タワーレコード渋谷店で開催された、電車のサインお渡し会に行ってきた。電車の新譜を対象店舗で購入するとイベント参加券がもらえるが、観覧自体は誰でも自由に出来て、整理番号も特になく、ゆる~い雰囲気だった。自分は十一月の中旬に電車のCDを購入したため、まさか参加券が手に入るとは思っていなかったが、イベント当日も参加券は配布されているようだった。
タワーレコードの入り口正面のモニターには電車のイベント告知がドーンとなされていて、おじさん四人がちょこんとベンチに並んで座っている姿が大映しになっているのは妙に味わい深い。イベントスペースに入ると既に人が並んでいたので、自分は左端の前から三列目あたりに立った。店内には電車の新譜「そうだ、電車聞こう」がエンドレスで流れている。電車の音楽をこうして外で聴くのは何だか不思議な感じだ。
イベント開始前には壇上に椅子が用意されていたが、開始直前に椅子が回収され、マイクが調節された。これはもしかして背の高い椅子を用意してくれるのだろうか、後ろの観客にも見えるように気を遣ってくれるなんてありがたいなぁと思っていたら、何と! 代わりの椅子は用意されないまま電車のメンバーが入場! ずっと立ったままでトークライブを行ってくれた。これはありがたい。おかげでメンバー全員の姿をしっかり観ることが出来た。サービス精神に感謝である。
そうそう、三人と書いたが、今回残念なことにポンプさんはのっぴきならない事情で来られなくなってしまったそうだ。よってメンバーは大槻ケンヂ、石塚BERA伯広、佐藤研二の三人。立ち位置は上手からベラさん、オーケン、サトケンさんの順である。開始直後もオーケンから「ポンプさんはのっぴきならない事情で来られなくなりましたが、脱線したわけではありません」とフォローが入った。なるほど、電車の場合脱退ではなく脱線になるのか…。
トークライブでは、電車の結成に至る経緯や名前の変遷について。ちょうどオーケンがソロ活動をしていた頃に電車が結成されたが、当時は「大槻ケンヂと野球」だったが、いつの間にか「電車」になっていたそうだ。何故「野球」が「電車」になってしまったのかと言うと、ベラさん曰く、ポンプさんが間違えてそのままになってしまったとのことだ。
しかし! サトケンさんからここで歴史の修正が入る。間違えたのはポンプさんではなくサトケンさんで、何故かサトケンさんがいつからか「野球」を「電車」と思いこんでしまい、「すごく電車感が出てるよ!」などと何度も言ってしまったため、他のメンバーが指摘出来なくなってしまい、そのまま「電車」で定着してしまったのではないか、ということだった。そうなのか。バンド名とはこんな調子で決まってしまうこともあるのか…。
そういえば自分の位置からは見えなかったのだが、開始早々オーケンが何かを倒すか落とすかして、「やると思ったんだよね~」と言いながら回収していたが、あれは何だったのだろう。進行表か歌詞カードだろうか。
面白かったのが電車復活の経緯。ベラさんとポンプさんはイベント「ベラポンプアワー」でたびたび電車の曲をやっていて、ベラさんは電車を復活させたいと思っていた。そこでオーケンのマネージャーと連絡を取り、電車復活の話を進めたという。そしてオーケンはマネージャーから「電車復活するよ」と聞かされ、当事者にも関わらず「そうなんだ」と思い、レコーディングが始まったとのことである。オーケン、二日で十曲歌わされたそうだ。
これから開催されるツアーの話では、電車のライブではどのように盛り上がれば良いか、椅子は用意するのか立つのか、など。オーケンが冗談で、椅子を前方にだけ用意して、お客さんが変わりばんこで座っていくのはどうだろう、といった話をし、「でもこういうことをしたら馬鹿にしてるって、Twitterが炎上するんだよ」と笑っていた。
そこからだっただろうか? Twitterと携帯電話の話になって、オーケンは自身がガラケー所有者であることを話し、いかに最近のガラケーの機能が削ぎ落とされているか熱弁していた。Twitterも出来ないし自撮り機能も付いていないとのこと。
ここでサトケンさん、「自撮り」を「地鶏」と勘違いし、何故携帯電話にニワトリが…と不思議に思ったそうで、オーケンに「携帯電話が卵を産むの?」なることを言われて突っ込まれていた。ちなみにオーケンサトケンさんがガラケーで、ベラさんはスマートフォンユーザーとのことである。
あとそうだ。過去に行った電車のライブの話で、水木しげるとイベントか何かで共演した、という話もあった。そのイベントには京極夏彦も出ていたという。いったいどんな組み合わせなんだ。
歌詞についてオーケンが、自分で言うのも何だけどこの頃の歌詞はすごく良く出来ていると絶賛していて、ベラさんとポンプさんが嬉しそうにしていたのが印象的だった。そうだよなぁ。自分のバンドの歌詞を作詞者本人が気に入っていたら嬉しいよな。
今後のレコーディングについての話も少しされた。一応、念の為書いておくが、レコーディングをして新譜を作ります、という告知では無い。サトケンさんが、次にレコーディングをするときはオーケンもギターを弾きなよ、ギター大好きでしょと言い、オーケンが断りつつも、どこか嬉しそうで、冗談かもしれないが「じゃあそうしましょう」と答えていたのが微笑ましかった。
ライブは「OUTSIDERS」と「お別れの背景」が演奏された。どちらもとても聴きたかった曲なので嬉しかった。特に「お別れの背景」は筋少以外のオーケンの歌詞で、もしかしたら一番好きかもしれない曲なのだ。いつかのベラポンプアワーで聴けたときも歓喜したが、今日も思わず大喜びしてしまって、ノリノリになって聴いてしまった。
トークライブの後はサインお渡し会で、いったんメンバーが壇上から去っていった。そしてスタッフが現れ、お渡し会用のセッティングを進めていく。壇上に長机と椅子が用意されるのを眺めているとアナウンス。何とびっくり。メンバーと順番に握手が出来て、尚且つサイン色紙を手渡ししてもらえるとのこと。てっきり、サインはスタッフから渡されるものと思っていただけにこれには驚いた。無論心の準備など何もしていない。
たった五日前の日曜日に筋少メンバーと握手して、その直後に電車メンバーと握手。何だこれ。己の人生に何が起こったんだと思わざるを得ない。
面白いのは筋少握手会は金属探知機で身体検査を受け、メンバー一人一人に「剥がし役」が付き、ちょっとでも流れが滞ると肩を押されて次の人に回される厳しさだったのに、電車は剥がす人もおらず、ゆる~く会話をしながら握手をしてサインをもらって、ゆる~く流れていったこと。わりとゆっくりと会話をすることが出来て感無量だった。
まずベラさんと握手をして電車復活の喜びを伝えた。このとき、念願の「お別れの背景」が聴けたうえ、サインお渡し会で握手も出来るとわかり、自分はかなり喜びまくっていたらしく、気付かぬうちに体がルンルンと左右に揺れていたのだが、サトケンさんがニコニコしながら同じリズムで体を揺らしてくれ、そのとき初めて自分が浮かれまくっていたことに気付き、喜びまくりながらサトケンさんと握手をしたのだった。サトケンさん、良い人だなぁ。
サインを渡してくれるのはオーケンで、握手をした手はやはり筋少握手会のときと同じように冷たかった。オーケンにも電車が復活してくれて嬉しいという気持ちを伝え、会話を交わし、サイン色紙を受け取って列から離れた。夢のような気分だった。
サイン色紙を胸に抱え、他の方々が握手をしている姿を眺めた。ゆるやかに握手の列が進行していく様は微笑ましく、歓喜しながら列を離れていく人々の間を、ただCDを買いに来たタワーレコードのお客が通り過ぎていく温度差が面白い。最後の握手が終わった後には壇上で電車メンバーの写真が撮影され、挨拶の後終了。浮かれまくった自分はその足でビックカメラに行き、ハイテンションのままウォークマンの新型とスピーカーを購入して、幸福な気持ちで帰路についたのだった。所有のウォークマンとスピーカーは使い倒した挙句電池は持たなくなるわボリュームコントロールは壊れるわと散々な様子だったので、せっかくなので新しいものに買い替え、ストレスなく大好きな音楽を楽しもうと思ったのである。
ウォークマンには早速、所有の音楽を全部突っ込んだ。またこのウォークマンと付き合いながら、四六時中大好きな音楽を楽しんでいこうと思う。電車復活、嬉しいな。