットリストもきちんと覚えられたのは筋少だけである。一応下に記録しておこうか。

さらば桃子
アンクレット
再殺部隊
小さな恋のメロディ
イワンのばか

で、だ。これを言わせて欲しい。橘高さんのライブの感想で初っ端これかよ、と思われそうだが、もう、びっくりしたのが! 感動したのが! 「再殺部隊」の語りを、オーケンがきちんと語ってくれたんだよ! あの! 最近語りたがらないオーケンが!!

すげーよオーケンやれば出来るじゃん! 実際、橘高さんも「やれば出来る子なんだよ」とオーケンを指して言っていたが、いやーもう。いやーもう。しばらくこの感動の余韻に浸りっ放しだったね。オーケンすごいじゃないかああああ!!

まさか再殺部隊を生で、しかも語り付きで聴ける日が来ようとは。橘高さんが選曲したからこその曲目である。いやぁ、すごかったなぁ。特に己がいた上手側は、さらば桃子の開始から爆発したようにヘドバンの嵐で、普段の筋少ライブよりも狂乱しているように感じられた。熱暴走を起こしているというか。すごかったなぁ。

もしかしたらあの語りは、オーケンなりに橘高さんを祝おうとした気持ちなのかもしれない。それで頑張ってくれたのかなぁ、なんてことを思ったりもする。特に、二十周年ではドタキャンで不参加だったわけであるし、オーケンも今回同じステージに立ってお祝いすることが出来たことを嬉しく思っていたのかもしれない。なかなか素直に「おめでとう」と言わず、「橘高文彦二十五周年記念ライブに見せかけたファンキー末吉殺害ライブ」とちゃかしたりしていたが、ずーっとにやにやにやにやしていたんだよ、オーケンが。照れ笑いのような照れ隠しのような。最初は何でこんなににやにやしてるのだろうと思ったが、むず痒かったのかもしれないなぁ。

そういえば、てっきり散々ネタにするかと思いきや、二十周年でオーケンがドタキャンした話を橘高さんが持ち出さなかったのが意外だったな。いや、一回くらいは言っただろうか。記憶が定かでは無いが、ほとんどネタにされていなかったのは覚えている。どうしてだろう、と思ったが、これもまた、持ち出すと照れくさくなるからかもしれない、と思った。知らないけどね。

橘高さんメインのライブということもあり、お色直しを除いては橘高さんが出ずっぱりで、こんなに喋る橘高さんを見たのは生まれて初めてだった。基本、トークの中心は橘高さんで、これは筋少では見られない光景だ。ギターに対する想いや人生観、自身のトラウマについて語る姿は、とても真面目で、ギターに対して、人生に対して、ファンに対して、真摯に向き合っている人なのだな、と感じさせらた。さらに、ライブバーX.Y.Z.→Aで行われた太田さんセッションのときのMCで、一緒に飲み歩いていると橘高は金髪だからよく因縁をつけられて、それで因縁をつけてきた相手と喧嘩をすることはあったけど、自分のために喧嘩をしたことはない、と太田さんが語っていたのを思い出した。あの派手な外見で軽んじられたり、見くびられたり、誤解を受けたりしたことは何度と無くあったのだろう。筋少自伝でも、AROUGEはアイドルメタルということで風当たりが強かったと書かれていた。ずっとそういった偏見の目と戦いつつ、今に至るまで自己のスタイルを貫き通してきた人なのだなぁ。格好良い。

AROUGEのベースとドラムスは橘高さん曰く、「今はカタギの人」とのこと。既に別の世界で生きている人も、この日は橘高さんのために駆けつけてきてくれたのだと想うと感慨深い。同窓会のようなどこか気恥ずかしく、そして温かい空気は次のEuphoriaにも、さらにはX.Y.Z.→A、筋肉少女帯にも引き継がれて、最後の最後の大合唱では紅白歌合戦のフィナーレといっちゃ失礼だが、十月後半であるにも関わらずこのまま年を越せてしまいそうなめでたさと温かさでいっぱいになっていた。橘高さんが「ドリームキャッスルの住人」とステージに集ったメンバー全員を指して言っていたが、まさに、親戚一同が大終結してのパーティーのような状態であった。

五年後も、同じような、もしくはそれ以上の温かい、和やかなパーティーが見られたら良いなぁ、という思いとは似つかない、汗だく汗まみれふらふらの状態で、半ば朦朧としながら輝くステージを眺めていた。このライブは後日DVDになるそうだ。位置的に映っていそうで恐ろしい。ははは。

橘高さん、二十五周年おめでとうございます。同時に、ありがとうございます。