春の筋肉少女帯ワンマンフルライブ!!GO!筋肉少女帯!! (2018年3月21日)
くったくたに疲れた帰り道。ラーメン屋に寄ってラーメンと餃子を注文したら、餃子そのものよりも酢醤油が異常に美味しく感じられて、つまりこのとき欲していたのは塩気と酸っぱさ。あぁ全力で楽しんで全身疲れきったんだなぁ、としみじみしながら酒を呑むが如く酢醤油をちびちび呑んだ。そんな夜である。
春分の日の開催であるため「春の筋肉少女帯ワンマンフルライブ!!」とタイトルがつけられたものの、今日は春の気配が全く感じられない寒の戻りの激しさが凄まじい日で、布団から床へと足を下ろせば冷え冷えとした感触に足が引っ込み、テレビをつければ雪の降った地域が紹介される。そんな中で唯一、おいちゃんのピンクのスーツと笑顔だけはまさに春そのものの暖かさだった。
さて、そんなわけでライブが始まるまでは寒々としていたが、始まってしまえば熱気の渦の中、春も冬も関係ない熱さで汗を流すばかりである。ワンマンフルライブということでタイトルからはセットリストが想像できず、何が聴けるだろうとわくわくしていたら思いがけずもレア曲がたくさん聴けて非常に興奮した。一曲目から久々の「モーレツア太郎」に、最近ご無沙汰だった「レジテロの夢」「僕の歌を総て君にやる」「中学生からやり直せ!」の畳みかけ。「ワインライダー・フォーエバー」と「ロシアンルーレット・マイライフ」もしばらく聴いていなかったように思う。
そして極めつけがアンコール一曲目の「恋の蜜蜂飛行」! これが最高に嬉しかった。歓声の中ステージに戻ってきたオーケンがそのままいつも通りMCに入るかと思いきや……立ち止まるや否や、さらりと特攻服の背中を見せ、合図と共に始まったのは激しいギターソロにドロドロとしたドラム! 己の心を鷲づかみにし、虜にしてやまない怒涛の勢いで奏でられる一曲が始まったのだ。この始まり方がもう、また、格格好良かったんだ……!
そのうえでさらに感激したのは、昨今「恋の蜜蜂飛行」では間奏で学園天国ヘイヘイコールが挟まれることが多かったのだが、今回はそれが無かったこと。学園天国のコールアンドレスポンスも楽しい。確かに楽しい。しかしこの曲だけは、ギターとドラムの音色と共に最初から最後まで目まぐるしく駆け抜けたいのだ。その願望を叶えられ、全身に大好きな音の洪水を浴びて、最高に幸せだった。
一曲目の「モーレツア太郎」もたまらなかったなぁ。「新人」でセルフカバーされたバージョンが大好きで大好きで、「どこへでも行ける切手」のDVDに収録されているそれを何度繰り返し観たことだろう。あぁ、聴くことができて、観ることができて嬉しい。筋少は「モーレツア太郎」でデビューしたから、今度の六月に開催するデビュー三十周年ライブの一曲目にやれば良かったね、とっとけば良かったね、とオーケンが語っていたが、いやいやいやいや、良いじゃないですか今日やって六月にまたやっても。そのときは是非、黎明も合わせて聴きたいなぁ。
「モーレツア太郎」について、エディがオーケンの声を褒めるシーンも。エディには様々な音が音符で聴こえるのだが、オーケンが独特の節をつけて叫ぶ「モーーーレーーーツ!!」や「ノーーーーーッマンベイツ!!」は音符に変換されないそうだ。そのうえその声を今も出すことができる、すごいと話していた。対するオーケンは照れもあったのか、十九歳か二十歳の頃の感性で作った曲を今歌うことに言及し、今五十の親父が「モーーーレーーーツ!!」って朝四時の居酒屋で叫んでたらやばいよねとちゃかして笑いをとったところ、若い頃に「モーレツア太郎」を歌うとき最前列の女の子の胸を揉んでスタートしていたことをエディに掘り起こされ、たじたじとなっていた。
ソールドアウトと言うことで場内はぎっちりみっちりで、開演待ちの間に二回ほど「一歩ずつ前に詰めてください」とアナウンスされたため開演前からぎゅうぎゅう状態だった。当初はあまり視界が芳しくなく、開演と同時に照明が落とされて若干動きが生じたときに、高い位置で髪をまとめている人の後ろに立ってしまって「あちゃー」と位置取りに失敗したことを痛感したが、その後ライブの最中に動きがあり、中盤以降は見晴らしよく楽しむことができた。しかし髪を高い位置でまとめるのはやめようぜ。見えないから。見えないから!
今年はデビュー三十周年ということで、嬉しい告知もたくさんあった。去年の五月に開催された「筋少シングル盤大戦!」のDVD化に、「レティクル座妄想」「ステーシーの美術」「きらきらと輝くもの」「最後の聖戦」がデジタルリマスターされて再発! さらには、かつてVHSで発売されていた「science fiction double feature~筋肉少女帯 Live & PV-clips~」のDVD化! これには嬉しくて悲鳴が上がりそうになってしまった。最後の聖戦ツアーの映像である。ずっと観てみたくて、欲しくて、しかし手に入らなくて、いつかDVDにして再発してくれないだろうか……とずっとずっと待っていたのだ。まさか今叶うとは! 嬉しいなぁ、ありがたいなぁ。
あとびっくりしたのが「4半世紀」「THE SHOW MUST GO ON」「おまえのいちにち(闘いの日々)」「Future!」のアナログレコード盤が発売されるということ。レコードプレーヤーは持っていないが、部屋に飾るためにこれも欲しい……。はっはっはっ。どんどん財布が軽くなりそうだ。嬉しいことである。
この告知をしてくれたのは橘高さんで、笑顔で淀みなくすらすらとリリース予定を発表してくれる姿の頼もしさったら。「みんな、わかってるよね?」とにっこり笑顔を向けられた日には、今から財布の紐をゆるっゆるに緩ませる準備をするしかない。
「航海の日」では珍しい光景も。この曲を演奏するとき、オーケンはステージからいなくなって着替えや休憩をするのが恒例な中、初めてステージに残ったのだ。そしておいちゃんの隣で椅子に腰掛け、アコースティックギターを抱えてニコニコ爪弾く。シールドこそ刺さっていなかったものの、とても楽しそうだった。
今までも、これと言って特に疎外感を抱くようなことはなかったに違いない。しかしこうして今、メンバーと並んでギターを弾けることがとても嬉しそうに見えて、シャンシャンと鳴り響く爽やかな音に耳を傾けながら、この光景を観られることを幸せに思った。
思えばオーケンがギターを始めたのは四十四歳の頃。あれから歳月が流れ、五十二歳のオーケンは定期的に弾き語りツアーを行い、照れくさそうな様子を見せつつも弾き語りのアルバムも発売した。奏でられる曲数も増え、二枚目のアルバムの制作にも意欲的な姿勢を見せている。七年前、八年前には思いも寄らなかったことだろう。
オーケンは言った。ハードで体力を使う筋肉少女帯は十年後二十年後どうなるか、先日橘高さんがオーケンのラジオにゲスト出演したとき、橘高さんが話したことを紹介して。「十分後にできてたらできたんだなと思えば良いし、できてなかったらあぁできなかったんだなと思えばいい」と。つまり、十年後二十年後どうなるかはわからないがやり続ければいい、できなかったらそのときに考えようと。
いつか気付く日が来るかもしれない。同時に、オーケンがメンバーと一緒に「航海の日」を爪弾く未来が来たように、過去には思いがけなかったものを観られる日も来るだろう。
今日のライブのセットリストは十七曲。最近は十八曲で構成される日が続いていた中でさりげなく一曲少なくなった。かつては二十曲だった。今回の十七曲がイレギュラーか否かはわからない。ただ、少しずつ変遷しつつも筋少は筋少としてステージに在り続けてくれるのだろう。だったら自分も、いつまでもステージの下からその光を仰ぎ見ようじゃないか。四十になっても五十になっても。
三ヶ月後のデビュー三十周年記念ライブには何を魅せてくれるだろう。無論、共に駆け抜けていく所存である。
モーレツア太郎
混ぜるな危険
レジテロの夢
僕の歌を総て君にやる
中学生からやり直せ!
イワンのばか
地獄のアロハ
愛の賛歌
ベティー・ブルーって呼んでよね
航海の日
パノラマ島へ帰る
ワインライダー・フォーエバー
ロシアンルーレット・マイライフ
釈迦
機械
~アンコール~
恋の蜜蜂飛行
ディオネア・フューチャー