2017年2月14日(火) 緑茶カウント:0杯

青空の下、空を仰いで眠る人がいた。

風がなく、普段よりも気温の高い冬の昼。ある一つのビルの敷地内で見かける老人は、防寒着に体を包み、両手に杖をついて一歩一歩ゆっくり歩いていた。傍らには車椅子。怪我をしたのか、病気をしたのか、由縁はわからない。風の吹く日も雪の降りそうな日も慎重に歩を進める老人を視界に捉える日々。彼はいつも歩いていた。

その彼が車椅子に背を預け、日だまりの中で眠っていた。ポカポカとあたたかい日だった。ビジネス街のただ中で天を仰いで眠る姿は現実味がなく、穏やかに見えた。

ある日の夜、真っ暗闇を歩いていると街頭の下、道の端の段差に腰掛ける人がいた。背を丸め片足を投げ出す様子から編み上げ靴の紐を結んでいるのだろうと思った。その足首は掴めるほどで、日が出てもいないのに鈍色に光って見えた。義足の調子を整えていたらしい。彼はさくさくと手を動かしていて、一分後には裾を下ろして立ち上がりそうな気楽さが漂っていた。それこそ、切れた靴紐を取り替えるような。

何もない冬の日に見た平らかな景色である。その空気の色を、あぁ、好きだな、と思った。心地良い色だった。



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