ライムを落としたコロナビールで咽喉を潤しながら開演の時を待つ。今日のゲストは水戸華之介&3-10Chainの水戸さんに、ニューロティカのあっちゃん、そしてメトロノームの写楽さん。見知った顔ぶれの中に一人だけ混じる若い人。そしてこの写楽さんは本日、これでもかと言うほど先輩ミュージシャンの好き勝手な大暴走に付き合わされるはめになったのだった。
拍手と共にステージに現れたオーケンは、最近特撮のライブを終えたことを話してくれた。特撮は筋少とは違い、ドラマーがMCを途中でぶった切って曲に入るため、伏線を張って張って張って、トークの中盤で盛り上がって、さあ畳むぞと言うところで強制的に曲に入ってしまうことが多いそうだ。しかし今回のライブでオーケンは、これはドラマーのアーリーの優しさではないかと気付いたと言う。伏線が回収できないまま終わり、何の話をしてたのかよくわからないキチガイみたいなオーケンこそが良い! というアーリーの思いではなかろうか! とのことだ。……なるほど!! ……それで良いのか……?
最初のゲストは水戸さんで、水戸さんを招く前にオーケンがふざけて「まさかオーケンにこんな人脈があったのかと皆が驚く人が!」「のほほん学校初の!」と煽りに煽った挙句、普段のほほん学校でゲストを招く際に流れる、通称「のほほん学校のテーマ」もないままふつーにステージに招かれる水戸さん。「入りづらいわ!」と笑いながら苦情を呈していた。
そうしてやってきた水戸さんに間髪入れず内田さんの近況を聞くオーケン。「もう何十年も会っていない」と冗談を交えつつ質問するオーケンに、水戸さんは最近内田さんとテクノユニット「Zun-Doco Machine」を始めたことを語る。そこから内田さんの集中力がすごい、しかし遊びにしか発揮されない、故に水戸さんの曲をテクノに作りかえる作業については、始まりが遊びであったため寝食を忘れて没頭し二十曲作ることができるが、筋少は遊びでないのでその集中力が発揮されないと語られる。そこにオーケンが橘高さんによる内田評を思い出して続ける。「内田は金では動かない、名誉でも動かない、あいつは友情で動くんだ!」と熱い言葉。それに対して水戸さんが「ジャンプだ!」と笑い、オーケンが「ちょっと待ってくださいよ、今うちのメンバーの四分のニがディスられましたよね?」と返し、最終的に橘高さんに「関西ジャンプ」という二つ名がついた。
ちなみにオーケンは金でも名誉でも動かず、ただ一つ「リア充になるため」であれば動くらしい。そのリア充とは「生きている実感」とのことで、それがないと死んだようになってしまうと言う。なるほどとばかりに水戸さんが「働かないと死ぬんだね」と言うと頷くオーケン。「でも働きすぎると体壊すんだね。よくずる休みしてるもんね」と言えば参ったとばかりに笑うオーケン。このポンポンと進む掛け合いがたまらなく面白い。
内田さんの近況の後はオーケンの近況へ。オーケンは最近アートにはまっているとのことで、ライブのリハーサルから本番までの空き時間に渋谷のBunkamuraなどの美術館や博物館に行くと言う。そういった会場で見た衝撃的なアートの写真(写真撮影可)がスクリーンに映し出されて我々観客に共有された。空き缶らしきものを全身に括りつけた人物、タイ米を皮膚全体に生やした人の接写写真、会場一面が数々の布で敷き詰められた観客参加型のアート。確かに衝撃的かつ不可解ではあったが、意味や意図を分離して衝撃的光景のみ切り取って見せるのは、そりゃあ意味不明で面白いものになってしまうよなぁ、とも思った。
この後には高崎のイベント「SLOW TIME MEETING 2017」にオーケンが出演した話に。出演者が何人もいて、一人ひとり順番にステージに立つ形式だったそうなのだが、中川敬氏が出ているときにべろんべろんに酔っ払ったトモフスキー氏が「彼は寂しいに違いない!」と言い出して、ピンク色のキャリーケースをパーカッションとして使い、セッションしようとしてステージに出て行こうとしたという。オーケンはそんな彼を止めようとしたが止めることができず、歌う中川氏の横でピンクのキャリーケースを叩くトモフスキー氏、音が聴こえるようにわざわざキャリーケースにマイクを近づける主催者、そんな彼らをステージ袖から撮影するオーケン、という不思議な構図が出来上がってしまったそうで、その写真が公開された。アート(?)な写真であった。
そうしてわいわいはしゃぎながら招かれた二人目のゲストはニューロティカのあっちゃん。入場するなり始まったのは毛生え薬の話題で、話によるとあっちゃんは毛生え薬を処方してくれる病院に行った結果髪がふさふさになり、最近パーマをかけたそうだ。そこから薬の話で盛り上がり、今話題の芸能人のあれやこれやの話に飛び火し、危ない話で結構盛り上がった。ちょっとハラハラしちゃったぜ。
三人目のゲストはメトロノームの写楽さん。オーケン達とは一回りほど年下で、故にこの三人に囲まれたトークでいったいどうして彼が主導権を握られようか! 写楽さんの出身地やメトロノームが活動休止から復活に至る話を聞こうとするも、お喋り好きのふざけた大人が大笑いしながら話題をあっちに飛ばしこっちに飛ばしと大盛り上がり。面白い。面白いが、当人はものすごく喋りづらかろうなぁと思った。
宴もたけなわとなったところで、オーケン、水戸さん、あっちゃんの三人で松山千春の「長い夜」をカラオケで代わる代わる歌い、誰が一番千春魂を持っているか判定してほしい、と写楽さんに無茶振りをする。そして熱唱する三人の先輩ミュージシャン。それを見つめる写楽さん。そんな写楽さんに「拷問を受けているような顔をしている」と水戸さんによる的確な発言。確かに!!
最後に吉田拓郎の「落葉」を四人でセッション。そこでオーケン、「写楽くんが寂しいと思って!」とやにわに取り出したるは緑のキャリーケース! 即座にケースの近くに設置されるマイク! そして写楽さんがギターを爪弾き、オーケンがキャリーケースをポコポコ叩き、水戸さんとあっちゃんが熱唱するも途中で手が痛くなって叩けなくなるオーケン、キャリーケースの周りに集まり代わる代わるポコポコ叩く水戸さんとあっちゃん。結果、ステージの隅でギターを弾く写楽さんと、その反対側でキャリーケースを囲みながらポコポコバンバンキャリーケースを叩きながら気持ち良さそうに歌う三人のおじさんという構図が出来上がったのであった。
大盛り上がりの中でのほほん学校は終了。演奏終了後に写楽さんは次回のライブの宣伝をして行ったが、その甲斐があったのだろうか。その成果はわからぬが、きっと多くの人が今日写楽さんに対し、オーケンが言ったように母性本能をくすぐられたことだろう。いつかこの逆パターンの構図も見てみたいものである。先輩ミュージシャンに囲まれ無茶振りをされるオーケン。それはもう、オーケンファンなら実にくすぐられることだろう。きっと。