日記録0杯, 日常

2017年2月14日(火) 緑茶カウント:0杯

青空の下、空を仰いで眠る人がいた。

風がなく、普段よりも気温の高い冬の昼。ある一つのビルの敷地内で見かける老人は、防寒着に体を包み、両手に杖をついて一歩一歩ゆっくり歩いていた。傍らには車椅子。怪我をしたのか、病気をしたのか、由縁はわからない。風の吹く日も雪の降りそうな日も慎重に歩を進める老人を視界に捉える日々。彼はいつも歩いていた。

その彼が車椅子に背を預け、日だまりの中で眠っていた。ポカポカとあたたかい日だった。ビジネス街のただ中で天を仰いで眠る姿は現実味がなく、穏やかに見えた。

ある日の夜、真っ暗闇を歩いていると街頭の下、道の端の段差に腰掛ける人がいた。背を丸め片足を投げ出す様子から編み上げ靴の紐を結んでいるのだろうと思った。その足首は掴めるほどで、日が出てもいないのに鈍色に光って見えた。義足の調子を整えていたらしい。彼はさくさくと手を動かしていて、一分後には裾を下ろして立ち上がりそうな気楽さが漂っていた。それこそ、切れた靴紐を取り替えるような。

何もない冬の日に見た平らかな景色である。その空気の色を、あぁ、好きだな、と思った。心地良い色だった。



未分類2杯, インストアイベント, 内田雄一郎, 非日常

いやあ危なかった。家でだらだらしながら整骨院に行く準備をしていて気付く。そうだ! 今日は内田さんのインストアイベントの日だ! だらだらしている場合ではない、ってんで、一日の予定とルートを決めてさくさく整骨院に向かったのが十三時頃か。それから少々の買い物を終えて家に帰り、曲の感想を手紙にしたためて再度家を出た。目指すはタワーレコード錦糸町店。

ガタンゴトンと電車に揺られながら内田さんのアルバムを聴き返す。筋肉少女帯のベーシスト・内田雄一郎による筋肉少女帯のテクノカバーアルバムがピコピコビヨンビヨンフワフワと耳を震わす。今日はその発売記念イベントであり、内田さんのトークの後にはサイン会が開かれる。もともと予定していた楽しみをうっかり忘れかけていたおかげで降って湧いた楽しみに感じる愉快さ。先週の水戸さんの100曲ライブでも、水戸さんとワジーは自分達の活動や新譜もそっちのけで内田さんのアルバムについて熱心に語り、宣伝していた。同じミュージシャンが衝撃を受け、語らずにはいられなくなる作品の、その生まれた由縁を今日聴けるかもしれない、と思うとわくわくする。

そうして会場に着いたのがイベントの三十分前か。タワーレコードの入り口に足を踏み入れようとしたそのとき、目の前にビートサーファーズの三浦さんが立っていて、己の横をすっと通り過ぎた影はどこか見慣れた背格好。あ、と思ってその背中を見れば今日の主役、内田さんその人であった。ほぼ同時に会場入りすることになろうとは。偶然とはいえちょっと嬉しい。

ステージの前には既にたくさんの人が並んでいて、もっと早く来れば良かったなと思いつつもそれなりに視界は良好であった。イベントが始まる前から内田さんはひょいひょいとステージに姿を現し、機材の設置や調整を行っていて、またひょいひょいと既に消える。そんな様子を眺めつつ待つこと三十分。十八時になりステージに現れた内田さんは着替えを済ませ、何とジャケットと同じ格好に! おおー! 格好良い!

ステージにはパソコンと内田さん愛用のiPad。iPadに画像を映し、トークとともに画像を切り替え、ちょっとしたスライドショーのような楽しさがあった。このアルバムがどうしてこうなったか、と元ネタの解説がメインで、偏った音楽しか知らない自分にはとても新鮮だった。まずジャケットは1968年にリリースされた「Switched on Bach」のパロディをしようとしたが、結果的に今のデザインになったこと。「Switched on Bach」にジャケットに写っているバッハのおじさんこそが作者のカルロスその人かと思いきや、全然違う人だったこと。そしてカルロスが性別適合手術を越え女性に戻ったとき、「あのバッハのおじさんが!?」と内田さんは衝撃を受けたことが語られた。

この話を聞きつつ、もしかして平沢進のアルバム「Switched-On Lotus」のタイトルもそこから来ているのかなぁ、と思った。

ちなみに「Switched on Bach」のセカンドではバッハのおじさんは宇宙に行っているので、「SWITCHED ON KING-SHOW」もセカンドが出たら宇宙に行っているかもしれないそうだ。次回作がますます楽しみである。

元ネタ解説では主に「イワンのばか」について語られた。イントロはELPの「タルカス」とイエスの「危機」を同時に流すイメージで作られたとのことで、それぞれのイントロと、一緒に流したバージョンも聴かせてくれた。ここで内田さん、「自分だったら三十分聴いていられるけど……」というようなことを語って笑いながらスイッチを切った。内田さん、本当に好きなんだなぁ。

また、メタルですごく盛り上がるところをふにゃんふにゃんした感じにしたら面白いんじゃないか、ということでクラフトワークのMIXを元にアレンジしたそうで、このあたり、是非橘高さんの感想を聴きたいところである。

メタルと言えば、筋少のアルバムを取り込むとドドンと「METAL」と分類されるそうで、「SWITCHED ON KING-SHOW」は何に分類されるのだろうと思いつつ取り込んだら「POP」と表示されたそうだ。そこで内田さん「これからはポップミュージシャンとして生きて行きます」と冗談めかして語っていた。

そして楽しい時間は過ぎ、トークライブは終了。いったん内田さんはステージからいなくなり、会場の準備が整い戻ってきたと思ったら……黒い帽子に黒いマスクの黒尽くめ! 何故か目元しか露出していないという徹底振りである。しかしいつもの眼鏡は外されていたので目元に限って言えば若干露出が増していた。何故だろう。緊張していたのだろうか。

手紙を渡し、サインをしてもらいつつ内田さんと会話出来たのが嬉しかった。あぁ、ドキドキしたけどちゃんと話せて良かった! 握手をしてもらってその場を離れ、ふわふわしつつ反芻したのは「こういうのが楽しいお年頃」という内田さんの言葉。良いなぁ。いくつになっても新たな楽しいことを見つけ、遊べる心持ちは実に良い。そうして出来上がったものが同業者さえ驚かせる衝撃の一作という面白さ。筋肉少女帯の内田さんにはいつも安定感と安心感がある。しかしそれだけではない衝撃的なスパイスをぶっこんでくるバランス感。これこそが彼の魅力なのだろうな、とつくづく思った。次回作も楽しみである。



未分類14周年企画

2003年2月11日に開設したこのサイトが14周年を迎えました。人間で言えば中学二年生です。ハイハイをしていた子供が学生服に袖を通すまでに成長し、中二病を発揮して飲めないブラック珈琲に手を伸ばすほどの年月、自分は何をしていたのだろうと思い返してみれば毎日毎日カタカタと日記を書き続ける日々でした。最初はイラストサイトのつもりだったのに気付けば日記サイトになっていたのだから驚きです。さて、14周年と言うと半端ではありますが、先日アクセスカウンタが10万ヒットを迎え、これが地味に嬉しかったのでちょっとした企画を行うことにしました。

企画と言ってもただの訪問者アンケートですが、アンケートにご協力いただいたお礼に、「これについて語れ!」「あれについて書いて!」といったリクエストに応えて何かしらの記事を作成します。無茶振りするなら今のうちだぜ。

■渦輪み騙しアンケートページ※受付は終了しました。
※設問数は8問で、およそ5分程度の時間がかかると思われます。
※リクエストフォームはアンケートページの最後にあります。
※リクエストをせず、アンケートにだけ答えることも可能です。

■アンケート期間
2017年2月21日(火)まで

■リクエストについて
アンケートにご協力いただいたお礼に、日記・記事・文章のリクエストがございましたら承ります。いただいたリクエストを反映した記事はサイト上にアップし、Twitterでアナウンスしますが、個人的に連絡してほしい場合は連絡先(メールアドレスかツイッターID)をお知らせください。

※リクエストの例 …「○○をお題に日記を書け」「△△の感想」「××についてどう思うか」「○○をお題に詩を綴れ」などなど、単語だけでも良いですし、具体的な指定でもOKです。ご自由にどうぞ。
※重複するリクエストをいただいた場合は合体させる場合があります。
※全く知らないものについてのお題の場合は妄想力を爆発させて頑張ります。
※猥談系はご遠慮ください。



未分類

■2月6日23時のヤヨイさんへ

お返事が遅くなり申し訳ないです。ツイッターのオーケンイラストをご覧くださったんですね! ありがとうございます。あの絵が「音楽の人」の表紙と気付いていただけるとは、ありがたいやら嬉しいやら。自分は再結成前に筋少を知ったので、あの本は古本屋をめぐって手に入れたものでした。橘高さんのイラストはもう、あのライブでの高く蹴り上げるシーンがあまりにも格好良く、自分にとっての橘高さんを象徴するポーズだったので描きました。そのように言っていただけてとても嬉しいです。

「蜘蛛の糸」にあるようなオーケンの視点ってすごく良いですよね。まさしく自分も「蜘蛛の糸」のような曲にこそ励まされる人間なので、オーケンに出会えたことを本当にありがたいと思います。心の支えになってくれると言うか。

自由気ままなサイトですが、また是非遊びに来てください。お待ちしております!



日記録0杯, 日常

2017年2月6日(月) 緑茶カウント:0杯

お酒を呑んでいる。ビールを二本に、多分これから赤ワインを一本。そうしてゆらゆらと脳を揺らしながら、まったりと誕生日を祝っている。

今日はオーケンこと大槻ケンヂの五十一歳の誕生日。おおよそ二十歳年上の、憧れであり、血肉であり、己の骨となってくれた人の誕生日。きっと自分はオーケンを知らなくても生きていくことは出来ただろう。その道もまた良いものだったかもしれない。しかし今この道を生きる自分にとって、オーケンという存在を知ることが出来たのは幸福に他ならず、あぁ、出会えて良かった、としみじみするのである。

あなたのおかげでたくさんのものを得られました。心の持ちようも覚えました。それはきっと、もしかしたらあなた以外の別の人から別の方法で学ぶこともあったかもしれない。だけれども、この道で良かったと思える今が幸せなのです。

ハッピーバースデーオーケン。来年も再来年も、どうかいつまでも健康に。