日記録3杯, 日常

2016年3月12日(土) 緑茶カウント:3杯

小学校の頃より絵と漫画が好きで、休み時間は教室の中で過ごすことが多く、部屋には漫画と小説とCDが山積み。大学の頃こそ弓道をしていたが今は全く弓に触れておらず、筋トレを日課にしつつも特にこれと言ってスポーツを趣味としていない。興味深いと思った作品についてあれこれ想像を巡らすことが大好きで、最近は専ら筋肉少女帯の楽曲「枕投げ営業」の物語を脳内で展開することを趣味とし、また、深夜アニメ「おそ松さん」にはまりまくって松野家の一ヶ月の銭湯代を計算しては「都内共通入浴回数券(10枚4,200円)を使っても、一人で1ヶ月に12,600円、六人で75,600円もかかるぞ……」と慄いて松野家の経済事情に思いを馳せている。

そんな根っからの文化系オタクであるのに、体育会系と思われることがわりとある。この間などは「毎日マウンテンバイクに乗ってそう」と具体的なイメージを告げられ、いやどっちかと言うとオタクでスポーツとは縁遠いんですよ、と言うもあまり信じてもらえない。スポーツが好きそうと言われて気分を害すことはないが、そこからスポーツの話題を振られても全く対応出来ない。オリンピックもワールドカップも興味がなく、毎年気付いたら開催されていて気付いたら終わっていることの繰り返し。しかし目の前の人はスポーツの話をしたそうだぞ! ごめんよ! オリンピックって四年に一度のわりに結構ちょこちょこやってるなぁと思ったら冬季と夏季で開催年が違うんだね! そんな程度の認識だよ!

しかし、こういった他者と自己の認識のギャップは面白い。なるほどなぁ、他者から見ると自分はそのように見えるのか。中身は全然違うのになぁ。自分はずーっと自分をオタク以外の何者でもないと思っているがそれを知るのは自分ばかり。そしてまた、自分が「彼の人はこのような人なのだろう」と思ったことが、全く事実にあてはまらないこともある。いやーまさかあなたにそんな趣味があったなんて! と喜んだこともあれば驚いたこともあったし、すっごいものを見せつけられたぞ……と固まってしまったこともあった。

今でも覚えているのは友人のツイッター。普段から下ネタに抵抗がない印象はあったが、まさか、そんな、連日、直接的かつマニアックな淫語や局部の名称を怒涛のようにツイートしているとは流石に予想出来なかった……しかも投下されるイラストは十八禁祭りじゃあないですか……あなたがやおい好きなのは薄々知ってはいたけどあまりの衝撃にちょっと、えっと、どう反応すれば良いっすか? 己は?

予想だにせぬ方角から与えられた衝撃は多大なものだったが、その後も特に友人との付き合いは変わらない。たまにあのツイートを思い出しては「意外なものだなぁ」としみじみしている。いやー全く予想できなかったなぁ。すっごいこと呟くなぁ……。

ちなみに。「毎日マウンテンバイクに乗ってそう」と言った人に、「最近は深夜アニメのおそ松さんにはまりまくっていて、ブルーレイも買いました」と言ったら比喩ではなく口にしていた飲み物を噴き出した。わはははは。改めまして初めまして。己はこんな人間です。以後、お見知りおきを!



日記録3杯, 日常

2016年3月3日(木) 緑茶カウント:3杯

中心結節ってご存知? 奥歯の真ん中って普通、くぼんでいるじゃあないですか。すり鉢状にくぼんでいるじゃあないですか。その一番低い中心から、ニョキッと角が生えている、それが中心結節。聞いた話によると、二十人に一人だか百人に一人はこれを持っているそうで、己もそのうちの一人なのだが、既にその角は失われ口の中には無いのである。

何故無いか。折れてしまったからだ。

通常へこんでいるところにニョキッと角が突き出ているので損傷しやすく、これが傷つかないよう前もって処置をとる場合が多いそうなのだが、己はその処置を受ける前に何かの拍子に折ってしまったのだ。そして問題だったのが、この角の中にまで神経が通っているということ。つまりたかだか歯の表面に出来ているちょっとした出っ張りが折れただけかと思いきや、神経まで損傷を受けてしまっていたのだ。しかも奥まで。結果、中心結節のあった歯は大工事を余儀なくされ、銀歯のカバーですっぽりと包まれることになったのである。

この歯に、二十万円を使うことにした。

去年、祖母からもらった二十万円。「私が生きている間に、ずっと使える、記念になるものを買ってあげたい」と言われ、断りきれず受け取ったものの、二十万円を使ってまで欲しいものが見つからずずっと手元にあったのだ。一度、良い椅子を買おうかと思ったが、部屋に置くスペースがないため諦めてそのままにしていた。ただ、ずっとこれをどのように使うべきか決められないことが気にかかっていて、時折思い出してはどうすれば良いだろうかと悩んでいたのだが。

歯。歯なら良いんじゃないか?

銀歯で包まれた歯は奥の方にあるため見えづらいが、やはりコンプレックスだった。これを保険適用外の白い歯にしよう。他にもいくつか、銀が埋め込まれた歯があるので、それも白にしよう。歯ならまさに「ずっと使えるもの」である。記念になるかはわからないが、この銀歯を白くできたらすごく嬉しい。何て言ったって自分は、歯磨きが好きで食後は必ず歯を磨くにも関わらず、歯科検診を受ければ「綺麗に磨けていますね」「歯茎も健康ですよ」と太鼓判を押されるにも関わらず、どうにもむし歯になりやすく、それを歯科医に話せば「遺伝ですね」と一刀両断されてしまう、不遇の身であるのだから。

と、いうことで現在わくわくしながら歯医者に通っている。全て終わる日が待ち遠しい。



日記録3杯, 日常

2015年12月29日(火) 緑茶カウント:3杯

テレビがつきっ放しだったから。そんな理由で観戦していた格闘技の試合。ルール? 全くわからんよ。だって我が家で格闘技の試合を観るという習慣は今まで全く無かったから。そして己も全く興味を示さなかったから。喧嘩の記憶すら薄い。小六の頃、椅子や机を持ち上げ抱え殴り合いの喧嘩をした放課後の記憶。それが最後に何もない。

ボクシングもプロレスも知らない己には、半裸の男二人がもちゃもちゃペチペチしながら肌を叩き合っているようにしか見えなかった。痛そうに見えないのに痛いらしい。次第に片方がぐったりしてくるが、どこで致命傷を得ているのかわからない。だって効果音も衝撃波も無いのだもの。ひたすら肌をペチペチもちゃもちゃしているようにしか見えないのだもの。しかしペチペチもちゃもちゃされている人は大ダメージを受けているらしい。でもそれを実感できない。テレビを観ている己には。

ここまで他人事として受け取れる試合もなかなか珍しい。ここまで実感できないのも珍しい。複雑なルールならもとより、殴り合いというわかりやすいルールの中で。己は何か欠落してしまったのかしら。食い下がるよすがは小六の記憶しかない。だが思い返しても、血を流すような殴り合いはしておらず、血を流す殴り合いを画面で見ても何も実感できず、ただただもちゃもちゃしているなぁと思うばかりで、熱狂できない自分を寂しく思うのであった。

何とも言えない寂しさを抱きながら画面を観る。きっとこの人達は必死に生きているだろうに己はそれを受け取れない。何なんだろうこれは、と思いつつ。涙を流す勝者が観客に対して膝を折り、頭を下げる姿を観た。自分はただビールを呑んでいた。ただただ入り込めない寂しさを感じていた。もうちょっと踏み込めばわかるかもしれないと思いつつ、小六の記憶を再生していた。しかし小六の記憶は既に十年以上前。擦り切れたテープは色鮮やかに映してくれない。己は思いを馳せるばかりだった。見えない記憶に対して。あぁ。



未分類3杯, M.S.SProject, 初参戦, 非日常

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巡り合わせとは不思議なものだ。まさか、パシフィコ横浜国立大ホールという大きな会場で、五千人の観客に見守られながらゲームに勤しむ男四人を見つめることになろうとは思わなかった。

このとき己は、あれ、もしかしてこれってコンサートじゃなくってゲーム実況のイベントだったのか……? と若干混乱していた。

きっかけは「あろまさんぽ弐」を買ったこと。そしてその感想をサイトに載せたこと。ふと手にとって買った本がちょっと変わっていて面白かったので、軽いノリで感想記事を載せたらびっくりした。いきなり訪問者数が爆発したのである。

正直に言おう。一瞬炎上したのかと思った。

ただ、様子を見たところ好意的な受け止められ方をしているようだった。M.S.S Projectを知らない人間が「あろまさんぽ弐」を読んだことを喜んでくれたらしい。なるほど。これはあれだな。筋肉少女帯が夏フェスなどのイベントに出たとき、筋少ファン以外の人が「筋少面白かったー」と気軽にツイートした途端、筋少ファンが怒涛のようにRTしまくったりお気に入りに入れまくったりして、ツイートした人をびびらせるというあの現象と同じことが起きたのだな、と納得。わかる。確かに知らない人が見てくれるってのはとても嬉しい。

そしてその後は落ち着き、記事のスクリーンショットが転載されて「あちゃー」と思ったりしたこともありつつ平和に日々が過ぎた。ただ、検索に引っかかりやすくなったのだろうか。M.S.S Project関連で何かしらの動きが起こるたび、うちのサイトに来る人が増えるという謎の現象が起こるようになった。そのため何となく、M.S.S Projectという存在を意識する日が続き、ある日検索キーワードによってライブが行われることを知ったのだった。

ここで決断した。よし、ライブに行こう。

当時、己は「あろまさんぽ弐」「あろまさんぽ参」しか読んでいなかった。動画を見ていないため彼らについてもよく知らない。一番馴染み深いあろまほっとすら後ろ頭の印象ばかりである。後ろ頭の印象って何だよ。そんな中でじわじわと興味が湧いてきていた。そこへライブ開催の情報。だったらもう行くしかない。生で観られる機会を逃す術があるものか。

どんな音楽をやる人達なのか知らずにチケットを取るってのも妙な話だ。順序が逆になりつつも新譜を購入してみると、それは打ち込み系のピコピコ音楽とロックと初音ミクがごっちゃになったなかなか楽しいアルバムだった。とすると興味が湧くのはこの音楽をライブでどのように演奏するかということで、打ち込み系というと己は平沢進くらいしか知らないが、あの人はライブ用にアレンジした楽曲を流しながらレーザーハープを操って視覚的に盛り上げ、ギターと圧倒的な歌声で魅せてくれる。M.S.S Projectはどのようにするのだろうか。うーん気になる。

アルバムは結局「M.S.S.Party」と「M.S.S.Planet」の二枚だけ聴き込んだ。現在発売されているのは四枚なので、聴こうと思えば全部サラーッと予習することは出来そうだが、その聴き方ではもったいなく感じられたのである。まぁ、ライブで知らない曲に出会うのもそれはそれで楽しいので良し。気に入った曲に出会ったらまたそれを買えば良いのである。

と思っていたら。コンサートが始まると思っていたら。広いステージの中央に置かれたテーブルに寄り集まってゲームを始めたからびっくりした。

ゲームはモンスターハンター。やったことがないのでよくわからないが、グラフィックがとても綺麗だった。何せ自分はプレイステーションで時代が止まっている人間なので。モンスターの鱗とかすげー。

それにしてもまさかゲーム実況なるものを初めて見るのがパシフィコ横浜になるとは夢にも思わなかったぜ……。

ちなみに席はかなり良い席だった。自分の座席を確認した途端、来年分の運まで使いきってしまったんじゃないかと思い、若干頬が痙攣した。やばい。ちょっと興味を持って来た程度の人間がここにいて良いのか。どう考えても場違いじゃないのか。うわあもっと早く来て物販でペンライト買っとけば良かった……と後悔した。

観客は若い女性が多く、M.S.S Projectを模したぬいぐるみや缶バッヂをつけている人や、般若の面をつけている人がいて楽しげである。当たり前のこととわかっているのに、どのミュージシャンのライブに行っても毎度毎度感嘆してしまう。この会場にいる人全てがM.S.S Projectを好きなんだなぁ、と思って。好きな人で凝縮された空間である。何だかとてつもないなぁ。

そんな中で「おそ松さん」の十四松のコスプレを見かけたときはものすごくびっくりした。思わず二度見した。
※追記 …てっきり十四松のコスプレかと思ったのだが、KIKKUN-MK-IIのイメージカラーである黄色のパーカーを着ていた方だったそうである。勘違いをして申し訳ない。お詫びして訂正いたします。

ステージにはテーブルと椅子が並べられ、その奥には「MSSP」のロゴが入ったレンガの壁が立っており、さらに後方には巨大なスクリーンが吊り下げられている。こういう舞台セットを見るとわくわくしてたまらない。

そして開演。M.S.S Projectの四人が森の中を散策するムービーがスクリーンに映る。類推するに、一つムービーを撮っていて、ツアーの会場ごとに違うアテレコをしているらしい。今回は横浜が会場ということで、中華街とシュウマイを推した内容になっていた。

ムービーが終わり、歓声の中現れたのがKIKKUN-MK-II。ムービーと同じ白いローブを羽織っている。この人は普通の人間のように見える。いや皆普通の人間なんだけど。綺麗な顔立ちの人だなぁ、と思って見ていると、舞台袖から覆面が転がり込んできた。マジで文字通り転がり込んできた。

うわーーー本当に覆面だーーーーー! よくわからない感動をしてしまう。あの本に載っていた覆面の人が本当に覆面で現れた! しかも喋ってる! よく喋れるな! そんでもって登場のタイミングを間違えたらしい! 一回袖に戻ってまた転がり込んで来た! アクティブだな!

KIKKUN-MK-IIとeoheohの自己紹介が終わり、次に現れたのは般若である。暗闇の中から真っ白な般若の面を被った人がスキップしながら登場してきた。おおう本当に般若だ般若がスキップしてるよ……動作はキュートなのにめっさ怖いな……。本のイメージと目の前の人物のイメージが微妙に重なるようで重ならない。そうだ、うん。この人確かに般若なんだけど、やっぱ後ろ頭のイメージが強いから正面から見るとピンと来ないんだ。なるほど……。

最後に現れたのがFB777、だったかな? もしかしたらあろまほっとと順番が逆かもしれない。この人はサングラスをしているだけなのでとても人間らしい。KIKKUN-MK-IIと並んでいると安心感がある。

四人揃ったところで寸劇が始まり、その流れでゲーム実況が行われることが発表されたのだった。盛り上がる会場! 度肝を抜かれる自分! そっかゲーム実況もやるんだっていうかもしかしてゲーム実況がメインなのか!? あれーーーー!?

で、冒頭に戻るのである。ゲームを実況する、というよりも、ゲームをしながらトークをする、といった方がピンと来るかもしれない。スクリーンは五つに分割され、一番大きい中央のマスにゲーム画面が映し出され、あとの四つにゲームをする四人の顔が映る。映るといってもメンバーの二分の一は顔が隠れているのであるが。

わいわいしながらゲームを進める四人に歓声や応援の声が起こる。このゲームを知らないので己はイマイチ乗れなかったが、友達の家で友達がゲームをやる姿を観ながら、皆であーだこーだわいわい言っている感じに近いように感じられた。ちょうど数ヶ月前、友人宅でロックマンをやりながら酒を呑んだことがあった。そのときの雰囲気に似ている。

このままゲーム実況だけでライブが終わったらそれはそれで面白いなぁ、と思っているとボスを倒してゲームは終了。ついにお待ちかね、コンサートタイムになると発表された。おおう。演奏あった! 良かったーーー。

ステージの準備に時間がかかるため、メンバーは退場。代わりにスクリーンに映像が映し出された。横浜のヒーローを作る、というお題でメンバーそれぞれが描いたイラストにメンバーが言いたい放題言う、という内容だった。これ、実にありがたかった。対バンのライブに行くと転換の時間が何より苦痛で、ゆえに己は対バンライブにはあまり行かないのだが、こうして空いた時間まで楽しませてくれるのはとても嬉しい。隅々まで楽しませようとしてくれるサービス精神に感嘆する。

ちなみにKIKKUN-MK-IIはカイジ風の中華一番、FB777は頭がシュウマイ、耳がプリンアラモード、胸毛はナポリタンで、ドリアを差し出すヒーローを作り、eoheohは船を模した正統派ヒーロー、あろまほっとは神奈川県の形をした犬のような横浜県を作っていた。また、eoheohはフォトショップを活用して背景に七色の集中線をつけていたのだが、それについてずるいとペイントしか持っていないメンバーになじられていた。

さて、ムービーは終わったのだが、ステージは殺風景なまま。楽器らしきものはどこにもない。打ち込み系だからだろうか。しかしキーボードすらない。どのように進行するのだろう。と思っていたら、レンガの壁が動き出し、門が開くように空間が広がった。焚かれるスモークの奥にはベース、ドラム、キーボード、ギター!

人が増えた!!

サポートミュージシャンの登場である。中央にはギターを抱えたKIKKUN-MK-IIに、ショルダー・キーボードを構えるFB777。左右には太鼓を前に、バチを持つeoheohとあろまほっとの二人。始まったのはちょっと和風のテイストが入っている「Shadow Hearts」! なるほど、それで太鼓なのか!

eoheohとあろまほっとはパフォーマーの位置づけらしく、バチは振っていたが音を鳴らしてはいなかった。空間には初音ミクの歌唱が響く。生演奏出来るところは生演奏でやるようだ。ちょっとこれは予想外。格好良いなぁ。

二曲目は最初、何の曲だかわからなかったが「幾四音-Ixion-」だった。CDではかなり声を加工しているこの曲を生声で歌いきっている。それだけでも印象が違うのだが、曲もバンドで演奏するのに合うようにアレンジされている。ちょっと歌いにくそうにしているのが気になったが、何よりアレンジの違いが楽しかった。

「Arrival of Fear」もKIKKUN-MK-IIとFB777による歌唱で、eoheohとあろまほっとはパフォーマンスに徹していた。ヒュンヒュン回すと文字や絵柄が浮かび上がる光る棒や、煙を吐き出す銃を構えて終始会場を盛り上げてくれる。光る棒をヒュンヒュン回しているとき、eoheohは縄跳びを飛ぶような動作をしていて、そのコミカルな動きが妙に印象に残った。

そういえば、KIKKUN-MK-IIもFB777もアイドルのような衣装で、eoheohもサングラスに覆面をしつつも帽子を被りいかにもステージ衣装といった様子だったのだが、あろまほっとだけステージ衣装らしくないピンクのシャツだった。一人だけ普段着として着られそうな服である。ピンクのシャツを着て光る棒をヒュンヒュン回しながらステージを歩き回る姿はどこかキュートな感じがするのに、顔は般若で何回見ても怖いのが異様だった。

「Phew!」の前に、「これはゾンビの曲です」といった前置きが入った気がする。わりとのどかなイメージの曲だったが、ゾンビ曲だったのか……。

楽しかったのが「ENMA DANCE」。これこれ! この曲好きだから演奏してくれて嬉しかったなぁ。KIKKUN-MK-IIが「踊れ!!」と叫んだ瞬間、会場が沸き立ち跳ね上がる。照明演出も素晴らしかった。この曲に限らず、カラフルな光線がステージと会場を色とりどりに染め上げて、さらに観客の振るペンライトが彩りを添える。華やかだったなぁ。

次の曲は知らない曲だったが、一発で覚えることが出来た。「きっくんのテーマ」とのことで、会場のペンライトの色が黄色一色に染められる。KIKKUN-MK-IIのイメージカラーのようだ。そしてアップテンポのノリノリの曲が始まり、「きっくん! きっくん!」と大合唱! すげー楽しい! この曲が入っているCDを後で買おう。

間奏ではメンバー紹介が入り、サポートメンバーを一人ずつ紹介。ベーシストは何故か下痢であることをやたら強調されていた。また、あろまほっとによるコールアンドレスポンスも。「女子のみなさ~ん!」と大声で呼びかけると会場が応える。何故かeoheohも応えメンバーに突っ込まれる。「男子のみなさ~ん!」と呼びかけると会場の男性陣が応え、またもeoheohも応え、「お前の性別は何なんだよ」とメンバーから突っ込みが入る。

さらに、「眼鏡のみなさ~ん!」と呼びかけ、眼鏡人口の多さが確認される。最後、「出会い厨のみなさ~ん!」というおいこらちょっと良いんかそれ、という呼びかけにも会場はレスポンスを返し、あろまほっとによって下ネタが突っ込まれた。おっさんじゃないですか。

この後だったかな?「僕ときっくんがホラーゲームをしても明るくなっちゃうんですが……」というような前置きとともに曲が始まった。これは知らない曲である。スクリーンには古びた洋館が映り、一度退場していたeoheohらしき人物は巨大な鳥の嘴がついた仮面をかぶり、あろまほっとは黒いマントを羽織ってカメラを構えて客席に下りてきた。あろまほっとは手にしたカメラをeoheohに向けながらじりじりと移動して行った。もしかしたらゲームを再現した演出だったのかもしれない。

本編最後はアルバム表題曲の「M.S.S.Party」! アルバムの中でも抜きん出て明るいというか、何でこの曲だけこんなにぶっ飛んでるんだろう、と不思議になる曲である。無論ライブにぴったりでコーラスでは大盛り上がり。いやー拳を振り上げて叫ぶって楽しいなぁ!

アンコールの三曲はどれも知らない曲だったが、一曲目は「M.S.S.Party」に負けず劣らず異色な曲で、誰の作曲だったのかが気になる。何となくFB777っぽくない感じはする。そういえばアンコールだったか本編だったか忘れたが、ホラーな曲でeoheohが被っていた鳥の嘴のマスクを、あろまほっとが般若の仮面の上に被っていたことがあり、それが異様に怖かった。どんな和洋折衷だよ。

アンコール二曲目は会場の全員が青いペンライトを振り、幻想的な空間が作られた。やっぱりCD全部聴いておけばよかったなぁ、と若干思いつつ最後の曲へ。これも前述の通り知らなかったが、演奏前にタイトルが発表されたので把握することが出来た。ここにいる皆がMSSPだよ! という思いを込めての「We are MSSP!」である。最後にふさわしい明るく盛り上がる曲で、「M! S! S ! P!」」とコールするところが非常に楽しかった。この曲だけ聴くとまるでアイドルの曲のようである。でも全体を通して見るとアイドルって感じじゃあないから面白い。かと言ってロックって感じでもないのだが。何と形容するのが近いのだろう。

演奏終了後、サポートメンバーも全員そろって横一列に並び手を繋いで深々と頭を下げる。メンバーも観客も皆楽しそうで、ステージを立ち去りがたいように見えた。自分もとても楽しかった。

生でM.S.S Projectを観てみた感想としては、皆が和気藹々としていて、大学生のようなノリがどこか懐かしく、それでいてサービス精神がたっぷりなのが魅力だなぁと思いつつ、やっぱり般若が怖かった。うん。まじまじと見てみたけどやっぱり怖いな。そして頭部をすっぽり布で覆った状態であれだけ動き回れるeoheohの肺活量ってすごい。苦しくないのだろうか。

ライブについては、今まで自分が行っていたライブと全く違った異色の空間で、自ら赴いていながら何なのだが、「迷い込んだ感じ」がドキドキした。あと、よく考えたら普段行くのは四十代後半から六十代のミュージシャンのライブばかりなので、若い人が跳ね回るハツラツとした姿も新鮮だった。演奏をしない人達がいかにして場を盛り上げるか工夫している姿も面白い。

欲を言えばもっと! もっと曲を堪能したかった。特に「SLIVER」が好きだからあれを聴きたかったなぁ。無論、M.S.S Projectの魅力の一つはゲーム実況にもあるのだろうが、曲をがっつり楽しめるライブもやって欲しい。今後やってくれないかな。

とりあえず、あと二枚のCDを買おう。ライブもまた、次回開催の際には参戦したいものである。実に楽しい異空間だった。



未分類3杯, 平沢進, 非日常

照明演出の豪華さとスクリーン映像のシンプルさが印象的なライブであった。二階席からの観覧により、ステージの平沢とアリーナ席が視界に収まり、ぐるりとホール内を見渡せばどの席もぎっちり満員御礼で、立見席にまで人がずらり。己が初めて平沢のライブを観たのは2011年の東京異次弦空洞だが、年々動員が増えているように感じるのは気のせいだろうか。

ステージの脇に近い座席からはステージのスクリーン映像が見えにくくなっているが、天井近くにモニターがあり、そこにスクリーン映像とステージの様子が映し出される配慮もあった。流石にインタラでスクリーンが見えなかったら物語が把握出来ないし辛いものなぁと納得。ありがたいことである。

今回はいったいどんな物語だろう、いったい何人の平沢が物語に組み込まれるのだろうか、とわくわくしていると開演の合図。しかしいつもとちょっと様子が違う。ステージの下手にスタッフのお姉さんが立ち、分岐の方法について解説と練習を行うとアナウンスが。何だ何だ? と思うとスクリーンに映し出されたのは機械的なデザインの円二つ。左が赤で、右が青。

ストーリーで分岐が発生した際、今までは右に進みたい人は右の表示が出たとき、左に行きたい人は左の表示が出たときに大声を出し、その声量の強さよって進むべき道を定めるパターンが多かった。しかし今回は、赤はメジャーコード、青はマイナーコードと定められ、自分が行きたい道の方の音程で大声を出し、その響きによって進むべき道を判定すると言う。

おおーう面白いけど難しそうだなーと思いつつ練習。実際、面白いけど難しかった。まず赤の円が存在を主張し、メジャーコードのサンプル音が鳴り、それを真似して大声を出す。次に青のマイナーコードを練習。そして赤と青、交互に声を出し、最後に赤と青が同時に点灯。無論メジャーとマイナーを同時に発生することなどできないので、ここで自分が進みたい道の音を選び、大声で叫ぶのである。

ホール中に響く二種の音。やってみるとわかるが、どうしても多い方に釣られそうになる。探り探りにもなる。こいつぁ大変だ、頑張らなきゃなと気合を入れたところで練習終了。ついに本当の開演と相成ったのである。

無人のステージに掲げられた巨大スクリーンに白髪のヒラサワこと「過去向く士」が映し出され、ストーリーが語られる。ものすごくざっくり言うと、この世界の存亡に関わる「WORLD CELL」が停止してしまったので、再稼動させなければならない事態になった。そこにやってきたのが「過去向く士」こと別の世界のヒラサワ。さらに、「過去向く士」を追ってやってきたのが「アヴァター」で、これもまた別の世界の平沢だが、主体性がなく常に不安を抱えて右往左往している。「過去向く士」はそんなアヴァターを利用して「WORLD CELL」を再稼動させようとしているのだが……。

ちなみに今回の公演ではバッドエンドのルートを辿り、アヴァターがいなくなった後いつの間にか現れて鉄を切る平沢と、背中に黒い羽の生えたヒラサワが空を飛んでいく映像が映し出された。過去向く士、アヴァター、ステージの平沢、Σ-12、鉄を切る平沢、黒い羽の生えたヒラサワ、この公演だけで六人の平沢が発生している。今までインタラを全て合計したら何人になるのだろうか。この無数の平沢を見分けることを考えたらおそ松さんを見分けるなんて余裕のよっちゃんなんじゃあないか? などとエンディングのスタッフロールを見ながら思った。

「断崖を登る」シーンがメインなこともあり、今回の映像は比較的シンプルである。崖と空と平沢と、宙に浮かぶ奇抜な登場人物。前回の「ノモノスとイミューム」に比べると随分あっさりしているが、準備期間の短さを考えるとよく間に合わせたな……と思わざるを得ない。

対して照明の豪華さはすごかった。ステージから客席に放たれるレーザーハープの美しさはもちろん、曲に合わせて色とりどりの光がホール中を旋回するのである。多彩な光の演出は息を呑む美しさで、音楽の美しさをより一層引き出していた。溢れる光と音の中、豊かな声で叫ぶ平沢を観て、光と音の魔術師というどこかで聴いたようなフレーズが脳裏に浮かんだ。

一曲目は「舵をとれ」で、二曲目から「アヴァター・アローン」「アディオス」「回路OFF 回路ON」と続いた。「ホログラムを登る男」以外で演奏されたのは「舵をとれ」「オーロラ」「橋大工」の三曲。「オーロラ」のとき、オレンジの光が照射されていてそれが実に美しかった。

「MURAMASA」では助っ人のPEVO1号が刀を持って登場し、振りかぶってレーザーハープの弦を切るという演出が! 切られた弦からイントロの「ビーッ!」という音が流れ、スクリーンには断崖を登るアヴァターの頭上に無数の刀が降り注ぐ。そして何故かアヴァターの眼下にはタコ! 巨大なタコ! スクリーンとステージ、どっちを観れば良いんだ、そもそも何故断崖にタコが……。このとき己は若干混乱していたと思う。

どの曲か忘れたが、ギターの出だしを間違えたのか、無音の中で「ピョーンッ」と響いた後、何事もなかったかのように弾きなおしたり、曲の入りがちょっと不安定だったりといった場面があって満足した。いやあやっぱり人間なんだなぁ……と思ってしまうのである。重々承知しているはずなのだが、未だに。

ド迫力だったのは「ホログラムを登る男」。始まりの声のパワーの強さに圧倒された。他の曲ももちろんすごいのだが、この曲が一等抜きん出ていた。生の歌声であることを強く実感した瞬間だった。CDも迫力があるのだが、あれはあえてやわらかく抑えているのか? わざと? と思うほど。脳と心臓を突き抜けていくというか。すごかった。

あと「オーロラ」のアレンジ。ライブで聴く機会が多い曲は、そのたびごとに別のパターンを楽しめるのが嬉しい。何とも得した気分である。

帰り道で「Wi-SiWi」の歌詞を反芻する。あのエンディングから考えるに、「起きろ外道」「笑え邪道」の「外道」と「邪道」は罵倒語の意味合いではなく、主体性なく道に迷いながら何となく周囲の空気に合わせて歩まれる「正道と言われているもの」の反対を表しているように思う。そしてあの谷底に落ちつつも目覚めたアヴァターのように、意思を持ってあえて外れた道、邪とされる道を進むことこそを祝福しているのだろうか。あぁ、でも歌詞カードをまだ読み込んでいない。

ライブの余韻に浸りつつ、反芻しながら今日は歌詞カードを味わおう。もしかしたら明日の公演で新たな発見を得られるかもしれない。