日記録0杯, 大槻ケンヂ, 日常, 最上魁星

2018年4月2日(月) 緑茶カウント:0杯

さて今年のエイプリルフールは何をしようかな、とぼんやり考えつつもなかなか思いつかない日々を過ごす中。ふと日常の中で頭に浮かんだ言葉が「最上魁星 平成総選挙FINAL」。瞬間、「あ、これだ」と思った。しかし何故またこの言葉が閃いたのかはわからない。

最初は「最上魁星 平成総選挙FINAL 最上&最上withレジェンド最上」にしようかと思ったが、よく考えたらそれぞれ名前があるからそれを使えば良かろう、ということで「最上魁星 平成総選挙FINAL カイザー&リバースwithバイカイザー」となった。



というわけで最初に作ったのがこのロゴ。大変だった。ものすごく大変だった。ロゴの作り方なんぞ知らないので地道に描くしかない。とりあえず似た書体の活字を打ち込み、パンフレットの文字を凝視して特徴を掴みつつ、「こんな感じならそれっぽいか……?」と考え考え線に装飾を施し太くしたり短くしたりしながら作った。よってよく見るとところどころ歪んでいるが、そこはご愛嬌ということで。

あとはそれぞれの最上魁星のイラストと説明文に、優勝者へのプレゼントのネビュラバグスター。ネビュラバグスターは、不老不死以外に最上魁星が欲しいものは何だろう……と考えた結果行き着いた優勝商品である。減らされたら仮面ライダーの前に出て来ざるを得ないくらい大事にしているものなら一年分もらったら嬉しかろう。一年分のネビュラバグスターが何体かは知らないが。

ちなみに「仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL」の登場人物の中で一番最初に描いたのがネビュラバグスターである。最上魁星でもバイカイザーでもなく。自分でもまさかこいつを先に描くとは……と思わざるを得なかった。

ロゴとページデザイン自体は先に終えたがイラストの着手が遅く、三月三十日の二十三時からスタートし資料を探しながらぶっ通しで描き続け、朝の八時頃にバイカイザーの歯車を数えていたときが一番辛かった。格好良いデザインってのは……手間がかかるものだね……!!

そうして昼の十二時に全ての素材が揃い、ポチポチとキーボードを叩きつつ体裁を整え、出来上がったのが十四時頃か。ちなみにこの日ライブに行く予定があり、疲労困憊の日々を抜けトドメに徹夜を完遂した身に耐えられるのか……と思ったがとっても楽しかった。アコースティックだったのが幸いだったように思う。

この企画に込めたのはとにかく愛。オーケンが仮面ライダーの映画に出演したことをきっかけに初めて仮面ライダーを観て、気付けば劇場に七回通い、放送中のビルドや過去作のオーズも観るようになった。新たな楽しみが得られた嬉しさと、作品への思いと突っ込みを凝縮させた。大変だったが、作っていて楽しかったなぁ。

返す返す思うことは、最上魁星というキャラクターの何と魅力的なことだろう、ということだ。オーケンの特性をそれぞれ切り取ってキャラクターへと昇華してくれたことの嬉しさに、ビルド本編にも影響する立ち位置の喜び。こんなに良い役をオーケンが担当することになって本当に嬉しい。この嬉しさと喜びを噛み締めるためにも、早くDVDで反芻したい。よってDVDの発売が待ち遠しくてならないのだ。発売は五月。あぁ、早く来ないかなぁ。

と、こんな感じの思いを詰め込んで作った企画である。楽しんでもらえたなら最高に嬉しい。

そうそう。当初は集計する予定はなかったものの、せっかくなので数えてみた。結果は下記の通りである。メカ最上とファンキーな最上で一騎打ちになるかと思いきや意外な結果で驚いた。ファンキー最上人気あるなぁ。

1位:最上魁星(カイザーリバース/白い和服でファンキーな方) …15票
2位:最上魁星(研究員時代) …7票
3位:最上魁星(余り) …6票
4位:最上魁星(カイザー/左半身機械な方) …5票
5位:バイカイザー …2票
その他(選べない、箱推し) …2票

「最上魁星 平成総選挙FINAL」の跡地はこちら。



更新履歴

エイプリルフールということで、トップページのリンクを踏むと嘘サイトに飛ぶ仕掛けにしていましたが、日付が変わったので元に戻しました。
今回はオーケンの仮面ライダー出演を記念して「最上魁星 平成総選挙FINAL」というものを企画。ロゴ作るのが……一番大変だった……。

「最上魁星 平成総選挙FINAL」の跡地はこちら。
あとがきはこちら。


過去のエイプリルフール跡地はこちら。
※古いものは特に、正常に表示されない可能性があります。ご了承ください。
2017年「Mr.Walkmanの昆虫図録」
2016年「アニメだよ!筋少さん松り」
2015年「筋肉少女帯の歌詞世界の品々を販売する通販ショップ」
2014年「炊き込みご飯が食卓の主流になりますように」
2013年「鬼畜botの部屋」
2012年「おなかをすかせたおとこのこ」
2011年「リア充でサイボーグなアキヒトの超★日常」
2010年「湯飲み専用通販ショップ・湯飲み屋本舗」
2009年「創作詩サイト・プレディカドール」
2008年「スーパーフラフープを応援する会」
2007年「巫女萌えサイト・絡み巫女」



未分類

■3月22日16時「いつも楽しく拝見しております。すぐにブログにUpいただき~」の方へ

発熱……それは残念なことでした……。もう体調は回復されたでしょうか? 楽しみにしていたライブに行けないのはしんどいですよね。少しでも足しにしていただけたならこんなに嬉しいことはありません。ご覧いただきありがとうございます。
六月こそは盛り上がりましょう! 元気に参加できることを祈っております!

■3月22日20時「裏切られた気持ちで~」の方へ

(1)このサイトは己が趣味で運営しているものであり、何の義務も生じないものです。
(2)あなたが大切に思うものがあるように、自分にも大切に思うものがあります。そしてその対象を侮辱する人の要望を叶えたいと思う人はいないはずです。もっと上手く立ち回ろうぜ!
(3)基本的に、チケットを先に入手したライブに自分は行きます。

以上。嘆きの気持ちは伝わりましたが、これ以上の行動が目立つ場合はアクセス禁止の処置をとりますのでご了承ください。では!

■3月24日8時「私もライブに行きました。」の方へ

あ、確かに十七曲と言いつつ十六曲になってますね。修正しておきます。

■3月25日22時「Twitterのリンクから飛んできました。ピクルス~」の方へ

ありがとうございます! ピクルスだけでなく、虫の絵についてもご感想をいただけて嬉しいです。ピクルス、是非作ってみてください。ちょうど野菜も安くなってきたので、是非。

■3月26日12時「ブログ、楽しく拝見させていただいております。」の方へ

お気遣いいただきありがとうございます! たくさんの方に教えていただいたおかげで今は存じております。



未分類0杯, 筋肉少女帯, 非日常

くったくたに疲れた帰り道。ラーメン屋に寄ってラーメンと餃子を注文したら、餃子そのものよりも酢醤油が異常に美味しく感じられて、つまりこのとき欲していたのは塩気と酸っぱさ。あぁ全力で楽しんで全身疲れきったんだなぁ、としみじみしながら酒を呑むが如く酢醤油をちびちび呑んだ。そんな夜である。

春分の日の開催であるため「春の筋肉少女帯ワンマンフルライブ!!」とタイトルがつけられたものの、今日は春の気配が全く感じられない寒の戻りの激しさが凄まじい日で、布団から床へと足を下ろせば冷え冷えとした感触に足が引っ込み、テレビをつければ雪の降った地域が紹介される。そんな中で唯一、おいちゃんのピンクのスーツと笑顔だけはまさに春そのものの暖かさだった。

さて、そんなわけでライブが始まるまでは寒々としていたが、始まってしまえば熱気の渦の中、春も冬も関係ない熱さで汗を流すばかりである。ワンマンフルライブということでタイトルからはセットリストが想像できず、何が聴けるだろうとわくわくしていたら思いがけずもレア曲がたくさん聴けて非常に興奮した。一曲目から久々の「モーレツア太郎」に、最近ご無沙汰だった「レジテロの夢」「僕の歌を総て君にやる」「中学生からやり直せ!」の畳みかけ。「ワインライダー・フォーエバー」と「ロシアンルーレット・マイライフ」もしばらく聴いていなかったように思う。

そして極めつけがアンコール一曲目の「恋の蜜蜂飛行」! これが最高に嬉しかった。歓声の中ステージに戻ってきたオーケンがそのままいつも通りMCに入るかと思いきや……立ち止まるや否や、さらりと特攻服の背中を見せ、合図と共に始まったのは激しいギターソロにドロドロとしたドラム! 己の心を鷲づかみにし、虜にしてやまない怒涛の勢いで奏でられる一曲が始まったのだ。この始まり方がもう、また、格格好良かったんだ……!

そのうえでさらに感激したのは、昨今「恋の蜜蜂飛行」では間奏で学園天国ヘイヘイコールが挟まれることが多かったのだが、今回はそれが無かったこと。学園天国のコールアンドレスポンスも楽しい。確かに楽しい。しかしこの曲だけは、ギターとドラムの音色と共に最初から最後まで目まぐるしく駆け抜けたいのだ。その願望を叶えられ、全身に大好きな音の洪水を浴びて、最高に幸せだった。

一曲目の「モーレツア太郎」もたまらなかったなぁ。「新人」でセルフカバーされたバージョンが大好きで大好きで、「どこへでも行ける切手」のDVDに収録されているそれを何度繰り返し観たことだろう。あぁ、聴くことができて、観ることができて嬉しい。筋少は「モーレツア太郎」でデビューしたから、今度の六月に開催するデビュー三十周年ライブの一曲目にやれば良かったね、とっとけば良かったね、とオーケンが語っていたが、いやいやいやいや、良いじゃないですか今日やって六月にまたやっても。そのときは是非、黎明も合わせて聴きたいなぁ。

「モーレツア太郎」について、エディがオーケンの声を褒めるシーンも。エディには様々な音が音符で聴こえるのだが、オーケンが独特の節をつけて叫ぶ「モーーーレーーーツ!!」や「ノーーーーーッマンベイツ!!」は音符に変換されないそうだ。そのうえその声を今も出すことができる、すごいと話していた。対するオーケンは照れもあったのか、十九歳か二十歳の頃の感性で作った曲を今歌うことに言及し、今五十の親父が「モーーーレーーーツ!!」って朝四時の居酒屋で叫んでたらやばいよねとちゃかして笑いをとったところ、若い頃に「モーレツア太郎」を歌うとき最前列の女の子の胸を揉んでスタートしていたことをエディに掘り起こされ、たじたじとなっていた。

ソールドアウトと言うことで場内はぎっちりみっちりで、開演待ちの間に二回ほど「一歩ずつ前に詰めてください」とアナウンスされたため開演前からぎゅうぎゅう状態だった。当初はあまり視界が芳しくなく、開演と同時に照明が落とされて若干動きが生じたときに、高い位置で髪をまとめている人の後ろに立ってしまって「あちゃー」と位置取りに失敗したことを痛感したが、その後ライブの最中に動きがあり、中盤以降は見晴らしよく楽しむことができた。しかし髪を高い位置でまとめるのはやめようぜ。見えないから。見えないから!

今年はデビュー三十周年ということで、嬉しい告知もたくさんあった。去年の五月に開催された「筋少シングル盤大戦!」のDVD化に、「レティクル座妄想」「ステーシーの美術」「きらきらと輝くもの」「最後の聖戦」がデジタルリマスターされて再発! さらには、かつてVHSで発売されていた「science fiction double feature~筋肉少女帯 Live & PV-clips~」のDVD化! これには嬉しくて悲鳴が上がりそうになってしまった。最後の聖戦ツアーの映像である。ずっと観てみたくて、欲しくて、しかし手に入らなくて、いつかDVDにして再発してくれないだろうか……とずっとずっと待っていたのだ。まさか今叶うとは! 嬉しいなぁ、ありがたいなぁ。

あとびっくりしたのが「4半世紀」「THE SHOW MUST GO ON」「おまえのいちにち(闘いの日々)」「Future!」のアナログレコード盤が発売されるということ。レコードプレーヤーは持っていないが、部屋に飾るためにこれも欲しい……。はっはっはっ。どんどん財布が軽くなりそうだ。嬉しいことである。

この告知をしてくれたのは橘高さんで、笑顔で淀みなくすらすらとリリース予定を発表してくれる姿の頼もしさったら。「みんな、わかってるよね?」とにっこり笑顔を向けられた日には、今から財布の紐をゆるっゆるに緩ませる準備をするしかない。

「航海の日」では珍しい光景も。この曲を演奏するとき、オーケンはステージからいなくなって着替えや休憩をするのが恒例な中、初めてステージに残ったのだ。そしておいちゃんの隣で椅子に腰掛け、アコースティックギターを抱えてニコニコ爪弾く。シールドこそ刺さっていなかったものの、とても楽しそうだった。

今までも、これと言って特に疎外感を抱くようなことはなかったに違いない。しかしこうして今、メンバーと並んでギターを弾けることがとても嬉しそうに見えて、シャンシャンと鳴り響く爽やかな音に耳を傾けながら、この光景を観られることを幸せに思った。

思えばオーケンがギターを始めたのは四十四歳の頃。あれから歳月が流れ、五十二歳のオーケンは定期的に弾き語りツアーを行い、照れくさそうな様子を見せつつも弾き語りのアルバムも発売した。奏でられる曲数も増え、二枚目のアルバムの制作にも意欲的な姿勢を見せている。七年前、八年前には思いも寄らなかったことだろう。

オーケンは言った。ハードで体力を使う筋肉少女帯は十年後二十年後どうなるか、先日橘高さんがオーケンのラジオにゲスト出演したとき、橘高さんが話したことを紹介して。「十分後にできてたらできたんだなと思えば良いし、できてなかったらあぁできなかったんだなと思えばいい」と。つまり、十年後二十年後どうなるかはわからないがやり続ければいい、できなかったらそのときに考えようと。

いつか気付く日が来るかもしれない。同時に、オーケンがメンバーと一緒に「航海の日」を爪弾く未来が来たように、過去には思いがけなかったものを観られる日も来るだろう。

今日のライブのセットリストは十七曲。最近は十八曲で構成される日が続いていた中でさりげなく一曲少なくなった。かつては二十曲だった。今回の十七曲がイレギュラーか否かはわからない。ただ、少しずつ変遷しつつも筋少は筋少としてステージに在り続けてくれるのだろう。だったら自分も、いつまでもステージの下からその光を仰ぎ見ようじゃないか。四十になっても五十になっても。

三ヶ月後のデビュー三十周年記念ライブには何を魅せてくれるだろう。無論、共に駆け抜けていく所存である。



モーレツア太郎
混ぜるな危険

レジテロの夢
僕の歌を総て君にやる
中学生からやり直せ!

イワンのばか
地獄のアロハ
愛の賛歌

ベティー・ブルーって呼んでよね
航海の日
パノラマ島へ帰る

ワインライダー・フォーエバー
ロシアンルーレット・マイライフ
釈迦
機械

~アンコール~
恋の蜜蜂飛行
ディオネア・フューチャー


日記録2杯, 日常, 漫画

2018年3月20日(火) 緑茶カウント:2杯

アルバムを買いライブに通い、十年以上も熱狂的に愛し続けているにも関わらず、一曲だけ聴けない曲がある。それは筋肉少女帯の「ララミー」で、理由は少女が理不尽に可哀想な目に遭うからだ。己は、何と言うか、どうにもそういった物語が苦手で、あまり楽しむことができない。

しかし不思議なことに、可哀想どころではなくとんでもない目に遭うながらも、淡々と読むことができる作品に出会った。それを読もうと思ったきっかけは、この方ならきっと何か面白いものを見せてくれるんじゃないかと期待したためである。

そしてその期待は確かに、裏切られることなく実ったのであった。かくして自分は、共感できるできないは面白さには何も関係しないことをしみじみと実感するに至った。何故なら己はその作品の登場人物の、加害者にも被害者にも共感できないながらも、こんな世界もあるのだなと楽しく読むことができたからだ。

それは新鮮な体験であり、興味深い体験でもあった。

作品のタイトルは「殺彼」で、大介さんと旭さんのコンビにより描かれている。ざっと説明すると様々な殺人鬼が登場する漫画で、ドメスティック・バイオレンスを趣味とする男に、サディスト、食人鬼、あとは……ネクロフィリアかな? なるべくならお近付きになりたくなく、可能であれば会話もしたくない方々が主要登場人物として出演する。主人公格はドメスティック・バイオレンスを趣味とする男だ。

この作品はそんな猟奇的な殺人鬼達が紹介されつつ、被害者視点で殺されるロールプレイングを楽しめるという一風変わった作品である。故に「殺人鬼を彼氏として体感できる」、という意味合いで「殺彼」。このあたりの需要の有無を己は知り得ない。故に、知らないながら面白いと思ったところを語ろうと思う。ただその前に、この作品を読もうと思ったきっかけについても触れておきたい。

「殺彼」を読もうと思ったのは、きっと何か面白い出会いがあるに違いないと思ったからだ。というのも、己はこの作品の作者である旭さんのツイートをきっかけに、やおいに対する認識に変化が生じた経験があるからである。以来、ずっと楽に生きることができるようになった。それは己の人生にとって有意義な体験であった。

そうして……恐々読んでみた「殺彼」は、何一つ共感できないながらも、興味深く読み進めることができる作品であった。

一番大きいのは被害者側の心情があっさり描かれる点にあると思う。この作品は読者が「殺人鬼に無惨に殺される疑似体験」を楽しめる作りになっているため、殺される被害者の心理は深く掘り下げられない。描かれる指先や靴、SNSの発言によってどんなタイプの女性かは類推できるものの、基本的に彼女らの内面は描かれない。そこは読者の想像と妄想に任されるべき部分であり、自由にイメージされることが重要視されるゆえ、台詞も悲鳴も描かれないのだ。

しかし考え方を変えてみると、故にあっさり読めるのである。辛くしんどく悲しい内面が描かれないおかげで、そこになりきりたいわけではない人物はさらっと読み進めることができるのだ。これは「ララミー」の物語さえしんどく悲しく感じる者にとって、ありがたい救いであった。

そして、それはとても優しい物語とも考えられる。だってさ、被害者はあくまでも「読者である自分自身」なのだ。他に悲しい目に遭う人はいないのだ。だったらそれは、ある意味でとても健全なことではなかろうか。殺人鬼に殺されることを望む人が感情移入して読み、殺されることを望まない人はあくまでも蚊帳の外にいるのである。考え方によっては誰も傷つかない物語だ。

そのうえで、だ。殺人鬼達の猟奇的な描写と言ったらどうだろう。えーと、あの、あなた、南京虫ってご存知? この虫はね、メスにも生殖器があるにも関わらず、オスはメスの生殖器でも何でもないところに生殖器をぶっ刺して場合によっては死に至らしめるという、自然界の中でもクレイジーな昆虫なんですけど、それを人間が行うとこうなるんだなぁ……というのが見られまして、世界は広いんだなぁ……と思わされます。マジで。何一つ理解できない。本当に。何なんだよ松本記知という男は。キュートなうさぎちゃんマークを飛び散らせている場合じゃなかろう。やめなさい、そういったことは。

そうしてそこから思い出すのは高校生か浪人生のとき、和月伸宏の「エンバーミング」を読んで悪役の所業にショックを受けたこと。女性の人体を切り取って家具にして愛でる描写があり、何て気が狂ってるのかと慄いたが、後に「魔人探偵脳噛ネウロ」を読み返したとき、しみじみと「ネウロのあれは……少年漫画向けに手加減してくれていたのだなぁ」と感謝し、「エンバーミング」のそれがその作者の思いついた特別な描写でないことを知って遠い目をしたのだった。世の中いろいろな趣向があるね。ははは。

ということで、殺人鬼である故に言うまでもないことだが、この作品の主要登場人物は見事にろくでもない人間ばかりである。見事に。結構最低なドメスティック・バイオレンス男がまともに見えるほど、倫理観を突破したキャラクターが登場してむしろ清清しい。人間を鹿か猪の如く狩って食べる人なんざ、冷静に理屈を並べつつも全く会話が通じないんだぜ。出会った時点で終わりである。サディスティック野郎に至っては会話の余地も……、いや、誰であっても会話のしようがない。それは彼らが独自の世界観を持っているからである。

根っこから狂っているのではなく、日常生活を営み、大切な日常やパートナー、常連客を持ちつつも、さらっと道の外に踏み出す描写。ただの狂人ではなく、あくまでも我々の生活の中に潜んでいると思わされるが故に……怖い。

それを美しいと思うか、恐ろしいと思うか、気持ち悪いと思うか、奇妙と思うか、興味深いと思うか。それは全て読者に委ねられている。故に自由度が高く、面白い。自分は恐ろしくも興味深いと思いつつ、作中人物には絶対に関わりたくないと感じるし、殺される疑似体験もしたくない。それは描かれる彼らが非常に生々しくてリアルだからで、生きているように感じるからだ。

どうか、彼らが空想の世界だけに生きる人物でありますように。そしてそれをよその世界から眺められますように、と願って。そう思わずにはいられない作品であった。

「殺彼」。無惨に殺されたい方も、殺されたくない方も、是非。


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殺彼-サツカレ-