日記録0杯, 日常

2017年12月2日(土) 緑茶カウント:0杯

いくらなんでも、ここ最近で悪化するにも程があるんじゃないか? と不安を抱いて門を叩いた本日。眼科の待合室で中島らもの「永遠も半ばを過ぎて」を読みながら、己はじりじりと時が来るのを待っていた。

結果。眼病ではなかった。しっかり検査してもらったが異常はなかった。ただ急激に視力が落ちただけだった。落ちた由縁はわからない。

眼科を出てその足で眼鏡屋に行く。最近はもう、パソコンに写る画面の文字を追うことすら苦難を強いられ、テレビを観るには三十センチの距離まで画面に近付かないと詳細がわからない。一メートルの距離では細かいところが何も見えないのだ。ちなみにこの眼鏡を購入したのは二年前。たった二年でここまで変わるか。

たった二年でここまで変わるか、と思ったのは、眼鏡屋の店員も同様だったらしい。「一気にここまで上げるのは禁忌レベルなのですが」「本来であれば、間にもう少し度の弱い眼鏡を挟んで、目が慣れてから希望の度数の眼鏡に替えるのが理想なのですが……」と言いよどむ。えっ。そこまで? 段階を踏まねばならぬほど己の視力は下がっているの? すげーなこれ。すげーな。

感心している場合ではないが、感心しつつ新しい眼鏡を作ってもらった。そうして眼鏡をかけてみてびっくり。快適な視界。鏡を見てびっくり。レンズを通して映る輪郭のズレッぷり。レンズが以前よりもだいぶ分厚くなるとは聞いていたが、ここまで印象が変わるとは。はー……。驚きながらしみじみ眺めた。

しかしここまで視力が落ちても問題なく生活できるとは。視力矯正器具の発達に感謝である。これがなければまともに生活することなどまず叶わないだろう。ありがとう眼鏡屋。ありがとうレンズ。おかげで今日も漫画と小説とアニメなどなど、いろいろな娯楽を楽しめる。至福。



日記録0杯, 日常

2017年11月28日(火) 緑茶カウント:0杯

じぃ、とハサミを見つめながら考えること数秒。結局手に持つそれを使用することになるのであるが、できることなら使わないでおきたい、と思うのは自分が花粉症だからである。

まつげ。目に入るほこりやゴミを防ぐための防御壁、フィルター、ガーディアン。長ければ長いほど、量が多ければ多いほど良いとされ、マスカラにまつげパーマにつけまつげにまつげ美容液、眼科に行けばまつげを伸ばす専用薬が販売され、非常にありがたがられているまつげ。しかし同じような機能を持ちつつも、全く別の扱いを受けている体毛がある。だって鼻毛パーマもつけ鼻毛も鼻毛美容液も、ましてや鼻毛を伸ばす専用薬なんぞもこの世には存在しないのだ。

長ければ長いほど良いまつげとは対照的に、ただの一本でも見えていたら哀れみの眼差しを受けてしまう体毛・鼻毛。こっそりと「伸びてますよ」と耳打ちされたり、黙って手鏡を渡される名前を言ってはいけない毛。

我思う。この鼻毛こそ、長ければ長いほど美しいと世間一般に認識されていたら、と。どうしてか。何故なら自分は花粉症だからだ。花粉症だからなのだ!

伸びたら困る故に切る。エチケットだから切る。しかし、切ったら確実にくしゃみが増えるのである。鼻がムズムズするのである。即ち、防御壁が、フィルターが、ガーディアンが薄く弱く頼りなくなり、外敵の進入を許してしまうのである。そう、花粉という外敵を! ちくしょうめ、花粉症でさえなければ何も気にする必要がないのに、何だって鼻毛に対して「惜しい」という感情を抱かねばならぬのだ! 悔しい! 悔しいがわかっている! 絶対に伸びっぱなしにしていた方が楽なのだ! 花粉症患者としては!!

あぁ、自らの首を絞めねばならない悲しさよ。だが仕方がない。黙ってそっと手鏡を渡される哀しさを己は避けたいのだ。
そうして眉間に皺を寄せながら、仕方なくハサミを取るのである。あぁ。



未分類0杯, M.S.SProject, 非日常

昨日は居住まいを正してオーケストラを聴き、今日はペンライトを振り回してライブを楽しむ。音楽を楽しむ点こそ共通するものの、随分色が変わるものだ、とその違いの楽しさを噛み締めながらふわふわと帰路に着いた。

もしかして新譜発売記念ツアーかしらん、と期待したもののそういった告知はなく、しかしライブがこうして定番化したのは嬉しいなぁ、と思っていたら新曲発表のサプライズがあり、いやーもうこういうのってどうしたって嬉しくなっちゃうからね。きっくんの発表にわあっと盛り上がって、黄色に輝くペンライトを高々と掲げたのだった。

いろいろな意味で面白いライブだった。それは個人的なことも大きく影響する。ちょうど一ヶ月前に筋肉少女帯の新譜「Future!」が発売され、それから家にいる間は寝るときと風呂に入るとき以外、ひたすら「Future!」を聴き続ける生活をしていた。移動中もエンドレスリピートしていて、「Future!」以外の曲は何も耳に入らない状態をほぼ一ヶ月間続けていた。それはそれほどまでにそのアルバムに魅入られ取り付かれたためであるが、ふと冷静になってみるとまるで中毒患者の如く夢中になって聴き続けていたと思う。

そうして昨日、平沢進の楽曲をカバーするオーケストラに行ったとき。久しぶりに「Future!」以外の曲を聴いて、ざぁっと景色が広がるような、かつては知っていたのにすっかり忘れていた色彩を思い出したような、不思議な感覚に囚われたのだ。あぁ、そうだ、自分はこういった音楽も愛してるんだ! と視界が開けた感覚があった。

しかし家に帰ってからはまた「Future!」「Future!」「Future!」で、お前は中毒患者か何かかよ、といった勢いでエンドレスリピートし、今日、M.S.S. Projectのライブに行って。オープニング映像でわははと笑い、ほほうとゲーム実況を眺め、幕間動画で「わかるわー川崎と言ったらヴェルディ川崎を連想するわー」とうんうんと深く頷き、音楽ライブが始まった瞬間。パキッと目の前の空間にヒビが入り、ガシャンと勢い良く割れて、「あ、そうだ、これ! 好きなやつだ!!」と世界が広がる感覚を抱いた。それはまるで洗脳を解かれたかのような感覚。いや、洗脳されていたわけじゃあないんだが。好きな音楽を自発的に聴いていただけなのだが。ただ、あまりにも囚われていたので。

一つのアルバムに囚われている状態で他のミュージシャンのライブを楽しめるだろうか、という小さな不安が胸の底にあったが、杞憂であったとわかって嬉しい。そうだ、そうなんだ。自分は好きなものをいくつも持っていて、その一つを堪能できる日が今日なんだ!

屈託なくわははと笑えるのはとても幸せなことだと思う。特に今回のライブのオープニング映像は実に凝っていて素晴らしかった。メンバーのそれぞれが担当の色を持つM.S.S. Projectは確かに戦隊もののそれに似ている。しかしまさかあそこまで本格的に、着ぐるみの怪人と爆薬を用意して演出しようとは誰が想像できただろう! 各人が変身するときの決め台詞も面白く、中でもeoheohの「自然が憎い! グリーン!」という台詞には腹を抱えて笑ってしまった。変身して衣装をチェンジしたのに、もともと着ていた衣装がきちんとハンガーラックにかけられていて、変身を解くために普通に着替える演出も面白い。あの草がわさわさ生えた空き地にハンガーラックが置いてある光景だけでも笑いを誘うのに、時間をかけていそいそと着替えるシーンが挿入されては笑わないわけがない。

オープニングの後はゲーム実況タイムへ。今回プレイされたのはドット絵が懐かしいアクションゲームと「地球防衛軍」の二つ。アクションゲームの方はプレイしたことこそないものの、慣れ親しんだ画面だったため楽しんで観ることができた。キャラクターを選択し、四人同時に戦って勝者を決める単純な内容だ。最初はサッカーの会場が舞台で、ゴール前でサッカーもせず殴り合いをするなんて不思議なゲームだな……と思っていたら、シュートを決めたら他のプレイヤーにダメージを与えられるシステムだとわかりびっくりした。なるほど、ちゃんと意味があったんだな。

二つ目のゲームは「地球防衛軍」。これは十年ほど前に友人の家で観たことがあってぼんやり知っている気分であったのだが、思っていたのと全然違うゲームでびっくりした。記憶では人類が巨大なアリに立ち向かうゲームだったような気がするが、アリもいるがもっとすごい化け物もいて、人類の方も何か格好良い姿になっていて、「あれ? どっちかって言うとカルトなゲームだと思っていたけどもしかして違うのか……?」と混乱した。

ゲーム実況が終わり、メンバーがステージからいなくなると幕間動画へ。以前にも書いた記憶があるが、こういう動画を用意してくれるのは非常にありがたい。待ち時間にも楽しませてくれようとする彼らのサービス精神に感謝である。

内容は川崎のヒーローと怪人を各々作り、勝者を決めようというもの。あろまほっとが描いたのは干し柿を持ったラガーマン、KIKKUN-MK-IIは右肩に川崎フロンターレ、左肩にヴェルディ川崎のマスコットをつけたラモス瑠偉。あー、小学校の頃ラモスの大ファンだったんだよなぁ自分……としみじみ。で、この二名がヒーロー。怪人を描いたのはFB777とeoheohで、FB777はやたらパースのきいたかりんとう饅頭の化身に、eoheohは湘南の……言わぬが花でしょう。「(モチーフに)有名人多すぎねぇ!?」という突っ込みがなされ、様々な裏切りの挙句、最終的に勝ったのはあろまほっとの描いたヒーローだった。ちなみにこのヒーローにも「けんぷファー」というモチーフがあるらしいが、詳しくないのでわからなかった。

そしてついに、音楽ライブへ! ちなみに本日のセットリストはこんな感じだ。わからないものもあるがご容赦を。


かっこいいインストゥルメンタル(知らない曲)
ENMA DANCE
ボーダーランズのテーマ
Egoist Unfair
THE BLUE

Glory Soul
Phew!
KIKKUNのテーマ

WAKASAGI
ReBirth
M.S.S.Party
M.S.S.PHOENIX(新曲)

~アンコール~
L4Dのテーマ(ダンス)
M.S.S.Phantasia
We are MSSP!


全体的に定番曲で固められたセットリストであったが、その中に「WAKASAGI」「ReBirth」、そして新曲「M.S.S.PHOENIX」があったのが嬉しい。二曲目の「ENMA DANCE」ではあろまほっととeoheohによるマリオネットのパフォーマンスも。

「ボーダーランズのテーマ」はライブでしか聴いたことがないのにコールの一部を覚えてしまった自分自身にびっくりしつつ、思いっきりペンライトを振り、「ぶっとばせーー!!」と叫ぶ楽しさよ。そうだそうだ、ぶっとばせー!!!!

「Egoist Unfair」を聴いて思ったのは、初めてライブで聴いたときよりもずっと声が出るようになっているなぁ、ということ。嬉しい発見である。これはどうにも歌いにくそうな印象があったのだ。

「THE BLUE」で視界が青色に染められるのを楽しみつつ早口の初音ミクの歌唱に聴き入る。この日自分は二階席で、「立ち上がらないでください」と指定された位置であったために腰を下ろしたまま観戦していて、立ち上がりたい衝動に何度駆られたかしれないが、この美しいペンライトの海を堪能できるならまぁいいか、とも思った。

「Glory Soul」はあろまほっととeoheohが剣を取って戦う演出があり、実に海賊らしくて格好良かった! 映像演出も素晴らしい。ステージに設置された大画面に映るのは舟の舳先と大海原に、青い空。まるでステージが甲板であるかのように見えるのだ。いいなぁ、こういうの。楽しくならないわけがないよなぁ。

「Phew!」では一転、草原が映し出され、パントマイムを演ずるあろまほっとeoheoh、そして最後ゾンビに襲われる二人。襲い掛かるゾンビが映像に映し出されることで、この和やかで楽しい曲がゾンビ曲だったことを思い出す。しかし何でこれがゾンビ曲なんだろうなぁ。

毎度お馴染み「KIKKUNのテーマ」はいつだって楽しい! 黄色いペンライトを振って「きっくん! きっくん!」と叫ぶときの多幸感! シンプルイズベストってこのことだなぁ、とつくづく思う。特にきっくんファンにはたまらないだろうなぁ。

「川崎」に似ている曲を……ということで始まった「WAKASAGI」は、己の大好きな一曲で、今日この日にフルで聴けたことがたまらなく嬉しい。「M.S.S.Phantasia」が発売されたとき、何度エンドレスリピートしたことだろう! この曲の他には何も音楽を知らない、と思われるほど聴いていた。キュートな歌詞とFB777の伸びやかな歌声がたまらなく心地良いのだ。

前半は声が出づらい様子もあったが後半はのびのび歌っていて、あぁ、聴けて良かったなぁ嬉しいなぁ……と思っていたら「ReBirth」まで! これも大好きで、初音ミクの歌声を今まで「音」と感じていたのに、「声」として聴き取った初めての曲なのだ。この曲のとき、あろまほっととeoheohが絵を映し出す光る棒をくるくる回していて、その演出がまた可愛らしくて、心がふわっとなった。

「M.S.S.Party」で盛り上がり、本編最後の一曲は新曲「M.S.S.PHOENIX」。曲に入る前にきっくんが新曲の披露をサプライズで発表しようとしたものの、うっかり自分で曲名をバラしてしまうシーンがあり、FB777がフォローすることで時間を巻き戻す寸劇も発生して微笑ましかった。「M.S.S.PHOENIX」はきっくんの曲かな? ロックテイストの楽曲に思えた。

アンコールでは驚いた。拍手に呼び込まれステージに登場するサポートメンバー。真っ暗な視界。しかしいつの間にかM.S.S. Projectのメンバーもステージに待機していたらしい。パッと放たれるスポットライトの中心にFB777、KIKKUN-MK-II、あろまほっと、eoheoh。そして四人が息を合わせて踊り出す! わっと湧き立つ会場! 「ゾンビ!」と叫ばれる合いの手! これには本当にびっくりした。

彼らが音楽ライブとは違うライブを行っていることは知っていて、そこでダンスを披露していることも耳にしていた。しかしそれを目の当たりにしたのは今日が初めてで、ゲーム実況と言うインドアな取り組みからスタートしたとは思えない動きとアクション。一挙一動が全て揃っているわけではないものの、ここに至るまでの努力を思うと計り知れないことは予想される。だって、己は彼らとほぼ同年代で、ここ最近がっつり体力の低下を感じているんだぜ。すごいよ、本当に。

「M.S.S.Phantasia」で楽しく盛り上がり、「We are MSSP!」で締め。毎度のことながら、カラフルなテープがバーンと空間に放出され、舞い落ちる様のなんと美しいことか。二階席の目の高さまでテープは昇り、その影は脇の壁に色濃く映った。揺れながら落ちる影を目で追って、カラフルに染まる会場を見下ろして、あぁ、綺麗なものを観ると心が洗われるなぁ、と思った。

最後は写真撮影をしておしまい。あの写真に写る光の一粒が、もしかしたら自分かもしれない、と思うと嬉しい。名残を惜しむようにステージに残ったメンバーは客席に結んだタオルを目一杯投げた。eoheohとKIKKUN-MK-IIのタオルは二階席に届かんばかりの勢いで、それを目で追うのも楽しかった。

ということで非常に楽しかったのだが、一つだけ、一つだけ! あろまほっとさん、あの、下顎なくなったじゃないですか。いや、チャンネル放送で下顎がなくなった件は知ってたのだが、生で改めて見るとやはり寂しい。いやでも髪型変えるようなもんか。改造だもんなぁ。

そのうえで気付いたこと。あれは般若というよりも骨に近い印象を己は抱いていたらしい。言うなれば、ポケモンのカラカラのような。漫画「BLEACH」のアランカルの面々のような。顔の上に乗るドクロの仮面。あれが実に格好良いなぁと思っていたようだ。そうして今、下顎が無くなってちょいと寂しいなぁと思っている。人間の顎を覆う骨の顎、あの構造って結構魅力的じゃあないかしら。そんでもって今の下顎を落とした姿は、般若と言うよりもマスカレードのそれのようで、また印象が変わるなぁと感じるのである。

ちなみに自分は週に一度一週間分の常備菜を作ることを習慣にしていて、その際にM.S.S. Projectの面々が飲み食いしながら喋っている動画をラジオ代わりにすることが多い。調理にはおよそ二時間かかるので耳で楽しむのにちょうど良いのだ。あの動画、良いよね。



未分類0杯, 非日常

還弦主義8760時間という、ヒラサワ自身の楽曲をシンフォニックにアレンジするプロジェクトで発売されたアルバム、「突弦変異」と「変弦自在」。この二枚はオーケストラテイストでありながらも演奏するのは機械の演者。人間による生演奏を想定していないそれは「できるものならやってみろ」と言わんばかりのアレンジで、無限に鳴らされるシンバルに半笑いになりつつ魅了されたのも記憶に新しい。

その「できるものならやってみろ」に応える人々がいようとは、いったい誰が想像できただろうか。

「Switch On! Orchestra」はヒラサワの楽曲をオーケストラで演奏してみたい、とアマチュアファンが集まって試奏会を企画したことから始まったそうだ。その人数は百名を越え、ステージにずらりと並ぶヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、サックス。ホルン、トランペット、トロンボーン、バストロンボーン。テューバ、打楽器、ピアノ、ハープ、筝、二胡、三味線、エレキギター。エレキベースにドラムに電子バグパイプ。そして天井まで聳え立つパイプオルガンと、ソプラノ、アルト、テノール、バスのコーラス隊。よくここまで集まったものだなぁとしみじみする。

通常のライブであればステージには演者がいて、ステージを見つめるファンがいる。しかし今回ステージに立っているのはファン、ステージを見つめるのもファンで、演者の家族を除けばほぼファンしかいない空間という密度と熱量。ヒラサワへの愛を放出する演者とその愛を受け取るファン。常にはない面白い構図である。

場所は所沢市民文化センターミューズアークホール。駅から銀杏並木を十分ほど歩いてすぐのところにあるホールだ。自分はライブには頻繁に行くがオーケストラを観たことはほとんどなく、のだめカンタービレの知識しかない。よってまず、建物の内装の違いに面食らった。おお、正面にパイプオルガン、そして両脇に天使の像。いつも見ている聳え立つマーシャルアンプの壁とは全く違った光景だ。

プログラムは第一部と第二部で分かれ、第一部はアニメ作品からのサウンドトラックメドレー。Amiga起動音の再現というニクイ演出から始まり、一曲目は「山頂晴れて」! ここでうっかり、あの音を聴いた途端ガバッと条件反射で拳を振りぬきそうになってグッと全身に力を込めて席に縮こまった。危なかった。ここはライブハウスじゃなかった。

ちなみに自分は前から四列目の席だった。かなり前だがステージよりも低い位置なため全体を見渡しにくかったのが惜しい。会場にもよるかもしれないが、オーケストラのコンサートは前方よりも後方からの方が見やすそうだ。

演奏が始まり最初に思ったのは「音が小さい」ということだったが、それはライブハウスの爆音に慣れているからだろう。だが、「ASHURA CLOCK」と「MOTHER」は曲調もあって迫力があり、音の強弱も激しくて聴いていて実に楽しかった。躍動感がたまらない。

コーラス隊はもともとの楽曲にあるコーラスを再現することもあれば、楽器としての声の役割に徹しているシーンもある。歌詞を歌っていたのは「Sign」と「現象の花の秘密」だったかな。歌詞を歌っているときはノリノリで、楽しさが溢れんばかりの表情になっていて微笑ましかった。あぁ、大好きなんだなぁ。

上記の「Sing」「現象の花の秘密」のような例外もありつつ、基本的にヒラサワのボーカルパートはなく、ボーカル部分はヴァイオリンなどで再現されている。そして聴きながらふと思ったのは「SWITCHED-ON LOTUS」から切なさが消えているということだった。歌詞が頭に再生されるのに、堂々としていて格好良く聴こえるのだ。今まで「SWITCHED-ON LOTUS」をインストで聴いたことがないだけに気付かなかったが、これは曲だけ抜き出すと「格好良い」印象を与える曲なのかもしれない。

そういった小さな発見も嬉しい。

「ASHURA CLOCK」から「Timelineの東」に移ったときの曲調がガラリと変わる感覚が楽しい。この会場にはヒラサワのファンだけでなく、演者のご家族もたくさん来ているようだった。己の隣の席のご夫婦もお子さんの晴れ姿を観に来たようだ。指で丁寧にプログラムを追って、どの曲を演奏しているのか把握しようとしている姿が愛おしい。この方々にとっては、もしかしたら今日この日がヒラサワ楽曲との初対面かもしれない。オーケストラを組んで演奏したいと思うほど好きな楽曲のそれぞれを知ってどんな印象を抱いただろうか。興味深い。

演奏だけでなく、差し込まれる小ネタも素晴らしかった。演奏終了後にステージ袖から現れたのは、まさかの会人のマスクを被ったスーツの男。抱えたダンボールを指揮者の志村健一氏に指し出し、蓋を開ければ中から出てくるのはスプレー缶、そしてハエの舞う音! 志村氏がスプレー缶を握り、ステージを舞うハエの音に向けて噴射する遊び心。そしてさらに、もう一つダンボールが運ばれ、開けてみれば見事に再現された銀色のノモノス! ここでも志村氏が「ハーンド、マイク★」と声高らかにノモノスを天へ掲げてくれた。何て良い人なのだろうか……。

「CHEVRON」での「ギュィイイイイイン」という音の再現も素晴らしかった。つくづく、ステージ全体を見渡せなかったことが悔やまれる。細かい音の一つ一つがどの楽器から、どの動きから発せられていたのかこの目で確認したかった。楽器に詳しくないため、気になる音があってもそれがどの楽器のものなのかわからないのだ。

全体を通して耳に残った軽やかな「ポンポンポンポン……」という音がすごく好きだったのだが、あれは何の楽器だったのだろう。鉄琴か木琴か、そういった楽器のような気がするのだが、わからない……。

そういえばオーケストラと馴染みが薄いため、指揮者とはこんなに頻繁に出たり入ったりするものなのか……という驚きもあった。忙しくて大変そうだ。

いつかヒラサワの楽曲を本物のオーケストラで聴いてみたい、と夢のように思ったものだが、まさかその夢が現実になるとは思わなかった。それは同じように、いつかヒラサワの楽曲をオーケストラで奏でてみたい、と夢のように思った人々がいたからで、それを夢に留めない実行力があったからだ。これだけの人数を揃え、準備を整え、開催までこぎつけるのは並大抵のことではなかったに違いない。

次があるなら次は是非、有料での開催を。今度こそお金を払って観せていただきたい。



【第一部】
Switch On!
AmigaOS4.0起動音

山頂晴れて

千年女優メドレー
~千代子のテーマ
~縦列風
~Run
~ロタティオン[LOTUS-2]

パプリカメドレー
~パレード
~暗がりの木
~逃げる者
~追う者
~白虎野の娘

妄想代理人メドレー
~夢の島思念公園
~幸福
~勇者
~夢の島-期待
~白ヶ丘-マロミのテーマ

【第二部】
ベルセルクメドレー
~Sign
~Ball
~BEHELIT
~Monster
~Fear
~EARTH
~BERSERK -Forces-

賢者のプロペラ
SWITCHED-ON LOTUS
ハルディン・ホテル

Aurora3
CHEVRON
ASHURA CLOCK

Timelineの東
現象の花の秘密
幽霊船
クオリア塔(HG-G)

ナーシサス次元から来た人
万象の奇夜
MOTHER
WORLD CELL

~アンコール~
現象の花の秘密(観客のリクエスト)
バンディリア旅行団



日記録日常

2017年11月21日(火) 緑茶カウント:0杯

もやしの茹で汁が、熱湯が、コンロの穴に吸い込まれていく。何故って? 鍋の取っ手が外れたからさ。

ガチャァン、と重量のある鍋がガスコンロに落ちる音を聞き、驚愕しつつも全く己は無傷であった。鍋は前のめりで落下し、熱湯はほとんどコンロの穴に流れたからだ。

そうして目の前には壊れた鍋と、茹で上がって飛び散ったもやしと、火がつかなくなったガスコンロ。コンロの穴を覗き込めばそこはひたひたと沼。粘性のあるカレーやシチューの調理中でなかったことは不幸中の幸いだろうか。

その鍋は一人暮らしを始めた当初に買ったもので、もう十二年近く愛用している。ここ数年は取っ手のねじが緩みガタガタと落ち着かなくなることが時たま起こっていたために、緩みに気付いてはドライバーでねじを締めて使用していた。それで問題なく使えるものと認識していたのだが、どうやら限界が来ていたらしい。その日もねじをキュッキュッと締め、よし安定したなと安心して鍋に水を入れて火にかけてもやしをグラグラ煮ていたのだがこの有様だ。いやぁ、火傷をしなくて良かった。

念のためガス会社に電話して対処方法を尋ね、コンロの中の水を古びたタオルで拭き取り、乾かすこと数時間。再びコンロは使えるようになったが、流石にこの鍋とはこのあたりでおさらばだろう。取っ手が外れてバラバラになった鍋。あぁ、十二年もの間ご苦労様でした。

ちなみに何だかんだあったがもやしはきっちり調理して夕飯のおかずとして冷蔵庫に保管された。壊れた鍋はまだ台所の隅にいる。