NEW ALBUM リリースツアー2015「おまけのいちにち(闘いの日々)」 (2015年10月24日)

焦った。とても焦った。何故なら目が覚めたら三時半だったから。もちろん昼の。会場は十七時。開演は十八時。わりと結構、時間が無い。

そして己はチョコパンを四個食べて服を着替えて水を飲んで歯を磨き、急いで仕度を整えて赤坂ブリッツに向かったのであった。A二百番前後のチケットを財布に突っ込んで。

結論から言えば何とか間に合った。視界も良好で最高だった。前から二列目のベストポジションで、最後の曲の「釈迦」では押されに押されて最前から観ることも出来た。しかしあと十分目覚めるのが遅ければこの恩恵は得られなかっただろう。寝坊という点で己の体内時計は確実に狂っていたが、それでもギリギリのところで間に合うあたり、筋少に対する熱意を感じざるを得ない。そんなに好きか。そんなに好きだよ!

今回のライブは新譜発売記念ツアーということで、新譜「おまけのいちにち(闘いの日々)」がメインの選曲でありつつ、珍しい曲あり、いつもの曲あり、まさかの替え歌や意外なあの曲まで盛りだくさんで、お腹一杯の楽しいライブだった。前回の橘高さん三十周年記念「ヘドバン地獄」と比較して、オーケンは「通常営業の筋少ライブ」と言っていたが、その通常営業がたまらなく楽しく嬉しいのだからたまらない。

開演SEは「大都会のテーマ」で、「レジテロの夢」から「パリ・恋の都」ならぬ替え歌「赤坂・恋の都」を挟みつつ、「混ぜるな危険」「球体関節人形の夜」「枕投げ営業」と続き、アルバムの曲順通りのセットリストだったため、今回は覚えやすいぞーと油断していたら「バトル野郎~100万人の兄貴~」や「生きてあげようかな」などが入ってきたことで記憶がまぜこぜになってわからなくなった。よって今回のセットリストは曖昧というか、わからないので演奏された曲だけとりあえず書き記そうと思う。


開演SE:大都会のテーマ

レジテロの夢
赤坂・恋の都(パリ・恋の都の替え歌)

混ぜるな危険
球体関節人形の夜
枕投げ営業

バトル野郎~100万人の兄貴~
LIVE HOUSE(おいちゃんボーカル)

時は来た
イワンのばか

別の星の物語り
生きてあげようかな
夕焼け原風景

踊るダメ人間
ワインライダー・フォーエバー
ゾロ目
サンフランシスコ
労働者M

~アンコール~
大都会のテーマ(演奏)
地獄のアロハ(筋少オンリーver)
おわかりいただけただろうか
釈迦

終演SE:気もそぞろ


書いてみたら意外と覚えていた……気もするが、「時はきた」「イワンのばか」の塊がもうちょっと別のところにあったかもしれない。あと「踊るダメ人間」から「サンフランシスコ」までの曲順は全く自信が無い。とりあえず「記憶がぐちゃぐちゃになるほど楽しかったんだね!」と思っていただきたい。

さて。新譜発売記念ライブでいきなりこれについて語るのか、と言われそうだが語りたいので勝手に語る。まさか「地獄のアロハ」をやるとは思わなかった! ワジーボーカルの箇所は橘高さんが、研ちゃんボーカルの箇所は内田さんが担当し、ワジーのギターソロは橘高さんのギターソロに。そして「ぼくらは筋肉少女帯人間椅子~」と皆で合唱するところは「ぼくらは筋肉少女帯なんですよ~」という歌詞に変わっての、まさに筋少版「地獄のアロハ」!

こうして筋少版を聴くと、いかに筋肉少女帯人間椅子がお祭り騒ぎであったかとてもよくわかる。筋少版は「筋少」として、騒がしいながらもまとまっているのだが、筋肉少女帯人間椅子は、そりゃあ人数と楽器の数からして当たり前なのだが、あっちからもこっちからも音が鳴っていて、狭い空間に大人数をぎゅうぎゅう詰めにしたような熱量と圧迫感があったことが思い出される。また、もう随分前な気がするのに、まだあれから一年も経っていないという驚き。何と濃い一年だったことか。

ちなみに「地獄のアロハ」冒頭のオーケンの歌唱シーンでは、おいちゃんと橘高さんが撮影でも使用したあの懐かしのウクレレを爪弾いた。ウクレレのターンが終わった後、橘高さんのピンクのフライングVウクレレが軽々と袖で待機するスタッフの手元に飛んで行ったのが、いつものフライングVに比べて重量感が無く、ふわ~としていて、何だか可愛らしかった。

一曲目の「レジテロの夢」はまだ探り探りな感じがして、新譜発売記念ライブらしいなぁとしみじみしていたら「パリ・恋の都」ならぬ「赤坂・恋の都」! 会場が赤坂ブリッツということで、赤坂周辺の地名や建物を歌詞に盛り込むという暴挙。「フレーーーーンチキースー」か「カフェーーーーオーレー」のところが「ひえーーーーじーんじゃー(日枝神社)」になっていて笑った。何より「パリ」という二文字に無理矢理「あかさか」という四文字をはめ込んで、その箇所だけものすごく早口になっているのがおかしい。

「混ぜるな危険」はシングル発売前に一度聴いたきり、ライブで聴くのはこれが初めてなので新鮮だ。しかし毎週のアニメでこれでもかと聴きこみ、しっかり体に染み付いているので、まるで定番曲のよう。「おうぃ!!」と拳を振り上げるのが楽しい。ちなみに語り部分は語られず、煽りパートになっていた。

「球体関節人形の夜」がすごかった。ここでぐわっと押しが発生したのである。皆! そんなに球体関節人形の夜が好きなのか! わかる! 己も大好きだから!! と思いつつ、「踊れ踊れ」と煽りながら指をくるくる回すオーケンに合わせて懸命に指を振り回した。

今更だが、今回の立ち位置は内田さんと橘高さんの間くらいで、前述の通り前から二列目だったので、橘高さんの手元をこれでもかというほど凝視することが出来た。生憎技術的なことは何もわからないが、あの指からこの空間中に響き渡る音が紡がれているのかと思うと感慨も一入である。それを間近で見られる贅沢さったらない。

「枕投げ営業」に入る前に、オーケンが「ついにあの曲!」というようなことを言っていて、枕投げ営業の人気を把握しているのだなぁと思った。いやあこれ、やっぱり楽しい! 期待通りにノリノリになれて、気持ちの良い曲だった。

「LIVE HOUSE」ではオーケンがはけて、おいちゃんの独壇場が披露された。おいちゃんが全力でおいちゃんファンを殺しにかかってきているのが感じられる格好良さ。あぁ、でもおいちゃんとオーケンの声の重なりのハーモニーも素敵だったから、それも生で聴きたかったなぁ!

ちなみに、「LIVE HOUSE」での立ち位置は下手から内田さん、おいちゃん、橘高さんという順。おいちゃんがセンターに立ち、内田さんがおいちゃんの位置に移動。笑えたのはおいちゃんのスタンドマイクがスタッフによってセンターに運ばれたときで、オーケンがわざとらしくショックを受けたような顔をしていたこと。曲に入る前にもオーケンは、オーケンが「LIVE HOUSE」を一人で歌う、というようなことを言ったとき、オーディエンスから「えーーーー」という声が上がって、「これは不倫ですよ!!」と文句を言う小芝居をしていた。そうか、不倫になるのかこれは。ははは。

「時は来た」は内田さんのベースを堪能出来る曲。筋少はリードギター・リズムギター・ピアノ・ドラム・ベースが重なり合うため、ベースの音が単独で目立つことはあまり無いので新鮮である。そして嬉しい。こういう、ベースが目立つ、ちょっと静かで大人な曲もいつか作ってくれたら良いなぁ、と思った。

「時は来た」の語りではオーケンが絶好調。冒頭の「嘘だよーんけらけらけらけらけら~」のところも実に楽しんでいるようだったがそれ以上にはっちゃけた! 「いまどき誰が音楽で飯を食おうとするかー!」から始まり、「物販を買えー!」と煽り、本当か否かわからないものの物販の原価をぶっちゃける! 良いの!? それ! 大丈夫なのか!? と心配したのは一瞬にして原価率を計算してしまったから! 客の購買意欲大丈夫? 下がらない? と心配している最中もトークは止まらない! 原価率○%の物販の売り上げでウェポンを買い、ウェポンの力によって目からビームを出したりできるようになり、最終的にはライブの後にはなの舞や磯丸水産で打ち上げをしてかんぱ~い!

この間奏の煽りで盛り上がりに盛り上がった結果、入りを間違えるのがまた実にオーケンらしかった。

「別の星の物語り」「生きてあげようかな」「夕焼け原風景」は椅子に座って。「夕焼け原風景」は内田さんだけが起立してベースを弾き、他のメンバーは座っての歌唱・演奏。そこから盛り上がるにつれて、全員が立ち上がっての演奏となる構成が格好良かった。

あと、「夕焼け原風景」はアルバムで聴いたときはそうでもなかったのだが、ライブで聴いたときはジンと来た。何だろう。何が作用したのだろうか。

「別の星の物語り」に入る前に、今回のライブで一番印象的だったことがオーケンによって語られた。それは、「おまけのいちにち(闘いの日々)」には、「過去」「未来」「現在」という言葉がちりばめられているが、「時間」そのものがテーマではない。キーワードになるのは「未練」で、「未練をいかに断ち切るか、あるいは、未練を断ち切るか否か」が、アルバムの根底にあるということ。そのことにリハーサルの最中に気付いたと言う。そしてそれが一番如実に表れているのが「別の星の物語り」だそうだ。

ストンと、引っかかっていたものが落ちて納得した。「おまけのいちにち(闘いの日々)」というアルバムを考えるにあたり、「時間」が大いに関係していることは感じ取れていた。だが、昭和四十年代五十年代を題材の一つにしつつ、決して懐古趣味では無い。しかし前向きかと言えば必ずしもそうではない。「今」を生きてはいるが、立ち止まったりもがいていたり、もがいている人に語りかけたりしているようだ。

誰しも生きていれば未練を感じることはあるだろう。それに縛られたり、断ち切ろうともがくこともあるだろう。それは年を重ねるごとに増えるかもしれない。でも未練を残しながらも日々を生きていかなければならないのかもしれない。自分だけが静止していると思うこともあるかもしれない。その中でトコトコと歩いて行かなければならないのかもしれない。

ということを考えていたら「ワインライダー・フォーエバー」。未練があるであろう人に語りかける曲。熱愛の末、別れた女優と俳優の話を持ち出し、意外と大丈夫だよ、と語りかける一曲。メンバー全員が楽器を下ろし、マイクを片手にステージを練り歩きながら大盛り上がりする楽曲で、盛り上がりながら考え込むことになろうとは思わなかったなぁ。

本編ラストは労働者M。メンバー全員がドラム台に集合する姿は格好良いが、この曲をライブで聴くとどうしてもスーッとテンションが下がるので、ちょっとつらい。現実に引き戻されるのだ……。

アンコール一曲目は意外なことに「大都会のテーマ」! 開演SEでかかっていたのでこれは演奏されないと思っていたら! そして何と、オーケンがスーツにサングラスで登場! さらに、手にはモデルガン! マーシャルアンプの裏からちょこちょこ顔を出してモデルガンで狙撃の真似をしたりと遊びまわる! 実に楽しそうである!!

このスーツ、このために購入したものだそうで、ヴィヴィアン・ウエストウッドの良いものだそうだ。オーケンのライブ愛が感じられる。

「おわかりいただけただろうか」の前だっただろうか? 新譜発売記念ツアーを猿岩石のようにヒッチハイクで回る! とオーケンが言い出した。「ヒッチハイクで行く! そしてトラックの運ちゃんが良い感じの人なの。筋肉少女帯? あの高木ブーの? 知ってる知ってる俺もロックが好きでね~なんて言って、寝ていいよって後ろの席を空けてくれて、メンバー四人で並んで雑魚寝して……いや昔もそんなことしたことないですけどね。そしたらチェーンソーの音がして……みんなバラバラになるの。なんと運ちゃんは猟奇殺人犯だった! 皆さん爪とかもらっていってくださいね」という急展開かつブラックなMCに。「爪とかもらっていってくださいね」ってそんな庭の畑に出来すぎたトマトじゃあるまいしし、もらっていってくださいねってどういうことですか大槻さん……。

最後は「釈迦」で締め! 予想外だったのは橘高さんがマーシャルの壁を蹴り倒すパフォーマンスをしてくれたこと! 何で? どうして? 今日は通常営業のライブなのにありがとうございます!!!! と感動しつつ、ヘドバン地獄でやり忘れたのだろうか……と思った。

オーケンは「オーディエンスは筋少に(お金を)搾り取られていると思っているかもしれないが、搾り取られているのは我々だ! オーディエンスは我々の若さを搾り取っているんだ!」と冗談を言っていたが、何の何の。もうすぐメンバー全員五十代と言えども、加齢加齢と言っていようとも何と格好良いことか! 誰がどう言おうとオーケンの銀髪は最高に格好良いし、年齢を重ねたゆえに生まれたであろう楽曲の数々は愛おしい。きっと十代二十代の頃は「未練」がテーマの楽曲などそうそう生まれなかっただろうから。だからこそ今を楽しみつつ、今後に期待して我々は搾り取られるのである。

今年、己が行く筋少のライブはあと二回。全力で搾り取られる所存である。



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