未分類0杯, 電車, 非日常

行きたいな、と思いつつも、年末だしな、と自重していたのだが、直前になってスケジュール的には問題なく行けることに気が付いた。そしてそのとき己は非常に疲れ切っていた。脳が爆発しそうだった。そこで己を鼓舞するため急遽チケットを購入した。何とか、眼前に人参をぶら下げることで乗り切ろうとしたのである。

そういった経緯で、今年最後のライブは「電車」となったのだった。

電車のセッションに行ったのは2011年の1月3日。正月に死体洗いのアルバイトの歌や自爆テロの歌、鳥葬の歌、男女の別れの歌を聴き、今年は年の瀬にそれを聴く。場所は同じ吉祥寺のSTAR PINE’S CAFE。ただし今回はセッションではなく、電車という「バンド」の演奏だ。ついに今日、本物の電車による、電車の曲を聴けたのである。

電車はゆる~い雰囲気で、のんびりだらだら進行しつつ、曲に入ると途端に空気が切り替わるのが実に面白い。この点、筋少より顕著である。筋少はMCでゆるゆるだらだらしていても、「ステージ上」であり、「見せるための姿を演じる」気構えが多少はあるように見えるのだが、電車はそれが少なく見えた。より素に近く、肩の力が抜けているように感じられた。

さて、曲のそれぞれにも語りたいが、まずはセットリストの方を。


電車の猛勉強
夢見るショック!仏小僧

OUTSIDERS
死体のこもれび(新東京正義乃士のカバー)

テロルおじさん
ほうろう(小坂忠のカバー)
人間のバラード(筋肉少女帯のカバー)

生まれてビックリ団
パーマのブルース

星屑と赤い闇のブルース
とん平のヘイ・ユウ・ブルース(左とん平のカバー)

喰らわれた女の歌
アタイばっか
包丁とマンジュウ(スターリンのカバー)

~アンコール~

お別れの背景


「テロルおじさん」「ほうろう」「人間のバラード」のあたりの並びはやや記憶が曖昧で、正直自信が無いのだが、他は合っているはず、である。

ステージでは下手からサトケンさん、オーケン、ベラさんが並び、オーケンの前には譜面台が置かれ、背後にはドラムの小畑ポンプさん。さらにその後ろがステージへの出入り口になっているようだった。ステージ前には客席用の椅子が並べられているが、全員分は無く、客の半数は立ち見となる。また、二階もあり、上からステージを見下ろすことも出来る構造となっていた。己は一回の椅子席のやや後ろに並んで立ち、開演前には缶のエビスビールを呑んでいた。天井にはミラーボール。何故かミラーボールを囲むように羽飾りが飾られていた。

客電が落とされ、メンバーが登場すると同時に始まる「電車の猛勉強」。ヘビィなサウンドの上で「べーんきょっ」と平仮名で歌うオーケンがキュートである。今回のライブでは譜面台があるおかげか、歌詞間違いが少ないようだった。とはいえ、たまに舌が回っていない場面もあったが。それはそれでご愛嬌である。

二曲目でいきなり「夢見るショック!仏小僧」と暗黒ナンバーへ。あぁ、電車のライブに来ているのだなぁと実感する場面だった。続いて大好きな「OUTSIDERS」に、死体洗いのアルバイトの歌「死体のこもれび」。「死体のこもれび」を聴いているとき、胸が締め付けられるような思いがした。電車セッションのときにこの曲を聴いたときはこんなに苦しくならなかったのになぁ、と寂しく感じた。

ちなみに今回のライブにおける自分の中でのハイライトは「生まれてビックリ団」「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」「お別れの背景」である。中でもすごかったのが「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」だ。

何故ならこの曲、自分は飽きているのである。オーケンのお気に入りだが、お気に入りと知っているが、自分はそこまで思い入れが無いだけに、悪いとは思うが「またか」と思ってしまうのである。どちらかと言うとオーケンのオリジナル歌詞を聴きたいなぁ、と思ってしまうのである。しかし、今日はすごかった。

この曲をやる前のMCで、サトケンさんがベースだけのCDを今日の物販で販売していて、それがついに九枚目、毎年作っているから今年で九年目になるという話が出ていた。ベースだけのCDとはいったいどんなものだろうと興味を覚えつつ、頭に浮かんだのは「はなわ」であった。いや、無論ベースだけと言うことは歌も無いことはわかっているのだが、ついつい連想してしまったのである。

そのMCの後のヘイ・ユウ・ブルース。「ヘイユウワッチュアネーム!」と叫ぶオーケンの一声から始まり進行していく。序盤は通常通りである。しかし中盤で変化が起こった。

いつの間にか。オーケンとベラさんがいなくなり、ステージ前方にはサトケンさんだけ。そしてサトケンさんが一人、延々とベースソロを奏で続けるのである。自分はあまり、ベースソロを聴いたことが無い。音楽が好きというもののひたすら筋少を聴いている人間で、その筋少はベースソロがほとんど無い。サンフランシスコに少しある程度である。だから知らなかったのだ。ベースがこんなにも多彩な音色を奏でられるということを。

呆気にとられながら聴き入っていた。そしてベースを奏で切ったサトケンさんがステージを去る。すると次は小畑さんのターンになり、怒涛のドラムソロが始まった。これもまた格好良かった。一つ一つの音が重く、何て言えば良いのだろう。パンチというよりも、厚い平手を喰らうような、そんな音なのだ。ベシンと体に張り付くような衝撃があった。

ヘイ・ユウ・ブルースの演奏中であることを忘れそうになったとき、オーケンとベラさんが戻ってきて、終局へと向かっていった。飽きを感じていただけに、今回のヘイ・ユウ・ブルースは素晴らしかったなぁ。

「生まれてビックリ団」は、筋少で言えば「ゾロ目」の序盤のように、ゆったりと歌い上げるように始まり、しばらくそのまま続いたので、アレンジバージョンかと思った。これも良いが、あのスピード感のある「生まれてビックリ団」も聴きたかったなぁ、と思っていると。「恋してビックリだ、キスしてビックリだ、ふられてビックリだ、切なくてビックリだ」まで歌いきってから曲調が変わり、怒涛のように駆け抜けていくのである。オーケンの声も歌い上げるものから叫ぶものに変わり、そのギャップがまた非常に格好良かった。

「お別れの背景」はとりわけ良かった。そもそも思い入れのある大好きな曲なのでやってくれるだけで嬉しいのだが、オーケンの歌声が素晴らしく良かったのだ。序盤のMCで、いろいろあって疲れているので最後の二曲目あたりで目覚める、と冗談を言っていて、本編ラストの「包丁とマンジュウ」で「目が覚めたぜー!」と叫んでいた。無論冗談だろうとは思うが、その後の「お別れの背景」で、最後にも関わらず、この日一番声が出ていたのである。今日は最初から咽喉の調子が良いようだったが、最後が一番すごかったのだ。

そして嬉しかったのが。CDでは声を張り上げる箇所を、ライブでは声を落として歌う、というのはオーケンに限らず少なくないことだろう。それを否定する気は無い。だが、やっぱりCDと同じように歌ってくれると嬉しくて、「お別れの背景」は、限りなくオリジナルに近い歌い方だったのである。ちょっと歌詞は間違えていたけれども。

最後の最後にこれだからたまらない。嬉しかったなぁ。

時間の割りに曲数が少ないのはトークが長かったから。ちょこちょことトークが挟まれ、そのたびにオーケンがちょこちょこ椅子に座って休み、小畑さん、ベラさん、サトケンさんによる電車ツアーの振り返りがあったり、今後の予定について語られたりと皆が楽しそうにしているのが微笑ましかった。

面白かったのは今度、THUNDER YOU POISON VIPERと対バンする告知がなされたくだりで、小畑さんから「サンダーユーはインストなんでしょ?」と聞かれたオーケンが、「インスト」を「いいひと」と聞き間違え、どのように答えるべきか、極悪人と言うわけにも行かないし、と悩んでいた場面。それとオーケンのおじいちゃん化現象が進んでいること。物の名前が出てこなくなったり、ツアー先のホテルで部屋の鍵を開けられず「開け~開け~」と唱えながら鍵をガチャガチャやっている姿がベラさんにより目撃されたという。

それに対しオーケンは、2015年はいきなり若返る、プラセンタ打ったりなんかして、と冗談を飛ばし、未来の最終形オーケンがアンドロイドならぬロボットに成り果てていたり。ロボット化やプラセンタは流石に困るが、たまに鍛えたりダイエットしたりしつつ、のほほんとライブを続けてくれると嬉しい。今日のライブの余韻に浸りつつ、来年を楽しみに待ちながら帰路についた。

楽しかった。これが己のライブ納めである。



日記録0杯, 日常,

2014年12月25日(木) 緑茶カウント:0杯

近所にちょっと良い店があったのだ。カウンターに四席、後ろにテーブルが一つという小さな佇まいで、マスターが一人で切り盛りしているイタリアン。カウンターの奥の棚には雑多に物が積みあがっており、やや雑然とした雰囲気もあるが、出される料理は美しいのだ。シンプルながらも気を遣われたデザインの皿に、綺麗に盛り付けられて出てくる。チーズの盛り合わせを頼めばチーズが美しく飾られ、隅に蜂蜜の入った小さなポットがちょこんと置かれるのだ。手作りのピクルスも美味く、釜焼きのピザも美味く、良い店を見つけたと思ったものだ。

ところが。カウンターの奥の棚に見えた「雑多」がだんだんと侵食してきた。カウンターの前にコーヒーメーカーが置かれているのだが、これに埃がたまっている。気楽に入れるのが長所の店とはいえ何だかな、と思いつつチーズの盛り合わせを頼む。チーズの種類にもよるのだろうが、このとき、あの蜂蜜の入った可愛らしいポットが無くなっていた。少し残念だった。

そして少しずつ少しずつ。「雑多」はカウンターの奥からこちら側へとやってきて、ついには皿はそこらで売っているただの丸皿になり、チーズも生ハムも飾られることなくただ「乗せられた」状態で供されるようになったのである。のほほんとした店主の雰囲気だけは変わらない。次回来るとき、この「雑多」がどこまで侵食しているか楽しみなような恐ろしいような。見送るつもりで見守っている。



日記録2杯, 日常

2014年12月24日(水) 緑茶カウント:2杯

今日はほうれん草とチーズのオムレツとパンを食べ、緑茶を飲んでゆったりと過ごした。余韻を噛み締めながら飲む緑茶は実に美味く、こんなクリスマスイブも良いものだなとしみじみ思った。

ちょうど茶葉が無くなったので、明日は普段よりちょっと贅沢な茶葉を買おう。そうして家にある羊羹を分厚く切っていただくのだ。これはきっと、絶対に楽しい。



未分類0杯, 筋肉少女帯, 非日常

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毎年、クリスマスイブ前日に行われることが恒例となったこのライブでは、いつも特別なものを与えてくれ、大いに笑って興奮し、最高のエンターテイメントを味わわせてもらっているが、今年は特に、とりわけ素晴らしかった。

それは運の良さもあった。だいたい、いつも整理番号は八百七百あたりが常で、五百番であればなかなか、三百はかなり良い数字。しかし今回、何故かいきなり初めての二桁、九十番台を手に入れて、内田さん前、若干橘高さん寄りの二列目に陣取ることが出来たのである。視界は良好で、位置的にオーケンの声が爆音にかき消されてやや聴き取りづらかったが、代わりに内田さんの野太いベースと橘高さんの華麗なギターソロを堪能することが出来た。

あぁ、夢のような一夜だった。

何より。何より嬉しかったのが「デコイとクレーター」を聴けたこと。密かに大好きな曲で、心が疲れているときには何度落ち着かせてもらったか。深い思い入れは無いが、ただ純粋に好きな歌。筋少はハードロックも素晴らしいが、ハードロックだけじゃない。幅の広さを見せ付けてくれる曲の一つであると思う。と、御託を並べたがそんなことはどうでも良いのだ。ただひたすらこの曲が好きなのだ。

「デコイとクレーター」は数年前の初期曲限定ライブでも演奏された。確か二日間の催しで、好評につきCCレモンホールでの追加公演が決定となり、DVD撮影も行われた。しかし。CCレモンホールでは「デコイとクレーター」はセットリストから外されており、それがとても残念で、悲しかったのだ。あのDVDは素晴らしい作で、何度も観直しているが、ただ一点、それだけは残念だったのだ。

その「デコイとクレーター」をまたこの場で聴いている。しかも、どんな形での収録かは定かでは無いが、本日はDVD撮影もされている。もしかしたら今日のデコイを、いつかまた家で観ることが出来るかもしれない。最高のクリスマスプレゼントだ。

しかも、それを二列目から観ることが出来たのだ。どんなに嬉しかっただろう。それはアンコールの一曲目で、椅子に座ったオーケンがじっくりと歌っていて、己はそれを、固唾を呑みながら見つめていたのだ。

ちなみに今日のセットリストはこちら。


イワンのばか
心の折れたエンジェル

みんなの歌
ニルヴァナ
香菜、頭をよくしてあげよう

ゾロ目
1000年の監視者
ロシアンルーレット・マイライフ

愛の賛歌と見せかけて愛のリビドー
(ジムノペティで空バカ風コント)
北極星の二人~内田のラブソング
ムツオさん

ワインライダー・フォーエバー
労働讃歌
戦え!何を!?人生を!

釈迦
トゥルーロマンス

~アンコール~

デコイとクレーター
恋の蜜蜂飛行
サンフランシスコ


もう、本当に楽しかったなぁ! 開演時にクリスマスソングらしきものが流れ、歓声の中メンバーが登場。そしていきなり一発目から怒涛の一曲、イワンのばか! さっきまでの和やかな空気はどこに行ったのだと突っ込む隙も無い。そして二曲目がこれまた久しぶりな「心の折れたエンジェル」! 嬉しいったらありゃしない!

今回のライブでは、「心の折れたエンジェル」「1000年の監視者」「ロシアンルーレット・マイライフ」と、最近あまり聴けていなかった「シーズン2」の曲を聴けたのも嬉しかった。特に「ロシアンルーレット・マイライフ」はちょうど聴きたいと思っていたのだ。銀色のモデルガンを握ったオーケンが、銃口を己のこめかみに向ける仕草が実に格好良い。しかしこの仕草、他のメンバーには見えていなかったようで、この後に観客に向けて撃っていた仕草だけが見られていたらしく、内田さんに「ロシアンルーレットなら観客じゃなくて、自分に向けるよね」と突っ込まれ、橘高さんに「怖かったんだよ」と言われていたのが微笑ましかった。ちなみにこのときオーケンは退場していたので反論の余地無し。

「1000年の監視者」はロマンティックなメロディで、これはクリスマスにふさわしい! ナイス! と思ったのだが、よく考えたら惚れた女にプレゼントあげてOKもらったけど裏切られて毒殺しちゃった男をじっと見ている人の歌だった。そんなこんなで本日も変わらず、人が死んだり人を殺したり別れたりする曲をたっぷり聴いたのであった。アンコールはサンフランシスコ。男女の別れの曲である。

ただ、そのくらいがちょうど良いのだ。クリスマスの浮かれた雰囲気も好きだ。スーパーの店員がサンタ帽を被りながら無表情でレジ打ちをしていたり、コンビニにカラフルなお菓子が並んでいたり、ビジネス街で唐突にいかれたイルミネーションが発生していたりする中で、ちょっとした毒を楽しむのが、非常に美味しくて愉快なのである。クリスマスの全てはこの「毒」の美味しさを味わうために用意されていると言っても過言では無いのである。

さて、本日の毒と言えば「ムツオさん」。今日もやってくれました! 今回自分の立ち位置では、とにかく内田さんのベースと橘高さんのギターの爆音ばかりが聴こえ、サンプリングされた音が聴こえづらい特徴があった。故に、ベースが強調された場合の「ムツオさん」を堪能出来て、これがなかなか、とても怪しい。あのディスコティックなサウンドが遠くにやられると、この曲はこうも怪しくいかがわしくなるのかと思った。しかし、楽しい。

本日、ようやく念願叶って聴けたのは新曲の「ニルヴァナ」。これはライブで盛り上がる! が! それ以上に注目すべきは暴走するエディである。恐らくピアノの出番が少ないのだろう。満面の笑みで手拍子を入れながら持ち場を離れて踊り狂う白い衣装の巨体・エディのインパクトは絶大で、これはエディのために作られた曲ではなかろうか? と思うほど。未だ脳裏に焼きついている。すごかった…。

ちなみに今回、エディのMCの場面は無し。若干喋りたそうにしているように見えたのだが。エディのトークも聴きたかったなぁ。

最初のMCではオーケンがライザップで鍛えてダイエットをして、何とウエストを六センチも細くしたこと、しかしライザップをやめた今リバウンド中で、今朝はティラミスを食べてしまったことなどが語られた。大丈夫。ティラミスくらいのカロリーなら今日のライブで燃焼されるさ。

あと忘れてはいけないのは橘高さんの福袋。もちろんMCの話題に上がった。オーケンに「あなたはこの時期に毎年荒ぶりますが…」と話を振られ、福袋の内容をご紹介。三万円というお値段で、しかし六万円分の商品が入っており、終演後に橘高さんとリキッドルーム周辺をドライブ、一緒に写真撮影、さらには何と! 橘高画伯に肖像画を描いてもらえるという大サービス! そのうえ! ドライブの際、車に乗るときにはエスコートされたうえにバラの花をそっと手渡されるという! この豪華な福袋をゲットしたのは男性! 橘高さんは「また新しく彼氏が出来ちゃった」と笑っていて、オーケン、内田さん、おいちゃんは各々好きなポーズを取って肩を震わせて笑っていた。

「ゾロ目」の前で、オーディエンスに合唱を促すオーケン。見事な声量で合唱が起こり、嬉しそうな顔をするオーケンが実に微笑ましかった。そうだよなぁ。新曲を皆が覚えて歌ってくれたら嬉しいよな。ニコニコッと笑うオーケンは実に魅力的である。喜ばせたいなぁと思ってしまう。

「ロシアンルーレット・マイライフ」の最後にオーケンがステージから退場に、袖からマイクを通さずに「今年の一年を振り返ったMCをしてよー!」とメンバーに要求し、「生声通るな!」と橘高さんに言われるシーンがあった。そこで各自が一年を振り返り、おいちゃんがギャグで嘘の対バン相手を語り、橘高さんが信じ込みそうになる場面もあった。

そして次の曲へ。ちょっと長めの休憩を終えてステージに現れたオーケンは血まみれ白スーツに白ハット。おお、これはと思う間もなく始まるのは愛の賛歌のイントロ。しかし。舌を出したり顔を歪めたりと変な顔をして遊ぶオーケン。おや…と思った直後に響く音。フェイントだ! 演奏されるのは「愛の賛歌」ではない。「愛のリビドー~性的衝動」だ。

これはCCレモンホールで聴いた以来の一曲で、Queenを髣髴とさせる美しいギターの音色に馬鹿な歌詞が乗っているという実に筋少らしい一曲で、我ながら下品だが、生涯最大の性衝動って今それあなた発揮出来るんですか、と脳内突っ込みをついしてしまい自ら恥じたりもしつつ、これも久しぶりだなぁ、良い曲だなぁ、と惚れ惚れ聞き入りつつゲラゲラ笑ってしまうのであった。

この後がまた面白い。ステージはオーケンと内田さんだけになり、エディの奏でるジムノペティに乗せて、ごにょごにょとフランス語っぽことを囁きつつ、「あんたプロだね」と唐突に空手バカボンになる。そしてオーケンが持っていた白いマイクが内田さんの手に渡り、何と! 内田のラブソング!!

オーケンは退場し、代わりにおいちゃんと橘高さんが入場して曲がスタート。内田さんはお星様のついたステッキを片手にし、振り回しながら楽しげに歌いまわる。これは何かの妖精かと思ったが、後のMCで聞いたところドラクエネタであったらしい。しかしオーケンにクリィミーマミ呼ばわりされて憤慨しているのが実に面白かった。ちなみにドラクエは二年半ほど続けているらしい。長い。

ワインライダーからは怒涛だった。ワインライダー、労働讃歌までは予想出来たものの、まさかここで「戦え!何を!?人生を!」をやってくれるとは。これは本当に。「ワインライダー」をやることが増えてから聴く機会が減ったため、無論ワインライダーも好きなのだけれど、これも聴きたいな、やって欲しいなと思っていただけに感無量。しかも、両方聴けて、さらに労働讃歌まで! 喜ばないわけがない。

釈迦で大暴れし、トゥルーロマンスでゆったりして本編終了。わりと、最後がゆったりな曲で終わるのは好きである。

そしてアンコール。おいちゃんと橘高さんがサンタの格好で現れて会場大興奮。特に橘高さんは頭におリボンまでつけているのだからすごい。偉い。似合っているのがまたすごい。そのおリボンをオーディエンスの群れの中に投げる前、金具がついていることを皆に示し、手に取るとき怪我をしないよう注意を促すあたり、実に親切である。ありがたい。

橘高サンタは白い袋からお菓子を撒いてくれた。そのとき手にしたものが写真のグミである。非常に嬉しい。いつか食べなければならないが、しばらくは食べられないだろう。数年前のイブイブライブで手にしたキャンディも未だに食べられていないのだから。未だに大事に飾っている。

デコイとクレーターにしっとりと聴き入った後、長谷川さんが大働きの「恋の蜜蜂飛行」! 大好きだ! 聴けて嬉しいなぁと喜んでいるところで「サンフランシスコ」! 大変贅沢なライブで、終わり際には橘高さんのフライングVに触ることも出来て、嬉しいことが盛りだくさんの一夜であった。最高のエンターテイメントである。

そうそう。最後に橘高さんが、ステージに落としてしまった袋入りの飴を拾い上げ、袋を破き、中から出した飴を指で摘んでオーディエンスに渡してあげる…と見せかけてパクッと口に入れてにっこり笑ったのがキュートだった。しかしここで終わらない。てっきり食べたのかと思いきや、緑の飴をオーディエンスの群れの中にぷっと吐き出して与えたのである。貴公子だ! 紛れもない貴公子だ!! と己は興奮した。あれはきっと、オーケンにも内田さんにもおいちゃんにも出来ない。実に、格好良かった。



日記録2杯, 日常

2014年12月21日(日) 緑茶カウント:2杯

あぁ、寒い寒い。巻きつけたマフラーを首元に引き寄せ、冷たい風が吹く中を小走りで駆け抜ける。夜の二十三時。駅の周辺では酒に浮かれた人々を見かけたが、少し離れると人気も無くなる。とはいえ、自販機とコンビニと街灯の灯りがあるため真っ暗闇では無い。歩くのに不自由は無いが音が少なく、寂しい夜だ。無論ここに留まる理由も無く、己は我が家を目指してひたすら真面目に歩いていた。寒さの中で。

寒いのである。とにかく寒いのだ。とても意味無く立ち止まる気になれない寒さだ。コートを着ていたってマフラーをつけていたって寒いのだ。何もつけていない耳は言うまでもなく寒いのだ。そんな寒さの中、コンビニと駐車場の間の細い路地の隅で、成人男性二人が向かい合って座り込み、トランプをしているのを目撃し、思わず己の足は止まりそうになった。驚きのあまりに。

二十代、せいぜい三十といった面持ちだ。若いが、馬鹿をやるほど若すぎるようには見えない、一見すると常識的そうな格好の二人である。しっかりと防寒具に身を包み、トランプの「スピード」に興じている。それらを早足で駆け抜けながら見た。思わずあからさまに凝視してしまった。向こうも気付いたようだった。つい声をかけそうになったが飲み込んだ。おい、何故そこで、しかもこの真冬の寒さの中でトランプをしているのだよ。

これを見たのは二週間ほど前のことだが、以来二人がトランプ遊びをする姿は見ていない。暖かい季節に見てもそれは不思議な光景だっただろうが、よりにもよって凍てつく寒さの中で見た光景。あの道を通るたびにあの二人のことを思い出す。彼らは何ゆえそこでトランプをしなければならなかったのか。気になって仕方が無い。しかし、きっと、もしもう一度彼らがスピードをしている姿を見かけても声をかけずに通り過ぎるだろう。

これだから日常は面白い。