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■12月22日1時の方へ

こんにちは、ご連絡いただきありがとうございます。いただいたメールアドレスにメールをお送りしたのですが、戻ってきてしまいましたので、この場からご連絡をさせていただきます。先ほど記事を修正いたしました。

記事→http://uzuwamu.x0.com/?p=2887
ツイート→https://twitter.com/uzuwauwo/status/678986993167040512

十四松と同じ髪型と服装の方をお見かけしたので、十四松と思い込んでしまいました。申し訳ないです。
アニメのコスプレをライブ会場で見かけたと書いたことについては、特にグループを貶める意味合いはなかったのですが、受け取り手への配慮が欠けておりました。

せっかくの楽しいライブの後に、もやもやを抱かせてしまったことをお詫びいたします。 もし他、何かございましたらお手数ですが下記のアドレスまでご連絡ください。

uwo★uzuwamu.x0.com(★→@)

何卒よろしくお願いいたします。

渦輪ウヲ



未分類3杯, M.S.SProject, 初参戦, 非日常

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巡り合わせとは不思議なものだ。まさか、パシフィコ横浜国立大ホールという大きな会場で、五千人の観客に見守られながらゲームに勤しむ男四人を見つめることになろうとは思わなかった。

このとき己は、あれ、もしかしてこれってコンサートじゃなくってゲーム実況のイベントだったのか……? と若干混乱していた。

きっかけは「あろまさんぽ弐」を買ったこと。そしてその感想をサイトに載せたこと。ふと手にとって買った本がちょっと変わっていて面白かったので、軽いノリで感想記事を載せたらびっくりした。いきなり訪問者数が爆発したのである。

正直に言おう。一瞬炎上したのかと思った。

ただ、様子を見たところ好意的な受け止められ方をしているようだった。M.S.S Projectを知らない人間が「あろまさんぽ弐」を読んだことを喜んでくれたらしい。なるほど。これはあれだな。筋肉少女帯が夏フェスなどのイベントに出たとき、筋少ファン以外の人が「筋少面白かったー」と気軽にツイートした途端、筋少ファンが怒涛のようにRTしまくったりお気に入りに入れまくったりして、ツイートした人をびびらせるというあの現象と同じことが起きたのだな、と納得。わかる。確かに知らない人が見てくれるってのはとても嬉しい。

そしてその後は落ち着き、記事のスクリーンショットが転載されて「あちゃー」と思ったりしたこともありつつ平和に日々が過ぎた。ただ、検索に引っかかりやすくなったのだろうか。M.S.S Project関連で何かしらの動きが起こるたび、うちのサイトに来る人が増えるという謎の現象が起こるようになった。そのため何となく、M.S.S Projectという存在を意識する日が続き、ある日検索キーワードによってライブが行われることを知ったのだった。

ここで決断した。よし、ライブに行こう。

当時、己は「あろまさんぽ弐」「あろまさんぽ参」しか読んでいなかった。動画を見ていないため彼らについてもよく知らない。一番馴染み深いあろまほっとすら後ろ頭の印象ばかりである。後ろ頭の印象って何だよ。そんな中でじわじわと興味が湧いてきていた。そこへライブ開催の情報。だったらもう行くしかない。生で観られる機会を逃す術があるものか。

どんな音楽をやる人達なのか知らずにチケットを取るってのも妙な話だ。順序が逆になりつつも新譜を購入してみると、それは打ち込み系のピコピコ音楽とロックと初音ミクがごっちゃになったなかなか楽しいアルバムだった。とすると興味が湧くのはこの音楽をライブでどのように演奏するかということで、打ち込み系というと己は平沢進くらいしか知らないが、あの人はライブ用にアレンジした楽曲を流しながらレーザーハープを操って視覚的に盛り上げ、ギターと圧倒的な歌声で魅せてくれる。M.S.S Projectはどのようにするのだろうか。うーん気になる。

アルバムは結局「M.S.S.Party」と「M.S.S.Planet」の二枚だけ聴き込んだ。現在発売されているのは四枚なので、聴こうと思えば全部サラーッと予習することは出来そうだが、その聴き方ではもったいなく感じられたのである。まぁ、ライブで知らない曲に出会うのもそれはそれで楽しいので良し。気に入った曲に出会ったらまたそれを買えば良いのである。

と思っていたら。コンサートが始まると思っていたら。広いステージの中央に置かれたテーブルに寄り集まってゲームを始めたからびっくりした。

ゲームはモンスターハンター。やったことがないのでよくわからないが、グラフィックがとても綺麗だった。何せ自分はプレイステーションで時代が止まっている人間なので。モンスターの鱗とかすげー。

それにしてもまさかゲーム実況なるものを初めて見るのがパシフィコ横浜になるとは夢にも思わなかったぜ……。

ちなみに席はかなり良い席だった。自分の座席を確認した途端、来年分の運まで使いきってしまったんじゃないかと思い、若干頬が痙攣した。やばい。ちょっと興味を持って来た程度の人間がここにいて良いのか。どう考えても場違いじゃないのか。うわあもっと早く来て物販でペンライト買っとけば良かった……と後悔した。

観客は若い女性が多く、M.S.S Projectを模したぬいぐるみや缶バッヂをつけている人や、般若の面をつけている人がいて楽しげである。当たり前のこととわかっているのに、どのミュージシャンのライブに行っても毎度毎度感嘆してしまう。この会場にいる人全てがM.S.S Projectを好きなんだなぁ、と思って。好きな人で凝縮された空間である。何だかとてつもないなぁ。

そんな中で「おそ松さん」の十四松のコスプレを見かけたときはものすごくびっくりした。思わず二度見した。
※追記 …てっきり十四松のコスプレかと思ったのだが、KIKKUN-MK-IIのイメージカラーである黄色のパーカーを着ていた方だったそうである。勘違いをして申し訳ない。お詫びして訂正いたします。

ステージにはテーブルと椅子が並べられ、その奥には「MSSP」のロゴが入ったレンガの壁が立っており、さらに後方には巨大なスクリーンが吊り下げられている。こういう舞台セットを見るとわくわくしてたまらない。

そして開演。M.S.S Projectの四人が森の中を散策するムービーがスクリーンに映る。類推するに、一つムービーを撮っていて、ツアーの会場ごとに違うアテレコをしているらしい。今回は横浜が会場ということで、中華街とシュウマイを推した内容になっていた。

ムービーが終わり、歓声の中現れたのがKIKKUN-MK-II。ムービーと同じ白いローブを羽織っている。この人は普通の人間のように見える。いや皆普通の人間なんだけど。綺麗な顔立ちの人だなぁ、と思って見ていると、舞台袖から覆面が転がり込んできた。マジで文字通り転がり込んできた。

うわーーー本当に覆面だーーーーー! よくわからない感動をしてしまう。あの本に載っていた覆面の人が本当に覆面で現れた! しかも喋ってる! よく喋れるな! そんでもって登場のタイミングを間違えたらしい! 一回袖に戻ってまた転がり込んで来た! アクティブだな!

KIKKUN-MK-IIとeoheohの自己紹介が終わり、次に現れたのは般若である。暗闇の中から真っ白な般若の面を被った人がスキップしながら登場してきた。おおう本当に般若だ般若がスキップしてるよ……動作はキュートなのにめっさ怖いな……。本のイメージと目の前の人物のイメージが微妙に重なるようで重ならない。そうだ、うん。この人確かに般若なんだけど、やっぱ後ろ頭のイメージが強いから正面から見るとピンと来ないんだ。なるほど……。

最後に現れたのがFB777、だったかな? もしかしたらあろまほっとと順番が逆かもしれない。この人はサングラスをしているだけなのでとても人間らしい。KIKKUN-MK-IIと並んでいると安心感がある。

四人揃ったところで寸劇が始まり、その流れでゲーム実況が行われることが発表されたのだった。盛り上がる会場! 度肝を抜かれる自分! そっかゲーム実況もやるんだっていうかもしかしてゲーム実況がメインなのか!? あれーーーー!?

で、冒頭に戻るのである。ゲームを実況する、というよりも、ゲームをしながらトークをする、といった方がピンと来るかもしれない。スクリーンは五つに分割され、一番大きい中央のマスにゲーム画面が映し出され、あとの四つにゲームをする四人の顔が映る。映るといってもメンバーの二分の一は顔が隠れているのであるが。

わいわいしながらゲームを進める四人に歓声や応援の声が起こる。このゲームを知らないので己はイマイチ乗れなかったが、友達の家で友達がゲームをやる姿を観ながら、皆であーだこーだわいわい言っている感じに近いように感じられた。ちょうど数ヶ月前、友人宅でロックマンをやりながら酒を呑んだことがあった。そのときの雰囲気に似ている。

このままゲーム実況だけでライブが終わったらそれはそれで面白いなぁ、と思っているとボスを倒してゲームは終了。ついにお待ちかね、コンサートタイムになると発表された。おおう。演奏あった! 良かったーーー。

ステージの準備に時間がかかるため、メンバーは退場。代わりにスクリーンに映像が映し出された。横浜のヒーローを作る、というお題でメンバーそれぞれが描いたイラストにメンバーが言いたい放題言う、という内容だった。これ、実にありがたかった。対バンのライブに行くと転換の時間が何より苦痛で、ゆえに己は対バンライブにはあまり行かないのだが、こうして空いた時間まで楽しませてくれるのはとても嬉しい。隅々まで楽しませようとしてくれるサービス精神に感嘆する。

ちなみにKIKKUN-MK-IIはカイジ風の中華一番、FB777は頭がシュウマイ、耳がプリンアラモード、胸毛はナポリタンで、ドリアを差し出すヒーローを作り、eoheohは船を模した正統派ヒーロー、あろまほっとは神奈川県の形をした犬のような横浜県を作っていた。また、eoheohはフォトショップを活用して背景に七色の集中線をつけていたのだが、それについてずるいとペイントしか持っていないメンバーになじられていた。

さて、ムービーは終わったのだが、ステージは殺風景なまま。楽器らしきものはどこにもない。打ち込み系だからだろうか。しかしキーボードすらない。どのように進行するのだろう。と思っていたら、レンガの壁が動き出し、門が開くように空間が広がった。焚かれるスモークの奥にはベース、ドラム、キーボード、ギター!

人が増えた!!

サポートミュージシャンの登場である。中央にはギターを抱えたKIKKUN-MK-IIに、ショルダー・キーボードを構えるFB777。左右には太鼓を前に、バチを持つeoheohとあろまほっとの二人。始まったのはちょっと和風のテイストが入っている「Shadow Hearts」! なるほど、それで太鼓なのか!

eoheohとあろまほっとはパフォーマーの位置づけらしく、バチは振っていたが音を鳴らしてはいなかった。空間には初音ミクの歌唱が響く。生演奏出来るところは生演奏でやるようだ。ちょっとこれは予想外。格好良いなぁ。

二曲目は最初、何の曲だかわからなかったが「幾四音-Ixion-」だった。CDではかなり声を加工しているこの曲を生声で歌いきっている。それだけでも印象が違うのだが、曲もバンドで演奏するのに合うようにアレンジされている。ちょっと歌いにくそうにしているのが気になったが、何よりアレンジの違いが楽しかった。

「Arrival of Fear」もKIKKUN-MK-IIとFB777による歌唱で、eoheohとあろまほっとはパフォーマンスに徹していた。ヒュンヒュン回すと文字や絵柄が浮かび上がる光る棒や、煙を吐き出す銃を構えて終始会場を盛り上げてくれる。光る棒をヒュンヒュン回しているとき、eoheohは縄跳びを飛ぶような動作をしていて、そのコミカルな動きが妙に印象に残った。

そういえば、KIKKUN-MK-IIもFB777もアイドルのような衣装で、eoheohもサングラスに覆面をしつつも帽子を被りいかにもステージ衣装といった様子だったのだが、あろまほっとだけステージ衣装らしくないピンクのシャツだった。一人だけ普段着として着られそうな服である。ピンクのシャツを着て光る棒をヒュンヒュン回しながらステージを歩き回る姿はどこかキュートな感じがするのに、顔は般若で何回見ても怖いのが異様だった。

「Phew!」の前に、「これはゾンビの曲です」といった前置きが入った気がする。わりとのどかなイメージの曲だったが、ゾンビ曲だったのか……。

楽しかったのが「ENMA DANCE」。これこれ! この曲好きだから演奏してくれて嬉しかったなぁ。KIKKUN-MK-IIが「踊れ!!」と叫んだ瞬間、会場が沸き立ち跳ね上がる。照明演出も素晴らしかった。この曲に限らず、カラフルな光線がステージと会場を色とりどりに染め上げて、さらに観客の振るペンライトが彩りを添える。華やかだったなぁ。

次の曲は知らない曲だったが、一発で覚えることが出来た。「きっくんのテーマ」とのことで、会場のペンライトの色が黄色一色に染められる。KIKKUN-MK-IIのイメージカラーのようだ。そしてアップテンポのノリノリの曲が始まり、「きっくん! きっくん!」と大合唱! すげー楽しい! この曲が入っているCDを後で買おう。

間奏ではメンバー紹介が入り、サポートメンバーを一人ずつ紹介。ベーシストは何故か下痢であることをやたら強調されていた。また、あろまほっとによるコールアンドレスポンスも。「女子のみなさ~ん!」と大声で呼びかけると会場が応える。何故かeoheohも応えメンバーに突っ込まれる。「男子のみなさ~ん!」と呼びかけると会場の男性陣が応え、またもeoheohも応え、「お前の性別は何なんだよ」とメンバーから突っ込みが入る。

さらに、「眼鏡のみなさ~ん!」と呼びかけ、眼鏡人口の多さが確認される。最後、「出会い厨のみなさ~ん!」というおいこらちょっと良いんかそれ、という呼びかけにも会場はレスポンスを返し、あろまほっとによって下ネタが突っ込まれた。おっさんじゃないですか。

この後だったかな?「僕ときっくんがホラーゲームをしても明るくなっちゃうんですが……」というような前置きとともに曲が始まった。これは知らない曲である。スクリーンには古びた洋館が映り、一度退場していたeoheohらしき人物は巨大な鳥の嘴がついた仮面をかぶり、あろまほっとは黒いマントを羽織ってカメラを構えて客席に下りてきた。あろまほっとは手にしたカメラをeoheohに向けながらじりじりと移動して行った。もしかしたらゲームを再現した演出だったのかもしれない。

本編最後はアルバム表題曲の「M.S.S.Party」! アルバムの中でも抜きん出て明るいというか、何でこの曲だけこんなにぶっ飛んでるんだろう、と不思議になる曲である。無論ライブにぴったりでコーラスでは大盛り上がり。いやー拳を振り上げて叫ぶって楽しいなぁ!

アンコールの三曲はどれも知らない曲だったが、一曲目は「M.S.S.Party」に負けず劣らず異色な曲で、誰の作曲だったのかが気になる。何となくFB777っぽくない感じはする。そういえばアンコールだったか本編だったか忘れたが、ホラーな曲でeoheohが被っていた鳥の嘴のマスクを、あろまほっとが般若の仮面の上に被っていたことがあり、それが異様に怖かった。どんな和洋折衷だよ。

アンコール二曲目は会場の全員が青いペンライトを振り、幻想的な空間が作られた。やっぱりCD全部聴いておけばよかったなぁ、と若干思いつつ最後の曲へ。これも前述の通り知らなかったが、演奏前にタイトルが発表されたので把握することが出来た。ここにいる皆がMSSPだよ! という思いを込めての「We are MSSP!」である。最後にふさわしい明るく盛り上がる曲で、「M! S! S ! P!」」とコールするところが非常に楽しかった。この曲だけ聴くとまるでアイドルの曲のようである。でも全体を通して見るとアイドルって感じじゃあないから面白い。かと言ってロックって感じでもないのだが。何と形容するのが近いのだろう。

演奏終了後、サポートメンバーも全員そろって横一列に並び手を繋いで深々と頭を下げる。メンバーも観客も皆楽しそうで、ステージを立ち去りがたいように見えた。自分もとても楽しかった。

生でM.S.S Projectを観てみた感想としては、皆が和気藹々としていて、大学生のようなノリがどこか懐かしく、それでいてサービス精神がたっぷりなのが魅力だなぁと思いつつ、やっぱり般若が怖かった。うん。まじまじと見てみたけどやっぱり怖いな。そして頭部をすっぽり布で覆った状態であれだけ動き回れるeoheohの肺活量ってすごい。苦しくないのだろうか。

ライブについては、今まで自分が行っていたライブと全く違った異色の空間で、自ら赴いていながら何なのだが、「迷い込んだ感じ」がドキドキした。あと、よく考えたら普段行くのは四十代後半から六十代のミュージシャンのライブばかりなので、若い人が跳ね回るハツラツとした姿も新鮮だった。演奏をしない人達がいかにして場を盛り上げるか工夫している姿も面白い。

欲を言えばもっと! もっと曲を堪能したかった。特に「SLIVER」が好きだからあれを聴きたかったなぁ。無論、M.S.S Projectの魅力の一つはゲーム実況にもあるのだろうが、曲をがっつり楽しめるライブもやって欲しい。今後やってくれないかな。

とりあえず、あと二枚のCDを買おう。ライブもまた、次回開催の際には参戦したいものである。実に楽しい異空間だった。



未分類0杯, 町田康, 非日常

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憧れの町田康のライブを、ついに念願叶って生で目にして感動したのがちょうど一ヶ月前だったが、まさかその一ヵ月後に憧れの町田康による朗読を楽しみ、サインをいただき、握手をしていただき、脳が爆発することになろうとは夢にも思わなかった。夢にも思わなかった。

あー、嬉しい。

今回のイベントはタイトルの通り。「御伽草子」を各々の作家の味で現代風に書き換えた絵本の完結記念イベントである。場所は神保町の東京堂書店六階のホール。一階のカフェでイベントチケットとドリンクを交換し、会議室を連想させる無機質な部屋で作家の登場を待った。

穏やかな面持ちで現れた町田康は、一ヶ月前に暗闇の中で見たときと印象が変わらなかった。向かって左から町田康、堀江敏幸、藤野可織、三名の作家が長机を前に座る。長机にはコップとマイクとおしぼりが用意されていたが、コップは伏せられたままで、朗読が始まる前に作家から突っ込みが入るまで水が入れられることはなかった。どうやらスタッフが水を入れるタイミングを逃したらしい。

まずはこの「現代版 御伽草子」の仕事を依頼されたときの状況がほわほわと語られた。町田康が司会の代わりを務め、二人の作家に質問をすることでトークが回っていく。聞いたところ、この「現代版 御伽草子」の仕事は随分ふんわりしたかたちで依頼されたようで、最初は御伽草子をもとに何を書くべきなのかも作家によっては曖昧な認識で、堀江さんは絵がつくことすら後から知ったそうである。また、文章の後に絵を用意しなければならないため、締め切りが普段よりもきつかったらしい。

「現代版 御伽草子」を書くにあたっての姿勢もそれぞれ違い、藤野さんは町田康と堀江さんの作品を読んだとき、やりすぎてしまったと焦ったらしい。このとき、いったいどんな話を書いたのだろうと気になったのだが、後の朗読でその思い切りの良い改変っぷりを理解し、こりゃあ確かにと納得した。

トークは全体的にふわっふわしていた。自分は読書量が多くないうえ、かなり一極集中なタイプなので堀江さんも藤野さんも存じ上げなかったのだが、堀江さんがとても個性的な人であることが感じ取られた。動物園に行ったらゾウとキリンとカバだけで時間が潰せて、ゾウは二時間見ていられるほど好き、耳と尻尾が動くと幸せ、と淡々と語り、どこかに危うげな空気が混じる。そして締め切りについてはかなりな方らしい。その「かなり」とは、締め切りをきっちり守る真面目なパンクロッカー町田康と比較して、という意味である。

町田康が現代風にアレンジした「付喪神」については、町田康の言葉のセンスが面白いと堀江さんの口から語られた。例えば包丁がまな板に対して言う「おまえのそういう木材的にのんびりしたところが一番、嫌だったんだよ」という台詞。これを聞いたとき嬉しく思った。そうそう、「木材的にのんびり」という言葉の、何となく納得させられるイメージ。ここ、自分も好きだと思ったんだよなぁ。

あと、「御伽草子」を現代風に書き直すにあたって、古い言葉と新しい言葉をどのように混ぜるか、といった話も語られた。例えば堀江さんは「アンモラル」をあえて平仮名の「あんもらる」にして、あたかもその時代にあった言葉のように混ぜ込んでしまった。また、藤野さんは冒頭の「中ごろの事にやありけん」の意味を調べたところ気に入ったので、そこはその意味のままに書き下したそうだ。

町田康の「付喪神」について堀江さんからの言及も。ネタバレに配慮しつつ、後半でとんでもない展開になることについて触れた。そして後半、現代社会への批判が混ぜられているが、これは題材があった方が書きやすいんですか? だったかなぁ。ニュアンスを忘れてしまった。こういったことを聞いていた記憶があるのだが。それについて町田康はうーんと首をひねりつつ答えていた。

ちなみに町田康の「付喪神」は、「付喪神」と戦う相手が原典と異なっている。これについて、町田康は「そのままだと真言宗最強みたいになっちゃってつまらないから」といった内容のことを言っていたので家に帰ってから読んでみたが、確かに真言宗最強物語であった。なるほど。

トークの後は作家本人による朗読の時間に。町田康はいつものイントネーションで語っていて、ページをめくるときなどにたまに間が空くことはあれど、全く笑わないのがすごい。あの内容で噴き出さないのがすごい。いったいどんな内容なんだ、と気になる人は是非本を買って欲しい。わかるから。付喪神がヘッドバンギングするから。無論、会場からはたびたび笑いが起こっていた。

堀江さんはトークから時折醸し出される危うげな印象が引っ込み、淡々としていて聞きやすかった。藤野さんは語り口は普通なものの内容がぶっ飛んでいて、わりとストレートな現代批判が突っ込まれているように感じられた。正直最後まで聞きたかった。

最後はサイン会。もう興奮した。静かに興奮した。多くは語れなかったが、本も音楽も大好きなこと、新宿ロフトのライブに行ったことは告げられた。町田康はありがとうと言ってくれて、手を差し出してくれた。わーーーーーーーーーーーーーーー握手だーーーーーーーーうわあああああああああああ。気が狂った。

最後まで見届けてから会場を後にし、電車の中で町田康の「付喪神」とオリジナルの「付喪神」を読み比べた。あんなに荒唐無稽に感じられる町田康の「付喪神」は、意外にも原典に沿った内容になっていて、だから昔話って好きなんだようちくしょうめ、くーーーーーーと楽しさと嬉しさを改めて噛み締めたのであった。どっとはらい。



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■12月16日15時の方へ

「あろまさんぽ弐」の感想をご覧いただきありがとうございます。あの感想を書いたときはまさかファンの方にこんなに読んでいただけるとは思っていなかったのでびっくりやら嬉しいやら。しかも筋少の感想まで見ていただけたとのことで。ありがとうございます。
自分は未だM.S.S Projectについて深く知っているわけではないのですが、ちょっと興味を持ったので横浜開催のライブを観に行く予定です。普段行くライブとはまた違う空気を楽しめそうでわくわくしています。



日記録4杯, 日常

2015年12月13日(日) 緑茶カウント:4杯

オタクである、という自己認識はあるものの、そもそも己は何のオタクなのだろうとふと考えることがある。漫画が好き。アニメが好き。ゲームも今は全くやっていないが昔はのめりこんでいた。本も好き。音楽も好き。それらについて、拾った断片から想像をめぐらしひたすら思考することが好き。ファンアートを描くこともある。収集癖もある。漫画やゲームの関連書籍を集めることも好きだし、好きなミュージシャンが影響を受けた音楽や本を遡ることも大好きだ。

反面、あまり興味がないのが二次創作で、不思議と同人誌制作・収集方面には進まなかった。昔は「ぷよぷよ」を作った会社が出していた会報誌に投稿したり、お絵かき掲示板に常駐した過去もあれば、今でもたまにイラストを描くことはあるものの、それ以上の情熱はなかった。これについて、我ながら不可解だなぁとたまに思う。絶対はまりそうなものなのに何故はまらなかったのだろう。

思うに、二次創作も好きなのだが、それ以上に原作至上主義な面が強いのだろう。さらに、設定好き。中学の頃にはまったのが攻略本集めで、当時はまりにはまっていた「ぷよぷよ」の攻略本をひたすら集めまくって読みまくっていた。正直ゲームをする以上に攻略本を集め眺め読み込むことの方が好きだったのではないかと思う。何せ持っていないシリーズの攻略本にまで手を出していたのだ。当時ぷよぷよの関連書籍は山のように出ていたが、ほぼ集めきったはずである。

では何故そうまでして集めていたかというと、同じゲームでも、それぞれの攻略本によって微妙に違う表現がされていたり、新しい情報が載っていたりして、そのわずかな違いをかき集めるのが楽しかったのだ。そのほんのちょっとの違いを発見してはニヤニヤする中学生だった。

今もわりと物語の設定や世界観が気になる方で、この歌詞はどのような世界観で描かれているのだろう、登場人物の年齢はいくつだ、そもそも現代か過去か未来か異世界か、などと、書かれていないところまで深読みし、設定の断片が手に入れば喜んでまた思考をめぐらし、ひたすらあれこれと一つのことについて考える。これが最高に楽しい。そして考えに考えて考え抜いて、あるところで満足して次に移るのである。

「何のオタクか」と問われ、漫画やアニメ、小説などのうちから一つのジャンルを示せと求められるといまいち答えられないが、きっと自分は、いろいろなものの設定を考えるのが好きなタイプのオタクなのだろうなぁ。

と、己の嗜好についてくるくる考える夜。これはこれでまた楽しい。