未分類0杯, ウタノコリ, 水戸華之介, 非日常

何て歌のうまい人なんだろう……と今更ながら惚れ惚れした。こじんまりとした温かい色合いのホール。もぎりのおじさんにチケットを渡したとき、「いらっしゃいませ」と上品に半券を返してくれたのが妙に嬉しかった。流れ作業のように半券をもいでいくライブハウスのスピード感もわくわくして高揚するが、この落ち着いた空気も心地良い。そして逸る気持ちを抑えながら、駆け出したい心を制しつつ階段を下りて会場に入る。並べられた赤い椅子はゆったりと配置されていて窮屈さを感じさせない。そして約一時間、空間に流れるボブ・ディランの音楽をそれと知らずに聴きながら、己はうつらうつらしていたのであった。最近どうにも慌しく、とても体が疲れていたので。

そうして始まったアコースティックライブ。ボーカル、ギター、キーボードの三人の編成。己は前から四列目の端に座り、ステージ全体を眺めながら空間全体に響き渡る水戸さんの声に聴き惚れていた。シンプルな編成だからこそ、より一層際立つ水戸さんの歌唱力。広々とした声の豊かさ。気持ちよくその声を全身に浴びながら背もたれに体重をかける安心感。それでいて、シンプルながらも決して物足りなくない音の重厚感。幸せだなぁ、と思った。

そんな、この日のセットリストは下記の通りである。


地図
カナリア

ぶち抜けBaby!!
人間ワッショイ!
ムードは最低

光あれ
大事な人よ
ふたりは

あるがまま
銀の腕時計
ホテルカリフォルニア

奈々
ヴィヲロン
知らない曲(「アモーレ」という言葉が出てきた。イタリアっぽい。カバー?)
天井裏から愛をこめて
でくのぼう
センチメンタルストリート

~アンコール~
知らない曲(インストゥルメンタル。)
雑草ワンダーランド
素晴らしい僕ら

~ダブルアンコール~
袋小路で会いましょう


「ヴィヲロン」の位置にやや自信を持てないが、だいたいこのあたりで間違いないはずである。本編は「地図」で始まり「センチメンタルストリート」で終わったのが印象的だった。一日一日を消費しつつ、地図という名の夢を掴むためひた走る男の歌と、青春の中で挫折を味わい続け、夢を諦めることを考えながらも、何とか前に進もうとする男の歌。前者は力強く勇気付けられ、後者は切なくも願いたくなる。この「センチメンタルストリート」を聴いて、また本編の一曲目に戻りたいと思った。そして自然と、アンコールの手拍子をしながらも、一曲目から順々に反芻したのである。

タイトル通り、アンジーの曲から最新アルバムまで楽しめるアコースティックライブ。アンジーのレア曲では「ムードは最低」が歌われた。セットリストを作るにあたり自分の曲目を見直したところ発掘した曲だそうで、水戸さん自身も忘れかけていたそうである。冒頭の「ムードは最低!」まではわかるにしても、それからどのように繋がるか思い出せなかったそうだ。

「光あれ」は水戸さん押しの一曲で、人生に絶望した男が神に祈ったら、異常に明るい神が下りてきてしまってホンジャラマカホイホイ、な楽しい曲。この一曲の中でのテンションの変わりっぷりはいつ聴いてもすごい。

今回の目玉の一つは「ふたりは」。演歌歌手が握手をしながら客席を回る姿を見て作ったため、ライブでの客席めぐりありきの曲とのことである。ただ、水戸さんが客席を練り歩きながら歌い、手を握ったり顎を持ち上げたりとサービス全開のパフォーマンスを行うため客がそっちに集中してしまい、「曲の良さ」が伝わっていないのではないか? ということで今回だけはパフォーマンスなし、ステージから離れず歌に徹したとのことである。

これがすごかった。「ふたりは」と言えば、あのパフォーマンスがある曲、という印象が強かっただけに、ステージにどっしりと構え、朗々と響く歌声を聴かせてくれる水戸さん。十一回目の不死鳥で、水戸さんとオーケンが「ふたりは」のバラードを歌ったときも、客席めぐりがなかった。そこで「あ、これこういう曲だったんだ」と気付いたことがあったのだが、今日このとき。この曲が本来持っていた魅力を知ったのだった。

そして「ふたりは」以上に圧倒されたのが「ホテルカリフォルニア」。この曲は今までのライブでも一回か二回聴いたことがある。しかし聴いたことがあるだけで、歌詞を把握しているわけではない。だが、歌詞がスッと頭の中に入ってきて、物語が胸に浸透する。水戸さんの歌の言葉の聞き取りやすさに感服すると共に、歌による説得力と声に精神を揺さぶられる。この曲が終わってから、ずっと後ろの席の人が泣き続けていた。

会場全体がしょんぼりした空気に包まれてしまい、水戸さんもそこまでするつもりはなかったと言いつつ、長めのトークで盛り上げて「奈々」へ! 大好きな「奈々」! 楽しかったーー!! この「奈々」の中では客いじりも。皆で「なーななーななななーなー♪」とヴィジュアル系バンドのファンの如く手扇することを求められ、精一杯それをやる! 楽しかった。

「ヴィヲロン」は途中で別の曲になったのだが、何の曲だかわからなかった……。何かのカバーのような気はするのだが……。

「ヴィヲロン」の次、だったかな? これも知らない一曲で、何となく何かのカバーのような気がしたが、違うかもしれない。イタリアっぽい曲で、「アモーレ」などの単語が入った陽気な曲。ここで! 「ふたりは」でなかった客席めぐり! が!

てをにぎってもらえてとてもうれしかったです。

「ティー・アモ」だったかな? 何かを英語で言うと「アイラブユー!」という流れで「天井裏から愛をこめて」に! 久しぶりに聴いた気がするなぁ。この当たり前のように客席が盛り上がる感じ、とても楽しい!

「でくのぼう」「センチメンタルストリート」と盛り上がって終わり、アンコール一曲目はインストゥルメンタル。「名曲!」と紹介されていたものの、どの曲かわからなかった……! カバーだったのかもしれないが、そうじゃないかもしれない。何て言うかな。「大槻ケンヂと切望少女達」の「きまぐれあくびちゃん」冒頭の「デッデッデッデッデッデッデデデッ」という重い音、それが思い出された。

ダブルアンコールは「良い曲で」ということで「袋小路で会いましょう」。客席を練り歩き、歌いながらオーディエンスとタッチをしつつ、水戸さんは後ろのドアーを出て退場する。その後も曲は続き、ギターの澄ちゃんが締めるという珍しい演出。MC以外の場面で、彼がこんなに語っているのを見るのは初めてだった。

そして改めて感じさせられるのが澄ちゃんの声の美しさ。アコースティックで際立つ水戸さんとのコーラスの味わい。好きだなぁ。

水戸さんはボブ・ディランに思い入れがあるそうで、このツアーの中でもノーベル賞を受賞したボブ・ディランに対する祝福の意を込めて歌っていた、と冗談交じりで語っていた。よって開場から開演までボブ・ディランの曲を流したとのこと。先に書いた通り、己はそのときうつらうつらしていたためほとんど耳に残っていなかったが、自分が憧れている水戸さんにも、憧れている人がいる、と思うと急に近しい存在に感じられ、何だかとても嬉しかった。

気持ちよく帰路に着く。雑踏の中を歩きながらも満ち足りていた。



日記録2杯, 日常

2016年10月22日(土) 緑茶カウント:2杯

ドーナツのように手づかみで気軽に食べるつもりで注文したら、皿に乗って出されて、ナイフとフォークまで用意された。そうして、井の字がいくつも連なるデコボコした菓子を目にして、己は緊張を強いられたのである。

ワッフル。……ワッフル。これはどうやって切るのが適切なんだ?

目の前の友人はチョコレートソースがかかったワッフルに対し何の緊張も抱いていないようで、ごく当たり前のようにナイフとフォークで食べている。ワッフル。この既に井の字に区画された食べ物。井の字の線に沿って切れば細切れになりすぎるし、さりとて井の字を四つほど集めたブロックに切り分けたら大きすぎて口に入らないかもしれない。口に入れようとして失敗し、わたわたするのは非常に恥ずかしい。すると井の字の線を無視して切り分けるのがちょうど良いように思えるが、それはそれで美しくないし切りにくい気がする。

何だよ! どうすりゃいいんだよ! この食べ物!!

そもそも己はスパゲティも苦手なのだ。味は好きだが人前で食べるのが苦手なのだ。フォークに麺を巻きつけようとくるくる回しても端の方がいつまでも巻き取れずフォークを上げればぶらぶらするし、ようやく巻けたと思ったら巻きすぎて口に入れづらく途方に暮れる。その点米は良い。あれはとても掴みやすいし運びやすい。楽である。ビバ米。

夜の八時。ふと連絡を受けて待ち合わせをした先のカフェにて、友人は来年子供が生まれることを報告してくれた。また、それを機に転職活動をすることも。友人は小学校からの幼馴染である。今までに他の友人から奥さんの妊娠報告を受けたときもしみじみしたがより一層感慨深い。思い出されるのは小学校当時の姿である。あの少年がついにパパになるんだなぁ。

それほど長い付き合いにも関わらずワッフル如きで緊張するとは如何なものだろうか。自分でも思う。別に緊張する相手じゃないだろうがよ! と。しかし相手が誰であろうが緊張するものはどうしようもない。ワッフルめ。ワッフルめ!

最終的にワッフルは細かく切り刻まれて小さな四角いお菓子の集まりになった。一緒に頼んだカフェラテはごく普通にマグカップに入っていたので飲みやすかった。美味しかった。



日記録0杯, 日常

2016年10月20日(木) 緑茶カウント:0杯

お元気ですか? 己は激烈に忙しく、ゲロを吐きそうな塩梅です。
余暇が欲しい。本が読みたい。ゆっくりしたい。余暇が欲しい。

あぁ。



日記録0杯, 日常

2016年10月17日(月) 緑茶カウント:0杯

タイトルからお察しいただけるかと思うが、今回の日記は不快害虫と戦う話なので苦手な方は注意されたし。

さて。己はわりと耐性がある方である。何故なら昆虫という生き物が好きだからだ。あんなに小さいのに器用に動いて、きちんとパーツパーツに意味があるところがとても好きだ。そしてその造形。飛翔に特化したトンボのデザイン、むしろ邪魔に見えるほど長いカミキリムシの触覚。彼らの姿を眺める楽しみは時間を忘れるほどで、昆虫図鑑のページをめくるひとときは至福である。

よって虫が苦手な人に比べれば耐性はある方だ。小指の爪の切れっ端程度の小さな虫を見て、嫌な予感を抱きつつ「ゴキブリ 幼虫」で画像検索をしてその正体を突き止めることに迷いは無い程度に耐性はある。耐性はあるが嫌いである。ものすごく嫌いである。立ち向かえるが嫌いである。

そんな、大嫌いなあいつが発生した。大胆不敵にもわりと目立つところに発生した。それも二日連続。己はとても嫌な気分になった。すごく憂鬱になった。ちくしょうめ、と思いつつ退治をした。

まぁ仕方が無い。住居は古い木造アパートなのだ。取り壊すか否かという話が上がったほどの古い家屋だ。出ないはずが無い。出ない方が不自然だ。不自然であるが、何でもかんでもナチュラルな方が良いとは己は思わないのだ。よってもう不自然でも何でも構わないので己の前に姿を見せないで欲しいのだ。嫌いだから。

あーもう。あーもう。どうすっかなぁ。

つい、ヤフオクでアシダカグモを検索した。売っていた。売っているものなのかとびっくりした。心惹かれたが買わなかった。虫は買うものではない、捕るものだ。まぁつってもアシダカグモを捕まえるためによそ様の家にお邪魔して虫捕り網を振り回すわけにもいかんのだが。

そんなわけでより現実的な対応策としてホウ酸ダンゴを購入して家中に設置した。うん、わかっているのだ。このホウ酸ダンゴを取り替えるのをさぼったのがよろしくなかった。大事なバリアの効き目が切れるのをそのまま放置してしまった自分こそが悪い。しまったしまった、と反省しながら設置した。

どうやら効果はあったようで、設置からしばらくした後二匹の不法滞在者を発見したが、二匹とも弱ってへろへろになっていて難なく退治出来た。一匹は殺虫スプレーを振りかけた後、死に物狂いで逃げた先、その真横に平沢進のファンクラブ会報誌があり、スプレーを片手に構えつつどのように追撃すべきか迷ったが何とかなった。さぁ、あとはこれで全員出て行ってくれれば良いのだが。頼むよ。



更新履歴

ライブの感想に「年別一覧」を追加しました。ジャンルを問わず、その年ごとに参戦したライブを一覧にまとめたものです。ただ、感想を書いたライブの一覧なので、毎年二、三の記録漏れはあります。

パッと見た感じ、年間十五本前後のライブに通っているようです。そして2009年の自分に何があったのか気になるところです。いきなり参戦数が激増していて、以後いったん減りもするものの、また増えてその後安定している。何だこれ。