Fumihiko Kitsutaka 25th Anniversary Live~Dream Castle~ (2010年10月24日)

橘高文彦とは筋肉少女帯のリードギタリスト。そして筋肉少女帯とは己にとって音楽にはまるきっかけとなったバンドであり、これまでの人生の中で一番聴いた音楽である。つまり、自分にとってのギターの音色とはこれ即ち橘高さんの音ということ。その後にも範囲は狭いもののいろいろな音楽を聴いたが、やはりギターと聞いて連想するのはあのギュゥ~ンと唸り、駆け上るような音色である。

そんな橘高さんのデビュー二十五周年を祝うめでたいライブ、行かないわけにはいかなかろう。しかも今回はオーケンもちゃんと参加するのである。二十周年の時はまだ、筋少が活動凍結中、仲直り前で、オーケンは参加予定だったもののドタキャンしてしまったのだ。しかし今度はその心配が無い。ははははは。その点においても嬉しいなぁ、めでたいなぁ。うきうきしながらライブへ出かけた。

前日、久し振りにサークル仲間と集まって馬鹿騒ぎをし、そのまま友人宅で一泊して当日を迎えたのでライブ前に銭湯に行き、ひとっ風呂浴びてからリキッドルームへ向かった。銭湯で頭に塗りたくったワックスを落とし、さっぱりした頭にまたワックスを塗りたくろうとする己を見た友人達から「何の意味があるのか」「そのままで良いじゃないか」なる意味のことを言われたが、どうせライブが始まったらボッサボサの汗みどろになるってのはわかっていたって、最初っから湯上がりそのまんまは嫌だよ、己は。

して、到着リキッドルーム。ゆっくり風呂に浸かっていたせいか少々ギリギリになってしまったが、モスコミュールを飲むくらいの余裕は持てた。さて、開場後はどこへ向かおうかな。やはり橘高さんのお祭りだから上手かな。ヘドバンはやり慣れていないため得意じゃないが頑張ってみようじゃないか。と、決めて、実際上手に立ったのだが、ここに来るまでちょっとしたトラブルがあった。

入場はファンクラブのFC番、A番、B番という順番で、己はAの半ばよりちょい手前、くらいの番号だったのだが、いつまで経っても己の番が来ないのである。いや、己の番というよりA番が。いや、正確に言えばFC五十五番より先が。何故か知らぬがどうしたわけか、ずーっとFC五十五番で止まっているのである。

「FC五十五番までの方、お入りくださーい」
「FC五十五番までの方、お入りくださーい」
「FC五十五番までの方、お入りくださーい」

FC五十五番に何が起こっているのか。この人ごみの先、整理番号を呼ばう人の身に何が起こっているのか。それも五分や十分じゃない。結構な時間FC五十五番様コールが続いていた。「聞こえませーん!」「もっと大きな声でー!」と横の人が叫ぶ。その反対側ではベテランと思われるスタッフがFC五十五番を呼ぶ人に指示を出している。確か、この時点で開場から三十分近く経っていたのでは無かろうか。我々は開演前に中に入ることは出来るのだろうか。リキッドルームが屋内では無く、屋外で待つタイプのライブハウスであったら寒さのために暴動が起きていたかもしれない。いや、実際結構、空気がピリピリしていて、恐ろしかったよ。なかなか。

ついにFC六十番が呼ばれたときには歓声と拍手が起こり、それからは今までの様子が嘘であったかのように、スルスルと淀みなく入場が進んでいった。中では橘高さんがプロデュースしたバンド、Pan-d-raがライブを行っている。開演前のお楽しみ、ということらしい。外見が全員橘高さんのバンドのようであって驚いた。おおおおお。何やらわからん迫力があるな…。

Pan-d-raのお次はこれまた橘高さんプロデュースのバンドZig+Zagの演奏だ。開演前にこういったサービスがあると待ち時間も楽しめて良いなぁ。いつも一人で行くから時間潰しが大変なんだよね。Zig+Zagは眼鏡をかけたまま勢いよくヘドバンしていたことが印象的だった。あと小物というか、アイテムがやたらと多い様子であったな。

さて、前座も終わり、暗闇の中で開演を待ち続け、ついに始まった橘高文彦二十五周年記念ライブ! しかし、だ! 己は筋肉少女帯は全部聴いているが、X.Y.Z.→Aは「Learn from Yesterday! Live for Today! Hope for Tomorrow!」だけ。他は「NEVER ENDING STORY」しか聴いておらず、今回発売されたベストも終演後の物販で買うつもりであり、実際物販で購入したため予習が出来ていないため、知らない曲が盛りだくさんだったのである。つまりAROUGEとEuphoriaは完全未聴の状態でライブに臨んだのだ。

そんなわけでセットリストもきちんと覚えられたのは筋少だけである。一応下に記録しておこうか。

さらば桃子
アンクレット
再殺部隊
小さな恋のメロディ
イワンのばか

で、だ。これを言わせて欲しい。橘高さんのライブの感想で初っ端これかよ、と思われそうだが、もう、びっくりしたのが! 感動したのが! 「再殺部隊」の語りを、オーケンがきちんと語ってくれたんだよ! あの! 最近語りたがらないオーケンが!!

すげーよオーケンやれば出来るじゃん! 実際、橘高さんも「やれば出来る子なんだよ」とオーケンを指して言っていたが、いやーもう。いやーもう。しばらくこの感動の余韻に浸りっ放しだったね。オーケンすごいじゃないかああああ!!

まさか再殺部隊を生で、しかも語り付きで聴ける日が来ようとは。橘高さんが選曲したからこその曲目である。いやぁ、すごかったなぁ。特に己がいた上手側は、さらば桃子の開始から爆発したようにヘドバンの嵐で、普段の筋少ライブよりも狂乱しているように感じられた。熱暴走を起こしているというか。すごかったなぁ。

もしかしたらあの語りは、オーケンなりに橘高さんを祝おうとした気持ちなのかもしれない。それで頑張ってくれたのかなぁ、なんてことを思ったりもする。特に、二十周年ではドタキャンで不参加だったわけであるし、オーケンも今回同じステージに立ってお祝いすることが出来たことを嬉しく思っていたのかもしれない。なかなか素直に「おめでとう」と言わず、「橘高文彦二十五周年記念ライブに見せかけたファンキー末吉殺害ライブ」とちゃかしたりしていたが、ずーっとにやにやにやにやしていたんだよ、オーケンが。照れ笑いのような照れ隠しのような。最初は何でこんなににやにやしてるのだろうと思ったが、むず痒かったのかもしれないなぁ。

そういえば、てっきり散々ネタにするかと思いきや、二十周年でオーケンがドタキャンした話を橘高さんが持ち出さなかったのが意外だったな。いや、一回くらいは言っただろうか。記憶が定かでは無いが、ほとんどネタにされていなかったのは覚えている。どうしてだろう、と思ったが、これもまた、持ち出すと照れくさくなるからかもしれない、と思った。知らないけどね。

橘高さんメインのライブということもあり、お色直しを除いては橘高さんが出ずっぱりで、こんなに喋る橘高さんを見たのは生まれて初めてだった。基本、トークの中心は橘高さんで、これは筋少では見られない光景だ。ギターに対する想いや人生観、自身のトラウマについて語る姿は、とても真面目で、ギターに対して、人生に対して、ファンに対して、真摯に向き合っている人なのだな、と感じさせらた。さらに、ライブバーX.Y.Z.→Aで行われた太田さんセッションのときのMCで、一緒に飲み歩いていると橘高は金髪だからよく因縁をつけられて、それで因縁をつけてきた相手と喧嘩をすることはあったけど、自分のために喧嘩をしたことはない、と太田さんが語っていたのを思い出した。あの派手な外見で軽んじられたり、見くびられたり、誤解を受けたりしたことは何度と無くあったのだろう。筋少自伝でも、AROUGEはアイドルメタルということで風当たりが強かったと書かれていた。ずっとそういった偏見の目と戦いつつ、今に至るまで自己のスタイルを貫き通してきた人なのだなぁ。格好良い。

AROUGEのベースとドラムスは橘高さん曰く、「今はカタギの人」とのこと。既に別の世界で生きている人も、この日は橘高さんのために駆けつけてきてくれたのだと想うと感慨深い。同窓会のようなどこか気恥ずかしく、そして温かい空気は次のEuphoriaにも、さらにはX.Y.Z.→A、筋肉少女帯にも引き継がれて、最後の最後の大合唱では紅白歌合戦のフィナーレといっちゃ失礼だが、十月後半であるにも関わらずこのまま年を越せてしまいそうなめでたさと温かさでいっぱいになっていた。橘高さんが「ドリームキャッスルの住人」とステージに集ったメンバー全員を指して言っていたが、まさに、親戚一同が大終結してのパーティーのような状態であった。

五年後も、同じような、もしくはそれ以上の温かい、和やかなパーティーが見られたら良いなぁ、という思いとは似つかない、汗だく汗まみれふらふらの状態で、半ば朦朧としながら輝くステージを眺めていた。このライブは後日DVDになるそうだ。位置的に映っていそうで恐ろしい。ははは。

橘高さん、二十五周年おめでとうございます。同時に、ありがとうございます。

未分類橘高文彦, 非日常