路上でスピード、ただしカードの
2014年12月21日(日) 緑茶カウント:2杯
あぁ、寒い寒い。巻きつけたマフラーを首元に引き寄せ、冷たい風が吹く中を小走りで駆け抜ける。夜の二十三時。駅の周辺では酒に浮かれた人々を見かけたが、少し離れると人気も無くなる。とはいえ、自販機とコンビニと街灯の灯りがあるため真っ暗闇では無い。歩くのに不自由は無いが音が少なく、寂しい夜だ。無論ここに留まる理由も無く、己は我が家を目指してひたすら真面目に歩いていた。寒さの中で。
寒いのである。とにかく寒いのだ。とても意味無く立ち止まる気になれない寒さだ。コートを着ていたってマフラーをつけていたって寒いのだ。何もつけていない耳は言うまでもなく寒いのだ。そんな寒さの中、コンビニと駐車場の間の細い路地の隅で、成人男性二人が向かい合って座り込み、トランプをしているのを目撃し、思わず己の足は止まりそうになった。驚きのあまりに。
二十代、せいぜい三十といった面持ちだ。若いが、馬鹿をやるほど若すぎるようには見えない、一見すると常識的そうな格好の二人である。しっかりと防寒具に身を包み、トランプの「スピード」に興じている。それらを早足で駆け抜けながら見た。思わずあからさまに凝視してしまった。向こうも気付いたようだった。つい声をかけそうになったが飲み込んだ。おい、何故そこで、しかもこの真冬の寒さの中でトランプをしているのだよ。
これを見たのは二週間ほど前のことだが、以来二人がトランプ遊びをする姿は見ていない。暖かい季節に見てもそれは不思議な光景だっただろうが、よりにもよって凍てつく寒さの中で見た光景。あの道を通るたびにあの二人のことを思い出す。彼らは何ゆえそこでトランプをしなければならなかったのか。気になって仕方が無い。しかし、きっと、もしもう一度彼らがスピードをしている姿を見かけても声をかけずに通り過ぎるだろう。
これだから日常は面白い。