2013年11月12日(火) 緑茶カウント:2杯
なるほど、絵を描く人にとってはごく当たり前のことであっても、そうでない人から見ると困っているように見えるのか。
「こういった絵を描いてくれ」と頼まれて、若干時間はかかるがすぐに描けるものだったので、紙とペンを取り出してその場で黙々と描き始めたのだが、ややあってから自分にそれを頼んだ人から、「ごめん、そんな大変だとは思わなかった」「さっきから随分試行錯誤しているよね?」と言われ、いったいどういうことだろう? と首を傾げた。試行錯誤? 特に迷うことなく、淡々と描き続けているのに?
疑問を抱きつつも「いや、試行錯誤とかは特に。ちょっと時間はかかりますがもう少しで出来ますよ……?」と答え、何と無く腑に落ちない顔をしているその人の隣で作業を再開したのだが、後になってわかった。そのとき自分はテーブルの上で紙をくるくると回転させながら描いていた。きっと絵を描き慣れた人であれば誰しも自然に行う動作だろう。だが、絵を描く習慣の無いその人には紙を回転する動作の意味が掴めず、「えーとえーと」と困っているように、もしくは悩んでいるように見えたのだ。
いちいち紙を回転させるのは、その都度描きやすい位置から線を引くためであるが、描かない人には思いも寄らないかもしれない。そうして自分はその人の目の中で、迷いに迷って絵を描き上げた結果、やたらと恐縮されてしまったのであった。
自分自身、この動作が人に与える印象など考えたことも無かった。全く別個の視点から見た印象を教えてもらうのは興味深いものである。そして自分も同じように、他者の未知の動作の意味を誤解しているかもしれないと思うと愉快になる。
ちなみにその人は回転の意味をまだ知らない。いつか種明かしするか迷うところだ。