未分類0杯, 三柴理, 初参戦, 非日常

毎年、水戸さんの100曲ライブを観るために訪れるライブハウス「七面鳥」。さて、今日この日は高橋竜×三柴理デュオ・ライブが行われる予定だったが……なんと、高橋竜さんがインフルエンザにかかってしまった。よって急遽演目が変更。エディのソロ・ライブになった。

事情を踏まえ予約のキャンセルを受け付ける旨が七面鳥のサイトにも掲載されたが、どうやらキャンセルをした人はほとんどいなかったようだ。開場の三十分前に現地に着くと既に行列が出来ていて、中に入れば満員につき前に詰めてくださいとのアナウンス。こじんまりとした室内にぎっしり椅子が並べられ、左右に気を配りながら外套を脱ぐには苦労した。

畳んだ外套を膝の上に乗せ、ドリンクチケット代わりの貝殻とビールを引き換え、カイロを揉んで開演を待つ。このカイロは「三柴さんからです」と行列に並ぶ一人ひとりにスタッフの方から渡されたものだ。凍えながら耐えいていた身にとって、この優しさはどれだけ心に染みたことだろう! エディの心遣いに感動した。

カイロだけでなく、チラシも一人ひとりに配られた。開くと高橋竜さんからの丁寧なお詫びのメッセージと本日の演奏曲目が書かれていて、高橋竜さんの真摯さと無念さがそれはもうひしひしと伝わってきた。ちなみにこのチラシは高橋さんのメッセージをもとにエディが自宅で作成したそうで、インクを乾かすために紙を広げる必要が生じた結果、家中がチラシだらけになったそうだ。

高橋さんのインフルエンザの件は残念ではあったものの、ライブ自体はとても楽しかった。こじんまりとしたライブハウスの小さなステージにはアップライトのピアノ。普段、コンサートをするときにはピアノにマイクを立てるが、今日は小さな会場であることと、良い音が鳴るピアノなので、ということでマイクは無し。さながらエディの家にお呼ばれしたような、そんな近距離の空間を楽しむことができた。

これがだね、実にすごかったんだ。

ピアノの音だけでなく、指がピアノに触れ、叩く音、靴音、息遣い、振動までが聴こえるのだ。鍵盤を跳ねる指先は優雅で丸く、手首から先が別の生き物のように見えた。思えばいつも、筋肉少女帯のライブで観るエディはステージの奥にいて、こんなにも近くで観たことなど一度もなく、その迫力に圧倒された。

中でも圧巻は「孤島の鬼」と「ヤンガリー」。「孤島の鬼」は「Pianism of King-Show」に収録されているが、「Pianism of King-Show」を発売したときにどうしてか発売記念ライブをやらなかったため、ピアノだけで演奏するのは今日が初とのこと。あの囁くような音と、踏みしめるような力強い音が同じピアノから、そして同じ指先から奏でられるのは何とも不思議な情景に見えた。貴重な現場に出くわしたものだ……。

「ヤンガリー」は本日ラストの曲で、エディより「好きに叫んでね!」と言われたので「ヤンガリー! ヤンガリー!」と叫ぶ気まんまんでいたのだが……叫べなかった。無理だった。目の前で身を削るように奏でられる怒涛のピアノに掛け声を差し挟む勇気を持つ者はどうやら一人もいなかったらしい。ただ息を呑んでピアノに叩かれる指を凝視するより他になかった。

演奏だけでなくトークも盛りだくさんで、こんなにエディの話を聴いたのはきっと今日が初めてだろう。開演すぐ、エディは高橋竜さんがインフルエンザで来られなくなったことを詫びつつ、彼がいかに体調管理に気を遣っていたかを熱く語って聞かせてくれた。そして今日、高橋竜さんが来られないことでお客さんがどんどん減ってしまうに違いない……とエディは思っていたそうで、満員御礼の会場を喜び、「応援してくれてありがとう!」と何度も何度もお礼を言っていた。

曲に入る前には作られた当時の思い出話やエピソードが語られ、合間合間に筋肉少女帯のメンバーやライブの話も挟まれた。聴いていてわかったことは、エディは筋肉少女帯で弾くのが楽しくて、メンバーをとてもリスペクトしているということ。特に長谷川さんや橘高さんのすごさを語る口調の愛に溢れる様子と言ったら! 思わず笑みがこぼれ、ニコニコしてしまった。

真面目で、優しくて、愛に溢れていて、チャーミングな人。それがエディだ。集まった人達を楽しませようと一所懸命喋り、笑わせ、高橋竜さんのことをしきりに残念がりつつ、体調管理を怠っていたわけではないことを強く訴える優しい人。そして、寒空の中ライブハウスの前に並ぶ人々のことまで気にかけてくれる人。カイロは帰り道でもまだ熱を持っていて、まるでエディの優しさを分けてもらったような気分になった。温かな指先がとても嬉しかった。


グリエール「プレリュード」

三柴理「小組曲」
~ペンギン
~大山椒魚
~チンパンジー
~河馬
~鼠

THE 金鶴「Offside」
「Romarin」

三柴理「DOG RAG」
「是政行進曲」

三柴理「AKEBONO Ballad」
「AKEBONO」

筋肉少女帯「孤島の鬼」

~アンコール~
森の妖精(アフロディーテ)
特撮「ヤンガリー」


未分類0杯, 初参戦, 大槻ケンヂと橘高文彦, 非日常

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そもそも自分は対バンにもあまり行かない方だ。それは好きなミュージシャンをひたすらがっつり観たいから、そして転換の待ち時間が苦痛であるから、この二つの理由によるものである。そしてまた、夏フェスなるものにも行ったことがなかった。興味はあるものの、好きなバンドが複数出演することがあまり無く、行くとすれば一つのグループのために参戦せざるを得なくなってしまうためだった。だとすれば、ワンマンの方が己の性質に合っているだろう。故に夏フェスの空気に興味を抱きつつも、それはずっと自分とは関係のない催しであった。

そんな自分がついに、生まれて初めて夏フェスに参戦した。イベント名は「夏の魔物」。開催地は川崎。

それはもう、最高に楽しかった。

そりゃあもう驚いたものだよ。己が夏フェスに足踏みする一番の理由、「好きな出演者がそんなに出ない」が解決されてしまったのだ。大槻ケンヂ、橘高文彦、町田康、有頂天、人間椅子、戸川純、遠藤ミチロウ、ROLLY、ニューロティカという錚々たる面々! まるで自分の妄想が具現化したかのような顔ぶれである。何だこれ。何だこれ!?

しかも、去年までは青森で開催していたのに今年は川崎。近い。すごく近い。サッと行ってサッと帰れる距離である。何だこれ。何だこれ!?

何か、天からご褒美をもらえるようなことをしていただろうか、と思った。頭の中で遊びで作っていた、もし自分が紅白歌合戦の出演メンバーを決められるなら、という空想が現実になったかのような不可思議。出演者の名前を見ながら何度も、「何だこれ、えー、何だこれ」と己は呟いた。

そうして今日この日、由縁のわからぬ素敵なご褒美を全身で受け取って、たっぷり満喫して、最高に楽しんだのだった。
それはもう、素敵な一日だった。

川崎駅からシャトルバスに揺られ、会場に着けば頭上には眩しいほどの青空が広がり、賑やかな音楽が出迎えてくれる。わくわくしながら手首に巻いた入場券代わりのリストバンドを係員に見せてゲートをくぐれば、真夏を駆け抜けるかのようなニューロティカ・あっちゃんの歌声! 初めて聴いたときから思っていたが、あっちゃんは何でこんなに若々しく、青い青年のような声で歌えるのだろう。すごく晴れやかで格好良いなぁって思うんだよなぁ。

曲名がわからないものの、「パンクやめてもいいですか?」「ダメですか、わかりました!」と叫ぶ歌が面白かった。この年代のミュージシャンが好きなだけにニヤニヤ笑ってしまうな。やめないでくださいお願いします!

「ア・イ・キ・タ」で大興奮し、のっけからハッピーな気持ちになりながらブースを移動。途中フードエリアでポカリスエットかアクエリアスかを購入し、腰にぶら下げているシザーバッグに入れた。ちなみにこの日は筋少Tシャツに筋少ラバーバンド、筋少タオル、そして背中に小型のショルダーバッグをかついで、腰にシザーバッグをぶら下げ、スニーカーを履いていた。初めての夏フェスなので他にも用意がいるかと悩みつついつも通りの軽装にした次第である。ただ、ショルダーバッグにペットボトルは入らないので急遽シザーバッグを追加したのだが、これは正解だった。やはり両手が空く状態の方が身軽で良い。

あとゴミ袋代わりになるかと思いスーパーのビニール袋を持って行ったのだが、こいつがレジャーシートの代わりになってくれて意外と重宝した。一人参戦の場合大きなシートはいらないので、ちょいと敷けるものさえあれば充分なようだ。

さて、そんなわけで飲み物をゲットし大槻ケンヂと橘高文彦を観るべく「ホワイトの魔物」ステージへ移動すると、隣の「イエローの魔物」ステージから異様に可愛い声が聞こえた。誰だろうと印刷してきたタイムテーブルを見れば上坂すみれのステージだった。あぁ! アニメ「鬼灯の冷徹」のエンディング「パララックス・ビュー」を歌った彼女! あの曲はオーケンが歌詞を書いているので印象に残っている。そしてその後だったかな、オーケンやヒラサワとも対談したことを知って名前を覚えていたのだ。

彼女はステージで動物の耳と尻尾をつけて元気に歌い踊り、オーディエンスを煽って煽って煽りまくって大いに盛り上げていた。よく知らないがこのノリ、観ているだけで楽しい! 気付けば見よう見まねで腕を振りまくっていた。

ニューロティカから移動してきた頃には上坂すみれのステージはほぼ終盤だったらしい。もうちょっと観たかったなと思いつつオーケンふーみんの開演を待っていると、上坂すみれが踊っていたステージのさらに隣、「レッドの魔物」ステージから大盛り上がりのロックが聞こえてきた。見ればステージに立つのは若者で、タイムテーブルを確認すればこのイベントの主催者「THE 夏の魔物」のステージだった。

あぁ、こうして待っている間に他のステージのライブを楽しめるのはありがたいなぁ、としみじみしつつ聴いていると、「グミ・チョコレート・パイン」と歌う声。あ、これ、オーケンが歌詞提供したやつだったかな? と思いつつ注意深く耳を傾けた。しっとりとした空気を楽しんでいると、間髪入れず雰囲気は転換! 「ボンバイエ!!」と叫ぶ大騒ぎの曲、ステージで跳ねる若者達、同じく跳ねるオーディエンス達! 拳を振り上げつつ盛り上がる人々を見て、まるで自分を俯瞰しているような不思議な感覚を得た。

「THE 夏の魔物」の公演が終わり、じりじりと待っているとついに、ステージにオーケンとふーみんが現れる! 開演SEは何と「アングラ・ピープル・サマー・ホリディ」! 特撮だー!?

そして一曲目は「ジェロニモ」! まさか橘高さんの弾くジェロニモを聴ける日が来ようとは……。実にレアである。オーケンは「筋少」の文字を背負った真っ白な特攻服で、顔にヒビは無い代わりに目元のメイクにいつもよりも力が入っていた。橘高さんは網タイツの露出が激しい白と黒の衣装。ちなみにこの日、アングルの関係かもしれないがかなり際どいところまで見えてセクシーだった。すごい。橘高さんすごい。

二曲目も意外な一曲「猫のリンナ」。チープ・トリックのカバーである。特攻服を着た人が歌うにはあまりにも可愛らしい選曲だ。竜ちゃんがコーラスで原曲の方を歌っていて、それがまた愛らしさに拍車をかけていた。

三曲目に入る前にMCでオーケンがオーディエンスを「どうかしている人々」といじるいじる。あぁ、そういえばフェスのライブ映像を観て、こうしていじられるのを羨ましく思っていたのだった。ついに夏フェスでいじられた! 嬉しい!!

「皆でこの先の海を渡って、転覆させてやろうぜー!」という物騒なMCに続くのは「時は来た」か? と思いきや、始まったのは「とん平のヘイ・ユウ・ブルース」! 意外尽くしの選曲に驚きを禁じえない。この暗闇の中で歌うのにぴったりな曲をこの青空の下で歌うのか……とギャップを楽しんでいると、ステージの前を蝶がひらひらと横切るのが見えて、いつものライブハウスでは絶対に見られないその小さな来訪者の異物感を嬉しく思った。

四曲目は今度発売されるアルバムに収録される新曲の「サイコキラーズ・ラブ」。虫や鳥や人などを手にかけてしまう人々を歌った曲で、演奏の前にオーケンから曲の説明があった。この曲を今日この日まで己は聴いたことがなく、ライブやイベントで聴いた人々の感想や評判を聴いて一刻も早く聴きたいと思っていたので、ついに念願叶って嬉しい。ちなみにちょうど昨夜、あまりにもこの曲を聴きたいあまりに、実在のサイコキラーと呼ばれる人々の犯歴を読み漁った挙句気持ち悪くなったという醜態を己は晒している。よむんじゃなかったとおもいました。

オーケンもふーみんも椅子に座り、しっとりとした調べが奏でられ、優しい歌声が青空に広がる。また一匹、ふわふわとトンボがオーケンとふーみんの前を横切って行った。鳥や人だけでなく、虫も「手をかけられる犠牲者」の対象にオーケンは数えてくれるんだなぁ、とホバリングするトンボを眺めて思った。

まだ発売される前なので、歌詞については語らないでおこう。今はゆっくりと記憶した歌詞を反芻している。最後の言葉がとても好きだ。

ラストは「踊るダメ人間」で青空の下盛大にダメジャンプ! ふーみんの手によりバラ撒かれるピックの雨を頭上に浴びたのに一枚も取ることができなかったが、青空に舞うピックの光景の美しさは目に焼きついている。

「大槻ケンヂと橘高文彦」と銘打つからには「踊る赤ちゃん人間」やハードな曲が来るかと思いきや、そこに縛られないあたりが自由で実に気持ち良かった。いつもとは違うものが観られる、これもフェスの醍醐味だろう。楽しかった!!

次の「The MANJI」までやや時間が空いていたので、フードエリアに行ってタコライスとバジルソーセージとビールを買ってかっ込むように食べた。美味しかった。ちなみにこの後混ぜそばを食べて、最終的にビールを四杯、ポカリスエット的なものを二本飲んだ。結構水分を摂ったが腹がチャポチャポになることはなく、ほとんど汗で流れて行ってしまったようだった。

あと人間椅子が終わって有頂天を待つ間にまた時間ができたので、「もし平沢進が夏の魔物を観に来ていたらいったい何を食べるかゲーム」を一人で行った。特にルールはなく、肉嫌いでベジタリアンなヒラサワが食べられるものを探すたけの遊びである。そうしてビールを呑みつつぶらぶら歩いた結果、見つかったのは「フライドポテト」だけだった。これだけか……。

飲食物持ち込み禁止の会場でこれはちょっと可哀想だなぁ。己は肉も魚も食べられるが、友人にも肉や魚を食べられない人がおり、すると彼らがここに来て食べられるものはポテトだけ。せっかくのお祭りなのに楽しみが半減するのは悲しいことだ。そのあたり、今後はもう少し慮ってくれたらいいな、と思った。

お腹を満たして「ブルーの魔物」ステージへ行く。人だかりに集まると、程なくして演奏が始まった。華やかなROLLYにベースの音色がド派手なサトケンさん! かっけーと思ったら歌っているのは五十肩の曲! あぁ年齢を感じさせる!!

二曲目はファンキーな曲で、ブリブリと主張する野太いベースの格好良さが素晴らしい! シンプルな編成ゆえ尚更ベースが目立ち、ものすごく聴き応えがある。特にベースソロは圧巻だった!

それと印象に残っているのは、話によるとセカンドに入っている曲だったかな? アルファベットをaから順番に歌っていく曲で、多分胸のサイズか何かの歌のようだった。

それにしてもこの人達が谷山浩子と組んでいるのか……。いったいどういうきっかけなのだろう……。

The MANJIの次は戸川純 with Vampilliaへ。スタートが十分か十五分ほど押すものの無事始まった。知っている曲の中で演奏されたのは「バーバラ・セクサロイド」と「好き好き大好き」。ヴァイオリンの色っぽい調べと男性の咆哮のような声と、指揮をするように舞う人の仕草が印象的だった。そして何と言っても純ちゃんの迫力。CDの歌声とは明らかに変わっていて、可愛らしさから一転して、よりドスが利いた恐ろしさを感じさせる瞬間の、ゾクッとする感じ。「可愛らしいアイドル」から「妖艶な女性」に化けるギャップと、「可愛らしいアイドル」から「情念の化け物」に変異するギャップ。そんな違いを感じさせられた。

戸川純 with Vampilliaが終わり、少しは聴けるかなと人間椅子のステージに移動すると、硬質な爆音がビリビリと体にぶち当たってきた。見上げればステージには風を受けながら演奏をする人間椅子と、興奮し拳を振り上げる大勢のオーディエンス。

このとき己は本当に純粋に、ただただ格好良いな、と思った。

何だろう、戻ってきた感覚だ。楽しい音楽をたくさん聴いて、自分のルーツの近くに戻ってきたようなしっくりした感覚。これが不思議だ。自分は人間椅子を聴くものの熱狂的なファンというほどではない。それなのに何故、こんなにしっくりとはまる感じがしたのだろうと思って気付く。あぁ。ハードロックも聴きたかったんだ。きっと。

ワジーの袴が風であおられ、フレアスカートのように綺麗に膨らんでいて、その袴の線のスラリとしたまっすぐさがいやに綺麗でびっくりした。

人間椅子から有頂天までしばらく時間が空くので腹ごしらえに混ぜそばを食べ、ビールを呑む。この日のビールは水のようにあっさりしていて実に呑みやすかった。外で呑むにはちょうど良いかもしれない。

そうしてゆったりと芝生に腰掛けながらラフィンノーズの演奏を聴きつつビールを呑んでいる背中で、多いに酔っ払ったらしいカップルがデスボイスで小突きあいをしていて怖かった。いや、本人達は楽しんでいるようだったのだが。ようだったのだが!!

腹ごしらえも終わり、有頂天のステージへ。始まりは明るかった空がみるみるうちに色を変え、ミラーボールが煌びやかに回り、終わる頃には真っ暗な夜に。涼しい夜風が汗ばんだ肌をすり抜けていって気持ちが良い。曲は「オードリー・ヘプバーン泥棒」「フィニッシュ・ソング」「アローン・アゲイン」のほか、新曲の「城」「monkey’s report(ある学会報告)」も! どちらも好きだが、特に「monkey’s report(ある学会報告)」は本当に嬉しかった! この曲は何度聴いても切なさで涙腺が緩む。まさか今年二回も生で聴けるとは……ありがとう、ありがとうケラさん!

有頂天の次は町田康率いる「汝、我が民に非ず」。前から二番目という素敵な位置で観られることができてとても嬉しい。町田康は前に観た時よりも痩せているように感じた。片手には歌詞を書いた紙を持ち、目をぎゅーーっとつぶって歌う。まだライブでしか聴いたことがないのにもう耳馴染んだ曲があって、早くアルバムを入手したいと切に思うばかりである。「貧民小唄」、歌詞カードを見ながらじっくり聴きたいなぁ。

「インロウタキン」でぎょろりとした目が見開かれ、ドキッとする一瞬も。迫力があった。怖かった!

最後は「THE END」。遠藤ミチロウのバンドである。思えば町田康の直後に同じステージで遠藤ミチロウを観られるってとんでもないな……。しかも一曲目はザ・スターリンの「虫」で、最後は「ワルシャワの幻想」。もしここで町田康がINUの「メシ喰うな!」を歌っていたら……と空想するが、流石にそれは出来すぎか。

「ワルシャワの幻想」が拡声器の音から始まるのは知っていたが、よくよく考えれば生で観るのは初めてだ。それはオーケンから得た知識であり、生で知ったものではないからである。

還暦過ぎ。最近の六十歳は若いとはいえ、こんなに叫べて、歌えるんだなぁ……。まだ己は半分しか生きていないが、もう半分生きてあんな風に格好良く活動できる人間になれるだろうか。

うん、目指す方向性は違えど頑張ろう、と思った。

そうして後で知ったのだが、文中で「若者」と表した「The 夏の魔物」のメンバーは己と同年代であった。その若者とはあくまでも、今日己が観て回った出演者と比較してのことであるが、いつまでも若者と思っちゃいられないなぁ、と自分自身に対して感じた次第である。

ゴトゴトとシャトルバスに揺られ帰路に着く。体は汗でべとべとで、足は流石に重くなっていた。しかし楽しかった。最高の夏の思い出ができた。ついに夏フェスを体験できて嬉しい。ありがとう、夏の魔物。楽しかったよ、夏の魔物!

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未分類2杯, ケラリーノ・サンドロヴィッチ, 初参戦, 有頂天, 非日常

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指でなぞると左側がザラザラしている。スッと投げられたそれは、降って湧いた宝物のように感じた。

有頂天の新譜「カフカズ・ロック/ニーチェズ・ポップ」に心を奪われたのが数ヶ月前か。特に「カフカズ・ロック」が大好きで、何度も何度も繰り返し聴いた。中でも好きなのが「monkey’s report(ある学会報告)」。明るい曲調と歌声により描かれる切なくやるせない物語がたまらなく、胸が締め付けられる思いがする。だから今日、アンコールでこの曲を聴けたとき己はきっと会場の誰よりも興奮したに違いない。思わず爪が刺さるほど、拳をぎゅっと握り締めてしまった。あんまり嬉しかったから。

有頂天は「カラフルメリィが降った街」「でっかち」「カフカズロック/ニーチェズ・ポップ」しかまだ持っていない。ケラさんと言うと有頂天よりも先に空手バカボンでその存在を認識した人間である。ライブに行くのも初めてだ。ほんのちょっと前にケラさんのツイッターでライブの開催を知り、もしかしたら「カフカズロック」の曲を聴けるかもしれない、と期待を胸にチケットをとったのだ。そして自分の念願は、望みどおり叶えられた。あぁ、生で! 「monkey’s report(ある学会報告)」を聴けるなんて!

また、別の理由でも今日この日のライブに行けて良かった、と思った。

昨日の日記を書いてから、己の腹の中では気持ち悪いものがぐらぐらと煮え続けていた。いや、正確には日記を書く前からか。書いたことに後悔はしていない。署名に協力をしてくれた方もいて、すごくありがたいと思う。だが、文章化することにより当時のつらさ、やるせない思い、怒りと憎しみが明確化され、それがどうにも頭から離れてくれず、ずっとしんどかったのだ。

暗闇の中、パステルカラーのライトを浴びて歌うケラさんの底抜けに明るい声。ポップで陽気な音楽。しかし、明るいだけじゃない歌詞。これらがステージから降り注ぎ、浸透した。三曲目では念願の「100年」、「墓石と黴菌」「世界」「幽霊たち」「ニーチェズ・ムーン」「懐かしさの行方」! それに、聴きたくて聴きたくてたまらなかった「monkey’s report(ある学会報告)」! アンコールを受けてステージから戻ってきたクボブリュさんがマイクを前に「学会の諸先生方!」と語り始めたとき、涙が出るかと思った。知らなかった、あの語りはあなただったのか! 何度もCDで聴いた冒頭の文句を生で聴ける喜びで、頭の中が真っ白になった。

あぁ、今日この日この場所で有頂天の音楽が聴けて良かった。

まだ聴いたことがなかった曲もたくさん聴いた。「君はGANなのだ」の勢いと、やわらかい色合いで光るライトの対比が印象に残っている。あと、後半でケラさんが「ビージー!」と叫んだことで始まった猛烈な曲。筋少で言えば「釈迦」か「イワンのばか」か、水戸さんで言えば「アストロボーイ・アストロガール」か、平沢進で言えば「Solid air」か。オーディエンスの爆発と熱狂が凄まじく、この曲のタイトルと成り立ちを是非知りたいと興味が駆られた。

MCは共謀罪の話に始まり、筋肉少女帯の話題が出つつ、有頂天のメンバーの変遷についても。このあたり、詳しくないので興味深かった。夏の魔物に出演する話では町田康の名前も出て、さらに追い出しの音楽も「INU」。素敵な音楽を生でどっぷり聴いた後に、ドリンクチケットと引き換えた発泡酒を呑みながらINUが聴けるなんて、何と言う贅沢だろう。フルコースを喰らった気分だった。

また、筋少ファンとして気になっていたのは「うるささ」だ。ケラさんはたびたび、今の筋肉少女帯はうるさいと言う。話を聴くに橘高さんのギターが好みでないらしい。しかしCDを聴いたところ有頂天も決してうるさくなくはない。賑やかである。自分は音楽は好きだが音楽のジャンルの違いをよく理解しておらず、自分の好きなものは好き、という漠然とした姿勢で生きているため、ケラさんがどのあたりを苦手としているのか、有頂天との違いは何かわからなかったのだ。それをいつか知りたいと思っていた。

念のため断っておくと、己はケラさんの発言に腹を立てているわけではなく、糾弾したいわけでもない。こちらの日記に書いたように、ただただ興味があるだけなのである。自分の好きな対象については何でも知りたい、そういうオタク気質を持っているだけなのだ。

結果、わかったかと言うと、今日ライブに行ったことで何となく理解した。なるほど確かに、有頂天ではギターがゴリゴリ言わない。代わりにベースが存在感を発揮しているように感じる。このあたりの音の違いかな、と言うことが何となくわかった。何だろう、種類が違うのである。双方別の音色を持っている、という話で、そこに好みの差が出るという話なのだ。

と言うと結局ジャンルの違いの話であるが、ジャンルの違いも肌で体験しないと理解できなかったのだ。

MCでケラさんが「アンコールを求められれば何度でもやる」と言い、オーディエンスによる鳴り止まないアンコールが起こり、二回も三回もステージに出てくれた有頂天。最後、ケラさんは笑いながら「何度でもやると言ったけど!」と言いつつも、また演奏をしてくれた。踊る観客、振り上げられる拳、朗々と響く明るい歌声。知らない歌詞を耳で追う。そのときばかりは頭の中が歌と音楽と歌詞でいっぱいになり、考えたくないことを忘れられた。いや、意識しないですんだ。腹の中で渦巻くものの存在を無視することができた。あの声を今日聴けて良かった、と繰り返し繰り返し思った。

雨の中。長靴を履いて辿り着いたロフトプラスワン。新宿ロフトと同じではないことに気付いた瞬間は焦ったが、慌てず地図を探そうと、邪魔にならないよう人通りの少ない道へ向かった先で偶然見つけた本来の会場。路上で開場を待っていると、隣のバーから有頂天の音楽が聴こえた。きっとそれは「良かったら帰りに寄ってね」というメッセージなのだろうが、まるで世間が己に寄り添ってくれているような喜ばしさを感じた。腹の中にはまだ嫌なものが渦巻いている。しかし、二時間半の間意識せずにいられた。それがこのうえなく嬉しかった。



未分類0杯, 初参戦, 特撮, 筋肉少女帯, 非日常

大槻ケンヂ生誕祭、ということで初めて参戦した特撮のライブ。ゲストは筋肉少女帯。冒頭のMCで、五十歳を迎えたことにより五十歳欝になってしまったオーケンに、五十歳も良いものだな、と思わせることが今回のライブの主題であると語られた。チケットはソールドアウト。会場は燃え上がり、エディからはオーケンへの感謝の言葉が贈られ、橘高さんは五十本の薔薇の花束を抱えて登場。アンコールではオーケンの顔写真がプリントされたバースデーチョコレートケーキが運ばれ、オーディエンスを含め、皆で記念写真を撮った。生誕祭にふさわしい、素敵なライブであった。

でも、自分はちょっと物足りなかったんだ。そうして、自分はやっぱり、ヒビワレメイクを施した大槻ケンヂが一番好きだということをつくづく実感したのである。

恐らく時機が悪かったのだ。己が筋少を知ったとき、既に筋少は凍結されていた。ライブを観てみたい、新曲を聴きたいと思いつつ叶わない状況にある中で特撮を知り、特撮を筋少の代替として手に取ってしまったのだ。それは特撮に対しても筋少に対しても失礼な行為であったと思う。何枚かのアルバムを聴いて、とても好きになった曲もあった。だが、どれも筋少とは全く違うもので、そのことに寂しさを感じていた。

筋少と特撮が全く違うのは当たり前のことである。演奏者が違って、作曲者が違って同じものが出来上がったら個性が無いのと同じことだ。だから自分が特撮を「違う」と感じたのは、同じボーカル・作詞者大槻ケンヂがいたとしても、メンバーによってその色が大きく変わる証拠に他ならない。また、それだけ違う色を「大槻ケンヂ」は彩ることが出来るのだ。だからこそ、二つのバンドがある意味がある。

それをよくよくわかっているのだが。始まりがそれだったので、未だに己は特撮を上手く受け取れない。今日のライブで聴けた曲。「5年後の世界」ならぬ「50歳の世界」、「文豪ボースカ」「ヌイグルマー」「林檎もぎれビーム!」「ヤンガリー」「バーバレラ」「綿いっぱいの愛を!」。やったー聴けた! ついに生で聴けた! 「文豪ボースカ」って、ライブだと後半が「何故だ何故だ何故だボースカ!」の繰り返しで終わるんだ、格好良い! うわー「バーバレラ」! 大好きなんだよこの曲、寂しくて切なくてやるせなくって! カラオケで何度も歌ったよ! 「林檎もぎれビーム!」たまらない! うわーマ太郎の声懐かしいなぁ! 「あいつらにだ!!!!」って皆で揃って叫ぶのは何て爽快なんだろう! 「ヤンガリー」ってこんなに格好良い曲だったんだなぁ……! って、感動したのだが、後半でゲストの筋肉少女帯が現れた瞬間、欲しいものはここにあった! と感じてしまったのである。

特撮と筋少の違いを見比べるのは面白かった。特撮のメンバーは定位置からあまり移動しない。まぁ、メンバー四人のうち、ドラマーとピアニストは楽器が固定されているので動きようが無いから当然の結果かもしれない。そんな中でたまにエディがマイクを片手にステージ中央にやってきてくれたりするとたまらなく嬉しくなる。そうだ! エディが上手前方にいたことに、最初驚いたんだ! これだってよくよく考えたら当たり前のことだろうになぁ。

「愛のプリズン」が格好良い曲になっていたことにびっくりした。あれ? 何の違和感もなく格好良いってどうなんだろう……と困惑もした。曲中、オーケンが腰をぐるぐる回していたのだが、それが父が毎朝やる腰痛体操そっくりだった。

五十歳になってからオーケンは夜中に足がつるようになったそうで、今までスルーしていた薬局の看板に反応するようになったそうだ。披露されたエピソードにわははと笑いつつ、足がつるようになっても、こうしてステージに立ってくれていることがとても嬉しいと思った。

五十歳を迎えたオーケンは、二十代の頃の自分が一番綺麗だったと冗談まじりに語る。確かに二十代のオーケンは美しかった。長い髪に、シュッとした輪郭。どこか危うげなところがあって、そこがまた綺麗だなぁと過去の写真を見るにつけ思った。でも自分がオーケンを知ったときには既にスキンヘッドであり、初めてライブで見たときにはプロピアモヒカンをつけていた。それが最高に格好良かったし、今の白髪のオーケンも最高に格好良い。でも、やっぱりヒビが入っている姿が一番好きなんだな、と思いつつ。まっさらな顔のオーケンを眺め、色々な顔を持って活動出来ている現在を喜び、そうして祝福したのである。自分はきっと特撮には夢中になれない人間だが、オーケンの中に特撮という要素はいつまでも輝かしくあって欲しい。ソロと電車と筋少と空手バカボンと、その他数々の色々なものを抱きながら活動を続けて行って欲しい。きっとそれが、オーケンがオーケンらしく、生き生きと活動できる術であるのだから。と実感したのであった。



未分類3杯, M.S.SProject, 初参戦, 非日常

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巡り合わせとは不思議なものだ。まさか、パシフィコ横浜国立大ホールという大きな会場で、五千人の観客に見守られながらゲームに勤しむ男四人を見つめることになろうとは思わなかった。

このとき己は、あれ、もしかしてこれってコンサートじゃなくってゲーム実況のイベントだったのか……? と若干混乱していた。

きっかけは「あろまさんぽ弐」を買ったこと。そしてその感想をサイトに載せたこと。ふと手にとって買った本がちょっと変わっていて面白かったので、軽いノリで感想記事を載せたらびっくりした。いきなり訪問者数が爆発したのである。

正直に言おう。一瞬炎上したのかと思った。

ただ、様子を見たところ好意的な受け止められ方をしているようだった。M.S.S Projectを知らない人間が「あろまさんぽ弐」を読んだことを喜んでくれたらしい。なるほど。これはあれだな。筋肉少女帯が夏フェスなどのイベントに出たとき、筋少ファン以外の人が「筋少面白かったー」と気軽にツイートした途端、筋少ファンが怒涛のようにRTしまくったりお気に入りに入れまくったりして、ツイートした人をびびらせるというあの現象と同じことが起きたのだな、と納得。わかる。確かに知らない人が見てくれるってのはとても嬉しい。

そしてその後は落ち着き、記事のスクリーンショットが転載されて「あちゃー」と思ったりしたこともありつつ平和に日々が過ぎた。ただ、検索に引っかかりやすくなったのだろうか。M.S.S Project関連で何かしらの動きが起こるたび、うちのサイトに来る人が増えるという謎の現象が起こるようになった。そのため何となく、M.S.S Projectという存在を意識する日が続き、ある日検索キーワードによってライブが行われることを知ったのだった。

ここで決断した。よし、ライブに行こう。

当時、己は「あろまさんぽ弐」「あろまさんぽ参」しか読んでいなかった。動画を見ていないため彼らについてもよく知らない。一番馴染み深いあろまほっとすら後ろ頭の印象ばかりである。後ろ頭の印象って何だよ。そんな中でじわじわと興味が湧いてきていた。そこへライブ開催の情報。だったらもう行くしかない。生で観られる機会を逃す術があるものか。

どんな音楽をやる人達なのか知らずにチケットを取るってのも妙な話だ。順序が逆になりつつも新譜を購入してみると、それは打ち込み系のピコピコ音楽とロックと初音ミクがごっちゃになったなかなか楽しいアルバムだった。とすると興味が湧くのはこの音楽をライブでどのように演奏するかということで、打ち込み系というと己は平沢進くらいしか知らないが、あの人はライブ用にアレンジした楽曲を流しながらレーザーハープを操って視覚的に盛り上げ、ギターと圧倒的な歌声で魅せてくれる。M.S.S Projectはどのようにするのだろうか。うーん気になる。

アルバムは結局「M.S.S.Party」と「M.S.S.Planet」の二枚だけ聴き込んだ。現在発売されているのは四枚なので、聴こうと思えば全部サラーッと予習することは出来そうだが、その聴き方ではもったいなく感じられたのである。まぁ、ライブで知らない曲に出会うのもそれはそれで楽しいので良し。気に入った曲に出会ったらまたそれを買えば良いのである。

と思っていたら。コンサートが始まると思っていたら。広いステージの中央に置かれたテーブルに寄り集まってゲームを始めたからびっくりした。

ゲームはモンスターハンター。やったことがないのでよくわからないが、グラフィックがとても綺麗だった。何せ自分はプレイステーションで時代が止まっている人間なので。モンスターの鱗とかすげー。

それにしてもまさかゲーム実況なるものを初めて見るのがパシフィコ横浜になるとは夢にも思わなかったぜ……。

ちなみに席はかなり良い席だった。自分の座席を確認した途端、来年分の運まで使いきってしまったんじゃないかと思い、若干頬が痙攣した。やばい。ちょっと興味を持って来た程度の人間がここにいて良いのか。どう考えても場違いじゃないのか。うわあもっと早く来て物販でペンライト買っとけば良かった……と後悔した。

観客は若い女性が多く、M.S.S Projectを模したぬいぐるみや缶バッヂをつけている人や、般若の面をつけている人がいて楽しげである。当たり前のこととわかっているのに、どのミュージシャンのライブに行っても毎度毎度感嘆してしまう。この会場にいる人全てがM.S.S Projectを好きなんだなぁ、と思って。好きな人で凝縮された空間である。何だかとてつもないなぁ。

そんな中で「おそ松さん」の十四松のコスプレを見かけたときはものすごくびっくりした。思わず二度見した。
※追記 …てっきり十四松のコスプレかと思ったのだが、KIKKUN-MK-IIのイメージカラーである黄色のパーカーを着ていた方だったそうである。勘違いをして申し訳ない。お詫びして訂正いたします。

ステージにはテーブルと椅子が並べられ、その奥には「MSSP」のロゴが入ったレンガの壁が立っており、さらに後方には巨大なスクリーンが吊り下げられている。こういう舞台セットを見るとわくわくしてたまらない。

そして開演。M.S.S Projectの四人が森の中を散策するムービーがスクリーンに映る。類推するに、一つムービーを撮っていて、ツアーの会場ごとに違うアテレコをしているらしい。今回は横浜が会場ということで、中華街とシュウマイを推した内容になっていた。

ムービーが終わり、歓声の中現れたのがKIKKUN-MK-II。ムービーと同じ白いローブを羽織っている。この人は普通の人間のように見える。いや皆普通の人間なんだけど。綺麗な顔立ちの人だなぁ、と思って見ていると、舞台袖から覆面が転がり込んできた。マジで文字通り転がり込んできた。

うわーーー本当に覆面だーーーーー! よくわからない感動をしてしまう。あの本に載っていた覆面の人が本当に覆面で現れた! しかも喋ってる! よく喋れるな! そんでもって登場のタイミングを間違えたらしい! 一回袖に戻ってまた転がり込んで来た! アクティブだな!

KIKKUN-MK-IIとeoheohの自己紹介が終わり、次に現れたのは般若である。暗闇の中から真っ白な般若の面を被った人がスキップしながら登場してきた。おおう本当に般若だ般若がスキップしてるよ……動作はキュートなのにめっさ怖いな……。本のイメージと目の前の人物のイメージが微妙に重なるようで重ならない。そうだ、うん。この人確かに般若なんだけど、やっぱ後ろ頭のイメージが強いから正面から見るとピンと来ないんだ。なるほど……。

最後に現れたのがFB777、だったかな? もしかしたらあろまほっとと順番が逆かもしれない。この人はサングラスをしているだけなのでとても人間らしい。KIKKUN-MK-IIと並んでいると安心感がある。

四人揃ったところで寸劇が始まり、その流れでゲーム実況が行われることが発表されたのだった。盛り上がる会場! 度肝を抜かれる自分! そっかゲーム実況もやるんだっていうかもしかしてゲーム実況がメインなのか!? あれーーーー!?

で、冒頭に戻るのである。ゲームを実況する、というよりも、ゲームをしながらトークをする、といった方がピンと来るかもしれない。スクリーンは五つに分割され、一番大きい中央のマスにゲーム画面が映し出され、あとの四つにゲームをする四人の顔が映る。映るといってもメンバーの二分の一は顔が隠れているのであるが。

わいわいしながらゲームを進める四人に歓声や応援の声が起こる。このゲームを知らないので己はイマイチ乗れなかったが、友達の家で友達がゲームをやる姿を観ながら、皆であーだこーだわいわい言っている感じに近いように感じられた。ちょうど数ヶ月前、友人宅でロックマンをやりながら酒を呑んだことがあった。そのときの雰囲気に似ている。

このままゲーム実況だけでライブが終わったらそれはそれで面白いなぁ、と思っているとボスを倒してゲームは終了。ついにお待ちかね、コンサートタイムになると発表された。おおう。演奏あった! 良かったーーー。

ステージの準備に時間がかかるため、メンバーは退場。代わりにスクリーンに映像が映し出された。横浜のヒーローを作る、というお題でメンバーそれぞれが描いたイラストにメンバーが言いたい放題言う、という内容だった。これ、実にありがたかった。対バンのライブに行くと転換の時間が何より苦痛で、ゆえに己は対バンライブにはあまり行かないのだが、こうして空いた時間まで楽しませてくれるのはとても嬉しい。隅々まで楽しませようとしてくれるサービス精神に感嘆する。

ちなみにKIKKUN-MK-IIはカイジ風の中華一番、FB777は頭がシュウマイ、耳がプリンアラモード、胸毛はナポリタンで、ドリアを差し出すヒーローを作り、eoheohは船を模した正統派ヒーロー、あろまほっとは神奈川県の形をした犬のような横浜県を作っていた。また、eoheohはフォトショップを活用して背景に七色の集中線をつけていたのだが、それについてずるいとペイントしか持っていないメンバーになじられていた。

さて、ムービーは終わったのだが、ステージは殺風景なまま。楽器らしきものはどこにもない。打ち込み系だからだろうか。しかしキーボードすらない。どのように進行するのだろう。と思っていたら、レンガの壁が動き出し、門が開くように空間が広がった。焚かれるスモークの奥にはベース、ドラム、キーボード、ギター!

人が増えた!!

サポートミュージシャンの登場である。中央にはギターを抱えたKIKKUN-MK-IIに、ショルダー・キーボードを構えるFB777。左右には太鼓を前に、バチを持つeoheohとあろまほっとの二人。始まったのはちょっと和風のテイストが入っている「Shadow Hearts」! なるほど、それで太鼓なのか!

eoheohとあろまほっとはパフォーマーの位置づけらしく、バチは振っていたが音を鳴らしてはいなかった。空間には初音ミクの歌唱が響く。生演奏出来るところは生演奏でやるようだ。ちょっとこれは予想外。格好良いなぁ。

二曲目は最初、何の曲だかわからなかったが「幾四音-Ixion-」だった。CDではかなり声を加工しているこの曲を生声で歌いきっている。それだけでも印象が違うのだが、曲もバンドで演奏するのに合うようにアレンジされている。ちょっと歌いにくそうにしているのが気になったが、何よりアレンジの違いが楽しかった。

「Arrival of Fear」もKIKKUN-MK-IIとFB777による歌唱で、eoheohとあろまほっとはパフォーマンスに徹していた。ヒュンヒュン回すと文字や絵柄が浮かび上がる光る棒や、煙を吐き出す銃を構えて終始会場を盛り上げてくれる。光る棒をヒュンヒュン回しているとき、eoheohは縄跳びを飛ぶような動作をしていて、そのコミカルな動きが妙に印象に残った。

そういえば、KIKKUN-MK-IIもFB777もアイドルのような衣装で、eoheohもサングラスに覆面をしつつも帽子を被りいかにもステージ衣装といった様子だったのだが、あろまほっとだけステージ衣装らしくないピンクのシャツだった。一人だけ普段着として着られそうな服である。ピンクのシャツを着て光る棒をヒュンヒュン回しながらステージを歩き回る姿はどこかキュートな感じがするのに、顔は般若で何回見ても怖いのが異様だった。

「Phew!」の前に、「これはゾンビの曲です」といった前置きが入った気がする。わりとのどかなイメージの曲だったが、ゾンビ曲だったのか……。

楽しかったのが「ENMA DANCE」。これこれ! この曲好きだから演奏してくれて嬉しかったなぁ。KIKKUN-MK-IIが「踊れ!!」と叫んだ瞬間、会場が沸き立ち跳ね上がる。照明演出も素晴らしかった。この曲に限らず、カラフルな光線がステージと会場を色とりどりに染め上げて、さらに観客の振るペンライトが彩りを添える。華やかだったなぁ。

次の曲は知らない曲だったが、一発で覚えることが出来た。「きっくんのテーマ」とのことで、会場のペンライトの色が黄色一色に染められる。KIKKUN-MK-IIのイメージカラーのようだ。そしてアップテンポのノリノリの曲が始まり、「きっくん! きっくん!」と大合唱! すげー楽しい! この曲が入っているCDを後で買おう。

間奏ではメンバー紹介が入り、サポートメンバーを一人ずつ紹介。ベーシストは何故か下痢であることをやたら強調されていた。また、あろまほっとによるコールアンドレスポンスも。「女子のみなさ~ん!」と大声で呼びかけると会場が応える。何故かeoheohも応えメンバーに突っ込まれる。「男子のみなさ~ん!」と呼びかけると会場の男性陣が応え、またもeoheohも応え、「お前の性別は何なんだよ」とメンバーから突っ込みが入る。

さらに、「眼鏡のみなさ~ん!」と呼びかけ、眼鏡人口の多さが確認される。最後、「出会い厨のみなさ~ん!」というおいこらちょっと良いんかそれ、という呼びかけにも会場はレスポンスを返し、あろまほっとによって下ネタが突っ込まれた。おっさんじゃないですか。

この後だったかな?「僕ときっくんがホラーゲームをしても明るくなっちゃうんですが……」というような前置きとともに曲が始まった。これは知らない曲である。スクリーンには古びた洋館が映り、一度退場していたeoheohらしき人物は巨大な鳥の嘴がついた仮面をかぶり、あろまほっとは黒いマントを羽織ってカメラを構えて客席に下りてきた。あろまほっとは手にしたカメラをeoheohに向けながらじりじりと移動して行った。もしかしたらゲームを再現した演出だったのかもしれない。

本編最後はアルバム表題曲の「M.S.S.Party」! アルバムの中でも抜きん出て明るいというか、何でこの曲だけこんなにぶっ飛んでるんだろう、と不思議になる曲である。無論ライブにぴったりでコーラスでは大盛り上がり。いやー拳を振り上げて叫ぶって楽しいなぁ!

アンコールの三曲はどれも知らない曲だったが、一曲目は「M.S.S.Party」に負けず劣らず異色な曲で、誰の作曲だったのかが気になる。何となくFB777っぽくない感じはする。そういえばアンコールだったか本編だったか忘れたが、ホラーな曲でeoheohが被っていた鳥の嘴のマスクを、あろまほっとが般若の仮面の上に被っていたことがあり、それが異様に怖かった。どんな和洋折衷だよ。

アンコール二曲目は会場の全員が青いペンライトを振り、幻想的な空間が作られた。やっぱりCD全部聴いておけばよかったなぁ、と若干思いつつ最後の曲へ。これも前述の通り知らなかったが、演奏前にタイトルが発表されたので把握することが出来た。ここにいる皆がMSSPだよ! という思いを込めての「We are MSSP!」である。最後にふさわしい明るく盛り上がる曲で、「M! S! S ! P!」」とコールするところが非常に楽しかった。この曲だけ聴くとまるでアイドルの曲のようである。でも全体を通して見るとアイドルって感じじゃあないから面白い。かと言ってロックって感じでもないのだが。何と形容するのが近いのだろう。

演奏終了後、サポートメンバーも全員そろって横一列に並び手を繋いで深々と頭を下げる。メンバーも観客も皆楽しそうで、ステージを立ち去りがたいように見えた。自分もとても楽しかった。

生でM.S.S Projectを観てみた感想としては、皆が和気藹々としていて、大学生のようなノリがどこか懐かしく、それでいてサービス精神がたっぷりなのが魅力だなぁと思いつつ、やっぱり般若が怖かった。うん。まじまじと見てみたけどやっぱり怖いな。そして頭部をすっぽり布で覆った状態であれだけ動き回れるeoheohの肺活量ってすごい。苦しくないのだろうか。

ライブについては、今まで自分が行っていたライブと全く違った異色の空間で、自ら赴いていながら何なのだが、「迷い込んだ感じ」がドキドキした。あと、よく考えたら普段行くのは四十代後半から六十代のミュージシャンのライブばかりなので、若い人が跳ね回るハツラツとした姿も新鮮だった。演奏をしない人達がいかにして場を盛り上げるか工夫している姿も面白い。

欲を言えばもっと! もっと曲を堪能したかった。特に「SLIVER」が好きだからあれを聴きたかったなぁ。無論、M.S.S Projectの魅力の一つはゲーム実況にもあるのだろうが、曲をがっつり楽しめるライブもやって欲しい。今後やってくれないかな。

とりあえず、あと二枚のCDを買おう。ライブもまた、次回開催の際には参戦したいものである。実に楽しい異空間だった。