「あろまさんぽ 弐」を読んで。

2015年4月12日(日) 緑茶カウント:2杯

ちょっと面白い趣向の本を読んだのでここに紹介したい。それは旅行記であり、写真集であり、タレント本でもあるのだが、己は事前情報を全く持たずにその本を手に取った。タイトルは「あろまさんぽ 弐」で、著者名は「あろまほっと」。ニコニコ動画やyoutubeでゲームの実況をしている集団の一人とのことである。そして自分はその界隈について縁が薄いためよく知らない。

サクサク読める本が欲しいなぁ、と思っていたのだ。何か、写真が多めの旅行記なんかは良いかもしれない。お茶のお供に出来るような、家でくつろぎながら読める本が良い、と思いつつ本屋をうろうろし、いくつかの本を手にとっては棚に戻し手にとっては棚に戻しを繰り返し、ある手に取った一冊。ページをめくるとドーンと高崎名物「だるま弁当」の写真が! 同じページには群馬の名物「焼きまんじゅう」も! しかもこの人美味しいと言ってくれている! 良い人じゃないか!

さらにページをめくると沖縄、長崎、長瀞と、過去の旅行の思い出が蘇る懐かしい景色の数々。あーこれは良いかもしれない。すごくノスタルジックな気分に浸れそう。ということで購入を決定し、家についてからじっくり読んでみると、微妙に変な本であることがわかったのだ。

この本、人物は後ろ頭しか写ってない。

この「あろまさんぽ 弐」は、旅の写真に著者のコメントが添えられている構成で、著者はカメラマンであると同時に被写体でもあり、行く先々の観光地で散歩をする「あろまほっとの写真」と、「あろまほっとが撮影した写真」の二種類で構成されている。ここまではさほどおかしくないのだが、撮影されている「あろまほっとの写真」がどれもこれも後姿だけなのである。斜め後ろからのアングルでは横顔がかすかに見えるがほぼ後ろ頭である。

では正面からの撮影は皆無かと言うと、一応あるにはあるのだが、全て般若の面を被っており、のどかな観光地がいきなりコスプレ会場ないしは怪談ワールドへと変化するのである。しかも般若の面を被ったまま観光地の美味しいものを堪能している。わけがわからない。

しかも般若だけではない。ページをめくるとサングラスをかけた全身覆面男が登場し、これはいったい何の本だと思わざるを得ない。この全身覆面男は著者と同じゲーム実況集団の一員だそうなのだが、事前知識が無い者からすると戸惑いしか感じない。

全身覆面男の名前は「eoheoh」で、流石に旅行地では覆面姿ではなかったが、著者と同じく一貫して後ろ頭オンリーのショットばかりである。

どうも、顔出しを控えているようで、そのための措置が般若と覆面らしい。何も般若と覆面を選ばんでも…と思ったが、旅先で背負っているリュックサックに堂々と般若の面をキーホールダーの如くぶら下げている姿を見るに、かなり般若を気に入っている人なのかもしれない。

そんなわけでこの旅行記のような写真集のようなタレント本のような本は、人物写真は多いのに「顔」は一切写らないのだが、それが実に良い塩梅なのである。「顔」が写らないことで「個人」をイメージしづらくなっているので、本を読みながら自分が旅行に行ったような気分に浸れるのである。旅行のロールプレイを味わえるといったらわかりやすいだろうか。ちょうど、友人達と旅行に出かけたときの、友人の後ろ頭を眺めながら旅先を歩いた、そんな感覚が湧いてくるのである。

顔が写らないことでこんな効果が得られるとは。恐らく、著者も狙ってはいなかったのではないかと思う。猫を「ぬこ」と呼ぶなどのネットスラングもちょこちょこ入っているので抵抗のある人もいるかもしれないが、自分は結構好きである。書店で見かけたら、是非。



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