未分類0杯, 筋肉少女帯, 非日常

楽しかった。嬉しかった。何が嬉しいって、オーケンの声が完全復活していたことだ。オーケンが声帯ポリープの除去手術を受けたのは今年の五月。そして八月の弾き語りライブではまだ高音を出すことに難儀していて、「週替わりの奇跡の神話」のラスト、「不変の」と叫ぶ箇所で声が出ずに悔しそうにしていたことを昨日のことのように覚えている。

あれから三ヶ月。オーケンは完全復活していた。MCでも出し惜しみすることなく声を響かせて煽り盛り上げ、全編声を張り上げて歌い通してくれた。昨今のライブでは、ライブの途中にオーケンが離脱し、メンバーが代わりに歌唱することが定番となっていたがそれも無く、全て! 歌ってくれた!

自分が記憶する限り、オーケンが途中でいなくなりメンバーが歌うようになったのは四半世紀のツアーからだ。とすると三年くらい前かな? あのときオーケンは暗黒天体ラジャサンに地球が妊娠させられるもうおしまいだ~というようなことを叫んでステージから逃げ去っていき、メンバーもオーディエンスもぽかーんとしていた。あのMC面白かったなぁ。

オーケンの咽喉はとにかく絶好調で、「孤島の鬼」の高音部も、昨今ライブでは低く歌うことが多かったのに声を響かせてくれ、さらにおどろおどろしたドラムがドロドロ響く中で、言葉に形容しがたいゾッとするような悲鳴を発し、「孤島の鬼」という楽曲の世界観を広げる演出もしてくれた。あれは実に格好良かった。

ステージのドラム台へと続く階段にはオーケンの歴代特攻服が並べられ、アンコールではメンバーがオーケンの特攻服を着て現れる特別サプライズも! しかしそのときオーケンだけは特攻服を着ておらず、何かのインタビューで着ていたらファンからの評判が悪かったという赤と白のマーブル模様のシャツを着ていた。そしてそのまま孤島の鬼を歌った。

セットリストは「ワインライダー・フォーエバー」まではベスト盤と同じ曲順で、サプライズが「タチムカウ」、後はベスト収録曲と、シングル「人から箱男」の構成で、実に美味しかった。「踊るダメ人間」や「イワンのばか」も好きなのだが、毎回の定番曲が無いとその分新鮮な曲が楽しめるので嬉しくなってしまう。


めでてぇな?
仲直りのテーマ

トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く
ワインライダー・フォーエバー
タチムカウ~狂い咲く人間の証明

人から箱男
枕投げ営業
週替わりの奇跡の神話

新人バンドのテーマ
パノラマ島失敗談
蓮華畑

恋の蜜蜂飛行
混ぜるな危険
ムツオさん

ツアーファイナル

~アンコール~
孤島の鬼
中2病の神ドロシー
釈迦


開演SEは「オーディエンス・イズ・ゴッド」で、わっと盛り上がったところで新曲「めでてぇな?」へ。ちなみに今回は番号が八百番台で、開演後はそれなりに前の方に行けたもののオーケンとおいちゃんはほとんど見えなかった。しかし橘高さんをガン見しつつ内田さんを見られたので満足である。橘高さん格好良かったなぁ。

そうそう「めでてぇな?」ではスーツ姿のエディが前に出てきて、内田さんと橘高さんの間で踊ってくれた。スーツ姿のエディもビシッとしていて格好良かった。

そういえば今回の橘高さん、いつも持っている黒と白の水玉のフライングVのほかに、水玉の変形ギターを持っていた。年季が入っていたように見えたが昔使っていたものだろうか。ちょっと気になる。

「トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く」「枕投げ営業」「週替わりの奇跡の神話」「パノラマ島失敗談」「恋の蜜蜂飛行」が聴けて嬉しかった。トリフィドは何回聴いても良い。「枕投げ営業」は大好きな一曲で、てっきりワインライダーの次にやるかと思ったらタチムカウが来て肩透かしを食らいつつも、タチムカウは己にとって思い出の一曲。浪人生だった頃、これを心の支えに日々を生きていたのだ。あの頃の苦味を思い出し、頑張らんとなぁ、と奮い立った。

「枕投げ営業」は本当にもう好きで好きで好きで。先日のオーケンのサイン会でファンレターを渡したのだが、つい枕投げ営業が好きすぎて枕投げ営業のことばかり書いてしまった。もう大好き。この力強さと勢いの威力。歌詞もほとんど間違っていなかったので大満足。ありがたい。

「週替わりの奇跡の神話」はもう、前述の通りである。嬉しかった。オーケンの完全復活にぐっと来てしまった。だって誰よりもオーケンが嬉しそうだったのだから。

「新人バンドのテーマ」は、昔聴いたときよりも声がやわらかく膨らんでいるように聴こえた。より語りかける調子になっているというか。何度も歌ったことでこなれて、歌詞をなぞるのではなく、目の前の誰かに語りかけるような。そんな温かみを感じた。

「恋の蜜蜂飛行」も大好きな一曲である。しかし! 大好きなだけに! この曲にコールアンドレスポンスは入れないで欲しい! と思った。ブンブンブブブン! の勢いのままに駆け抜けたいので、中盤で「ドン、ドン、ドン、ドン」とドラムの拍がゆっくりになり、学園天国のヘイヘイコールが入るのがとてももったいなく感じるのである。どうかここは、蜜蜂の飛行を止めずに駆け抜けさせて欲しい。

「ムツオさん」ではEXシアター六本木ならではの演出! 天空にきらめくミラーボールが美しかった! くるくると回る照明は最初ピンクと青、次に赤と緑に色を変え、色とりどりに舞台を染める。かと思えば赤一色で塗りつぶされ惨劇を示唆する演出が光り、ディスコ調のリズムに乗り、楽しく踊りながら不穏な物語を楽しんだのであった。

アンコール一曲目は「孤島の鬼」。格好良かった……実に格好良かった……ただ欲を言うならば、再録版と同じように、最後の盛り上がり部分をやって欲しかった。ドラムで締めてバーンと終わるのも格好良いが、エディのピアノの調べが静かに響き、終わったと見せかけたところで「鬼!!」というシャウトと共に爆発するあの瞬間がたまらなく好きなんだ。あれの素晴らしさを知ってしまった手前、それが無いと物足りなさを感じてしまう。またいつかあの格好良さを堪能したいなぁ。

最後の一曲は「釈迦」。ちなみに今回は「割れた娘の頭から飛び散るノウズイ 屋根の上のアンテナから飛び散る電波が」という歌詞だった。

MCでは再結成十周年を迎えられた感謝の言葉と、思い出話が語られた。アルバム「最後の聖戦」を作った頃、オーケンはプロレスラーの山本小鉄さんに御飯に誘ってもらい、麻布十番で焼肉をご馳走になったことがあったと言う。そのときオーケンはメンバーでも無く誰よりも先に山本さんに筋少を脱退しようとしていることを打ち明けたという。悩んでいたときに、あの厚い胸板に相談したくなったそうだ。

それに対し山本さんはオーケンの意見を受け入れ、同時に「メインボーカルとして、メンバーの再就職先を考えなければいけない」と語ったという。当時のオーケンは、とはいえバンドですから、と重く受け止めることはしなかったが、今になって! もしオーケンが、万が一ゴルゴ13に狙撃されたときのために! メンバーの再就職先を考えたという! 曰く!!

おいちゃん …ハムの人(日本ハム)
うっちー …寺男になる
ふーみん …カリスマ編み物師
エディ …カリスマ編み物詩2

おいちゃんはハムの人になることを静かに了承し、内田さんは「それは就職じゃなくて出家だね」と言いつつ了承し、橘高さんは両手をバババババッと動かして高速で編み物をする様を表し、エディは「俺編み物したくねえよ」と突っぱねた。

そしてエディの「俺は手先が器用に思われるけどりんごの皮も向けない」という発言から、オーケンはりんごが苦手で食べられない話になり、それを知っている内田さんにより、中学の頃給食でりんごが出て、デザートのりんごを皆がシャクシャク食べているときに、りんごを食べるシャクシャク音をオーケンがものすごく嫌がったため、わざとクラスメイトがオーケンの近くでりんごを食べる……というエピソードが語られた結果、長谷川さんのメンバー紹介が忘れられた。

しかしメンバー紹介を忘れたことに気付いたオーケン、曲中に長谷川さんに後でちゃんとすることを伝えたところ、長谷川さんはニコッと笑ったらしい。微笑ましいことである。

「最後の聖戦」のくだりで、「残弾数ゼロってひどい歌詞だね」と笑うオーケンに、「ひどいよ」とほがらかに突っ込む橘高さん。再結成後の思い出を語るとき、楽しかった、あっという間だったという言葉が出てきて、さらに十年後二十年後の先の話も語られた。五十肩に苛まれストレッチに出向いたオーケンが七十歳の未来を語る。そのときは蓮華畑みたいな曲ばっかりやるぜ、と冗談めかしつつ、ファンとしてはそのように屈託無く未来が語られる現状がたまらなく嬉しい。筋少のライブに通い出して十年、二十歳から始まり三十歳になり、二十年後は五十歳。今のメンバーと同い年になりながらも筋少が観られる人生はきっと幸せに他ならない。どうかこれからもその幸せが続きますように、と願いたい。最高のライブであった。



未分類4杯, 筋肉少女帯, 非日常

今日は豪華な一日だった。昼には筋肉少女帯のインストアイベントに行ってトークを楽しみ、夜にはオーケンのサイン会に行って短いながらも至福の一時を過ごした。勤労感謝の日は筋少感謝の日に改めても良いのではなかろうか、と勝手に思う。

インストアイベントの開場はタワーレコード新宿店。番号が後ろの方だったためステージのメンバーを直接観ることはなかなか難しかったが、モニターのおかげで充分に楽しむことが出来た。

イベントが始まり、ステージにメンバーが登場。並び順はライブと同じで向かって左からおいちゃん、オーケン、うっちー、ふーみん。会場にはアルバム「再結成10周年パーフェクトベスト+2」が流れていたが、オーケンの「筋肉少女帯うるさいから止めてくださ~い」という声により止められた。BGMに負けてトークが聞こえなくことへの配慮とはいえ、バンド本人が「うるさい」と言うのはなかなか面白い。

イベントの開始時刻が正午だったため、ミュージシャンにとっては朝のようなもの、普段だったら寝ている、早くからようこそおいでくださいました、とご挨拶。オーケンは三十分前には到着していたが、内田さんは開始直前ギリギリに到着したという。ちなみにオーケン、早めに来たもののお腹が空いたため、近くの飲食店で食事を摂ったのだが、衣服と「イスラエルの護身術」にまつわる本が入った袋を失くしそうになったとのことである。そこで「護身術の本を買ったのに護身が出来ていない」とツッコミを入れられていた。

最初のトークは再結成十周年について。十周年を迎えた感想をメンバー一人一人に求めるオーケン。「あっという間だった」と答えるおいちゃんの後、「光陰矢の如し」とオーケンは答え、「あっという間を言い換えただけじゃないか」と橘高さんから鋭いツッコミが飛ぶ。

では、印象に残った話ではなく、特筆するでもないことを上げましょう、とかえって難しい話題にシフト。そこで橘高さんが「あった!」と声を挙げ、四年前の十二月二十三日のライブは定刻きっかりで始まったことを語った。それに対しオーケンは「筋少はわりと時間通りだよね」と話す。ちなみにそのときのライブは定刻通りを越えて二分早く出そうになったそうだ。ただ、押す分にはいくら押しても問題ないが、チケットに開演時間が印字されている手前早く始まるのは問題らしく、二分待ってから出たそうだ。

ここから、でも早く始まる方がお客さんもびっくりするよね、ロックだよねという話に。開場して入場したら既に最後の一曲が終わるところはどうだろう、長谷川さんがドジャーンって締めて、エディは既にステージからいなくなっている、オーケンもいつも早めにはけるからステージにはいなくて、ちょうどおいちゃんうっちーふーみんがいつまでもステージに残ってわちゃわちゃしているところ! あなた達いっつも遅くまで残っているけど何をしているの? と熱く語るオーケン。開場前、皆観てなくてももちろんフルで演奏しているからね! とふーみん。で、音だけライブハウスからちょっと漏れ聴こえているの、とおいちゃん。

また、曲の一部だけ演奏するのはどうだろう、ギターソロの直後で終わるとか、とオーケン。それに対し「ギターソロの前で終わるのは?」と橘高さんが言うと、会場から「えーーーー」と声が上がり、「あなたがそれ言っちゃだめでしょ!」とオーケン、「皆を試したんだよ!」と笑う橘高さん。おいちゃんが「全部メドレーにするのはどうだろう」と繋ぎ「それは……大変だ……」と誰かが口にした。

お客さんにも新しいことをして欲しい、ダメジャンプのとき、両腕でバッテンを作ったあと、くるっと回って飛んで欲しいとオーケンから無茶振りという名のリクエストが。でも、それで退場するはめになる人が出てきたら悲しいね、とも。あと、折りたたみで前のめりになってからそのまま勢いに乗って一回転して欲しいというリクエストも出た。

折りたたみでは橘高さんが熱く語っていた。曰く、筋少やその世代のバンドのオーディエンスは、折りたたみのときに体を反る方に命を賭けるが、筋少よりも若い世代のバンドのオーディエンスは前傾姿勢になる方に命を賭けており、よって最前列の客などは、本当に前転しそうになるほど前のめりになるという。そうなのか、知らなかった。

さらにそこに、前回りじゃなくて逆上がりをして欲しいと内田さんがリクエストをし、「柵どうするの!?」「バーをすごく高くしないといけないよ!?」とオーケンとふーみんからつっこまれていた。

折りたたみトークでさらにノリノリになる橘高さん。もし自分がカツラだったら、折りたたみでぐんぐんやってるときに思いっきりカツラを飛ばしてびっくりさせたい! もし自分がカツラを必要とする事態になったら、メンバーにも二年くらい内緒にしていきなりカツラを飛ばして、あたかもカツラが飛んだことに気付いていないフリをしたい! と語り、「えっこれどう反応すれば良いの?」とばかりに他のメンバーがたじろいでいるのが面白かった。その後橘高さんは「これは地毛だけどな!」と念のため強調していた。

カツラじゃないけど、眼鏡を落とした人いる? とオーケンが問いかけ、筋少椅子のライブでわじーが眼鏡を落とした話を橘高さんが披露。わじーが眼鏡を落としたのはちょうどギターソロに入る手前だったが、眼鏡を拾ってかけ直すまでの時間も問題なく繋がり、このあたりは流石熟練のバンドだね、と語られた。

ここからライブ中のアクシデントの話題に。十年間でアクシデントってあった? とオーケンが問いかける。メンバーはうーんと考えるがこれといったものが出てこないあたり、何かしらのアクシデントはあっても問題なく対処できたようだ。そんな中、オーディエンスから「マイクを落とした!」という指摘が入り、いつかのライブで「小さな恋のメロディ」の最後の最後、「きっと地獄なんだわーーーーー!」と叫ぶところでオーケンがマイクを取り落としてしまったハプニングが振り返られた。橘高さんが「あれはわざとだったの?」と冗談めかして尋ね、「あれは成海璃子ちゃんも観に来てくれてたからそんなことしないよう」とオーケン。

内田さんがベースを落としたこともオーディエンスから指摘が入る。ストラップが切れたそうで、これはよくあることらしい。また、この流れで内田さんが床に転がっていた話も。ある日の名古屋のライブハウスは空調の故障か何かが原因でステージに酸素が供給されず、内田さんは酸素を求めて床に転がり、長谷川さんは酸欠で鼻からみるみるうちに真っ赤になり、橘高さんはそれを目撃し、おいちゃんは背後のエディに酸素を全部吸われしんどかったと冗談めかして語っていた。オーケンは呼吸が出来ないのに歌は歌えたことについて、「あれは死んでたのかもしれない」と言っていた。

アクシデントつながりで、オーディエンスに対し「救急車で運ばれた人いない?」「眼鏡割れた人いない?」「会場間違えた人ー!」という問いかけも。救急車で運ばれた人と眼鏡が割れた人はいなかったようだが、会場を間違えた人はいたようだ。ちなみにオーケンは今日、マネージャーと連絡が着かず、会場があやふやだったのだが、「たわー……」という曖昧な記憶を頼りに勘で来たら無事辿り着いたそうだ。辿り着いてくれて良かった。

何がきっかけが、ジャンプアニメの主題歌を担当したバンドの人が、知人のギターを勝手に売って逮捕された話に。「バンド界隈だとよくある話だよね」としみじみ語られ、おいちゃんの布袋モデルのギターがオーケンの家にあり、何かの写真にオーケンがそのギターを持っている姿が写っていたという。そしてせっかくならおいちゃんは布袋モデルのギターを持ってライブに出ようよ! とオーケン。ふーみんは高見沢さんの天使ギターを借りて! と振ると、橘高さんが「あれ持たせてもらったことあるけど重いんだよ!」と言っていた。

そしてオーケンうっちーふーみんは坂崎さん、桜井さん、高見沢さん、おいちゃんは布袋さんになってメリーアンを演奏しよう! とオーケン。おいちゃんが「何で布袋さんなの!」と笑い、「布袋さんもメリーアンをやりたかったかもしれない!」と笑いが起こる。また、オーケンは内田さんに「ちゃんとヒゲつけてね」とリクエスト。

じゃあ、筋少でやりたい曲ってある? とオーケン。やってない筋少の曲でも誰かのカバーでも、とメンバーに振り、自身は「S5040」をやりたいとオーケン。やりたいが、ライブにおいて司会進行の役割も持っているオーケンとしては、あれをライブのどのタイミングで入れたら良いかわからず、やりにくいらしい。

そんな中でアルバム再現ライブの話も。アルバム再現ライブをやってみたいが、あれはMCはどのタイミングで入れるのか? そもそも他のミュージシャンのアルバム再現ライブではMCはやるのか? ちなみに陽水さんはMCをやるらしい。

ももクロのアルバム再現ライブはすごいらしい。全身覆面の衣装のアルバムでは全身覆面でライブをやりきったそうだ。すごい。それはすごい。そこから「筋少も仮面を被ってライブをやったらどうか」という話になり、おいちゃんが「そしたら仮面少女になっちゃうよ」と言うと「我々は少女じゃないから仮面おじさんだよ」とまさかの返し。その流れで「けっこう仮面」はどうか、キューティーハニーよろしくキューティー筋肉少女帯はどうか、キチガイ筋肉少女帯はどうか、などなかなかひどい話になり面白かった。

全裸だの女装だのの話で盛り上がる中、おいちゃんが「そもそも俺スカート履いてたよ」と有頂天時代の話を語りだす。スカートを履き、カーラーをつけてライブでお好み焼きを焼いていたそうだ。そして当時有頂天のPAだった人が後に筋少のPAになり、おいちゃんはずっとその人にライブでお好み焼きを焼いていた件について触れられていたらしい。「あたかも常にお好み焼きを焼いていたかのように言われていた」。

ここでおいちゃん、お好み焼きを焼いていた会場が「渋谷屋根裏」だったのに「渋谷公会堂」と言い間違え、メンバーに「渋谷公会堂で!?」と仰天されていた。

バンドは最終的には一つの印象になっていく、ミック・ジャガーも「サティスファクション」を語られるように、筋少はこのままだとカレー、間違ってボヨヨンロックの印象になってしまう、とオーケン。じゃあカレーボヨヨンではなく、「S5040」を、「ワダチ」を代表曲にしよう! かつてとある雑誌で、ハガキが集まった投稿者にはコーナーがもらえる企画があった、内田はオーケンのためにハガキを百枚書いてくれた、その内田のように! 皆で有線にS5040をリクエストしよう! 

「そしてパチンコ屋でS5040が流れてびょんびょん言うんだね」「今もパチンコ屋で有線って流れているのかなぁ」

最後の締めくくりでは、「今日のイベントの印象を一つにまとめると、おいちゃんが渋谷屋根裏と渋谷公会堂を間違えたことだね」とオーケン、笑うおいちゃん。週末のライブはリキッドルームじゃないですよ~六本木だよ~間違えないでね、と周知され、イベントは終わった。約四十分のほほんとした愉快なトークが聴けて実に楽しかった。

そして夕方はオーケンのサイン会。新宿から神保町に移動し、ドキドキしながら列に並んで何を話そうか考えて、ついに自分の番。「こんにちは」と挨拶をすると穏やかに「こんにちは」と返してくれるオーケン。どぎまぎしながら手紙を渡し、用意していた言葉を述べると! 会話が! 会話が出来た! オーケンが質問を返してくれて、じっくりゆっくり話が出来た! 今まで緊張してなかなか上手く会話を運べず、気を遣ったオーケンが話しかけてくれることが多かった中で、まともに会話を……会話を出来た……。嬉しくて死にそうになった。

帰りの電車の中では体温が急上昇していた。頭がくらくらした。楽しかった。嬉しかった。贅沢すぎる一日だった。まさに筋少感謝の日。ありがたい。ありがたい。




日記録0杯, 日常, 筋肉少女帯

2016年11月3日(木) 緑茶カウント:0杯

筋肉少女帯とカラオケDAMがコラボして生まれた楽曲「人から箱男」。ストレスを溜め込んだサラリーマンが一人でカラオケに行き絶唱する、漂う悲哀と勢いと得も言われぬ力強さが味わい深い曲である。

この曲のタイトルは様々な要素が組み合わさって出来ている。安部公房の「箱男」と、一人カラオケの略称「ヒトカラ」に、娯楽施設のカラオケボックス。現実世界で溜め込んだ不条理と愛情とストレスを抱えた人間が、カラオケボックスという一人きりの世界に逃避し、箱男となって思う存分叫び発散することを表している。

MVではカラオケボックスで絶唱するサラリーマンに扮したオーケンと、ステージで歌い演奏するメンバーの映像が交互に映し出される。印象的なのはステージの背景に映る積み上げられたマーシャルアンプ。そして「謎の箱積み上げられた聖地」という歌詞。「謎の箱」は即ちカラオケボックスの個室であるが、これをマーシャルアンプと解釈すると、湧き出る叫びを好きなだけ発散できる場所はライブハウスとも捉えられる。そこは言うまでもなく筋肉少女帯が戦う場であり、ファンにとっての聖地である。すると思い出されるのは、ライブハウスの別称も「箱」ということだ。無論この曲はカラオケを表現したものに他ならないが、カラオケ以上に筋肉少女帯によって日常を生きる力を与えられている者にとっては、ライブハウスという解釈も捨て難い。あのライブの空間で、歌い吠えることによって同化する快感と清清しさは他に無い。

日常の中で、思いのたけを好きなだけ叫び歌える機会は滅多にない。それが出来るのは現実と切り離された小さな非日常の空間で、その非日常の空間こそがカラオケボックスであり、ライブハウスでもある。その限られた時間と空間で好きなだけ発散し、軽やかな気分で日常に戻る力を得る。そうすることで、安部公房の描く「箱男」にならずに日々を生きていける、と考えると面白い。

そうして己は三時間、カラオケボックスで一人、絶唱し続けたのであった。我こそは人から箱男。枕投げ営業を三回歌った。ムツオさんを二回歌った。ビールを二杯呑んだ。楽しかった。



日記録2杯, 日常, 筋肉少女帯

2016年4月24日(日) 緑茶カウント:2杯

筋肉少女帯の新曲「週替わりの奇跡の神話」。発売されてからここ数日、何度も何度も延々と繰り返し聴いている。アニメ「うしおととら」のために作られた主題歌であるこの曲は、潮ととらの二人の関係性を歌うと同時に、「だけど変わらないあいつらいると言う ああ 時を超え生きてるからさ」と、物語が完結した二十年後にアニメとなって現代に蘇った「うしおととら」という作品そのものについても歌っているのが実ににくい。

そして特筆すべき点は、筋少にしては珍しく「永遠がある」と歌っていること。これは今までの筋少の歌詞にはなかったことだと思う。

「愛など存在はしない、この恋もどうせ終わるさ だが二人の出会えたきらめき」と歌う「きらめき」。

「いつか恋も終わりがくるのだから、一人ででも生きてけるように君の頭をよくしてあげよう」と歌う「香菜、頭をよくしてあげよう」。

「たった一つの輝きを失くしたとしても大丈夫、形が変わっていくだけさ」と歌う「ワインライダー・フォーエバー」。

永遠と思っていたものも、愛も恋もいつかは終わる。でも大丈夫だよ、と終わりがあることを受け入れさせ、声をかけてきたのが今までの筋少である。そんな中で、「永遠なんだと信じていたものもいつかは終わる、だけど変わらない絆がある」と歌う「週替わりの奇跡の神話」は異端な歌詞だ。永遠がないという前提を覆し、「ある」に転じる歌詞。「うしおととら」のための曲だからこそなのか、それともオーケンの考え方が変わったのか。

しかし。「永遠がある」と希望的なことを歌っているように聴こえるが、結局「奇跡の神話」の中にしか「変わらないもの」はないのであった。もっと言えば、物語の中にしか「永遠」はない。つまり、神話の外の世界である我々の世界は移ろい行くのが常であり、永遠など存在しない。ないはずの永遠があるからこそそれは「奇跡の神話」なのである。ギリギリを生きて、命を賭けてつるむほどのことをしなければ永遠なんぞ手に入らないのである。

オーケンは何も変わっていなかった。表現方法を変えただけで、今までと同じように「永遠なんて滅多にない」と歌っていた。ただ、表現方法が変わっただけで、「あるかもしれない」と錯覚しそうになるのである。その点で「週替わりの奇跡の神話」は、「ない」と言い切る他の歌詞よりも残酷であり、そして切ない。

だが、だからこそ物語の中の永遠が輝きを放つのだ。そうしてそれが、移ろい行く現実を生きるうえでの糧となる……が、輝きに目が疲れることもある。そんなときに己は「ワインライダー・フォーエバー」を聴いて足元を確かめ、コトコトコトコト歩き出すのである。

永遠は、神話の中にしかないのだ。



日記録3杯, 筋肉少女帯, 非日常

2016年4月23日(土) 緑茶カウント:3杯

実に濃い一日であった。

今日は幼馴染の結婚式と、筋肉少女帯のライブがあり、その後大学の友人が急遽開催を決定した呑み会に参加した。恵比寿から大宮に移動して結婚式に参列し、恵比寿に戻ってライブを観て、上野に行って呑み会に参加するという大移動もさることながら、そのそれぞれの内容の濃さったら。三日分くらい生きた気分である。

結婚式の開場はレストラン。親族での式は済ませており、今回は友人のみを呼んでの式である。平服で、とのことだったので、スーツを選びつつ、若干ラフな装いで会場に向かった。

新郎の幼馴染と自分は小学校からの間柄である。友人が結婚するまでは頻繁に遊びに出かけていたが、ここしばらくは全く会っていない。顔を合わすのはおよそ二年ぶりである。久しぶりだなぁ。そういや共通の友人がいないから会場で話す相手いないなぁ。おおーう緊張してきたぞどうやって間を持たせれば良いのだろう。と、ドキドキしたが、何とかなった。

前述の通り共通の知り合いは一人もいなかったのだが、その場で出会った新郎の友人と話をしてみると、知らないながらも互いに友人経由で聞いていた情報があり「もしやあの……」「ああ!」といったやりとりが発生したのである。己がいないところでも友人は己のことを話していたのだなぁと知るのは新鮮で、何だかちょっと嬉しかった。

結婚式が終わり二次会に参加した後大宮から恵比寿リキッドルームへ。三十分ほど遅刻したが、二曲目が終わった後のMCの場面で参加することが出来た。流石MCの長さに定評のある筋少である。助かった。

この日は行くかどうか迷ったライブだった。チケットを購入した後に結婚式の招待状をもらったのだ。招待状を受け取った時点ではライブはキャンセルしようと考えていた。だが、運の良いことに結婚式とライブの時間を照らし合わせてみると両方行けることが判明したのである。さらに。オーケンが咽喉のポリープの除去手術をするため、しばらく筋少のライブはもちろん、オーケンの声を聴く場面に出会えないことがわかったのだ。

優先するのは幼馴染の結婚式だ。だが、出来る限り両方行こう、と心に決めて駆け下りた恵比寿リキッドルームの地下は、いつもとほんのちょっと違う空間だった。

咽喉がつらそうなオーケンを配慮してフォローをするメンバーの温かさと、しんどい中でもファンを楽しませようとするオーケンのサービス精神。そして全力で盛り上げに来てくれた三人のゲストの存在。このゲストも意外性があって驚いたなー。まさか人間椅子のナカジマノブさん、声優の野水いおりさん、ラウドネスの二井原さんが来るなんて誰が予想出来るだろうか。そしてそのゲスト達が流しそうめんの如くサラーッと流れていくのがまたすごい。えーーーー!? もったいないなーーーーーー!? びっくりした。

今回、開演後に入ったことと、スーツ姿という理由もあって前方には行かず上手側の袖で大人しく観ていた。後ろから見下ろすとステージ前でうごめく人の群れが渾然一体となって拳を上げる様がよく見えて、それは普段ライブDVDなどで見慣れた光景であるはずなのに、一つの熱の塊がそこにあるかのようなパワーを感じ、圧倒された。いつもは自分もあの中の一つになっているのだなぁ。

新曲「週替わりの奇跡の神話」で、大好きなフレーズをオーケンが間違えずに歌ってくれたことがとても嬉しく、さらにアンコールのクライマックスでは、全く予想もしていなかった大好きな一曲「枕投げ営業」が聴けて、あまりに嬉しくて悲鳴を上げそうになってしまった。

「なんだかありがと! 頑張るねあたし!!」は今のオーケンの気持ちそのものなのではないか、と思ったり。

最後、ゲストを交えての「釈迦」を堪能して上野へ移動。そこには一年ぶりに会う友人もいて、再会を喜びつつ大いにふざけあった。友人はすぐに己の髪型をぐしゃぐしゃにしてくるので困る。ただ、困るけど嫌ってわけじゃあないんだな。

一年に一度と言わず、もうちょっと頻繁に会おうぜと声をかけ、日付が変わる直前に解散した。そうして大荷物を玄関に下ろし、窮屈なスーツを脱ぎ捨てて部屋に寝転びパソコンの電源を入れる。パソコンが立ち上がるのを待ちながら大荷物を部屋に運び入れ、フライヤーの束や物販の中に埋もれていた一つを取り出す。紺色の包みに赤いリボンのそれは、結婚式の最後に新郎から手渡されたものである。開けてみると中身は台所用品で、便利そうな代物だった。

我が家の食器と台所用品の半分は結婚式の引き出物で構成されている。自分の好みで買ったシンプルな皿の中で存在を主張する、カラフルな食器やキュートなコップ達。どれも絶対に自分では買わないものだ。絶対自分で買わないものが生活の中にあり、活用されている。他者の侵入を許しているなぁと思う。それは何だか、ちょっと愉快である。

あぁ、濃い一日であった。