未分類水戸華之介&3-10Chain, 非日常

久しぶりの3-10Chainのワンマンである。非常に楽しかった! 水戸さんの曲はアンジーもソロも3-10も屑もエレカマニアも好きだが、そろそろ3-10の曲をがっつり聴きたい気分になっていて、その願望が叶えられたのだから嬉しい。何と、ゲストを招いて歌った曲と、後半のパンクメドレー以外は全て3-10一色! 過去には3-10Chainのライブと言えども、半分とまではいかないまでも、アンジー曲の割合が高かったり、決めの本編ラストやアンコールがアンジー曲ということが多々あった。水戸さんのライブに行き始めたばかりの頃は「まさか今になってアンジーを聴けるとは!」と感動した。嬉しかった。だが、回を重ねるうちに、3-10のライブでは3-10の曲をたくさん聴きたい、締めの一曲には3-10の曲を持ってきて欲しい、と思うようになっていた。ファンとは勝手なものである。

そして今回思ったことは、アンジーの水戸さんではなく、3-10Chainの水戸さんが3-10Ghainのライブでは求められるようになったのでは無かろうか、ということだった。過去に3-10のライブでアンジー曲の比重が高かったのは、単純にそちらの方が盛り上がるという理由だったのかもしれない。何と言ってもリアルタイムからのファンにとっては思い出深く、また、年数を重ねるごとに曲は育っていくものだ。その力の強さゆえに頼らざるを得ない側面もあったのでは無いかと思う。無論、「アンジーが好きなファンにも、3-10が好きなファンにも、色々なファンに楽しんでもらいたい」という水戸さんの思いあってこそだとは思うが。

このように思ったのは数年前に博多で3-10のライブを観たときのことを未だに強く覚えているからである。博多は水戸さんのホームグラウンド。そしてアンジーが育った土地だ。それゆえか、3-10Chainの曲では微動だにしない客がアンジーの曲を演奏し始めた途端大爆発、という場面があり、求められているものが違うことを強く感じさせられたのだ。

あれが2010年のことなのでおよそ三年前だ。三年間でいったい何が変わっただろう。3-10の曲数は大きく増えていない。だが、ライブの回数を重ねるうちに、アンジーとは別に、3-10Chainを求めるファンが増えたのかもしれない。それはきっと喜ばしいことなのだと思う。だって、今のバンドが今の曲で勝負出来るなんて、素晴らしいことじゃないか!

あとこれは二十五周年効果かもしれないのでまだ断定は出来ないのだが、以前はほとんど無かった押しが発生するようになったり、アンコールでは手拍子だけでなく、「アンコール! アンコール!」という声をあげてのコールが起こるようになったのだ。もしかしたら二十五周年の熱に浮かされた結果であり、今だけのものかもしれないが、自分はこれを、熱いファンが増えた、もしくは生まれた結果によるものだと良いな、と思うのだ。

ちなみにセットリストは記憶する限りでは下記の通り。ほぼ完璧に覚えられているはずである。

サイのように歩け
Hello! Hello!
ナミダ2

愛に愛はあるのかい?
風になっちゃった

(吉田一休氏入場)
カナリア
犬と夕暮れ

(吉田一休氏対象、森若香織氏入場)
少年A
遠くまで

(森若香織氏退場、イノウエアツシ氏入場)
すべての若き糞溜野郎ども
キモちE(RCサセクションのカバー)

(イノウエアツシ氏退場)
落書きみたいな存在達のハレルヤ

バースト&ワースト(ここからパンクメドレー)
バンビはどこだ
¥10
分解マニア
バラノシュラバ
バースト&ワースト

100万$よりもっとの夜景
世界が待っている

~アンコール~

看護ロック
生きる

~ダブルアンコール~

偶然にも明るい方へ(後半に本日のゲストが入場)

一曲目の「サイのように歩け」は重々しいベースの音がそれこそサイの歩みのように大地を踏みしめる、存在感のある曲だ。そして二曲目はがらりと雰囲気が変わり、明るくはっちゃける「Hello! Hello!」。早くも会場が踊り出し、温かくなってきたところで意外な一曲、「ナミダ2」! 水戸さんが「ナミダの事情ーーーー!!」とマイクに向かって叫んだとき、喜びのあまり頭の中で「ギャーーーーーーーー!!!!」と叫んでしまった。声に出さなくて良かった。それくらい嬉しかった。聴きたかった。

自分にとっての今回の目玉は「ナミダ2」「看護ロック」「生きる」「偶然にも明るい方へ」。あと、以前の100曲ライブで吉田一休氏の回がとても楽しく面白く、「不死鳥Rec.」での氏参加の「カナリア」も素晴らしかったので、今日は実は彼の参加を非常に楽しみにしていた。あのハーモニカが踊り狂う「カナリア」を是非生で聴きたかったのだ。

「カナリア」は想像以上に良かった。イントロではハーモニカを吹き鳴らし、ふっと止めて足でバンとステージを踏むと同時にドラムが「バシャン!」と鳴り、それを何度か繰り返すのだが、次第に足で踏むまでの感覚が短くなっていき、突如踊りまわるようなハーモニカの音色が響き出して歌が始まるのである。

森若さんは綺麗だった。華があるなぁ、としみじみ思った。多分一番喋っていたのが森若さんで、森若さんは今年から一人で「ゴーバンズ」を名乗ることに決めたそうだ。まるでスターリンのようだと思ったのはきっと自分だけでは無いはずだ。そこから転じて水戸さんに「水戸くんは一人でアンジーを名乗らないの?」と質問し、たじろいでいた水戸さんが面白かった。

せっかく森若さんが来てくれているので、ということでオリジナルアルバムでも彼女が強い存在感を発揮する「少年A」に。歌声と喋り声が全然違うなぁ、と改めて思った。あと、少年Aは不死鳥八段目でもマルコシアス・バンプのアキマさんが歌っていたが、森若さんとアキマさんは系統的に少し声が似ているように感じた。少しね。

最後のゲストはニューロティカのあっちゃんことイノウエアツシ。おおー。あっちゃんを生で観るのは初めてなのでちょっと嬉しかった。本当にピエロの格好だ。思っていたよりも顔の白塗りメイクが薄かった。

あっちゃんは登場からずっと倖田來未の物真似をしていたが、恐らく客層と合わなかったのだろう、あまり受けていなかった。しかし滑ってもめげずに物真似を繰り返すあっちゃん。拾いきれない水戸さん! 「ここからどうやって次の曲に行けば良いのかわからない!」と珍しく水戸さんが弱音を吐いていたが、強引な流れで「すべての若き糞溜野郎ども」へ。

「不死鳥Rec.」ではあっちゃん参加の「すべての若き糞溜野郎ども」がかなり好きだったので、これも実は非常に楽しみにしていた。ニューロティカはベスト盤一枚しか聴いたことが無いが、あっちゃんの声って好きなんだよなぁ。でも下品な歌詞が苦手だからちょっときつかったんだよな………。

二曲目は「キモちE」。曲に入る前に水戸さんが、何かのイベントであっちゃんが歌っているのが格好良かったので3-10とは何の関係もありませんがこれを、というようなことを話していたのでてっきりニューロティカの曲だと自分は思っていたのだが、帰ってから調べてみたら3-10どころかニューロティカでもなく、RCサセクションの曲で大変びっくりした。ちなみに水戸さん曰く、あっちゃん結構間違えまくっていたらしい。

後半の「バースト&ワースト」から始まるパンクメドレーでは押しが発生! もともと結構前の方にいたのだが、さらに前に押し出され、水戸さんの拳と何度も接触することが出来て感激。至近距離の迫力を存分に堪能し、自分も良い歳のとり方をするぞと勝手に誓っていた。

「¥10」と「分解マニア」はこのパンクメドレーで格好良さに気付いた曲だ。オリジナルアルバムを聴いたときはさほどピンと来なかったのだが………。

本編ラストは「世界が待っている」で気持ちよく締め。そしてアンコール一曲目がまさかの「看護ロック」! 曲に入る前に水戸さんが「ラブソング」と言っていたのだが、そうか、これはラブソングという受け取り方で良いのか……。好きではあるが、怖い曲だと前から思っていたものだったので。

「看護ロック」の次が大好きな「生きる」で、これまた嬉しかった。これは何度聴いても良い。勇気が出る。そのうえで最後の最後では「偶然にも明るい方へ」。曲の途中で水戸さんがゲストを呼び込むとき、ゲストを指して「死ぬまで付き合いたい奴ら」と言い、曲の終わりには「俺達がお前らにとって、死ぬまで付き合いたい奴らでいられるように」と言うようなことを叫んでくれ、ぐっと来た。

時間はおよそ二時間半。聴きたかった3-10の曲を堪能し、発散して、スッキリした満足感に包まれた。今回は3-10を思う存分聴けたので、今度はまた、ソロの曲やアンジー曲をたっぷり聴きたい。やっぱりどれもこれも好きなんだ。



未分類のほほん学校, 大槻ケンヂ, 非日常

自分は結構なオーケンファンであり、オーケン関連のイベント・ライブにもそれなりに通っている。また、オーケンが影響を受けたという音楽や本にも手を出したことが多々ある。知りたいという欲求もある。しかしだ。それにしてもだ。

率直な感想を申し上げるならば、今回ののほほん学校は、辛かった……。

前半がこの夏の振り返り。後半がオーケンの好きな曲の聴き会で、この後半が長かった。辛かった。文字通り、オーケンの好きな曲を皆で聴いてみようという趣旨の企画なのだが、これ、阿佐ヶ谷ロフトでやる企画じゃないと思うんだぜ。

会場内にぎっしり敷き詰められたパイプ椅子。隣に座ったロリータファッションの女性のスカートが、どんなに小さく畳もうとしても膝にかかる距離である。歩き回れば人の視線を遮ることになるため気軽に立ち上がることも出来ず、無論パイプ椅子ゆえ背もたれは無く、クッションも無いに等しい。そんな環境で二時間オーケンの好きな曲を取り止めも無く聴かされるのである。

辛かった………。

あぁ、自分が好きな音楽はハードロックなんだなぁ、としみじみ実感する二時間だった。何が辛いって、オーケンのかける曲があまり自分の好みに合わないことで、井上陽水と頭脳警察はグッと来たが、後半のファンク責めと、映画「書を捨てよ、町へ出よう」のエンディング曲は本当にしんどかった。しかもほとんどフル尺で流すのである。

企画自体は面白いと思う。ただ、もっと気軽に聴ける環境で聴きたい。それこそライブバーX.Y.Z→Aのような場所が良い。ゆったりとくつろいでお酒と食事を楽しみながら聴ける環境であれば楽しかっただろう。例えそれが自分の興味の無い音楽でも。身じろぎの出来ない環境で次から次へとかかるので拷問のようだったのだ。

ゲストがオーケンと歳の近い人だったらまた違ったかもしれない。今回のゲストは自殺チンパンジーのファンタさん。ミュージックステーションで「釈迦」を聴いてからショックを受けたオーケンファンで、基本的にオーケンの肯定しかしないため、会話が転がらないためトークのおかしみも無く、ツッコミが入ることも無いのである。

前半、UFO関連の番組に出演した話をしたとき、UFO番組におけるUFO否定派の存在意義は、いつまでも喋り続ける肯定派の話を遮るためにあると熱弁していた。納得である。納得であるが、それと同じことが! 今まさに起こっているじゃあないか! 大槻さん!

ここにもしツッコミを入れてくれる水戸さんか橘高さんがいてくれたら良いスパイスを与えてくれたかもしれない。

オーケン自身は楽しそうだったが、聴き会が進むにつれ会場の反応が薄くなってきたためか「たまにはこんなのも良いよね!」とまるで自分に言い聞かせるように何度も言っていた。

ちなみに前半は弾き語りで「タンゴ」「あのさぁ」「オンリーユー」から始まり、その後この夏の振り返りへ。「大槻ケンヂの日本のほほん化計画」という番組の開始が決まった報告と、番組でシールを作ったので今日いらっしゃった皆さんに一枚ずつ差し上げますねという発表が。

これである。これを家の一番目立つところ、もしくは表札近くの「犬」シールの近くに貼るようにというお達しだ。玄関ドアーのど真ん中にでも貼ってやったらイカスかもしれない。

あと、ロッキンジャパンフェスの現状未公開映像も見せてくれた。これは嬉しかったなぁ。オーケンはそのとき体調を崩していたため、顔がむくんでいたことを気にしていたそうだが、血のりのせいかよくわからなかった。ちなみにこのときか、もしくは別のときか記憶が曖昧なのだが、顔がむくんでいること、または最近老けてきたことを気にしていることについて「僕って乙女じゃない?」と言い、「ええ」とファンタさんにあっさり肯定されて動揺していたのだが、乙女発言について正直何の疑問も抱かず、「やっぱりそう思ってるのか」と自分は思った。むしろ。

嬉しかったのはカラオケとはいえ谷山浩子の「おはようございますの帽子屋さん」を歌ってくれたこと。谷山浩子のイベント「猫森集会」にゲスト出演する関係で、最近はカラオケに通い詰めだそうである。そこで谷山浩子の曲を練習しているそうなのだが、何と谷山浩子も筋少の曲を歌うとのこと! しかも「まるで谷山さんのために作られた曲みたい」にバッチリものにしているそうなのだ。谷山浩子が歌う筋肉少女帯!! いったい何を歌うのか想像するだけでわくわくする。個人的にはキュートな曲よりもダークな曲を歌ってもらいたい。あぁ、でも「そして人生は続く」なんてのもはまるだろうなぁ。

橘高さん主催の「ドリームキャッスル」の思い出では、橘高さんは頭が良いから、曲を作るのと同じようにイベントも頭の中できちんと設計図を作って進行する、とリスペクト発言。ただ、遊びを入れるのを許さないから、ちょっとずれたことをやるとバッサリ切られることが何度かあってびっくりした、と笑うオーケン。なるほどなー。だがしかし。オーケンも想定外の橘高さんのボケを拾いきれずにスルーすることが結構あるよな、と思うのだった。

イベントは脅威の三時間越え。そのうち二時間は聴き会だっただろう。流石に尻と背中が痛く、今日ばかりは余韻どうこうなんぞ言ってられんので、早く帰って自分の好きな音楽を聴いて横たわって寝たいと思った。



日記録5杯, 展覧会, 非日常

2013年7月28日(日) 緑茶カウント:5杯


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Bunkamuraで開催されているレオ・レオニの絵本展に行ってきた。代表作の一つは「スイミー」。小学校に入る前だっただろうか。母に買ってもらった数々の絵本の中に「スイミー」があり、寝る前に必ず一冊好きな絵本を読んでもらえたのだが、この「スイミー」は何度読んでとねだったかわからない。特に印象的だったのがドロップのような美しい海草。あの水中を彩る華やかな色彩にすっかり魅入られてしまったのだ。

小学校に入学すると、「スイミー」以外のレオ・レオニの絵本がたくさん図書室に置いてあった。「アレクサンダーとぜんまいねずみ」「フレデリック」「おんがくねずみ ジェラルディン」「コーネリアス」、そして「ペツェッティーノ」。小さな欠片のような姿をした「ペツェッティーノ」が、自分は誰かの部分品ではないかと思い、様々な人に尋ねまわって自分の正体を探す話。これを読み、ペツェッティーノが自分の正体を見つけたとき、金槌で殴られるような衝撃と感動を覚えた。

それから十年近く経った後、「ペツェッティーノ」を読み返したときは、あのとき自分がひどく感動したことも含めて、どこか気恥ずかしいものを感じた。何故気恥ずかしく感じたか。それは「自分とは何か」と悩むことを青臭く感じる時期だったからだ。

ただ、気恥ずかしく感じはしたものの、依然好きという気持ちは変わらなかった。

レオ・レオニは幼少の自分に「自分は何なのだろう」と考えるきっかけをくれた人だ。そしてまた、当時の自分は知らなかった絵画技法を見せてくれた人でもある。いつか自力で絵本を揃えてみたい。特に「ペツェッティーノ」。三十を目前に控えた今、改めて読み直し、今どのように感じるか確認したい。今度はまた素直に読めるかもしれない。



未分類扇愛奈とFoo-Shah-Zoo, 水戸華之介&3-10Chain, 筋少拡散波動砲2013, 筋肉少女帯, 非日常


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水戸さんが日本を印度にしてくれたよ!!

何のこっちゃらと言う感じだろうが、とりあえず興奮していることだけは伝わっただろうか。筋肉少女帯拡散波動砲であり、プレうっちー祭りであり、CLUB Que 夏ノ陣であり、水戸華之介&3-10Chainのライブであり、扇愛奈とFoo-Shah-Zooの初ライブでもある色々と要素の多いライブに行って来た。

筋肉少女帯拡散波動砲は、簡単に言うと筋少のメンバーがそれぞれ行っている別のバンドが共演するイベントである。そして今回は内田さん繋がりで二つのバンドが共演することになり、何とオーケン以外の筋少メンバーが全員揃うという、むしろ何でオーケンがいないんだ、と思わず突っ込みたくなる顔ぶれだ。どうせなら飛び入り参加をしてくれたりするようなサプライズが無いかな、と若干期待していたのも本音である。

だが、ライブが終わってみればオーケンがいないのはかえって良かったと心底思う自分がいた。と言うとまるでオーケンを邪険にしているかのようだがそれは誤解である。オーケンがいないことで、オーケンがいないが故に見られる面白いものを目撃することが出来たからだ。

まさか扇愛奈が「妄想の男」を、水戸さんが「日本印度化計画」を歌い、アンコールで内田さんを中心に「俺の罪」を合唱するなんてことが起こるなど誰が予想出来ただろう! トリビュートでもしてもらわない限りなかなか耳にする機会が無く、そのトリビュートの実現が不可能に近い中ではそれこそほとんど聴ける機会の無い「オーケン以外が歌う筋肉少女帯の曲」が聴けたのである。

もし今回のライブにオーケンがゲスト参加していたらこれは見られなかっただろう。恐らく、デュエットという形になっていたはずである。それはそれで楽しいが、オーケン以外の、特に水戸さんが歌う筋少の曲というものを、一度聴きたいと自分は特に思っていたのだ。

「ハーイここまで」「Spin Spin」「D.K.H」「トーカラジ」「命の重さ」と3-10chainの曲を中心にやり、橘高さんを迎えた後は「誰だ」「蝿の王様」と橘高さんと関わりのあるアンジー曲で盛り上がる。そしてMCに入り、「次は一兆とある俺の曲の中から、上位にランクインする曲をやる!」といったことを言って煽る水戸さん。何だ? 何が来るんだろう。アンジーか? と思って身構えると力いっぱい叫ぶ水戸さん!

「日本を印度に!!!!」

びっくりした。その前に扇さんが「妄想の男」をやっていたが、まさか水戸さんまで筋少の曲をやるとは思わなかったのだ。水戸さんのコールに力強く「しーてしまえー!!」と叫ぶオーディエンスがいる中、困惑した人々も少なくないようでどよめきも起こっていた。自分はその中間だ。条件反射で「しーて」まで叫んだものの、「しま……えぇぇええ~?」と拳を中途半端に振り上げて固まってしまった。

どよめきが起こる中水戸さんは首を傾げる。「あれ? おかしいな~俺の曲の中では八位あたりにあるんだけどな~」あくまでも「俺の曲」という体で話を進めるのが面白い。そして仕切り直してもう一度コールアンドレスポンス! 橘高さんがギターで御馴染みの音を奏でると、ドッと人々が前に押し寄せ、ちょっとした興奮状態が起こった。

素晴らしかった。こんなに歌詞が正確な「日本印度化計画」は初めて聴いたかもしれない。この日のために水戸さんはちゃんと覚えてくれたのだなぁと思うと感謝の気持ちで一杯になる。間奏で学園天国のヘイヘイコールを入れてくれたのも感激だ。もうこれも含めて日本印度化計画ということなのだろうなぁ。

さらに印度のお約束として欠かせない、橘高さんによるピックのばら撒きもあった。一枚を空中で掴み取ることに成功。何で水戸さんは印度をチョイスしたのだろうという疑問もあったが、単純にこのように盛り上がって楽しいからかもしれない。水戸さんも楽しそうに歌っているように見えた。

MCではプレうっちー祭りということもあり、内田さんに話題が振られることが多かった。「わかりにくいけどこう見えてうっちーはいっぱいいっぱいになってる」「楽屋にいて何かおかしいな変だなと思ったらうっちーがいなかった。うっちーは(扇さんの方のライブで)弾いてた。普段いるのが普通だからいなくなってもなかなか気付かない」などなど。面白かったのが「うっちーは平和の象徴。うっちーが倒れたら日本は終わる」と水戸さんが言ったとき「あ、そう」と内田さんがあっさり流したこと。照れていたのかもしれない。

今日の内田さんは大活躍だった。二つのバンドが出る前に一人でステージに現れて前説を披露。「筋少拡散波動砲」の趣旨を説明し、とりあえずおめでたいものだと適当に締めて、「おめでと~ございま~す」とオーディエンスにコールさせて盛り上げる。一人でこんなに喋る内田さんを見る機会もそういえばあまり無いなぁ、としみじみ思った。

そして最初に登場したのが扇愛奈とFoo-Shah-Zoo。上手においちゃん、センターに扇さん、下手に内田さん、後方に河塚さんという陣営だ。扇さんは茶髪のショートで、胸元の開いたチャイナっぽい衣装。そういえばゲスト以外で女性のボーカルをライブで聴くのはこれが初めてなんだな、と気付いた。

扇さんはパワフルだった。咽喉がぶっ壊れるんじゃないかというシャウトに見開いた目玉、乱れまくる髪。レピッシュのステッカーが貼られたギターを弾きながら歌い、ときにはギターを外してキーボードを弾くことも。聴き慣れないせいか、歌詞をほとんど聴き取ることが出来ず、何を歌っているのかわからなかったのが残念だった。

おいちゃんは髪の毛をストレートにしていた。なるほど、つまり普段はストレートで、筋少のライブのときは巻いているのか。普段からくるんくるんしているものとばかり思っていた。

珍しいものと言えばおいちゃんのギターソロ。おいちゃんは他の筋少メンバーと違い、ソロや別バンドでの活動がこれまでほとんど無かったため、自分は「筋少のおいちゃん」しか知らなかった。今聴こえているこの音がおいちゃんのギターの音なのだなぁ、と思うと不思議な感じがした。

MCでは、扇愛奈とFoo-Shah-Zooはメンバーのあだ名を何にするかということがバンド内で熱く議論されている、という話が出た。このとき扇さん、おいちゃん、河塚さんは結構ノリノリで話していたのだが、内田さんはかなりどうでも良さそうにしており、その温度差が面白かった。

ところで扇さんのあだ名案の一つがアーティストイメージに関わるという話になったとき、言っていいの」「大丈夫?」「マネージャーに怒られる」「ここだけだからね」とやたら慎重になっているメンバーを見て、卑猥系のものが候補に挙がったのかと思った自分は結構心が汚れたなと感じた。実際はラブリー系のものだった。

後半のMCでは扇さんが「実は私は妄想が大好きで、人生の八十パーセントは妄想をしている」と謎のカミングアウトをし、これはいったい何のトークだろうと思ったらよもやまさかの「妄想の男」! ここで聴けるとは思わなかった!

というのも、オーケンの歌詞集「花火」で、「妄想の男」について「歌詞が好きではない」とオーケンが書いていたので、ライブでやることは無いだろうと思っていただけに。その文を読んだとき「嫌いなのか」とがっかりしたことを覚えているだけに。さらに、コアな選択だなぁ! と嬉しくなってしまった。

扇さんの妄想の男は基本を踏襲しつつも、ボーカルが女性の声に変わることで印象がガラリと変わって面白かった。また、歌いながら髪をかき混ぜる仕草が気が違ってしまっている人のようで迫力もあり、録音されていないのがもったいないと思うほどだった。

そうだ。扇さんと並んでいる内田さんを見たとき、あれ、内田さん小さくないな、と思ったのだ。普段背の高いオーケンや水戸さんと並ぶ内田さんを見慣れているだけに、内田さんは小さくて細い印象があるのだが、意外とそうでもないのだな、と思わされたが、水戸さんと並んだらやっぱり小さかった。

扇さんの後に登場した水戸さんはでかかった。動きもでかかった。扇さんはほとんど位置を移動せず、キーボードを弾くときやおいちゃんと並んでギターを弾くときは動いていたが、基本はスタンドマイクの前が定位置。対して水戸さんは動く動く。澄田さんと内田さんの間の狭い空間をあっちこっち行き来して、天井に掴まり、ジャンプし、踊りと空間全てを使い倒そうとしているようだった。

そういえば水戸さんにとって今年は記念の年だそうで、その話が出たときてっきりデビュー二十五周年の話をするのかと思いきや、九十何年だか、エレカマニアを止めて別の活動を始めようとした頃に買ったアイライナーをついに使い切った記念の年だ、と言っていた。聞くと、丸い缶か何かにアイライナーは入っているようで、それを指ですくって使うのだが、底が見えてもなかなか減らず、一生使い切ることが無いんじゃないか、寝ている間に小人さんが足しているんじゃないか、と思うほど減らなかったそうだ。毎日使うものではないとは言え、あんなにがっつり目の周りに塗るのにそこまで減らないとは。これはもっとライブをやりなさいと神様が言っているのではないだろうか。

そして自分はあの目の周りのメイクがアイライナーによって色づけされていることに驚いた。何て太いラインなんだ。アイシャドウじゃないのか。

メイクの話と言えば橘高さんだ。橘高さんは「橘高文彦」に変身するのに、三時間ほど「お祈り」をしなければならないそうで、水戸さんが「KISSだって○時間でしょ」「すごい」と感嘆していた。また、橘高さんの「設定」をよく知らない水戸さんが「メイクにかかる時間」と言うのを、橘高さんが否定し、「三時間ずーっとお祈りしなければならないの」と、あくまで「メイク」ではなく「変身」と言い張り、「そういう設定があるんだ」「デーモンに近い感じなんだね」「わかった、鱗粉なんだ」と笑っているのがまた異文化交流といった感じで面白い。ちなみに今日は橘高さん、変身のために二時間ちょっと祈り続けたそうだ。

アンコールではまず3-10chainだけが登場し、メンバー全員で「ファンタジック」を合唱。この曲を聴くと元気が出るので嬉しい。そしてその後は本日の出演者が勢ぞろいし、センターに立った内田さんが「ベースなんか弾いてられるかー!」とノリノリになってマイクを握り、さらに「誰かベース弾いてくれる人………橘高君がいるじゃないか!」と手ぶらの橘高さんにベースを弾くことを強要。河塚さんはドンキホーテで売っているようなでっかいラメ入りの蝶ネクタイをつけて手ぶら。何だかよくわからない空気のまま内田さん主導で「俺の罪」を合唱。すげー楽しかった。すげー楽しいが改めて、何でこんな変な歌詞を皆で歌っているんだと思わずにはいられなかった。

途中で内田さんが橘高さんからベースを受け取り、歌いながら弾き出して、手ぶらになった橘高さんが何故かマラカスを振り出すカオス。今日の貴公子は見所が多くて大変だ。そんな橘高さんの横でにこにこしながらギターを弾くおいちゃんは通常運転なのがまたおかしい。

最後は内田さんのコールで一人ずつ退場。まずはボーカルの扇さん、水戸さん。次に河塚さんに橘高さん。そして演奏している楽器隊が一人ずつステージを去り、ドラムの元尚さんがいなくなるとベースの音だけがベンベンベンとステージで響く。水戸さんのライブで、一人ずつ楽器隊が入っていってだんだん音が増えていく演出はあるが、その逆もまた面白いなぁ。

ベースを弾きながら内田さんは最後の挨拶を終えステージを去っていった。いつもの筋少や水戸さんのライブでは見られない珍しいものが詰まった楽しいライブだった。筋少拡散波動砲、単純に筋少メンバーの出るバンドを一度に見られるライブかと思いきや、コラボレーションの妙も味わえ、これはなかなか想像以上に面白い。良いなぁこれ。次のイベントも楽しみだ。



日記録筋肉少女帯, 非日常

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思えば自分が初めて生の筋肉少女帯を見たのはこの会場だった。そしてそのときこそが、再結成のライブだったのである。あのときは二階席からの参戦で、メンバーの表情の判別がつかないほど距離があるにも関わらず、ついに本物を見ることが出来る喜びに打ち震え、同じ空気を吸っていることに感動し、まさか筋肉少女帯のライブをこの目で見られる日が来ようとは、と感極まったのだ。だって自分が知ったときには既に凍結中で、オーケンとうっちーは仲違い中。再結成するなんて夢みたいな出来事がこの先にあるなんて思わなかったんだよ、本当に。

そして今日、一階席の下手側、後ろから数える方が早い席にいたのだが、あの二階席に比べれば近いにも関わらず、ひどく遠く感じたのは、これまた当時の自分からしてみれば想像がつかないくらいにライブに通ったからである。スタンディングではほぼ前方に並んでいるからなぁ。メンバーの表情が見えないなんて、本当に久しぶりだ。

どうして自分はここまで筋肉少女帯にはまったのだろう。よもやまさか、筋少のために大阪名古屋まで出かける日が来ようとは、十年前の自分なら思いもしなかったことだろう。だって筋少のライブを観るためだけだぜ? そりゃあ大阪でお好み焼きを食べたりまんだらけに寄ったりはしたけれど、目的は筋肉少女帯。しかも飛行機を使ってだ。今思えば別の交通手段もあったと思うが、長距離、イコール飛行機という短絡的思考ゆえ、飛行機での参戦となった。あれは高くついたなぁ。だが、良い経験だった。

今日のライブ、「蜘蛛の糸」の前にオーケンが言った。合唱してほしいと。ここに来た人なら、きっとこの曲に共感してくれているんだろうと。どうなんだろう、と自分は思っている。生まれて初めて聴いた筋少の曲は蜘蛛の糸で、蜘蛛の糸をきっかけに自分は筋少にはまった。思い入れが深く、今回のセルフカバーを人一倍喜んだ人間だ。だが、自分は蜘蛛の糸に共感しているのだろうか、と問うとわからない。

確かに高校時代、クラス内ヒエラルキーのどこにも属しておらず、クラスで仲の良い人は部活仲間以外にはおらず、休み時間には一人で絵を描いたり、音楽を聞いたり、机で寝たり、もしくは友人のいるクラスに出かけることが多かった。とはいえ自分の境遇を憎むことはなく、何故なら居場所が部活にあったから、クラスに喋る人はいないものの毎日を楽しく過ごしていた。担任にも恵まれた。クラスに思い出は無いが、高校そのものは楽しい思い出ばかりである。

しかし一つの事実として、蜘蛛の糸を聴くと安心する。スッとする。「この人私をわかってる!」とは思わないものの、グッと来る。それはきっと共感しているからだ。ただしそれは曲に対して、では無い。そこに「目を向けて」「歌っている」人の視点に共感するのだと思う。

楽しいライブだった。

黎明で始まり、ド定番のサンフランシスコ。ド定番であるにも関わらず歌詞を間違えまくるオーケン。続いてくるくる少女、機械と怒涛の展開。さらに煽りに煽りまくるMCで、MC中のコールアンドレスポンスだけで疲れてしまいそうだ。だが、お祝い出来るのはやはり嬉しい。

今回のライブで特に印象に残ったのは「孤島の鬼」「トゥルーロマンス」「蜘蛛の糸」「再殺部隊」。意外だったのは「じーさんはいい塩梅」。これ、確かワインライダーをやった後にやったのだが、自分の中でワインとじーさんは同じカテゴリーに入っていたので、同じ日にやるとは思わなかったのだ。

「妖精対弓道部」はアルバムで聴いて大好きになり、ライブで聴くのを待ちわびていたが、歌詞の中で一番好きな一節、「恋の道場のぞむ者には 座して礼してのぞむ弓矢で」がオーケンのアドリブによってスパーンと消失して! とても………悲しかったです………。あの箇所を聴きたかったんだ………。

「孤島の鬼」は見事だった。あのドロドロした迫力。再結成後、セルフカバーした曲はどれもゴージャスになり、ものによってはかつてあったアングラ感が薄くなっているものもある。ただ、今の筋肉少女帯の様子を鑑みればそれは当然なこと。だって今の筋少はとても健全で健康的なのだから。

しかしだからと言って、ドロドロしたものがすっかり消えてしまったのかと問うならば、答えは否だ。まだその身の内に、根っこのところに持っているのである。それが前面に出てきたのが今日の「孤島の鬼」だ。

美しかった。

昔に比べれば克服し、健康に暮らしているだろうけれども、今も当時の思いを宿している人の声。どうにもならない閉塞感。行き止まり。ただゴージャスで楽しいだけのロックじゃない。だからままごとにもなりえない。本気の声として響くのである。

あ、でもね。ちょっとどうでも良い話をさせてくれ。孤島の鬼の後半、一度演奏が静まる箇所で拍手が起こったとき、アルバム買ってない観客多いな! と思った。そこはもったいないように感じた。そこは一緒に静まり返って、エディの演奏を待ちたかったなぁ………。

「トゥルーロマンス」は自分が初めてライブで聴いた筋少の曲。「ラブゾンビー♪」というコールが楽しくもあり、当時が懐かしくもあり。同時に、この後演奏されるであろう曲を思って、こちらはハッピーエンドなのに、あちらはなぁ………と思ったりもした。

そしてアンコールで演奏されたのが、待ちわびたと言っても過言ではない「再殺部隊」。この曲、正直なところ好きさ加減で言えば限りなく「普通」の曲だったが、セルフカバーをきっかけに大好きになった。ドラムの音がまるで機関銃のようで、その迫力と表現力に圧倒された。何てすごい演奏なんだ、と舌を巻く思いだった。

無論ライブも期待を裏切らず。怒涛のような音、音、音。ドラムによって殺されそうな思いがした。同時に照明の美しさに見入る。白いライトによって照らされたスモークがゆらゆらと揺れ、それがゆらゆらと歩く少女ゾンビの姿を連想されたのだ。

「再殺部隊」に限らず、今回の照明は見入るところが多かった。「キノコパワー」ではライトが七色に輝き、まるでキノコでラリっている様子を表しているよう。この演出の細かさはホールライブの醍醐味かもしれない。

最後はまたもやド定番の「釈迦」で締めくくり。予想外だったのが、オーケンが釈迦の歌詞を間違えたこと。間違えたというかすっ飛んだと言うべきか。冒頭の「サンフランシスコ」でメタメタな歌詞を披露し、大丈夫かと思ったものの、中盤は持ち直して「イワンのばか」でも定番の間違い「ロシアのポルカの裏技」は炸裂せず、「ロシアのサンボの裏技」が登場したので安心していたのだが。とはいえ、ライブではずっと消滅していた「月の光浴びてアンテナが錆びる」の一節がいきなり復活していたあたり、レコーディングの影響で混乱が生じたのかもしれない。

「最後の曲」と銘打たれた「釈迦」が終わった後にかかったのは「新人バンドのテーマ」。こちらは演奏ではなく、録音された曲が流れた状態。そんな中でニコニコしながら頭を深々と下げ、退場していくメンバー達。一番最後まで残ったのは筋少の大黒柱内田雄一郎。何度も何度も丁寧に頭を下げてステージを去って行った。

お礼を言いたいのはこちらの方だ。二十五年も活動してくれて、メジャーデビューをした頃にはまだ幼児だった自分にまで、リアルタイムの活動を見せてくれてありがとう。これからも、例えじーさんになっても、そのときそのときの活動を見せてくれると嬉しい。出来る限り、自分も足を運ぶから。

おめでとう筋肉少女帯! ありがとう筋肉少女帯! どうかこれからも、健やかにドロドロに。