日記録1杯, 日常

今度仲間と独立することになったので来月でこの店を辞めるんです、と言われたのは数ヶ月前のこと。何回か担当してもらった美容師が髪を切りながら笑う。今度ハガキを出すので良かったら来てくださいね、と、嬉しそうに。新しい店の場所は離れたところだった。自分は店を変える気は無かったので、頑張ってくださいねと返した。

そして一ヶ月半ほど経ち、いつもの店に行ったら驚いた。店にはオーナー一人だけ。聞くと、ここで働いていた美容師全員がごっそり抜けていなくなり、皆で独立して新しい店を構えたのだそうだ。仲間と独立するとは聞いていたが、せいぜい二、三人かと思いきや一つの店から丸ごととは。「突然皆辞めちゃったから手が足りなくて困っちゃって」とオーナーはため息。その日はシャンプーからカット、ドライヤー、床に落ちたゴミの片付けまで全てオーナーが一人でこなした。

どんな事情があったか知らないが、元担当の美容師に対して心象が悪くなったのが正直なところ。だが、まぁ社会とはそういうものなのかな、と思ってから一週間か二週間後。元担当から新店へのお誘いのハガキが届いた。新店の住所から。配達日指定などはされていないごく普通のハガキが。店を辞めて一ヶ月以上経ってから。

……持ち出したのか? 名簿を。

ハガキを出すと言ったとき、てっきり元の店にいる間に送ってくるものと思っていたが。自分は確かに初めて来店した際に個人情報を記入して渡したが、それは店に提出したものであって、美容師個人に渡したものでは無いぞ。

何だかなぁ、と思いつつハガキを処分した。それから髪はオーナーのお世話になることとなった。オーナーはカットが上手く、話が面白く、そしてマッサージの腕が非常に素晴らしいため、美容師が丸ごと抜けてしまったことは気の毒だが、腕の良いオーナーに担当してもらえるようになったので、自分としてはかえって良かったと密かに思っていた。店を変える気はもちろん無い。

それからまたしばらく経ち、ハガキのことなどすっかり意識の外に漏れた昨日、夜道を歩いていたらすれ違いざまに勢いよく呼び止められた。見ればそれは元担当の姿。そこはあの何屋かさっぱりわからない謎の料理屋の店先で、どうやら今から呑み会をするところらしく「仲間」と思われる人が暖簾を潜ろうとするところだった。呼び止めた元担当は叫ぶように言った。

「ハガキ!! ハガキ送ったんですけど、ハガキ見ました? 届きました!?」

見たけど捨てましたよ、とはもちろん言わず。名簿についても特に言わず。ただ彼女の切羽詰ったような表情を見て、彼女の中で自分がその店に通うべきことになっているのが不思議なものだ、と思いつつ、呑み会ですか良いですね楽しんでくださいね、と言って別れた。

他のお客さん達はどの程度新しい店に移っていったのだろうか。わからない。

日記録3杯, 日常

もうちょっと柔らかく言えば良かったかな、と若干後悔している。

結論から言うと友人と絶交したのである。高校で同じ部活になり、高校時代はさほど親密に付き合っては無かったが、偶然同じ大学に進むこととなり、とはいえ自分は浪人したため一年遅れての入学となったが、そこから呑みに行ったり遊びに行ったり、相談したり相談に乗ったりと、付き合いが始まったのだ。

大学卒業後は住む場所も遠くなったため、頻繁に連絡を取ることは無くなったが、盆や正月といった機会に会ったこともあった。しかしなかなかタイミングが合わない。結局、大学卒業後に会えたのは二回だったか。一回は共通の友人の結婚式、二回目は二人で約束を取り付けてカラオケで。

会えなかったが去年の夏と今年の正月にも約束はした。ところが夏は友人が体調を崩し、当日にキャンセルの連絡。体調不良じゃ仕方が無いと納得したががっかりした。そして正月、どうせなら皆で集まろうかと企画したものの、また当日になって「行けない」の連絡。しかも今度は体調不良では無い。実は今日集まる面子の中に会いたくない人がいたため行けない、というものだった。

もうがっかりである。せめてそれを最初に言ってくれれば調整がついたのに、どうしてよりにもよって当日の朝に言うのか。こんな機会が無ければ滅多に会えない距離にあると言うのに。

そしてがっかりすると同時に、「友人に会いたい」という欲求が熱が冷めるように消えて、一切の関心が無くなってしまった。

またタイミングが悪いことに、そのときはやたらと周囲の友人達がドタキャンや遅刻をしまくっていて、というのももともと結構時間にルーズな友人が多かったのだが、それにしてもこれはどうかと思うほど一定期間にドタキャン・遅刻が集中し、普段よりも余計に怒りを感じやすくなっていたので、それも関心が消えた原因の一つだろう。

その数ヵ月後に友人から結婚報告のメールが来たが、メールの返信を書く気力どころか、お祝いの気持ちさえも起こらなかった。もともと結婚式自体が苦手というのもあったが、何の感慨も生じない。ただ嫌な気持ちになって携帯電話を畳んだ。友人のことを嫌いになったわけでは無かったが、しばらく距離を置きたかった。

返信をしなかったので再び友人からメールが来たが、それも見なかったことにした。まだ何も言いたくないし、何もしたくないし、何もやる気が起きなかった。とにかくうんざりしていたのだ。

といったことを全て友人に馬鹿正直に洗いざらい伝えたのが今日である。携帯電話に電話の着信があり、メールを送る程度の気力は回復していたので着信について問うメールを送り、結婚式について問われたときに、返信しなかった理由をを話さなければならなくなったため包み隠さず全部伝えた。

友人はドタキャンに関して自分の非を認めたが、今日までずっと返信せず理由も話さず無視を続けていたことに対して怒りと嫌悪を表明した。お祝いの一言も無かったことを怒った。そこへまた自分が「当時は返信する気力もお祝いの気持ちも起こらなかった」ことを無神経に伝えたのである。

数通のメールのやり取りを終え、友人から絶交宣言を受けたものの、自分自身も友人への関心が薄れてしまっているためそこはあまりショックでは無いのだが、自らの対応に関してはまずかったなと後悔しつつある。とりあえず全部説明しようと思い何もかも伝えたが、今思うとあまりにも無神経だった。何でもかんでも話せば良いってもんじゃない。悪いことをしたと思う。

あー、だめだな。大切にしたかったんだけどな。失敗したな。

日記録0杯, 日常,

問題を先送りしている。

ここ数日朝食を食べ逃すことが多かった。故に毎朝食べていた食パンの消費が滞り、ふと表示を見るとまだ六枚ほど残っているのに「消費期限」が二日も経過。「賞味期限」ではなく「消費期限」。「賞味期限」なら「美味しく食べられる期間」を二日過ぎただけなのでまだ食べられるが、「消費期限」は「食べられる期間」を二日過ぎたということ。つまりこれは食べられない。しかしこんなに残っている。もったいない、何てことだ、どうしよう。

瞬間、反射的に食パンを冷凍庫に投げ込んでしまった。そして二日経過し冷凍庫を開けて思う。
で、この凍った食べられないパンどうすんの?

心底無駄な行動をとったとを理解しているが、下手に保存してしまったためより捨てるのが忍びなくなり、どうしたら良いかわからなくなった挙句、食パンをどかしてその下に埋もれていたアイスを取り出し美味しく食べたが本当どうすんだこれ。無論答えは一つのはずなのだが。阿呆なことをしてしまったものだ。後悔している。

日記録0杯, 日常

激しい寒暖差のせいか? 若干風邪気味。悪化させないよう気をつけなければ。

そのうえ疲労で視力が落ちている。危うい危うい。寝よう寝よう。

日記録3杯, 日常,

いっそのこと、一生それを口にせぬまま生涯を閉じてしまうのも面白い。

と、思ってから、偶然今までの人生の中で食べる機会に巡り合わなかった菓子「カントリーマアム」を一生食べずに死ぬことを小さな目標として掲げていたのだが、「良かったら召し上がってね」との言葉とともに二つ頂いてしまい、我ながら非常にくだらないとは思うが、どのように対処しようか悩んでいる。

それは間違いなく善意であり好意であって、有難いことであるのは間違い無いのだが、受け取ったときの心情を正直に述べるなら動揺した。そして菓子を手にしつつ、まぁこれも良い機会だし、確かにあれを一つの目標としたが、意固地になるようなものでは無い。ここは美味しく味わってしまってカントリーマアムに対する執着なんぞ忘れてしまえばよろしかろう。

と、思いつつ掌のカントリーマアムを静かにテーブルの上に置いた。
自分は結局カントリーマアムを食べることが出来なかった。

阿呆らしいこととは思うが、「一生カントリーマアムを食べずに死ぬ」目標を達成することを、己は密かに楽しみにしていたのだ。くだらないからこそこれを頑なに守りたかったのだ。だからどうしても食べられない。食べないことでカントリーマアムへの義理を貫きたい。しかしカントリーマアムへの義理って何だ。そもそもカントリーマアムとは接点がほとんど無かったことが事の発端であったと言うのに。もう何だかわからない。

そういうわけで、カントリーマアムが欲しい方、いらっしゃったらお申し出ください。あげます。