未分類ウタノコリ, 水戸華之介, 非日常

水戸さんの歌声は迸るエネルギーが具現化したものだと思う。今日この日も、朗々と響く太く美しい歌声を全身に浴びて、頭から、胸から、爪先から、漲るエネルギーを吸収する心地を得た。

それはとても有難く、気持ちの良い時間だった。

水戸さんのアコースティックライブはいつもパワフルで、これがアコースティックライブなのかと疑うほどにいつも水戸さんは大汗を流しながら熱気を纏い、全力で歌っている。楽器はピアノとパーカッション。腰痛により急遽参加できなくなった澄ちゃんのギターが聴けないことは寂しいが、代打で参加してくれたパーカッションのナカジマノブさんの存在感は一入だった。澄ちゃんの不在を残念に思いつつ、そのうえで何一つ損をしたとは思わない、むしろ貴重なものが聴けて嬉しいと思える素晴らしいライブだった。

五月に発売されたアルバム「ウタノコリ」に収録されている楽曲を中心に、アンジーからソロ、3-10Chainなどの幅広い楽曲が演奏された。一曲目で深く息を吸い込む水戸さんを見て、もしやと思えば予想的中。天井から壁までビリビリと声が伝うような、静かな迫力の中始まったのは「マグマの人よ」。この歌の迫力に引き込まれながら改めて思う。水戸さんの歌声の素晴らしさと、上手さと、エネルギーをこの身に浴びられる嬉しさを。そしてこの世の多くの人が、この歌声の威力を知らずに生きていることを惜しいと思う感情を。

強制しようとは思わない。殊更に布教しようとも思わない。ただただ、惜しいと思う。この歌声の響きが新大久保の労音大久保会館に留まっていることが。この歌声の威力が届かない人の耳があることが。

故にありがたいと思う。出会えるきっかけを得られたことに。同時に寂しいと思う。もっと届けば良いのにと。

扇さんの煌びやかなピアノの調べとノブさんによる細やかなパーカッション。ポコポコと響くコンガの音に、涼やかなタンバリンのリズム、耳に優しく切ない鈴の音。あのパワフルで元気な、人間椅子とのほほん学校での姿しか知らない己から見れば、とても繊細で優しくて、楽曲に合う音を慎重に選んで鳴らしてくれる様子が職人の手仕事のようにやわらかくて、この音を聴けることが嬉しくてならなかった。

ノブさんがここに来てくれたのは本当に運が良かったそうだ。普段が忙しいのに、ちょうどぽっかり空いていたという。澄ちゃんの腰痛による欠席が決まってから、水戸さんは急いであらゆる人々に連絡をとったそうだ。扇さんと二人でこなすことも出来るが、もともとそういう編成ならまだしも既に三人での演奏と発表してしまった後では観客から可哀想にと同情され、行き場のない母性が降り注がれるのではなかろうかと危惧したと言う。母性の降り注ぐ中でのライブは確かにまぁ、やりにくかろう。

そんな中での救世主の一人がノブさんである。ノブさんは連絡をもらったとき、用件を聞けなかったため水戸さんと趣味を共にするボードゲーム合宿かな、他には誰が来るのかなとうきうきしていたそうだ。あぁ、そんな中でライブに参加してくれたこの事実、本当にありがたくて仕方がない。

ノブさんの演奏の中で、特に印象に残っていたのは「天国ホテル」だ。シャンシャンと涼やかに鈴の音を鳴らしてくれて、それが実に美しく、切なかった。ツアーで焼肉定食を食べ、牛串を食べ、さらに夜に焼肉を食べ、水戸さんや扇さんがそろそろ収束に向かう中でさらにご飯をおかわりし、水戸さんに一日で牛一頭食べたと言われる人物とは思えないような、穏やかな手つきで楽器を鳴らしてくれた。

あの楽器に向かう目つきも覚えている。水戸さんの歌声と扇さんのピアノに調和する音を奏でる指先を操るその目は、ムードメーカーのアニキ像とはまた違った、涼やかな色をしていた。
ありがとう、ノブさん。

嬉しかったのは新曲の「浅い傷」が聴けたこと。デビュー三十周年を彩る楽曲にしてはネガティブな印象を与えるかもしれない……と水戸さんは仰るが、己はそうは思わない。転がり続けながら活動を続ける水戸さんが、そうしてずっと歌声を響かせてくれる水戸さんが、己は大好きだ。本当に死ぬほど、大好きなんだ。

嬉しかったよ。「センチメンタル・ストリート」が聴けたことが。嬉しかったよ。この曲で客席に下りてきた水戸さんと、拳をコツンとぶつけられたことが。そんな、水戸さんにとっては小さなことかもしれないことで、勇気とエネルギーを得られる人間がいるんだよ、と伝えたい。

澄ちゃんの欠席に伴い、各所へゲスト出演を依頼しセットリストを組み直すどさくさの中で紛れ込んだ一曲が「めぐり逢えたら」。曰く、扇さんが好きだからと紛れ込ませたらしい。歌った後に水戸さんは、この曲は五分ほどで書いた曲で、自分について省みることなくただただ都合の良いことを言っている歌詞だ、と分析していたのがおかしかった。

そのうえで、この曲を聴けたことが嬉しいし、紛れ込ませてくれた扇さんに感謝である。

今回唯一のカバー「マイウェイ」を熱唱する水戸さんを観て、ついついオーケンとうっちーの仲直りを連想してしまったのだが、その歌声の威力は雑念を振り払うほどのものだった。改めて思う、水戸さんは……、歌がうまい。とても。とてつもなく。

席に座っているのがもどかしいと感じるほど。拳を振り上げ、煽られれば歌い、立ち上がりたい衝動を抑えつつひたすら水戸さんと見つめる三時間。本日は新大久保駅でトラブルがあり、駅から出られず会場へ向かえなかっただろう人もいたことを水戸さんは聞いていたという。実はと言うと会場に着いたとはいえ己も他のでもないその一人で、新大久保駅に着いたと思ったら一歩も動かない人の海がぎゅんぎゅんになっていて、しばらく待ったもののどうにもならないため山手線で隣の駅の高田馬場へ移動、そうしてタクシーに乗ろうとするもタクシー乗り場は長蛇の列で……という塩梅で、通常であれば新大久保駅から十分で着く会場に、新大久保駅から会場まで一時間もかかった。それでも間に合ったとは運が良かったと思うし、開演時間を遅れても一曲目から全て聴けたのは、言葉にはされていないながらも思いやっていただけたのではなかろうか……と思ってしまう。

最後、「偶然にも明るい方へ」を聴いて胸の前で手を握りつつ思ったことは、これからも来年もその先も、ずっと水戸さんの歌声を聴きたいということ。
あなたの歌声を知れた人生を己は幸福に思います。故に、これからもずっと堪能していきたいです。そのように、強く願って。



未分類0杯, ウタノコリ, 水戸華之介, 非日常

新大久保駅から歩いてしばらく行ったところにあるこじんまりとしたライブホール。去年も訪れたにも関わらず道に自信がなく、地図を片手に雨の中よちよちと歩いた。

赤くやわらかな椅子に腰を下ろし、ゆったりと開演を待ちながら、しばしうつらうつらと舟を漕いだ。去年の日記を読み返したところ、当時も己はこの会場でまどろんでいたらしい。夏の暑さから急激に寒くなり、ちょうど体が疲れるタイミングなのかもしれない。

会場の照明が落とされて生まれる期待感のこもったざわめきを耳にしながら瞼を開ける。ステージにぼうと光が灯り、夢から夢へと移動するかのような不思議な感覚を得た。そして程なくして現れたのはギターの澄田さん、キーボードの扇さん、そして本日の主役・ボーカルの水戸さんこと、水戸華之介である。

「猛き風にのせて」から始まり、新譜「知恵ノ輪」の一曲「イヌサルキジ」へ。「イヌイヌイヌイヌ!」「サルサルサルサル!」と拳を振り上げるのが楽しい。毎度のことながら、水戸さんのアコースティックライブはアコースティックという概念を覆す熱量が凄まじい。どんな会場であれ汗だくで跳ね、飛び、歌う水戸さんは芯からロックボーカリストなのだ。

「イヌサルキジ」は桃太郎のお供である三匹の動物に対し、良い気になっているようだがお前らなんか本当は大した存在じゃないくせに、と苦言を呈す曲である。さて、ではこの動物達に厳しい言葉を投げつけているのは誰だろう? 己は鬼ではないかと思う。桃太郎が来るまでは鬼も畜生も似たような存在だったはずなのに、桃太郎に黍団子をもらった途端、あたかも自分は立派な存在ですよ、と言わんばかりに正義面をしやがって、本当は俺らと大差ないくせに! と怒る鬼の歌ではなかろうか。

三曲目は「抱きしめる手」。「手!」とパッと手のひらを開いて腕を挙げるとき、自然と笑顔になってしまう。「ヨイヤサコラサ」の後はアンジーの「サカナ」で、明るく気楽な曲調から一転して暗い海の底のような雰囲気に。この緩急がたまらない。

しっとりどんよりしてしまった観客に、そこまで落ち込まなくてもと笑う水戸さん。そしてまたここで空気が変わる! 「腹々時計」のダッダッダーッ! という明るいイントロでわっと沸き立つ観客。何度か出し惜しみをする水戸さんと、歓声を上げるオーディエンスのやりとりを経て、熱く歌う水戸さんの声の迫力! 熱気がむんむんと伝わってくるようである。

「腹々時計」の後は「涙は空」へ。今日はあいにくの雨模様だったが、「知恵ノ輪」のジャケットのように、美しく晴れ渡った青空をイメージさせる曲が多かった。次の「ドラゴンパレード」もそうである。開いた絵本から明るい色彩が広がり、そのまま空を染め上げていくような。やさしく、軽やかで明るい歌だ。

歌詞を読めば決して底抜けに明るい内容ではない。死の近づきを感じさせる曲だ。雨雲を砂漠へ運ぶため、銀色の鱗を落としながら年老いたドラゴンが空を飛ぶ。千羽のヒバリが後を追い、若い天使達がエールを送る。このドラゴンは間もなく死ぬだろう。しかしヒバリと天使に愛されたドラゴンは砂漠に雨が降るのを見届けたらきっと満足して眠るのである。そこに悲しみはなく、あるのは充実した生の終わりだ。その温かさが感じられるからこそ、この曲は明るく軽やかなのである。

ここに来るまで気付かなかったが、己はこの「ドラゴンパレード」を今日一番、聴きたかったのかもしれない。

空つながりでもう一つ。水戸さんが小さな手帳を取り出し、じっと見つめながら人々のあだ名を読み上げていく。それはきっと小学校のクラスメイトや幼馴染のような、そんな幼いあだ名で、そんな彼らが四十代五十代の大人になり、今どんな状況であるかを端的に紹介していく。大工をしている人、教師になった人。子育てを終えた人、多重債務により自己破産をした人、リハビリ中の人、ガンで亡くなった人。そして彼らの名前を読み上げて、続く曲は「青空を見たとき」。

ここで連ねられる名前は恐らく架空の人物である。水戸さんは十五年前からこの曲を歌うときにかつて幼かった人々のあだ名を読み上げるようになったそうだ。だが十五年経ち、自分と観客が歳を重ねたことで手帳の人物の年齢が歌に合わなくなってしまった。そこで十五年ぶりに年齢と近況を更新したそうである。「また十五年経ったら書き直すかもしれないけど、その頃には(手帳の人物は)みんな死んでるかもしれない」と水戸さんは冗談を飛ばして笑っていた。今五十五歳の水戸さん、十五年後ともなれば七十歳だ。深い皺を刻み、指を舐めながらページをめくる水戸さんを観られる未来。きちんと生き残らねば、と思う。

「蝿の王様」の曲中、「可能性はゼロじゃない」に変化し、そこで澄ちゃんによるアコギによるギターソロ、扇さんによるキーボードソロ、そしてカズーで歌い踊る水戸さん!! どこかアダルトな雰囲気漂う妖しい時間の美しさ!! かーっこよかったなぁ!!

水戸さんがステージを下りて客席を練り歩くとき、扇さんもマラカスを掲げて赤いスカートを翻し、水戸さんの後について踊っていたシーンがあり、それがどうにもあでやかで格好良かった。キーボードを弾く力強さも美しい。

アンコール一曲目は、以前にも水戸さんのライブで聴いた覚えがあるものの曲名がわからないもの。「アモーレ!」と叫ぶ水戸さんのお気に入りの曲だそうで、水戸さんは今日この曲を歌いたくて歌いたくて、早くこの曲の時間になって欲しい! と願っていたそうだ。どなたか、タイトルをご存知だったら教えてほしい。

「ひそやかに熱く」は水戸さんによるストレートな応援歌だ。これも頭上に広がる青空を連想させる。水戸さんの伸びやかな歌声をこれでもかと堪能できて気持ちが良い。何度も書いていることだが、本当に水戸さんの歌声は素晴らしい。素敵だ。たまらない。

ダブルアンコール、最後の一曲は明るく「雑草ワンダーランド」。そうだ、これも青空の歌だ。夏の高い湿度、草いきれ、直撃する太陽光。アメニモマケズ、祝福せよ。あぁ、水戸さんに強烈な太陽光の、夏の日差しの祝福がありますように、と心から願う。水戸さんの歌がもっと多くの人に届いてほしい。そう願わずにはいられない。

そうそう。アンコールのときだっただろうか。澄ちゃんがハンドスピナーを得意げに回しながらステージに現れて、その様子が実にキュートだった。機材車移動をしている最中、どこかのインターチェンジか道の駅で五百円で購入したものだそうで、ストレスの溜まりやすい機材車の中でハンドスピナーは小さな癒しになったらしく、シュルシュル回る様子を見ているうちに水戸さんも欲しくなったそうだ。次回見かけたら俺は千五百円のやつを買ってやる! と意気込んでいた。

そしてダブルアンコール終了後、澄ちゃんはハンドスピナーを回しながらステージを去って行った。楽しそうで実に良いな、と思った。



未分類0杯, ウタノコリ, 水戸華之介, 非日常

何て歌のうまい人なんだろう……と今更ながら惚れ惚れした。こじんまりとした温かい色合いのホール。もぎりのおじさんにチケットを渡したとき、「いらっしゃいませ」と上品に半券を返してくれたのが妙に嬉しかった。流れ作業のように半券をもいでいくライブハウスのスピード感もわくわくして高揚するが、この落ち着いた空気も心地良い。そして逸る気持ちを抑えながら、駆け出したい心を制しつつ階段を下りて会場に入る。並べられた赤い椅子はゆったりと配置されていて窮屈さを感じさせない。そして約一時間、空間に流れるボブ・ディランの音楽をそれと知らずに聴きながら、己はうつらうつらしていたのであった。最近どうにも慌しく、とても体が疲れていたので。

そうして始まったアコースティックライブ。ボーカル、ギター、キーボードの三人の編成。己は前から四列目の端に座り、ステージ全体を眺めながら空間全体に響き渡る水戸さんの声に聴き惚れていた。シンプルな編成だからこそ、より一層際立つ水戸さんの歌唱力。広々とした声の豊かさ。気持ちよくその声を全身に浴びながら背もたれに体重をかける安心感。それでいて、シンプルながらも決して物足りなくない音の重厚感。幸せだなぁ、と思った。

そんな、この日のセットリストは下記の通りである。


地図
カナリア

ぶち抜けBaby!!
人間ワッショイ!
ムードは最低

光あれ
大事な人よ
ふたりは

あるがまま
銀の腕時計
ホテルカリフォルニア

奈々
ヴィヲロン
知らない曲(「アモーレ」という言葉が出てきた。イタリアっぽい。カバー?)
天井裏から愛をこめて
でくのぼう
センチメンタルストリート

~アンコール~
知らない曲(インストゥルメンタル。)
雑草ワンダーランド
素晴らしい僕ら

~ダブルアンコール~
袋小路で会いましょう


「ヴィヲロン」の位置にやや自信を持てないが、だいたいこのあたりで間違いないはずである。本編は「地図」で始まり「センチメンタルストリート」で終わったのが印象的だった。一日一日を消費しつつ、地図という名の夢を掴むためひた走る男の歌と、青春の中で挫折を味わい続け、夢を諦めることを考えながらも、何とか前に進もうとする男の歌。前者は力強く勇気付けられ、後者は切なくも願いたくなる。この「センチメンタルストリート」を聴いて、また本編の一曲目に戻りたいと思った。そして自然と、アンコールの手拍子をしながらも、一曲目から順々に反芻したのである。

タイトル通り、アンジーの曲から最新アルバムまで楽しめるアコースティックライブ。アンジーのレア曲では「ムードは最低」が歌われた。セットリストを作るにあたり自分の曲目を見直したところ発掘した曲だそうで、水戸さん自身も忘れかけていたそうである。冒頭の「ムードは最低!」まではわかるにしても、それからどのように繋がるか思い出せなかったそうだ。

「光あれ」は水戸さん押しの一曲で、人生に絶望した男が神に祈ったら、異常に明るい神が下りてきてしまってホンジャラマカホイホイ、な楽しい曲。この一曲の中でのテンションの変わりっぷりはいつ聴いてもすごい。

今回の目玉の一つは「ふたりは」。演歌歌手が握手をしながら客席を回る姿を見て作ったため、ライブでの客席めぐりありきの曲とのことである。ただ、水戸さんが客席を練り歩きながら歌い、手を握ったり顎を持ち上げたりとサービス全開のパフォーマンスを行うため客がそっちに集中してしまい、「曲の良さ」が伝わっていないのではないか? ということで今回だけはパフォーマンスなし、ステージから離れず歌に徹したとのことである。

これがすごかった。「ふたりは」と言えば、あのパフォーマンスがある曲、という印象が強かっただけに、ステージにどっしりと構え、朗々と響く歌声を聴かせてくれる水戸さん。十一回目の不死鳥で、水戸さんとオーケンが「ふたりは」のバラードを歌ったときも、客席めぐりがなかった。そこで「あ、これこういう曲だったんだ」と気付いたことがあったのだが、今日このとき。この曲が本来持っていた魅力を知ったのだった。

そして「ふたりは」以上に圧倒されたのが「ホテルカリフォルニア」。この曲は今までのライブでも一回か二回聴いたことがある。しかし聴いたことがあるだけで、歌詞を把握しているわけではない。だが、歌詞がスッと頭の中に入ってきて、物語が胸に浸透する。水戸さんの歌の言葉の聞き取りやすさに感服すると共に、歌による説得力と声に精神を揺さぶられる。この曲が終わってから、ずっと後ろの席の人が泣き続けていた。

会場全体がしょんぼりした空気に包まれてしまい、水戸さんもそこまでするつもりはなかったと言いつつ、長めのトークで盛り上げて「奈々」へ! 大好きな「奈々」! 楽しかったーー!! この「奈々」の中では客いじりも。皆で「なーななーななななーなー♪」とヴィジュアル系バンドのファンの如く手扇することを求められ、精一杯それをやる! 楽しかった。

「ヴィヲロン」は途中で別の曲になったのだが、何の曲だかわからなかった……。何かのカバーのような気はするのだが……。

「ヴィヲロン」の次、だったかな? これも知らない一曲で、何となく何かのカバーのような気がしたが、違うかもしれない。イタリアっぽい曲で、「アモーレ」などの単語が入った陽気な曲。ここで! 「ふたりは」でなかった客席めぐり! が!

てをにぎってもらえてとてもうれしかったです。

「ティー・アモ」だったかな? 何かを英語で言うと「アイラブユー!」という流れで「天井裏から愛をこめて」に! 久しぶりに聴いた気がするなぁ。この当たり前のように客席が盛り上がる感じ、とても楽しい!

「でくのぼう」「センチメンタルストリート」と盛り上がって終わり、アンコール一曲目はインストゥルメンタル。「名曲!」と紹介されていたものの、どの曲かわからなかった……! カバーだったのかもしれないが、そうじゃないかもしれない。何て言うかな。「大槻ケンヂと切望少女達」の「きまぐれあくびちゃん」冒頭の「デッデッデッデッデッデッデデデッ」という重い音、それが思い出された。

ダブルアンコールは「良い曲で」ということで「袋小路で会いましょう」。客席を練り歩き、歌いながらオーディエンスとタッチをしつつ、水戸さんは後ろのドアーを出て退場する。その後も曲は続き、ギターの澄ちゃんが締めるという珍しい演出。MC以外の場面で、彼がこんなに語っているのを見るのは初めてだった。

そして改めて感じさせられるのが澄ちゃんの声の美しさ。アコースティックで際立つ水戸さんとのコーラスの味わい。好きだなぁ。

水戸さんはボブ・ディランに思い入れがあるそうで、このツアーの中でもノーベル賞を受賞したボブ・ディランに対する祝福の意を込めて歌っていた、と冗談交じりで語っていた。よって開場から開演までボブ・ディランの曲を流したとのこと。先に書いた通り、己はそのときうつらうつらしていたためほとんど耳に残っていなかったが、自分が憧れている水戸さんにも、憧れている人がいる、と思うと急に近しい存在に感じられ、何だかとても嬉しかった。

気持ちよく帰路に着く。雑踏の中を歩きながらも満ち足りていた。



未分類ウタノコリ, 水戸華之介, 非日常




アコースティックライブに行くのは生まれて初めてだ。いつもオールスタンディングなので座って聞くのも生まれて初めてだ。アコースティックと聞いてイメージするのはしっとりとした空間で奏でられる静かな音楽だが、さて、どうだろうか。そんなわけで本日は水戸華之介のアコースティックライブ、「ウタノコリ~黄金の日々 一年半ぶりに贈る珠玉のアコースティックライブ」に行ってきた。

場所は代官山の「晴れたら空に豆まいて」。地図を印刷するためにライブハウスのサイトを検索したのだが、これが面白い。温かみをコンセプトにしたライブハウスと言えばいいだろうか。壁は土壁、畳と板張りの桟敷席があり、豆を重要視するとのこと。内装はまるでお洒落な喫茶店、もしくはレストランのようだ。そもそもアコースティックライブで使われるような座席のあるライブハウスに行ったことがないのもあるが、ライブそのものだけでなく、いつもと違う知らない空間に行く楽しみもできてより今日のこの日が待ち遠しくなった。

地図を見る。簡単に到着することができそうだが、念のため余裕を持って早めに家を出たところ、道に迷うことなく無事辿りつくことができ、入り口からリハーサルの音が聞こえてきて思わず覗き見をしたような、フライングをしたような気持ちになる。別に悪いことをしたわけじゃないとわかっちゃいるんだがドキドキするね。さらに入り口付近で開場時間を待っていたら入り口から出てきた水戸さんがさーっと横を通り過ぎて行ったのだから、ははは。心臓に悪いよ。

このライブに行くと決めたのはわりと最近のことなのであまり番号はよろしくない。うーむ、どのあたりに座れるかなぁとやや心配していたが、ちょいと前の方にちょうどよく見やすそうな場所が一つ空いていたのでこれは嬉しいと腰を下ろした。一人で行くと身軽で良いね。

ドリンクチケットはおはじきである。ライブハウスによってドリンクチケットに違いがあるのも面白い。バッジだったりコインだったり。こういうところにもそれぞれの特徴が表れてくるのだなぁ、としみじみしつつさっさとビールに取り替えて開演を待った。空きっ腹にビールは効くなー。ちょうど良い具合に酔ってきたぞ。しかしジョッキ重いなー。

空になったジョッキをドリンクカウンターに戻し、携帯電話の電源を切ってじわじわと開演を待つ。開場から開演まで、同じ一時間だとしてもやっぱ座って待てるとそれだけで楽だよなー。飲み物を飲みながら待てるってのもあるが、オールスタンディングほど待つのが苦にならなかった。お、ついに開演だ。

照明が落とされて登場するは藤原マヒト、澄田健、水戸華之介の三人だ! 待ってましたとばかりに始まるは「世界が待っている」! 大好きだ!

以下、セットリストとは言い難い曖昧な曲目である。

世界が待っている
愛に愛はあるのかい?
唇にメロディ、心に牙を
カナリア
犬と夕暮れ
地図
生きてるうちが花なのよ
かざぐるま
ジョンのうた
おやすみ
誰だ
(「わよ」と連呼する曲)
(ふたりで?)
天井裏から愛をこめて
(数年経ってから拾い上げた曲?)

~アンコール~
情熱の薔薇

蝿の王様
センチメンタル・ストリート
しあわせになれ

マグマの人よ

「天井裏から愛をこめて」までは曲名はともかくとして順番はだいたい合っていると思うが、そっから後は……ごちゃごちゃだ…。本編ラストが未聴の曲、アンコールは三回、ラスト二曲は間違いないはず。ただし最初のアンコールと二番目のアンコールの曲数は覚えておらず、もしかしたら一曲抜けているかもしれない気もする。うーん…無念。

数々の曲の中ですごいなと印象に残る歌詞ってのはいくつかあり、その「すごい」と思う理由もそれぞれ違うが、「世界が待っている」の「長い飛行機雲だな 未練がましくて スッとしないから好きじゃないな」には感性の部分にハッとさせられた。「あ! 飛行機雲だ!」と笑顔で空を見上げる人は今までも数限りなく見聞きしてきた。どちらかというとラッキーなものとして認識されていると思う。嫌なものと捉える人の話は聞いたことがない。あれに未練たらしさを感じ取る水戸さんの感性に驚嘆するとともに、目に浮かんだのは青空を分断する一筋の飛行機雲を眺めて眉を顰める男の顔だ。

「世界が待っている」「地図」「誰だ」「天井裏から愛をこめて」「蝿の王様」「マグマの人よ」が特に聴けて嬉しかった曲だが、今回特筆すべきは「ジョンのうた」だろう。ジョンのうた。あのさ、今までライブで涙目になったことはあるけれど、涙が流れたことは無かったぞ。ボロボロとまではいかないもののたらたら涙が垂れてきて鼻もぐずつき、もうちょっと勢いがついたらまさに泣いている状態そのものである。これは来た。

歌詞内容は男の子が母親と家を出て行くことになったが、飼い犬を連れて行くことはできず、飲んだくれの父親のもとに置いていかなければならなくなって………ってこんな文章読むよりもさっさと本物を聴くべきだ。悲しい歌だよ。胸に迫るよ。思い出すとため息が出る。歌ってすごいや。

「かざぐるま」「ジョンのうた」「おやすみ」としんみりした曲が続き、ぐっと盛り下がる観客、そして盛り下げた水戸さん。次はファンキーな曲で盛り上げていくつもりなだけのこのままでは何なので、ってことで面白いMCで笑わせてくれた。しかしここで話されたMCがどの内容だったかは忘れてしまったぜ! 澄田さんのお父さんが夏休みの工作を手伝ってくれたは良いが、作ってくれたのは三度笠と草鞋だった話か、同じく澄田さんがホテルでTシャツ一丁の状態でトイレに行こうとしたらドアーがオートロックで部屋から閉め出された話か、最近の子が曲中で褒め合いをしていて理解ができないという話か、どれだったかなぁ。

そしてファンキーな曲とは何かと言えば…「誰だ」が来た! いよっしゃーこれ大好きだ! そうかこれがファンキーな曲なのか! 未だにファンキーってのがどういうものなのかよくわかってないためにここで勝手に納得した! ちなみに自慢するこっちゃないが、何を持ってバラードと言うかってこともよくわかっていない。あれやそれがバラードらしいってことは何となくわかるんだが、わかるんだがな。

次の曲がまた面白かったなぁ。掛け合いがたっぷりで、「はりつめたー弓のー」と水戸さんがうろ覚えなもののけ姫っぽいものを歌い、マイクを観客に向けて歌わせた直後、「知らないのに歌うんじゃない!」って内容のことを言って笑いが起きたり、そしてあれだ。何と言ってもウルトラソウルだ。

「わよー!」「わよー!」と連呼する中で、「ウルトラソウルッハイッ!!」てのを混ぜてくるのだ。言わずもがな、B’zの「ultra soul」における有名な一節である。あれを掛け合いの中に混ぜてきて、しかも水戸さんによる「ウルトラソウルッハイッ!」の言い方のご指南もあった。よく知らない人は「ウルトラソウルッ」で拳を振り上げてしまうけど、一拍置いて「ウルトラソウルッハイッ!」で拳を振り上げるのが正しいそうだ。これを知らないとカラオケで一人先走って拳を振り上げて恥をかくはめになってしまうと言う。なるほど、良い勉強になった。

盛り上げ曲はまだまだ続く。今度の曲では水戸さんがステージから下りてきて観客をいじりまくっていておかしかった。歌いながら握手をしたり、一人の女性の手をとって頬に添えたり、客の眼鏡を抜き取って自分の眼鏡の上に重ねてダブル眼鏡にしてみたり、サービス満点である。いじられて嬉しそうな恥ずかしそうな、それていてちょっと困ったような顔をしてはにかむお客の様子も面白かった。

中でも一人、一番後ろに座っていたアフロっぽい髪型の男性は二度もいじられていて面白いやらおかしいやら。ステージを下りて一直線に男性のもとへと早足で歩いていく水戸さん、男性の髪をもしゃもしゃしたり、肩を抱いているのか抱え込んでいるのか格闘しているのかよくわからないものの、何となく男性が抵抗しているらしいことが伺えたり、さらにステージに戻ってからももう一度水戸さんはその男性のもとへ一直線、ついに男性も立ち上がりその場で一緒に踊らされていた。わははははは。すげぇー。

悲しみを吹き飛ばして沸き立つ観客は「あの」イントロのもとさらに沸騰する。「天井裏から愛をこめて」! 流れとしてはラブソング続きといったところだが、このラブソングは怖いよな! 「大好き大好き!」のコールがぴったりはまっていて感動した。「かび臭いのも素敵なものさ」の部分を歌う水戸さんがやけに格好良かったのが印象に残っている。爆発を前にして溜めに溜めている緊張感と怪しい声の響きのせいか。

本編ラストは未聴の曲で、タイトルを耳にしたはずだが忘れてしまったのが残念だ。「風」という単語が入っていた気がするのだが…。どうだったかなぁ。

アンコールの手拍子が鳴り響き、メンバーはすぐにステージに戻ってきてくれた。こっからなー。記憶が定かじゃないんだが、「情熱の薔薇」はブルーハーツのトリビュートに参加して、頑張って覚えたからせっかくだから歌う、ってことだったかな。笑えるのが、同じレーベル繋がりで参加することになったのに、録音した曲はそのレーベルをブルーハーツが出て行った後の曲だったことに録音した後に気付いたという話だ。わはははは。いい加減だなぁ。

ブルーハーツはテレビなどで耳にする程度でしか聴いたことがなく、「情熱の薔薇」も全く知らない曲だったが、特に違和感は抱かなかった。

「蝿の王様」も楽しかったなぁ! 「銭ゲバ! 銭ゲバ!」なんて実生活じゃまず使わない言葉だから、こういう場所で口に出すと新鮮だ。「ばいばい、落ちこぼれ」で手を振るふりがあったので真似してやってみた。ここだけじゃなく、ほとんどの振りは周囲の人の動きを参考にしながらやっていた。つっても夢中になりすぎて手拍子が止まったりもしていたけどね。手拍子することを忘れるほど引き込まれるってのはあるものだ。単にリズム感が無いために手拍子をうまく保持できないだけかもわからないが。うん、テンポによっては難しくて苦労するんだよな。うん。

「蝿の王様」には「ボランティアじゃねーぞ!」という歌詞があるのだが、ここで水戸さん、「ボランティアじゃないしぃ~」と女子高校生のような口調で一度つぶやいた。そのおかしさに笑いが起こる。が、もう一度、今度はふざけた調子を取っ払って「ボランティアじゃねーぞ!!」と一喝!! 直前とのギャップもあいまってものすごく格好良かった!

「センチメンタル・ストリート」を聴きながら、まだ一部のアルバムしか手にしてないが、水戸さんの歌詞には地図や未来図といった言葉がよく出てくるな、と思った。この曲の入っているアルバムも手に入れたいなぁ。気に入ったというか気になったというか。もう一度じっくり聴き直したい。

最後、水戸さんから「しあわせになれ」というメッセージをたっぷり受け取って、多幸感に包まれながらライブは終わった。だが手拍子は終わらない。客席を立つ者も現れない。無論自分もそのうちの一人である。追い出し曲が流れる中でだんだんとテンポが加速する手拍子を打ちながら、………やったー来てくれたー!

トリプルアンコール!! 嬉しい!

水戸さんはハンチングを脱いで手拭を頭にかぶった姿で登場。マイクを握り、「しあわせになれ」を一部歌った後、始まったのは「マグマの人よ」! あー…。ぐっとくるなぁー…。

「青空を見ようじゃないか」で手のひらをライブハウスの光に向ける。最後にこの曲が聴けるとは。歌を聴いて、言葉が耳から体内に浸透して、勇気が湧いてくる。明日も頑張ろうと前を見据える力が湧く。

アコースティックと聞いてイメージしたしっとりとした空間もそこにはあった。だが、美しく迫力あるグランドピアノ、どこか瑞々しさを感じるアコースティックギター、力漲る歌声とパフォーマンス、手拍子に掛け合いと、空間を支配していたのは力強い熱気だった。あぁ、アコースティックでもエレキでも、ロックはロックなのだなぁと、夢中になりながら、頭の片隅でふと思ったりした。

せっかくだ、何かCDを買っていこうと思い、物販に並んでいると出入り口付近の小さなスペースにふっと水戸さんが現れて、サインと握手をしてくれることになって驚いた。いや、前にもあったし今回もあるかなとは思ったが、告知も何も無かったから驚いたよ! 驚いたおかげであわあわ慌ててろくろく言いたいことも言えなかったが、嬉しかった。また大事なものが一つ増えたぞ。