プロ野郎スピリッツ2010 (2010年10月16日)




夢心地と言うか、現実感が無いと言うか、とにかく、ふわふわしている。先程、水戸華之介&3-10Chainと穴場の対バンライブ、「プロ野郎スピリッツ2010」に行ってきた。それからずっと放心中だ。そんなわけで、放心している理由と共にライブの感想をここに書き記す。

ライブ会場は「The voodoo lounge」。キャパは二百ほどの小さなところだ。と、いうことは以前下北沢のクラブ251に行ったときのように、スタンディングスペースに荷物を持ち込んで入る形式なのかもしれないな、と思い、手ぶらで出かけることにした。財布や携帯電話、ウォークマン、ハンカチの類は腰のシザーバッグへ。これで何とかなるだろう。

今回、努力が実ってかなり良い整理番号を手に入れることが出来たので、最前、もしくは最前近辺を狙えるかもしれないな、と期待してライブハウスに向かった。五百円玉とチケットを握り締め、一人ずつ順番通りに中に入る。おお、結構良い位置だ。二列目の中央下手寄りに立つことが出来た。しかし、だ。

お客が荷物を中に持ち込むことは予想していたが、端に寄せるだけでなく、そのまま足元に置いていることには驚いた。それやっちゃったらライブ始まってから邪魔になるんじゃないかなぁ。踏まれても文句言えんと思うけどなぁ。良いのかなぁ。

そんでもって案の定、と言うほどでは無いが、この足元に置かれた荷物がライブ後半で思わぬ作用をもたらしたのであった。

開場から三十分で開演なら、待ち時間が少ないから楽で良いよなぁ、と思いつつ、暇つぶしに周囲を観察してみると、圧倒的に女性客が多い。九十五パーセントは女性のようだ。水戸さんファンに女性が多いのは福岡でも変わらないらしい。年齢層は三十代四十代が多そうだ。自分より年下らしき人は見当たらない。ふむ。なかなか珍しい状況だ。

ステージの前には白いスクリーンが下ろされている。緞帳の代わりだろうか。聞いた話によると穴場が最初で、3-10Chainは後らしい。するとこのスクリーンは穴場の演出なのかもしれないのか。

さて、ついに。会場の照明が落とされてあたりが薄ぼんやりとした闇に包まれる。来た来た来た来た! 高まる期待感を胸に前方を見据えれば、映画が始まった。えっ。

海外の映画に別物の字幕をくっつけたもの、らしく、会場後方で笑いが起こっている。何故後方か。前方は近すぎて映像がよく見えないからである。言うまでもなく己の位置からではどんな内容の代物だったのか把握することは出来なかったが、前説の機能を持つ映像らしいということはわかった。映像は終了し、スクリーンが上り始める。さぁ、いよいよだ。

そこに現れたのは「穴場」の二人、杉本恭一と上田健司だ! おお! 杉本さんはアコギ。上田さんが持つのは不可思議な形をしたチェロのような電子楽器だ。弦は四本で、尻を床に置いて立てて使用している。支えがあったか否かは忘れたが誰も触れていなくてもきちんと自立していた。時には指の腹で弦を叩くように弾いていたり、バイオリンに使うような弓で弦を弾いて音を奏でたり、ラジカセのように音を流して再生機の役割を果たしたりと多機能な代物で、あんまりそれが面白いために、気付けば上田さんばかりをじーっと観ていた。

穴場のお二人はスーツ姿。曲はアコースティックでご機嫌な感じだ。ぴょんぴょん飛び跳ねるのではなく、体を揺らして楽しむ感じ、と言ったら通じるだろうか。と言いつつ、一曲だけ杉本さんがエレキギターに持ち替えて突然お客がノリノリになったりした。この変化が面白い。

MCでは、「穴場」を「ANABA」と表記したら「ABBA」のようだった、と言っていたのだが、ABBAへの反応が薄く、「あれ、思ったより皆若いの?」とABBAの説明を追加してくれたりした。ABBAは字面を見たことだけならあるが、どういう代物なのかさっぱり知らなかったので助かった。そうかー離婚したのかー。

穴場のラスト手前の曲にアイヌ語が混ぜられているものがあり、アイヌ語好きな自分は一人勝手に興奮した。上田さんが「途中途中に意味のわからない言葉が入るだろうけど」と言っていたけど、わかったよ! カムイとかキムンとか! あとレラって言ってたかな? いやーにこにこしちゃったなぁ。

穴場が終了。お次は水戸華之介&3-10Chain。3-10Chainを見るのは二回目か。アンジーの曲も以前よりは手に入れたし、今回はセットリストも全曲わかるかもしれないな! ……と思ったのだが、未だ知らない曲が数曲あった。残念! そのうえさらに。記憶が一部滅茶苦茶になってしまっているが、まぁ一応書き記そう。

ロケットが飛ぶだろう
ハーイここまで

愛に愛はあるのかい?
100万$よりもっとの夜景
君と瓶の中

犬と夕暮れ
銀の腕時計
生きる

すべての若き糞溜野郎ども
サイクリング
(不明)
沈没船
リックサック
天井裏より愛をこめて

~アンコール~

(だくてん? ぎゃくてん?)
アストロボーイ・アストロガール

前半では「愛に愛はあるのかい?」と「100万$よりもっとの夜景」の順番が怪しい。後半はもう一曲ほどどこかに知らない曲があったような気もするのだがわからない。それというのもだ。それというのもだ。放心してしまったその理由が! 理由がだな!

アンコールの! アストロボーイ・アストロガールで! 突然ものすごい押しがやって来て! 二列目にいたのが最前に流されて! しかも柵が無い上にステージが低いからステージ上に自分の上半身が乗り出してしまって! その真横で内田さんが! 演奏を! していたのだよ!!

この興奮をわかってくれるか。もうわけがわからなくなった。

あのね。「君と瓶の中」で内田さんと澄田さんがイントロの「バンッ!」って音に合わせてギターとベースを振るう様子が水戸さんを中心とした線対称になっていて、それがまるで刀で斬るような仕草だったのが格好良かったとか、同じく君と瓶の中で、水戸さんの動きがかなりセクシャルだったとか、「銀の腕時計」で拳を握り締め、「生きる」で大喜びをして胸をぎゅうぎゅう締め付けられて、大好きな「糞溜野郎」で感無量で、まさかの「サイクリング」に興奮しつつもオーケンボーカルを恋しく思ったり、水戸さんと拳を合わせたり! 水戸さんが口に含んで霧状に噴射した水を頭から被ったり! いろいろ楽しいことが山ほどあったのに、内田さんが横取り四十万。

だって、おい。踏ん張ろうにも件の荷物、足元に置かれた他人様の荷物が邪魔をして足をうまく床に配置させることが出来ず、無論そんなことは構わず人は背後からぎゅんぎゅんに押してきて、ステージの角に当たった太腿が痛み、腕で体を支えようにも上半身はどうしてもステージ上に乗り出してしまって、その真横で演奏する内田さんの足が普通に体に触れたりするのだよ。その前、まだ立っていられたときに、ステージのギリギリまで出てきて煽る内田さんに手を突き出しつつ、触れそうな距離だが触れて良いのだろうか、周囲のお客は誰も手を突き出していないしなぁ、とどうしたものか躊躇していたら、ひょいっとネックを握る左手を傾けて自分の指先に触れさせてくれて頭の中で何かが爆発した直後に、これ。しかも初めての最前列でただでさえ興奮している。曲も大好きなアストロボーイ・アストロガールだし。もう。わけがわからない。

どこで挟まれたか定かでは無いが、水戸さんの「学園天国ヘイヘイコール」がきちんとオリジナルの音程のままで、ついオーケンに慣れた自分はオーケンの音程に合わせてコールしてしまいそうになって慌てたり、沈没船にうっとりしたり、後半杉本さんが合流してからは特に、3-10Chainのライブというよりもっと別の何かのライブのようだ、と思ったり、したのだが内田さんショックがでかくて未だ放心状態である。あまりに混乱してしまったためにうっかりドリンクも物販も忘れて帰りそうになったほどである。落ち着け。ちょっと落ち着け。自分。

明日、また熊本で穴場と3-10Chainのライブを観てくる。明日はもう少し冷静に観られるだろうか。