未分類3杯, 平沢進, 非日常

照明演出の豪華さとスクリーン映像のシンプルさが印象的なライブであった。二階席からの観覧により、ステージの平沢とアリーナ席が視界に収まり、ぐるりとホール内を見渡せばどの席もぎっちり満員御礼で、立見席にまで人がずらり。己が初めて平沢のライブを観たのは2011年の東京異次弦空洞だが、年々動員が増えているように感じるのは気のせいだろうか。

ステージの脇に近い座席からはステージのスクリーン映像が見えにくくなっているが、天井近くにモニターがあり、そこにスクリーン映像とステージの様子が映し出される配慮もあった。流石にインタラでスクリーンが見えなかったら物語が把握出来ないし辛いものなぁと納得。ありがたいことである。

今回はいったいどんな物語だろう、いったい何人の平沢が物語に組み込まれるのだろうか、とわくわくしていると開演の合図。しかしいつもとちょっと様子が違う。ステージの下手にスタッフのお姉さんが立ち、分岐の方法について解説と練習を行うとアナウンスが。何だ何だ? と思うとスクリーンに映し出されたのは機械的なデザインの円二つ。左が赤で、右が青。

ストーリーで分岐が発生した際、今までは右に進みたい人は右の表示が出たとき、左に行きたい人は左の表示が出たときに大声を出し、その声量の強さよって進むべき道を定めるパターンが多かった。しかし今回は、赤はメジャーコード、青はマイナーコードと定められ、自分が行きたい道の方の音程で大声を出し、その響きによって進むべき道を判定すると言う。

おおーう面白いけど難しそうだなーと思いつつ練習。実際、面白いけど難しかった。まず赤の円が存在を主張し、メジャーコードのサンプル音が鳴り、それを真似して大声を出す。次に青のマイナーコードを練習。そして赤と青、交互に声を出し、最後に赤と青が同時に点灯。無論メジャーとマイナーを同時に発生することなどできないので、ここで自分が進みたい道の音を選び、大声で叫ぶのである。

ホール中に響く二種の音。やってみるとわかるが、どうしても多い方に釣られそうになる。探り探りにもなる。こいつぁ大変だ、頑張らなきゃなと気合を入れたところで練習終了。ついに本当の開演と相成ったのである。

無人のステージに掲げられた巨大スクリーンに白髪のヒラサワこと「過去向く士」が映し出され、ストーリーが語られる。ものすごくざっくり言うと、この世界の存亡に関わる「WORLD CELL」が停止してしまったので、再稼動させなければならない事態になった。そこにやってきたのが「過去向く士」こと別の世界のヒラサワ。さらに、「過去向く士」を追ってやってきたのが「アヴァター」で、これもまた別の世界の平沢だが、主体性がなく常に不安を抱えて右往左往している。「過去向く士」はそんなアヴァターを利用して「WORLD CELL」を再稼動させようとしているのだが……。

ちなみに今回の公演ではバッドエンドのルートを辿り、アヴァターがいなくなった後いつの間にか現れて鉄を切る平沢と、背中に黒い羽の生えたヒラサワが空を飛んでいく映像が映し出された。過去向く士、アヴァター、ステージの平沢、Σ-12、鉄を切る平沢、黒い羽の生えたヒラサワ、この公演だけで六人の平沢が発生している。今までインタラを全て合計したら何人になるのだろうか。この無数の平沢を見分けることを考えたらおそ松さんを見分けるなんて余裕のよっちゃんなんじゃあないか? などとエンディングのスタッフロールを見ながら思った。

「断崖を登る」シーンがメインなこともあり、今回の映像は比較的シンプルである。崖と空と平沢と、宙に浮かぶ奇抜な登場人物。前回の「ノモノスとイミューム」に比べると随分あっさりしているが、準備期間の短さを考えるとよく間に合わせたな……と思わざるを得ない。

対して照明の豪華さはすごかった。ステージから客席に放たれるレーザーハープの美しさはもちろん、曲に合わせて色とりどりの光がホール中を旋回するのである。多彩な光の演出は息を呑む美しさで、音楽の美しさをより一層引き出していた。溢れる光と音の中、豊かな声で叫ぶ平沢を観て、光と音の魔術師というどこかで聴いたようなフレーズが脳裏に浮かんだ。

一曲目は「舵をとれ」で、二曲目から「アヴァター・アローン」「アディオス」「回路OFF 回路ON」と続いた。「ホログラムを登る男」以外で演奏されたのは「舵をとれ」「オーロラ」「橋大工」の三曲。「オーロラ」のとき、オレンジの光が照射されていてそれが実に美しかった。

「MURAMASA」では助っ人のPEVO1号が刀を持って登場し、振りかぶってレーザーハープの弦を切るという演出が! 切られた弦からイントロの「ビーッ!」という音が流れ、スクリーンには断崖を登るアヴァターの頭上に無数の刀が降り注ぐ。そして何故かアヴァターの眼下にはタコ! 巨大なタコ! スクリーンとステージ、どっちを観れば良いんだ、そもそも何故断崖にタコが……。このとき己は若干混乱していたと思う。

どの曲か忘れたが、ギターの出だしを間違えたのか、無音の中で「ピョーンッ」と響いた後、何事もなかったかのように弾きなおしたり、曲の入りがちょっと不安定だったりといった場面があって満足した。いやあやっぱり人間なんだなぁ……と思ってしまうのである。重々承知しているはずなのだが、未だに。

ド迫力だったのは「ホログラムを登る男」。始まりの声のパワーの強さに圧倒された。他の曲ももちろんすごいのだが、この曲が一等抜きん出ていた。生の歌声であることを強く実感した瞬間だった。CDも迫力があるのだが、あれはあえてやわらかく抑えているのか? わざと? と思うほど。脳と心臓を突き抜けていくというか。すごかった。

あと「オーロラ」のアレンジ。ライブで聴く機会が多い曲は、そのたびごとに別のパターンを楽しめるのが嬉しい。何とも得した気分である。

帰り道で「Wi-SiWi」の歌詞を反芻する。あのエンディングから考えるに、「起きろ外道」「笑え邪道」の「外道」と「邪道」は罵倒語の意味合いではなく、主体性なく道に迷いながら何となく周囲の空気に合わせて歩まれる「正道と言われているもの」の反対を表しているように思う。そしてあの谷底に落ちつつも目覚めたアヴァターのように、意思を持ってあえて外れた道、邪とされる道を進むことこそを祝福しているのだろうか。あぁ、でも歌詞カードをまだ読み込んでいない。

ライブの余韻に浸りつつ、反芻しながら今日は歌詞カードを味わおう。もしかしたら明日の公演で新たな発見を得られるかもしれない。



未分類0杯, 筋肉少女帯, 非日常

20151123

タワーレコード新宿店でインストアイベントが行われたトーク&ミニライブ。インストアイベントでは大抵、メンバーの頭が見えればラッキーくらいの位置なのだが、今回はがっつりと頭から爪先まで見える位置を確保出来た。ありがとう素敵な整理番号。途中何度かオーケンと目が合った…そんな幻覚が発生して非常に幸せだった。こういうことは思い込んだ方が勝ちかもしれない。

演奏された曲は「香菜、頭をよくしてあげよう」「おわかりいただけただろうか」「別の星の物語り」「LIVE HOUSE」の四曲。最初に香菜が始まったときは「えっ!? おまけのいちにちのイベントなのに!?」と度肝を抜かれたが、オーケンがギターを弾ける曲、ということで選ばれたようだ。

また、今回のイベントで特徴的だったのはメンバー全員が歌ったこと。香菜はオーケンで、おわかりが橘高さん、別の星が内田さん、LIVE HOUSEはもちろんおいちゃん。まさか全員の歌唱を間近で堪能出来るとは思わず、何とも豪華だなぁと非常に満足したのであった。

さて、覚えている内容を簡単にまとめてみようと思う。言い回しや順番が不正確な箇所もあるかもしれないが、大目に見てもらえるとありがたい。

■始まり
「お足元の悪い中ようこそ起こしくださいました」というオーケンの挨拶から始まり、今回のインストアライブこそがツアーファイナル、いや後夜祭だという話に。そして「おまけのいちにち(闘いの日々)」というアルバムに言及。再結成後は、「筋少はこうである」という確認と思い込みから始まり、「THE SHOW MUST GO ON」で完成形が出来た。そしてその後に、こんな変わったアルバムを作れた。それが嬉しい、という内容だった。

■レジテロの夢はビートルズ
「おまけのいちにち(闘いの日々)」に収録されている曲の話へ。「レジテロの夢」の歌詞についてオーケンが解説。序盤の「地獄ない 天国ない 空と今があるだけ」はビートルズの「イマジン」の歌詞の和訳から来ている。だから「ジョン・レノンでさえない」という言葉がある。ただ、筋少を聴く人はビートルズを聴く人が少なそうだからここで説明してみました、とオーケン。

■「香菜、頭をよくしてあげよう」演奏コーナー
オーケンがアコギを弾き、メンバーがオーケンのアコギに合わせて演奏……するのだが、何故かメンバー全員がオーケンを凝視していて、どこか戸惑っている空気が感じられる。そして探り探りのような危うさ。何だろう? と思ったら演奏後に判明。オーケンはこの曲を、人間椅子のワジーをはじめ、いろいろなミュージシャンとアコギで共演してきたのですっかり忘れていたそうなのだが、筋少メンバーと演奏したことは一度も無かったそうなのだ。まさかこの曲をアコギでどのように弾くか筋少メンバーがわからないとは夢にも思わなかったらしい。「ここでブレイクがくるなんて思わなかったよ!」と橘高さんが笑いながら抗議していた。というか、一度もメンバーと合わせずに本番に臨んだのか! すごいな!

■「おわかりいただけただろうか」演奏コーナー
橘高さんボーカルの力強い「おわかりいただけただろうか」。ここでオーケン、ギターの弦を木製の洗濯ばさみのようなもので挟み、さらに音が出ないようにしてほしいとスタッフに指示。このあたり、細かいところはおいちゃんが指示していた。ここから先はギターを持ちつつのエアギターで好き勝手にやるそうな。その件について橘高さん、ついこの間のライブのレポートがネットで公開されていたのだが、そのレポートに掲載されている写真がまさにギターを持ちつつエアギターのオーケンで、その写真だけ見るとものすごくギターが上手そうに見えることに言及。オーケン「良い写真を選んでくれましたね!」橘高さん「あれはずるい! 滅茶苦茶うまく見える! シールド刺さってないのに!」

そんなやりとりの後、「おわかりいただけただろうか」の演奏へ。橘高さん曰く、この曲をアコギで弾くと油断すると遅くなってしまうので気をつけて、とのこと。そして実際聴いてみると、アコギでやるのは無理があるんじゃないか!? と思う迫力だった。

■「別の星の物語り」演奏コーナー
この曲の作曲者は橘高さん。橘高さんといえばヘヴィメタル。そんな橘高さんが橘高さんらしくない曲を作ったその意図は? と尋ねるオーケン。「意図ぉ!?」と反応に困る橘高さん。そこから、「自分の担当ではない曲をたまに作ると面白い曲が出来る」という話へ。そこからさらに「THE SHOW MUST GO ON」の「恋の蜜蜂飛行」の話へ飛ぶ。この曲が出来たのは最後だそうで、もう一曲橘高メタルが欲しいなぁ、とオーケンが言ったところ、橘高さんが「メタル~…?」と渋り、そこへ「それは君の仕事だろう!」とオーケンが突っ込んだ、という懐かしい話へ。そうそう、そんな話もあったなぁ。

また、こんな話も。「別の星の物語り」はオーケンが歌う曲だが、オーケンの意向で内田さんのキーに合わせて通常よりも低くなったらしい。曰く、内田さんが歌うと似合いそうだったからとのこと。そして実際特典のCDで歌唱することになった内田さんは野口五郎を意識。さらにオーケンも実は野口五郎を意識して歌っていたことを告白。「わかる、わかるよ!」と笑う橘高さん。そろそろ己も野口五郎に手を出さねばなるまいな……と思った。

さて、演奏に移り、内田さんがウクレレベースをポクポクと叩き、メンバーもそれに合わせてギターをポクポク叩く。そのまま数秒。曲は始まらず、「この間は何?」「誰がカウントをとるの?」「内田がカウントをとるんじゃないの?」と突っ込むメンバーの声。その後ようやく内田さんがカウントをとることで曲が始まったが、しばらく無言の「ポクポクポク」が続き、「筋少は振ってるのに応えてもらえなかった、何か振られているけどそれがわからない、そういうのが多い、そのままここまで来てしまいました」という話に。

「別の星の物語り」のとき、内田さんが「手を振りながら去ってく」と歌いながら手を振る仕草を見たオーケンが、ワンテンポ遅れて真似して手を振っていたのがキュートだった。

■「LIVE HOUSE」演奏コーナー
たびたびネタにされていた「LIVE HOUSE」だが、実はエッグレイヤーでしかやってない、という話に。有頂天でも伝染病でもやっていない。伝染病をやっていた頃にはそもそも「LIVE HOUSE」は存在していなかった、とおいちゃん談。その露出頻度のわりに大いにネタにされていたせいか、おいちゃんの中で「LIVE HOUSE」は封印されていたそうだが、そんなにやっていなかったのに印象に残っていたってことはやっぱり良い曲だったってことだよ!! とオーケン。照れるおいちゃん。

いよいよ「おまけのいちにち(闘いの日々)」で「LIVE HOUSE」を録音することになったとき、エンジニアに参考までに当時のテープを聞きたいと要望があったそうで、おいちゃんは当時の録音テープを渡したそうだ。しかし、エンジニアから返信は来ず。後日会ったとき、エンジニアはとても何かを言いづらそうな顔をしていたそうで、その理由についてオーケンが言及。曰く、オーケンでもわかるくらい、ギターもベースもチューニングが合っていなかったそうだ。それなのに自信満々な歌唱が乗っていた、という代物らしい。しかしオーケンはこの若さの勢いのようなものをいたく気に入っているようで、特典にあのテープをつけたい、という話をしていた。

また、「LIVE HOUSE」の歌詞について、最初おいちゃんはうろ覚えで歌詞買いたそうなのだが、後で確認したら間違えていたのでリリース前にちゃんと直したそうだ。「うろ覚えはいけないね」と言うおいちゃんは、「LIVE HOUSE」の手書きの歌詞を未だにきちんと保管しているそうで、実現こそしなかったものの、その手書きの歌詞を歌詞カードに印刷する案もあったそうだ。

あと、ちょっと意外で嬉しい話が。「LIVE HOUSE」に収録されている歓声が、ライブでオーディエンスが実際あげた声を録音したものだそうだ。橘高さん曰く二公演分で、ここにいるお客さんならきっと入っているだろうね、とのこと。やばい興奮する。そこにオーケン「どうして二公演なんですか? 一公演じゃ足りなかったんですか?」と茶々を入れる。すかさず橘高さんが「よりたくさんの人の声を入れたかったんだよ!」と反撃。しつつ「素晴らしい素材をありがとうございます」というようなことを言って「素材!!!!」とオーケンに突っ込まれる。それをいなしつつ我々の方を向いて「声が入っているから、CDデビューしました~って親戚の人に手売りしてくれても良いよ」とニコニコ。くわあ。売りそう。

「LIVE HOUSE」の演奏中は手拍子が鳴り響き、さながらここがタワーレコードではなくまさにライブハウスのような空間に。濃い色のサングラスをかけたおいちゃんの歌唱が響き渡る。おいちゃんはわりと歌うのが好きで、歌いたくてエッグレイヤーを結成、というか乗っ取って「LIVE HOUSE」を歌ったそうだ。そんなおいちゃんに「よく今まで黙ってましたね」と言うオーケン。「歌いたいけど録音するほどじゃなかった」と返すおいちゃん。いやおいちゃん、あなたの歌唱は格好良いですよ。歌ってくださいよ。

ちらちらとスタッフのおねえさんが残り時間が書かれているであろうノートを持ってステージ前に乱入してくるのが微笑ましい。「LIVE HOUSE」が終わった後だっただろうか、来年、筋少が再結成後十年の節目を迎える話になった。早いなぁ。当時己は二十歳だったよ。それが三十になるんだよ。そりゃあ年もとるわなぁ。ありがたいありがたい。しみじみしていると、「LIVE HOUSE」のおいちゃんの手書きの歌詞のように、そういった年季物が他にもあるから、それを特典につけるかもしれないね、あぁでも言ったらつけなきゃいけなくなるねという話に。うわあつけてくださいよ! 是非! 後追いファンはそういったものに飢えているのだから! と興奮する自分。まあもちろん全員が全員じゃあないだろうけど。

■その他
あと、どこだったかな。立ち位置を変えると面白い、という話もあった。普段、皆さんいつも同じ位置で見てるでしょうけど、違うところに行くと別の景色が見えますよ。例えばいつも前方にいる人が後方に行くと照明の素晴らしさに気付いたり。そういえば前方はマーシャルの音がまっすぐに届いていますが大丈夫ですか? などなど。橘高さんもマーシャルの音を直に受けないよう調整しているそうだ。また、若い頃は特に、花道で花火などが爆発する演出があり、それが怖いので「わーーーーーー!!」と叫んでいたそうだ。そして今は橘高さん、おいちゃんと向き合うと「気付け」のためにお互い反射的に「わーーーー!」と叫んでいるそうだ。目が合うと「わーーーーー!!」二人が向かい合ったとき、ニコニコしながら大口を開けている様を目にしたことは多々あるが、あれ実際叫んでたんか。

それと最近、メンバーがライブ終了後、ステージから去るのが遅くなっている話へ。「再結成前はそうじゃなかったよね?」「だんだん遅くなってるよね?」とオーケン。頷く橘高さん。対してものすごく早いのがエディで、橘高さんがマーシャルを蹴り倒している頃には既にステージからいなくなっている。そこから、今度は「今エディが新幹線に乗りましたーもう名古屋を通過しましたー」とオーディエンスにアナウンスしようかという冗談が飛び交う。

最後は十二月二十三日の、リキッドのライブについて。「LIVE HOUSE」のトークから、「良い素材を提供してくださいね」と笑うオーケン。そしてメンバーが退場。今回、メンバー全員がサングラスをかけていて、オーケンはちょい悪親父ぶっていたのだが、最後にサングラスを外してくれて、見える目。やっぱ素顔の方が好きだなぁ格好良いなぁ、と思った。橘高さんはスタンドマイクに貼り付けたピックをパラパラと投げてくれ、己はそのおこぼれをちょうだいして、内田さんのスタンドマイクにはピックがくっついていたけど内田さん、指でウクレレベースを弾いていて、あれもしかしてのピック、ほとんど意味なかったんじゃね? と気付きながら、楽しいイベントは終わったのであった。おいちゃんはいつも通りニコニコの笑顔。橘高さんは気のせいかいつもよりクルクルのパーマ。オーケンの靴下はもしかしたらファンに言及されるかもしれないデザインで、内田さんは暖かそうな格好で。それを全て見られて嬉しかったなぁと思いつつ。四十五分の短さを知ったのである。



未分類0杯, 初参戦, 町田康, 非日常

この「宮川企画」の趣旨を全く把握しないままにチケットを取ったのは憧れの町田康が出演するから。「汝、我が民に非ズ」というプロジェクト名にて、ついに町田康がライブをやってくれるから。

そして。結局己はこの「宮川企画」が何を意図した企画だったのか知ることなく帰路に着いたのだが、ただただ多幸感。あぁ、だって、やっと町田康の歌を、姿を、生で堪能出来たのだから!

前から二列目で視界も良好。町田康の前に三組の出演者がステージに現れ、それぞれ楽しんだり合わないなーと思ったりしながら町田康の登場を待ちわびた。リアルタイムでサンプリングしながら歌う「UHNELLYS」は面白く、日本語ラップの「MOROHA」は、言葉と声に力強さを感じつつも自分の好みには合わなかった。台詞量が非常に多いので、西原理恵子や新井理恵のふきだしみたいな密度だな……と思ったことは印象に残っている。「行方知れズ」はすごかった。というか客の盛り上がりがすごかった。叫びながら踊り狂うはステージに乱入するはダイブが発生するわと直前までの空気から一変。横を見ればステージに背を向けて携帯電話を片手に自撮りを行う者もいる。おいここ写真撮影禁止だろうが、だめじゃないか何だこれ。今までこういうノリのライブに参加したことが無かったためちょっと戸惑った。

そして最後の出演者が町田康。グレーのジャケットに黒のシャツ、ダメージジーンズという出で立ちで、片手には歌詞が書かれた紙。長い髪が邪魔になるのか、たびたび髪を耳にかける仕草をしていた。眼鏡はかけていない。近年、書籍などで町田康の写真を見るときは眼鏡がかけられている姿が多かったので、ちょっと意外で嬉しかった。

一曲目は「305」。INU時代の曲で、何度となく聴いた曲である。この日は町田康名義ではなく「汝、我が民に非ズ」名義ゆえ、一曲目から知った曲をやってくれるとは思いもしなかったので興奮してしまった。

町田康と言うと目をかっと見開き、ギョロギョロさせながら歌うイメージを持っていた。しかし今目の前にいる本物の町田康は目をギューッとつむって力強く叫びながら歌っていた。時折、楽しそうに笑顔を見せながら歌うとき開かれる目がキュートである。膝を軽く折り、スタンドマイクを握り、叫ぶ声歌う声を聴く。危うさよりも穏やかさが感じられ、楽しそうだなと思った。

タイトルは不明だが、「遠く離れていても大丈夫ー遠く離れていても仲間だよー」といったような歌詞を歌っていたとき。きちんと聴き取れなかったので歌詞の全体像を把握出来なかったのだが、多分単純にハートフルな曲では無いのだろうな、何かあるのだろうなと思いながら聴いていたとき。曲中でぼそっと「俺から離れられると思うなよ」といった内容の言葉を町田康が呟いて、このときそこここから悲鳴が上がった。この一瞬の表情がとても格好良かった。

「305」の他、INUの曲では「フェイド・アウト」と「つるつるの壷」を歌ってくれた。「お前の頭を開いてちょっと気軽になって楽しめー」と歌うとき、町田康は両手を広げ、にこやかに楽しそうにしていて、それを見ている自分も楽しくなって、そしてこのフレーズが大好きな自分を再確認して、自分の頭を開いてちょっと気軽になりたい気分になった。

終始、楽しそうで嬉しかったなぁ。しつこい野次もあり、ちょっと黙ってろよと観客に対し腹の立つ場面もあったが、町田康本人は拾うところは拾って上手にいなしていた。「INU--!!」としつこく叫ぶ客がいれば「最近は猫の本も書いていまして」と言って笑いを誘う。歌詞を覚えていないと告白し、歌詞の書かれた紙を用意するも風に飛ばされしっちゃかめっちゃか。床に散らばった紙を拾いつつ、次の曲の歌詞がなかなか見つからず、本当に困ってしまったようで、「二分待ってください」「しばしご歓談を」と弱りながら観客に声をかけてまた笑いが起こる場面も。

最近野球に興味を持てない、何故なら誰が誰だかわからず感情移入出来ないから、というMCから、では誰が誰かわかった方が楽しめるでしょうから……とメンバー紹介が行われる場面も。他、告知もあったがアルバムやライブの予定については特に無かった。

新曲を聴ける嬉しさと、新曲を反芻出来ないもどかしさがない交ぜになる。リアルタイムで、今まで聴いたことが無かった町田康の曲が聴けるのは嬉しいのに、それを今度いつ聴けるかわからないなんて! ただ、新しくプロジェクト名を名乗るからには、きっと今後もちょこちょこと活動があるんじゃないかしら、あってほしいなぁと願いつつ。思えば聴きたい曲は他にもたくさんあって、「犬とチャーハンのすきま」の曲も聴きたいなぁそういえば新曲に「チャーーーーハーーーーーン!!!」「ラーーーーメーーーーーーーン!!!」って絶叫する曲があったなぁあれはいったいどんな歌詞だったのだろう読みたいなぁ、と思う夜。

思えば今週は二回も夢に町田康が出てきた。いったいどれだけ楽しみにしていたんだよと我ながら思ってしまう。初めて町田康を知ってからそろそろ十年。最初はエッセイから入り次にCDを買って文章も音楽も好きになった。特に文章にはちょっとどうだろうと思うくらいに影響を受けてしまった。大学の頃は町田康の詩集を常に鞄に忍ばせていた。あの頃も、一度観てみたいと思っていたのだ、そういえば。ついに叶ったんだなぁ。

最後に。今日、楽しそうに穏やかに歌う町田康の姿を観たとき。感動し興奮すると同時に、様々な人の口から語られる、昔の狂気じみた頃の姿、それはもうイメージでしか無いのだが、そのイメージがふっと出てきて、きっと全然違うのだろうな、と思った。だがそれを求めている人もいるのだろう。自分も全くゼロでは無い。ただやはり今こうしてここにいる町田康が好きで、その履歴も好きで、その先も観たいと思う。ギューッと目をつむって歌う姿から感じられる必死さをまた観たい。きっといつか、またどこかでやってくれることを願って。願って!



未分類0杯, 筋肉少女帯, 非日常

久しぶりにきっついライブであった。潰された。とにかく潰された。よって本日は記憶がぶっ飛んでいる。あらゆることを覚えていない。

本日の公演はチケットがソールドアウト。そのためか珍しく、開演前に前に詰めるよう指示が出され、ぎゅんぎゅんに詰め込まれる。リキッドルームで開演前に前へ詰めてぎゅんぎゅんになった記憶はないのでここでやや己は驚いた。後ろにどれだけの人が来ているのだろう。開演後、動く余地はあるのだろうか。

そこでついに待ちに待った開演! 「大都会のテーマ」をSEにメンバーが登場し、一曲目は「レジテロの夢!」そして「ムツオさん」へと続き、初っ端からヒートアップ。「球体関節人形の夜」ではタオル回しと折りたたみが発生し、ぎゅんぎゅん前に詰め掛ける人人人、そして折りたたみによる大波小波。前半は正直、翻弄されっぱなしであった。

さらに周りを屈強な男性と屈強な女性に囲まれて、囲まれるだけならまだ良いがめっさ潰される。頭の上に腕が乗るのは良い。良いのだが、そこから「ぐぐぐぐぐ~っ」と力を込めて頭を潰していくのである。明らかに意思を持った力である。さらには横の人がわざわざ肘を真横に突き出し、己の首や顔を「ぐぐぐぐぐ~っ」と圧迫する。顔を正面に向けられないわ上からも圧迫されるわとひどい有様。流石に耐えかねてやや後方に移動したがそこもなかなかハードな場所で、とにかく最初から最後までしんどかった。久しぶりだなぁ、ここまでしんどい状況は。

ということで本日は曲順を覚える余裕が無く。一曲目が「レジテロの夢」で二曲目が「ムツオさん」、そこから「混ぜるな危険」「球体関節人形の夜」「枕投げ営業」へ続きつつ、「バトル野郎~100万人の兄貴~」ならぬ「バルト海峡~100万里の兄貴~」が歌われ、「LIVE HOUSE」はおいちゃんボーカル、アコースティックタイムでは「別の星の物語り」「生きてあげようかな」「夕焼け原風景」が歌われしっとりし、途中に定番の「イワンのばか」「サンフランシスコ」「踊るダメ人間」が入ったような記憶。あと「ゾロ目」「労働讃歌」も。アンコール一曲目は楽器隊のみで「大都会のテーマ」をインストで。「おわかりいただけただろうか」は橘高さんボーカル、筋少のみで「地獄のアロハ」、最後はお約束のド定番曲「釈迦」で締め、あれ意外と覚えているじゃあないか。

「ムツオさん」はオーケンが歌詞を忘れて困ったような顔で横を向きつつ頬を掻いている一場面が視界に入ったのを覚えている。その後はオーディエンスに歌唱を要求して事なきを得た、のか? 印象的だったのは「バトル野郎~100万人の兄貴~」が始まる前。いざ曲が始まらんとしたとき、前方のお客さんが具合が悪くなったらしく、少しずつ横に移動して退場していく姿が目に入ったが、その退場の時間を確保するためだろうか。オーケンはお客さんの状態には一言も言及しなかったが、バトル野郎を別のタイトルでやってみたいと内田さんに要求し、「バルト海峡~100万里の兄貴~」という謎のタイトルが発生。しかも内田さんも拒まず、「やってみようか」と受け入れる。結果、「バトル野郎!」と「バルト海峡!」が微妙に混ざり合う妙なコールが会場内に響き渡った。

ただこれ、己はお客さんが退場するための時間稼ぎかな、と思ったが、もともと用意されていたタイトルで偶然だった可能性も否めない。そこはわからない。念のため。

MCで印象的だったのは、オーケンが前日見た映画「チャーリーとチョコレート工場」に影響されて、オーディエンスをウンパルンパと呼び、ウンパルンパの歌らしきものを歌いながら踊り出すという妙なシーンが生まれたこと。自分は過去にその映画を見て、さらに昔に原作本を読んだ記憶はあるが、ウンパルンパのくだりをきちんと覚えていなかったため微妙に悔しい思いをした。見とけば良かったよ、昨日、映画を……!!

あとツアー中、名古屋で久しぶりに打ち上げが行った話。オーケン曰く、「ま~~~~~盛り上がらなかった!!」らしい。何十年と一緒にいるので今更話す話もないとのこと。ただ、「別の星の物語り」を始める前だっただろうか? メンバーが椅子に座り、「LIVE HOUSE」の話から、昔一時的に組んでいたバンドの話やそれに関係するメンバーの話で盛り上がった。そこでオーケン、「まだあるじゃん! こういう話を打ち上げですれば良いんだよ!!」と叫んでいた。

そうそう。「LIVE HOUSE」は今回もおいちゃんボーカルだったのだが、オーケンとのデュエットを聴きたかったなぁ。あのハーモニーがたまらなく好きなので、是非生で聴きたかった。

他、MCではうっちー、おいちゃん、ふーみん、コージーの四人でトークイベントを行ったとき、コージーこと長谷川さんは「ブルドッグ」のゴムをびよんびよん引っ張るダンスをやってくれず、その理由は事務所NGが出たからだとか、しかしきっとコージーがやるならそれはもうすごく完成度の高いダンスを踊ってくれたに違いないとか、同日にオーケンとエディがのほほん学校でゲイの歌を歌ってそれを是非またやりたいとか、ただしエディはゲイに間違われることがあるので、演奏曲と人格を一緒くたにされないようにしなければとか、そんな話があり、ニュースとしては来年二月に筋少初のライブブルーレイディスクが発売されるとのこと! しかもブルーレイを持っていない人のためにDVDも発売! 橘高さん曰く、両方買って画質の違いを見比べてくれても良いんだよとのこと! 映像は「おまけのいちにち」ツアー初日の赤坂をメインに、ドキュメント映像も撮っているそうだ。そんなこんなで、嬉しかったし面白かったが体はきつくとにかく上からも横からも潰され、なかなかハードなツアーファイナルであった。どっとはらい。

あぁ。音楽を、もっと集中して聴きたかったなぁ! ここがとにかく残念である。よって次回に期待だ。リベンジだ! あぁ!



未分類0杯, 筋肉少女帯, 非日常

焦った。とても焦った。何故なら目が覚めたら三時半だったから。もちろん昼の。会場は十七時。開演は十八時。わりと結構、時間が無い。

そして己はチョコパンを四個食べて服を着替えて水を飲んで歯を磨き、急いで仕度を整えて赤坂ブリッツに向かったのであった。A二百番前後のチケットを財布に突っ込んで。

結論から言えば何とか間に合った。視界も良好で最高だった。前から二列目のベストポジションで、最後の曲の「釈迦」では押されに押されて最前から観ることも出来た。しかしあと十分目覚めるのが遅ければこの恩恵は得られなかっただろう。寝坊という点で己の体内時計は確実に狂っていたが、それでもギリギリのところで間に合うあたり、筋少に対する熱意を感じざるを得ない。そんなに好きか。そんなに好きだよ!

今回のライブは新譜発売記念ツアーということで、新譜「おまけのいちにち(闘いの日々)」がメインの選曲でありつつ、珍しい曲あり、いつもの曲あり、まさかの替え歌や意外なあの曲まで盛りだくさんで、お腹一杯の楽しいライブだった。前回の橘高さん三十周年記念「ヘドバン地獄」と比較して、オーケンは「通常営業の筋少ライブ」と言っていたが、その通常営業がたまらなく楽しく嬉しいのだからたまらない。

開演SEは「大都会のテーマ」で、「レジテロの夢」から「パリ・恋の都」ならぬ替え歌「赤坂・恋の都」を挟みつつ、「混ぜるな危険」「球体関節人形の夜」「枕投げ営業」と続き、アルバムの曲順通りのセットリストだったため、今回は覚えやすいぞーと油断していたら「バトル野郎~100万人の兄貴~」や「生きてあげようかな」などが入ってきたことで記憶がまぜこぜになってわからなくなった。よって今回のセットリストは曖昧というか、わからないので演奏された曲だけとりあえず書き記そうと思う。


開演SE:大都会のテーマ

レジテロの夢
赤坂・恋の都(パリ・恋の都の替え歌)

混ぜるな危険
球体関節人形の夜
枕投げ営業

バトル野郎~100万人の兄貴~
LIVE HOUSE(おいちゃんボーカル)

時は来た
イワンのばか

別の星の物語り
生きてあげようかな
夕焼け原風景

踊るダメ人間
ワインライダー・フォーエバー
ゾロ目
サンフランシスコ
労働者M

~アンコール~
大都会のテーマ(演奏)
地獄のアロハ(筋少オンリーver)
おわかりいただけただろうか
釈迦

終演SE:気もそぞろ


書いてみたら意外と覚えていた……気もするが、「時はきた」「イワンのばか」の塊がもうちょっと別のところにあったかもしれない。あと「踊るダメ人間」から「サンフランシスコ」までの曲順は全く自信が無い。とりあえず「記憶がぐちゃぐちゃになるほど楽しかったんだね!」と思っていただきたい。

さて。新譜発売記念ライブでいきなりこれについて語るのか、と言われそうだが語りたいので勝手に語る。まさか「地獄のアロハ」をやるとは思わなかった! ワジーボーカルの箇所は橘高さんが、研ちゃんボーカルの箇所は内田さんが担当し、ワジーのギターソロは橘高さんのギターソロに。そして「ぼくらは筋肉少女帯人間椅子~」と皆で合唱するところは「ぼくらは筋肉少女帯なんですよ~」という歌詞に変わっての、まさに筋少版「地獄のアロハ」!

こうして筋少版を聴くと、いかに筋肉少女帯人間椅子がお祭り騒ぎであったかとてもよくわかる。筋少版は「筋少」として、騒がしいながらもまとまっているのだが、筋肉少女帯人間椅子は、そりゃあ人数と楽器の数からして当たり前なのだが、あっちからもこっちからも音が鳴っていて、狭い空間に大人数をぎゅうぎゅう詰めにしたような熱量と圧迫感があったことが思い出される。また、もう随分前な気がするのに、まだあれから一年も経っていないという驚き。何と濃い一年だったことか。

ちなみに「地獄のアロハ」冒頭のオーケンの歌唱シーンでは、おいちゃんと橘高さんが撮影でも使用したあの懐かしのウクレレを爪弾いた。ウクレレのターンが終わった後、橘高さんのピンクのフライングVウクレレが軽々と袖で待機するスタッフの手元に飛んで行ったのが、いつものフライングVに比べて重量感が無く、ふわ~としていて、何だか可愛らしかった。

一曲目の「レジテロの夢」はまだ探り探りな感じがして、新譜発売記念ライブらしいなぁとしみじみしていたら「パリ・恋の都」ならぬ「赤坂・恋の都」! 会場が赤坂ブリッツということで、赤坂周辺の地名や建物を歌詞に盛り込むという暴挙。「フレーーーーンチキースー」か「カフェーーーーオーレー」のところが「ひえーーーーじーんじゃー(日枝神社)」になっていて笑った。何より「パリ」という二文字に無理矢理「あかさか」という四文字をはめ込んで、その箇所だけものすごく早口になっているのがおかしい。

「混ぜるな危険」はシングル発売前に一度聴いたきり、ライブで聴くのはこれが初めてなので新鮮だ。しかし毎週のアニメでこれでもかと聴きこみ、しっかり体に染み付いているので、まるで定番曲のよう。「おうぃ!!」と拳を振り上げるのが楽しい。ちなみに語り部分は語られず、煽りパートになっていた。

「球体関節人形の夜」がすごかった。ここでぐわっと押しが発生したのである。皆! そんなに球体関節人形の夜が好きなのか! わかる! 己も大好きだから!! と思いつつ、「踊れ踊れ」と煽りながら指をくるくる回すオーケンに合わせて懸命に指を振り回した。

今更だが、今回の立ち位置は内田さんと橘高さんの間くらいで、前述の通り前から二列目だったので、橘高さんの手元をこれでもかというほど凝視することが出来た。生憎技術的なことは何もわからないが、あの指からこの空間中に響き渡る音が紡がれているのかと思うと感慨も一入である。それを間近で見られる贅沢さったらない。

「枕投げ営業」に入る前に、オーケンが「ついにあの曲!」というようなことを言っていて、枕投げ営業の人気を把握しているのだなぁと思った。いやあこれ、やっぱり楽しい! 期待通りにノリノリになれて、気持ちの良い曲だった。

「LIVE HOUSE」ではオーケンがはけて、おいちゃんの独壇場が披露された。おいちゃんが全力でおいちゃんファンを殺しにかかってきているのが感じられる格好良さ。あぁ、でもおいちゃんとオーケンの声の重なりのハーモニーも素敵だったから、それも生で聴きたかったなぁ!

ちなみに、「LIVE HOUSE」での立ち位置は下手から内田さん、おいちゃん、橘高さんという順。おいちゃんがセンターに立ち、内田さんがおいちゃんの位置に移動。笑えたのはおいちゃんのスタンドマイクがスタッフによってセンターに運ばれたときで、オーケンがわざとらしくショックを受けたような顔をしていたこと。曲に入る前にもオーケンは、オーケンが「LIVE HOUSE」を一人で歌う、というようなことを言ったとき、オーディエンスから「えーーーー」という声が上がって、「これは不倫ですよ!!」と文句を言う小芝居をしていた。そうか、不倫になるのかこれは。ははは。

「時は来た」は内田さんのベースを堪能出来る曲。筋少はリードギター・リズムギター・ピアノ・ドラム・ベースが重なり合うため、ベースの音が単独で目立つことはあまり無いので新鮮である。そして嬉しい。こういう、ベースが目立つ、ちょっと静かで大人な曲もいつか作ってくれたら良いなぁ、と思った。

「時は来た」の語りではオーケンが絶好調。冒頭の「嘘だよーんけらけらけらけらけら~」のところも実に楽しんでいるようだったがそれ以上にはっちゃけた! 「いまどき誰が音楽で飯を食おうとするかー!」から始まり、「物販を買えー!」と煽り、本当か否かわからないものの物販の原価をぶっちゃける! 良いの!? それ! 大丈夫なのか!? と心配したのは一瞬にして原価率を計算してしまったから! 客の購買意欲大丈夫? 下がらない? と心配している最中もトークは止まらない! 原価率○%の物販の売り上げでウェポンを買い、ウェポンの力によって目からビームを出したりできるようになり、最終的にはライブの後にはなの舞や磯丸水産で打ち上げをしてかんぱ~い!

この間奏の煽りで盛り上がりに盛り上がった結果、入りを間違えるのがまた実にオーケンらしかった。

「別の星の物語り」「生きてあげようかな」「夕焼け原風景」は椅子に座って。「夕焼け原風景」は内田さんだけが起立してベースを弾き、他のメンバーは座っての歌唱・演奏。そこから盛り上がるにつれて、全員が立ち上がっての演奏となる構成が格好良かった。

あと、「夕焼け原風景」はアルバムで聴いたときはそうでもなかったのだが、ライブで聴いたときはジンと来た。何だろう。何が作用したのだろうか。

「別の星の物語り」に入る前に、今回のライブで一番印象的だったことがオーケンによって語られた。それは、「おまけのいちにち(闘いの日々)」には、「過去」「未来」「現在」という言葉がちりばめられているが、「時間」そのものがテーマではない。キーワードになるのは「未練」で、「未練をいかに断ち切るか、あるいは、未練を断ち切るか否か」が、アルバムの根底にあるということ。そのことにリハーサルの最中に気付いたと言う。そしてそれが一番如実に表れているのが「別の星の物語り」だそうだ。

ストンと、引っかかっていたものが落ちて納得した。「おまけのいちにち(闘いの日々)」というアルバムを考えるにあたり、「時間」が大いに関係していることは感じ取れていた。だが、昭和四十年代五十年代を題材の一つにしつつ、決して懐古趣味では無い。しかし前向きかと言えば必ずしもそうではない。「今」を生きてはいるが、立ち止まったりもがいていたり、もがいている人に語りかけたりしているようだ。

誰しも生きていれば未練を感じることはあるだろう。それに縛られたり、断ち切ろうともがくこともあるだろう。それは年を重ねるごとに増えるかもしれない。でも未練を残しながらも日々を生きていかなければならないのかもしれない。自分だけが静止していると思うこともあるかもしれない。その中でトコトコと歩いて行かなければならないのかもしれない。

ということを考えていたら「ワインライダー・フォーエバー」。未練があるであろう人に語りかける曲。熱愛の末、別れた女優と俳優の話を持ち出し、意外と大丈夫だよ、と語りかける一曲。メンバー全員が楽器を下ろし、マイクを片手にステージを練り歩きながら大盛り上がりする楽曲で、盛り上がりながら考え込むことになろうとは思わなかったなぁ。

本編ラストは労働者M。メンバー全員がドラム台に集合する姿は格好良いが、この曲をライブで聴くとどうしてもスーッとテンションが下がるので、ちょっとつらい。現実に引き戻されるのだ……。

アンコール一曲目は意外なことに「大都会のテーマ」! 開演SEでかかっていたのでこれは演奏されないと思っていたら! そして何と、オーケンがスーツにサングラスで登場! さらに、手にはモデルガン! マーシャルアンプの裏からちょこちょこ顔を出してモデルガンで狙撃の真似をしたりと遊びまわる! 実に楽しそうである!!

このスーツ、このために購入したものだそうで、ヴィヴィアン・ウエストウッドの良いものだそうだ。オーケンのライブ愛が感じられる。

「おわかりいただけただろうか」の前だっただろうか? 新譜発売記念ツアーを猿岩石のようにヒッチハイクで回る! とオーケンが言い出した。「ヒッチハイクで行く! そしてトラックの運ちゃんが良い感じの人なの。筋肉少女帯? あの高木ブーの? 知ってる知ってる俺もロックが好きでね~なんて言って、寝ていいよって後ろの席を空けてくれて、メンバー四人で並んで雑魚寝して……いや昔もそんなことしたことないですけどね。そしたらチェーンソーの音がして……みんなバラバラになるの。なんと運ちゃんは猟奇殺人犯だった! 皆さん爪とかもらっていってくださいね」という急展開かつブラックなMCに。「爪とかもらっていってくださいね」ってそんな庭の畑に出来すぎたトマトじゃあるまいしし、もらっていってくださいねってどういうことですか大槻さん……。

最後は「釈迦」で締め! 予想外だったのは橘高さんがマーシャルの壁を蹴り倒すパフォーマンスをしてくれたこと! 何で? どうして? 今日は通常営業のライブなのにありがとうございます!!!! と感動しつつ、ヘドバン地獄でやり忘れたのだろうか……と思った。

オーケンは「オーディエンスは筋少に(お金を)搾り取られていると思っているかもしれないが、搾り取られているのは我々だ! オーディエンスは我々の若さを搾り取っているんだ!」と冗談を言っていたが、何の何の。もうすぐメンバー全員五十代と言えども、加齢加齢と言っていようとも何と格好良いことか! 誰がどう言おうとオーケンの銀髪は最高に格好良いし、年齢を重ねたゆえに生まれたであろう楽曲の数々は愛おしい。きっと十代二十代の頃は「未練」がテーマの楽曲などそうそう生まれなかっただろうから。だからこそ今を楽しみつつ、今後に期待して我々は搾り取られるのである。

今年、己が行く筋少のライブはあと二回。全力で搾り取られる所存である。