2014年9月14日(日) 緑茶カウント:0杯
携帯電話を持ち始めてそろそろ十年ほどになる。しかしその間、待ち受け画面の画像は適当で、ほとんどは初期状態のデフォルト設定のまま、もしくは警告マークに「所有者以外が開きました。指紋を記録します」と書かれた自作のネタ画像、そして普段絵を描かない友人が描いた、本人は「虎」と主張する三本足の猫。せいぜいたったのこの三種類。これがずっと待ち受け画面だったのである。
それを最近、ふと思いついて飼い猫の写真に変えた。飼い猫と雖も彼女は実家暮らしで、自分は下宿先での一人暮らしゆえ、会えるのは年に数回だけ。そのうえ数年前に猫アレルギーを発症したという有様で、大好きな飼い猫に会うのもなかなか苦労がある。その彼女のとびっきりのラブリープリティー写真を待ち受け画面に設定した。特に意味は無い。三本足の虎の画像に飽きただけである。その虎は三年ほど待ち受け画面に設定されていた。小さな画像ゆえ画面の中央にちまっと表示され、四隅は黒で塗りつぶされた見た目である。何度か描いた本人に「何でそれを待ちうけにする」と突っ込まれたものだ。
そして自分は待ち受け画面の威力を思い知ったのであった。
メール画面を開く。メールを確認する。メール画面を閉じる。パッと表れる愛しの飼い猫の写真。あまりの可愛さに息を飲みつつ、ウェブページを開き、閉じる。するとまた表示されるスイートハニーの画像。あまりの可愛さに衝撃を受ける。
そんなことを一ヶ月ほど続けている。待ち受け画面一つでこんなにも心を揺さぶられるとは思わなかった。携帯電話を開くたびに自分は飼い猫のやわらかな毛並みに溜息を落とし、アンニュイな瞳に惚れ直す。いっそ三本足の虎のままにしておいた方が良かったかもしれない。