未分類0杯, MAGUMI AND THE BREATHLESS, 水戸華之介&3-10Chain, 非日常

はしゃいだなぁ。脳みそをスッカラカンにしてはしゃぎまくった。先攻は水戸華之介&3-10Chain、後攻はMAGUMI AND THE BREATHLESS。体の芯まで染み込んだ3-10Chainは全身を使って思いのまま全力で遊び、普段行くライブではあまり聴く機会の無いトランペットが鳴り響くMAGUMI AND THE BREATHLESSでは心を空っぽにして音を楽しみ、そして合間合間に挟まれる愉快なコールアンドレスポンス! あんな言葉、幼稚園児のときにだって連呼したこと無かったぜ!

そして今は終演後に購入したMAGUMI AND THE BREATHLESSのCD「delight」を聴きながら揚げ出し豆腐を食べつつビールを呑みながらまったりしている。あぁ、はしゃいだ後のこの余韻。レピッシュを初めて聴いたときも、その歌声に強く心を惹かれたが、この緩急の付いた伸びやかな歌声。好きだなぁ。THE BREATHLESSは今回新曲を多く引っさげて来たそうで、新しいアルバムを発売する予定もあるとのこと。中盤あたりで「ドレスコードは○○!」と叫んでいた歌があったのだが、あれも収録されているなら欲しい。

セットリストに関しては、3-10の分しかわからなかったので、わかる分だけ書いておこう。とはいえ「ハーイここまで」がどこにあったか記憶が曖昧で、多分並びは間違っていると思う。「生きる」の前に「生きてるだけでまるもうけ」というMCがあり、「生きてるうちが花なのよ」をここでやるかと思ったら違った、という記憶があるので、うーんやっぱり違うだろうな。もっと後ろだっただろうか。


■水戸華之介&3-10Chain
アップルティーをもう一杯
カナリヤ

ハーイここまで
生きる
トーカラジ(クリスマスバージョン)

ヴィヲロン
ヤバ市ヤバ町ヤバ通り

バースト&ワースト~分解マニア

天井裏から愛をこめて
100万$よりもっとの夜景

■アンコール
゛ (濁点)
ラクダの君は砂漠のマドンナ
リックサック
ポコチンロックのテーマ


アンコールではQueenの「We Are The Champions」が流れ、フレディの「We Are The~」という歌声の続きにかぶせる形であの言葉を叫ぶ声。そして意気揚々とステージに現れる二人のボーカルとBREATHLESSのメンバー。

「゛ (濁点)」はかつて水戸華之介&3-10Chainと穴場(杉本恭一&上田健司)の対バンツアーで聴いたことがあったが、当時も今日も曲の名前を知らず、あのときわからなかった曲の名前を今も知らずにいたのかと感慨深く思いつつ、前回は杉本恭一、今回はMAGUMIが歌ったことからレピッシュの曲だろうとあたりをつけ、「ぎゃくてん」「だくてん」で検索し、ようやく本日曲名を知った。水戸さん作詞の曲だったのか。

対バンを観る際はどちらのバンドもしっかり知っている状況が一番ベストだとは思うが、片方を知らないものの、興味と関心と好意は抱いており、そんな中で何が演奏されるかさっぱりわからぬ状態で、ただただ流れてくる音に身を任せて体を揺らす、というのは、全力ではしゃいだ直後、興奮した脳がクールダウンしつつ、そこに心地良いものが充填される感覚がして非常に気持ち良かった。

十九時開演で終演は二十二時半あたり。水戸さんが冒頭で「今日は長丁場になる」と言っていたが、まさか三時間を越えるとは。来年もこのイベントは行われる予定だそうで、既に気の早いことに名古屋の会場は押さえているそうだ。年に一度の年忘れ。年を忘れて年甲斐も無く子供のように叫ぶ愉快な空間。きっと自分があの言葉を口にするのは、その空間だけなのだろう、と思うとまた楽しい。これこそ非日常である。ははは。



未分類0杯, 筋肉少女帯, 非日常

己はこのサイトにおいて、ライブや旅行の感想を記すときは「非日常」のタグを付け、これは普段の日常と別のもの、と区分けをしているのだが、数年にわたり頻繁に筋肉少女帯のライブに通っていると思うのだ。既にこれは非日常ではなく日常の一部になってしまっているのかもしれない、と。

今回の会場「Shibuya O-EAST」は自分にとって初めてのライブハウスだが、周囲に通い慣れたライブハウスが多いという理由で、よく見知った場所であるため特に緊張感も無かった。昔は行ったことのないライブハウスに向かう際は、内部の構造はどうなっているか調べた挙句、どうにか良い場所から見られますようにと祈るような気持ちでいたものだが、今は一応下調べはするものの「まぁ何とかなるだろう」と軽く構えている。

ライブに行くことが自分にとって既に特別なことではなく、ごく自然なことである以上、やはりそれは「日常」に馴染んだものなのだろう。しかも今日の自分といったらライブTシャツすら着ていない。普段は前方に突っ込むため汗をかいても良いように冬だろうと薄着で参戦しているが、体調があまり芳しくないためしっかり厚着。まるで近所のスーパーにでも行くかのような格好だ。

厚着して、声を出すことも控え、後ろの方で静かにステージを観ていた。静かにと言いつつ拳を振り上げ体を揺らし、サンフランシスコでは飛び上がり、動ける限りは動いていたが、その日自分は開演から終演まで一歩もその場所を動かず、前方で踊り狂う人の群れの塊と、その先で光に包まれながら楽器を鳴らし、歌を歌い、煽りまくる人達を観ていた。

通常自分は前方の踊る塊の一部と化しているため、視点の位置に違いこそあるものの、それは何度も何度も観てきた光景で、とてもよく知った目に馴染んだものであり、そうして眺めて思ったことは、やっぱりこれは日常ではない、非日常の分類だ、ということだった。何度も観て、パターンも覚えて、終演後の喪失感も通うごとに薄れ、特別感が減少しても、これは非日常である。パターンを覚えるほど観て、馴染んで、それでもまた次回観たいと思わされる、決して日常では得られない楽しみを与えられる空間がこれなのだ。どんなに馴染んでもこれは日常には成りえない。

と、いうことを終演後、ハイネケンを呑みつつ、渡されたフライヤーを見てにやにやしながら思っていた。フライヤーには次回のライブの告知。再結成後、恒例となっている十二月二十三日のリキッドルームでのワンマンライブ。今回、さんざん東京でのワンマンライブは今日が年内最後だ、と強調して強調して強調した挙句、やっと発表された待ちに待った公演だ。オーケンのしつこい強調具合にわざとらしさを感じたものの、もしかしたら本当に無いのかもしれない………と、半ばがっかりし、その言葉を信じかけていただけに嬉しい。

今日のライブは殊更良かった。まずオーケンのコンディションが良かった。オーケン自身、「今日のオーケンは若干元気なオーケン」と自らを指して言い、その理由を「五十も近付くとねぇ、バイオリズムっているのがあって、気候に左右されたりするの。おいちゃんわかるでしょ? でね、今日は良い天気だったからちょうどバイオリズムが上り調子のところで、若干元気なの」と手で波線を作りながらにこにこ語る。

実際今日のオーケンは調子が良かったと思う。昨今は歌詞がぶっとぶことがやたら増えていたが今回は、まぁ多少はあったものの大したことは無く、「イワンのばか」定番の歌詞間違い「ロシアのポルカの裏技」も炸裂せず、「サンフランシスコ」冒頭の「さようならさようなら」も、場合によっては極端に省略され、すごいときには「本当に辛い」しか残らないことさえあるが、今日は全部語ってくれた。

何より嬉しいのが「妖精対弓道部」で、ずっと聴きたかった歌詞が聴けたこと。とはいえ、自分が「妖精対弓道部」をライブで聴いたのはこれが二回目で、そもそもライブで聴いた経験すらほとんど無いのだが、DVDが収録されたライブで、その格別気に入っている歌詞が見事に消滅してしまったため印象深くなってしまったのだ。DVDを繰り返して観ていたせいで、当時のがっかり感が何度も何度も上書きされていたのである。また、もし間違えたまま口が覚えてしまって、ライブにおいて正しい歌詞がすっかり消滅してしまったらどうしよう、という危惧もあった。何故なら今の定番曲の中にも、すっかり本来の歌詞が消えてしまっているものがあるからである。ようこそいらっしゃいましょう、とか。

あと印象深かったのは「パノラマ島へ帰る」。六月の中野サンプラザでは演奏されなかったため、ようやく念願叶ってと言ったところ。ライブの後半、証明が落ち、エディがピアノを爪弾き出した。神経を集中させて耳を澄ますも何の曲が始まるのかわからない。「爆殺少女人形舞一号か?」と思いきや、ふと、脳に引っかかるフレーズはあり、あ、これは、と思ったところでオーケンが静かにタイトルを口にした。

CDは儚げな印象の歌い方だったが、今日は力強さを感じた。これはオーケンが「若干元気」だったせいかもしれない。そして演奏の美しさと見事さったら無い。たまに思う。こういう大人な雰囲気の曲だけを演奏する演奏会があっても面白いのでは無いかと。その場合は是非椅子のあるところで、ゆったりしながら聴きたい。

一曲目は「パリ・恋の都」。渋谷が会場ということで「来たぜおおパリ!」と歌う冒頭、地名を「渋谷」に変更。しかしその後の歌詞はもちろん「パリ」だったので、恋人の亡霊と共にパリにやってきたと主張する男が、まるで渋谷をパリと言い張っているかのようで、この男は少し落ち着かせてやらないといけないな………と思わされた。思わず。

二曲目は「妖精対弓道部」。その後MCを挟み、ここでオーケンが「若干元気」であることを強調し、おかしなポーズで飛んだり跳ねたりはしゃいでいた。変だった。そして「今日は休んだりしない!」と高らかに宣言。最近は途中でオーケンがステージから下がり、代わりに他のメンバーがボーカルをとることがあるのでそのことを指しているのだろう。

しかし。宣言したからには覆すのがオーケンである。

また次のMCで、オーケンがオカルトの話を始めた。「ねぇ、知ってる? この間オカルトの番組に出たときに○○さんという人が言ってたんだけどね、太陽系にはラジャサンっていう木星くらいの大きさの星があるの。これは自由に動くことができて、黒い触手を持っててね、その触手で………太陽を妊娠させるんだ」

オーケンよ、あなたは何を言っているのだ。

「でね、地球とか、太陽系の惑星は、ラジャサンと太陽の子供なんだって。でもラジャサンは性に奔放なんだ。だから地球ともそういうことをしてるわけ。それで………今地球は妊娠してるの! 来年には出産するの!! うわあああああ大変だあああああ歌なんか歌ってる場合じゃないよ! 怖いよ怖いようわあああああ~~~~」

そしてオーケンはステージから逃亡した。後に残された戸惑うメンバーと、一人仰け反りながら大笑いするエディの対比が無性におかしい。怪談を語るときのような口調と言ったらわかりやすいだろうか、声を落とし、力強く注意深く、一つ一つ聴き手の理解を確認しながら語っていた男が一変して一人で狂乱し、「怖いよ怖いよ」と喚きながらステージを走り去る。その後、オーケンがいないためおいちゃんが「未使用引換券」を歌ったが、歌い終わってもオーケンは戻ってこず、ついに内田さんに「まだあのキチガイ戻って来ないね」と言われてしまっていた。実に的確だと思う。

おいちゃんの「未使用引換券」は格好良かった。あまり、おいちゃんのボーカルをメインで聴く機会が無かったから知らなかったのだが、ワイルドで色っぽい歌声だと思う。おいちゃんが歌い終わった後に内田さんが「かっこよかったね」と言ったのにはうなづかざるを得ない。ただ、マイクの設定のせいか、若干声のボリュームが足りなかったのが惜しい。

オーケンがまだ戻らないため、今度は内田さん、おいちゃん、橘高さんの三人で交代しながら「日本の米」。格好良い!! これはこのままこの三人で定番化しても良いんじゃないか、と思うほど。だが、日本の米の終わり頃にオーケンがステージに戻ってきて、少しだけ歌ってくれたのだが、このときはやはり、しっくりくるなぁ、と思った。染み付いているのである。

他、ぐっときたのは「ハッピーアイスクリーム」「航海の日」「レセプター(受容体)」「ワインライダー・フォーエバー」。「ハッピーアイスクリーム」は何と言っても掛け合いが楽しい。思い切り声を出せなかったのが非常に残念だったが、それでも久しぶりに聴けて興奮した。

「航海の日」は確かエディの出だしで始まっていたように思う。こうして少しずつ、ライブを重ねるごとにアレンジが加わっていく、というのは個人的には非常に好みなので、今後もどんどん膨らんでいってくれたら嬉しいな、と思う。

「ワインライダー・フォーエバー」は何とアンコールのラストに演奏された。アンコールでオーケンが血染めの白衣を着ていたこと、ライブタイトルが「四半世紀中」であることもあって、「中2病の神ドロシー」が最後に来るだろうと予測していただけに驚いた。全く予想していない一曲だが、多幸感に包まれながら終演を迎えることができたので、これはかなり、すごく良いと思った。

それと、ワインライダーでメンバーがラップに入る際、オーケンが「うっちー!」「ふーみん!」「おいちゃん!」とそれぞれの名前を呼んで盛り上げていて、とはいえこのパターンだとオーケンだけ名前を呼んでくれる人がいないなと思いきや、橘高さんが「大槻!!」と呼んでくれたのが、まるで自分のことのように嬉しかった。オーケンがメンバーに「誰か俺の名前を呼んでー!」とねだっているところを何度か観たことがあるだけに。欲を言えば「大槻」でなくあだ名の「オーケン」だったら尚ナイスだったので、次回はよろしくお願いします橘高さん。

追い出しにかかったのは今度対バンするJUN SKY WALKER(S)の「Let’s Go ヒバリヒルズ」。普段、比較的早くステージを去ってしまうオーケンがにこにこしながらステージをうろうろして、「サビのとこだけ歌いたい!」と言っていたのが印象的だ。そして最後は何故かサビの部分を皆で合唱。どうして筋少のライブの最後の最後で、JUN SKY WALKER(S)を合唱して心を一つにしてるんだ、と思うと笑えてきそうになった。

そういえば。今回、「踊る赤ちゃん人間」を最後の方にやったのだが、前半で元気を使い果たしたオーケンが若干ばてて、半ば義務感で「あばばあばば」言っている様がおかしかった。あんなに陶酔していない状態での「あばば」は初めて見た。貴重なものが見られたと思う。

あとこれも。橘高さんはライブで地方に宿泊する際、ホテルのシャワーの水圧が低くて我慢ならないことが多いため、マイシャワーヘッドを三つ持ち歩いているそうで、シャワーの水圧について力説していたものの、内田さんはステージから完全にいなくなり、おいちゃんはステージの隅で座り込み、あのオーケンのラジャサン云々のオカルトトークでさえ皆ステージに残って聴いてくれていたのに何で橘高さんだけこんなにアウェーなんだ、と思った。

このとき内田さんがいなくなってから、オーケンは「うっちーに話したいことがあったんだけどなぁ」と何度か口にしていた。そしてライブの後半でふとそのことを思い出したオーケンが、「十二月三十一日暇?」「予定が無かったらのほほん学校を年越しでやりたいんだけど」と内田さんを誘った。年越しのほほん! まだ会場の空きを確認していないそうなので確定してはいないものの、内田さんも予定は無いとのことなので実現するかもしれないそうだ。行きたいなぁ。でも大晦日だからなぁ。

ただ、行けなくても楽しそうな催しが次々と現れてくるのは嬉しいことだ。まずは十二月二十三日。年内最後、思いっきり楽しむぞ!



日記録0杯, 非日常

2013年11月4日(月) 緑茶カウント:0杯

同人誌、という文化はよくよく知ってはいるものの、自分にとってはどちらかというと縁遠いものだった。身近に同人誌を作っている人間はちょこちょこいて、一度ではあるものの制作を手伝ったこともあったが、あまり興味が沸かず積極的な接点を持たずにいた。

創作も好きでファンアートも好む人間なのに、意外なことだと我ながら思う。まぁ、インターネットで事足りた、というのが大きいかもしれない。同人誌という文化を知るよりも先に自分はネットの世界にどっぷりはまっていて、そちらで遊ぶのに夢中になっていた。

今日、「文学フリマ」という文学作品の展示即売会に行こうと思ったのは目的があったからだった。前々から読みたいな、と思っていた本をこの日にここで販売する、という告知があったので、じゃあ行ってみようじゃないか、とモノレールに乗って買いに行ったのだ。そして自分は、目的の本を手に入れた後も隅から隅まで見て回り、気付けば鞄一杯、肩が抜けるのではないかと思うほど、どっさり買い物をしてしまったのだった。

ブースを見て歩くだけでも楽しかった。また、本をくださいと申し出たとき、机の向こうに座る人が皆一様に、はにかみながら本を渡してくれるのが何だかとても可愛らしくて、男も女も老いも若きも、花がほころぶような笑顔を見せてくれるのが、どこかむず痒く、照れくさく、ぐっとくるものがあった。

良いものだな、と思った。ちょっと何か、混ざりたい気分になってくる。とても楽しい空間だった。



未分類2杯, のほほん学校, 大槻ケンヂ, 非日常

いやあ楽しいひと時だった。オーケンののほほん学校のスペシャル版。ゲストは水戸華之介、和嶋慎治、ゆるキャラの方々、そして飛び入りで向かいのライブハウスでライブを控えているにも関わらず体を張って参加してくれたニューロティカのあっちゃんに、そのあっちゃんの尻に重い蹴りを叩き込んだアクション女優武田梨奈。基本はオーケン、水戸さん、ワジーが三人で、お題に沿ってだらだらとトークをし、思い出したかのように歌を歌うというもの。「ミュージシャンはこういうとき歌を歌えるから便利だよね!」「歌っとけば何と無く仕事したって感じがするからね!」と笑う面々。確かに、トークだけでも十二分に楽しいが、間間に歌が入るとメリハリがついて楽しいなぁ。

スペシャルということで今回の会場はいつものパイプ椅子が並べられたライブハウスではなく、背もたれとクッションのついた椅子がゆったりと並べられたホールである。ホールでのほほん学校に参加したのは今回が初めてだが、思いのほか快適だった。体がすごく楽である。現在進行形で体調を崩しているため、普段よりも体力が落ちていることも関係しているだろうが、背もたれの存在が非常にありがたかった。何せこの十月、外出は必要最低限に抑え、休みの日はひたすらベッドで眠るという日々を過ごしていたのだ。電車を乗り継いで高円寺に向かうだけで息が上がってびっくりした。

会場につき、ホールの中へ足を進めると薄暗闇の中からオーケンの絶叫が聞こえた。見ればステージの上に設置された巨大なスクリーンには花道を歩き堂々と歌うオーケンの映像が流されている。おお、これは何の映像だろう、と見ればDDTの文字。DDTプロレスに筋肉少女帯がゲスト出演したときの映像のようだ。観たことが無い映像を見られてラッキーと思いつつ座席に深々と座り休息を得る。ライブ映像が終わるとオーケンがその歌詞に衝撃を受けたと言う「アイドルばかり聴かないで」のPVが流れ、映像が終わると同時に開演の合図か、筋肉少女帯の「そして人生は続く」が大音量で流れ、マイクを持ったオーケンがステージに現れた。

おお! この歌を歌ってくれるのか! と喜びかけたがすぐに違和感に気付く。オーケンはマイクを持ち、口を動かしつつステージの中央に設置された譜面台をチラチラと確認してはいるが、どう見ても口と歌が合ってない。そのうちわざとマイクを遠ざけたり、変なポーズをとったりしてニコニコしながらふざけ出した。隠す気の無い公然の口パクという名の、本人による余興である。

曲が終わるとゲストが登場。「水戸華之介&3-10Chainの水戸華之介、人間椅子の和嶋慎治!」というオーケンの呼びかけに応じて二人が壇上に姿を現す、がワジーは何故か一輪車を持参。しかも乗ろうと試みてはみたものの、乗れなかったらしくそのまま転がしてやってきた。そして一輪車はまるで楽器の仲間であるかのように、ギターの隣に置かれた。この一輪車の謎は後ほど明かされることになる。

まずは冒頭の口パクの説明へ。開演前に流していたPV「アイドルばかり聴かないで」のアンサーソングは、筋肉少女帯の「そして人生は続く」ではないかとオーケンは考え、よって「アイドルばかり聴かないで」を流した後にこれを歌おうと思ったが、カラオケが無いため曲をそのまま流すことになり、よって口パクをすることになったとのこと。この流れで、口パクは普通に歌うよりも技術が必要となるという話題になる。まぁ、特にオーケンの場合はそうだろうなぁ。口パクだときっちりしっかり歌詞を覚えなくてはならないのだから。「だからねぇ、○○とかはすごいよ!」とあれやこれやの名前が出てきて場内爆笑。あれやこれやの名前は記憶しているが、一応ここでは伏せておこう。

口パクトークの後、今回の「のほほん学校」について説明。前にも書いたが、お題に沿ってトークをしつつ思い出したかのように歌を歌おうというもの。では、お題を見てみましょうとスクリーンを見上げると表示されたのは「飛び入りゲスト」。こんな、今さっきゲストを紹介した直後にいきなり飛び入りゲストが来るのか、と驚いたのが本音である。

ゲストはオーケン原作の映画「ヌイグルマーZ」で「ヌイグルマーZ」役を務めるアクション女優の武田梨奈さん。呼び込み前にいかに武田梨奈さんがすごいか熱弁するオーケン。何と武田梨奈さんをオーケンに紹介したとある映画監督は、いかに武田梨奈さんがすごいかを伝えようとして、狭い会議室の机を端に寄せ、その中央で監督VS武田梨奈でいきなり殺陣を始めた、という衝撃エピソードを披露。そのうえで、武田梨奈さんが監督に実際一発食らわせて勝利したそうだ。

いったいどんな人が来るのだろう、と会場の期待が高まる中、「武田梨奈さーーーーん!」とオーケンが高らかにお招きすると、上手から現れたのは道化のメイクを施した茶髪のおっさん。そのおっさんは全力疾走で上手から下手へと走り去り、呆気にとらせる暇もなく、また全力疾走でステージを横断した。

言うまでもなく武田梨奈さんではない。ニューロティカのあっちゃんだ。

向かいのライブハウスで七時からライブがあるとのことで、飛び入りでのほほん学校に参加してくれたそうだ。おどけたピエロは高らかに倖田來未の物真似をし、水戸さんが腹を抱えながら大笑いしつつ「それ九月に俺のライブでやって受けなかったのにまだやってんの!」と突っ込みを入れていた。自分もまさか十月の終わりにあれを再度見ることになろうとは思っていなかったので驚いた。せいぜいあの数日で消失したネタだったと思いきや、まさか生き残っていたとは。

あっちゃんの後に本物の武田梨奈さんも登場。びっくりするくらい華奢だった。ところが侮る無かれ。空手の熟練者で、曰く「大抵の男には勝てる」とのこと。そして得意技はハイキック。すると突然、「はい」と挙手する人がいた。あっちゃんだ。しかし皆、その挙手の意味が読み取れない。何だろうとオーケン達が促すと、あっちゃんはリアクション芸人のようなことを口にした。

何とハイキックを受けるというのである。ロックミュージシャンとしてデビューして二十九年であるにも関わらず、そこまで体をはるかと驚きを隠せない面々。しかしあっちゃんは穏やかに笑いながら「ここはやっとくとこかと思いまして」と言う。

とはいえ武田さんは本日スカート姿。ハイキックはまずい、ということであっちゃんの尻に蹴りを入れることになった。中腰になり、武田さんに尻を向けるあっちゃん。そんなあっちゃんを見つめるオーケン、水戸さん、ワジー。直後、「ドンッ!!」という低い音が響いた。あっちゃんは本気で痛がった。

「もっとこう、パンッて軽い音がするかと思ったら、ドンッって」と言ったのは水戸さんだったか。「あれが腰に入っていたら骨をやられていたよ」「ライブの前なのにお尻蹴られちゃって…大丈夫?」「良いMCネタが出来て良かったね」と口々に皆が喋る中もあっちゃんは痛そうだった。その後ライブで飛んだり跳ねたりできたのだろうか。

この後だったかな。オーケンが武田梨奈さんについて、彼女はこれからもっと大きくなって、来年には我々の手の届かない存在になるかもしれない、と言う。武田さんは恐縮するがオーケンは続ける。「僕ののほほん学校にお呼びした方の中にもねぇ、その後すごーい人になっちゃってもう近付けないってことがあるからねぇ」といった内容のことを語ると、水戸さんが「そして我々はいつまでも大槻の手のひらから抜け出せない」と自虐して笑いをとり、オーケンがあわあわと慌てていた。

「でもねぇ、そうしてビッグになって、何十年後か、死ぬ間際にふと思い出すんだよ。………そういえば、あのときピエロの尻を蹴ったわ…」って、と未来の武田さんの回想シーンを捏造して場内爆笑。確かに、ピエロの尻を蹴るなんてことは一生に一度、いや、普通に生きていたらまず無い体験だろう。ちなみにあっちゃんの尻は結構硬かったそうである。

武田さんはその後予定があるとのことで、十八時半に退場。あっちゃんはその後、皆にせがまれて「香菜、頭をよくしてあげよう」を歌って退場したが、「それなりに歌えていた」ためオーケンと水戸さんからはブーイングの嵐。どうやらあっちゃん、これまでにも何度も「香菜」を歌っていたのだが、いつまでも全然覚えられずにいて、それが面白かったとのこと。だから「それなりに歌えていた」状態がつまらなかったそうだ。

「せっかく来てくれたのに、お尻を蹴られて、つまらないって言われるなんて!」とあっちゃんの境遇を的確に表すオーケン。ごもっともである。尻は大丈夫だったのだろうか。

飛び入りゲストが去り、次のお題が「笑っていいとも、アンパンマン、あまちゃん」だったが、あまちゃんについては全く触れられなかった。「笑っていいとも」については、オーケンが何度かいいともにゲスト出演した話と、いいとものテレフォンショッキング繋がりで井上陽水と接点が出来た話が語られた。あと、「笑っていいとも」が始まる前に起きたら合格、始まった後に起きたら人間として不合格、という風潮が昔あったという話が語られた。水戸さんはこのところずっと不合格だそうである。

アンパンマンの話が面白かった。アンパンマンを知らないワジーにオーケンと水戸さんがアンパンマンについて説明するのだが、オーケンの語る独自解釈がたっぷり入ったアンパンマンの面白さったら! これをアンパンマンを知らないワジーに聞かせて良いかと思うほど。主題歌の歌詞「何のために生まれて、何をして喜ぶ」がすごいという話から始まり、ドキンちゃんが好きなばいきんまんと、しょくぱんまんが好きなドンキンちゃんが何故か一緒に暮らしている不可思議さについて、ドキンちゃんは今はわがまま放題だが、彼女は「若くて可愛い」以外の取り得が無いので、数年後にばいきんまんと立場が逆転すること、ねむねむおじさんはガンジャを決めている、などなど。たまに水戸さんがオーケンの暴走を軌道修正するように、訂正・修正を挟むのだが、オーケンにかかるとアンパンマンもカニバリズムやガンジャが組み込まれる物語になってしまうのだなぁ。

そういえばどの流れだったか忘れたが、オーケンは黒目のフチが白くなってきたそうで、白内障ではないかと思い眼科にかかったそうだ。結果はどうか。幸い白内障では無かったが、老人性のものだそうで、医者が「老人性と言っても、昔は四十代で老人でしたから」とフォローを入れたそうだ。異常が無いのは喜ばしいが何とも切ない話である。

しかし。白内障の心配は無いが緑内障の気はあるとのことで。オーケンはそれすらもネタにして「格好良くなっちゃう」と笑っていたが、いやはや。気をつけて欲しいものである。

この日歌われたのは「香菜、頭をよくしてあげよう」「あのさぁ」「オンリーユー」「氷の世界」「日本印度化計画」「踊るダメ人間」だったかな。「香菜」はあっちゃんが前半で歌ったが、後半にオーケンもきっちり歌った。「オンリーユー」はオーケンが水戸さんを絶賛し、水戸さんも「じゃあ持ち歌としてもらおうかな」と笑うが、直後これはオーケンの歌ではなくばちかぶりの田口トモロヲの歌だと気付き爆笑、という場面があった。そう、これオーケンが歌いまくっているからオーケンの歌のような気がしてしまっているが、トモロヲさんの歌なんだよ。

あと素晴らしかったのがワジーのポエトリーリーディング。中原中也の「断言はダダイスト」を語るように歌いながら壇上で一人ギターを爪弾いていく。このとき、オーケンと水戸さんはステージから退場し、ワジー一人が残されて、赤いライトに照らされながら朗々と語り歌っていた。この怪しい迫力は今回の一番の目玉と言っても過言では無い。当初、言葉の意味を追おうとしたが、自分はそれを早々に放棄し、ただ声と音の作る迫力の世界にどっぷり沈むことを選んだ。ワジーは「眠ってもいいですよ」というようなことを始める前に口にしたが、あんなものを目の前にして眠れるわけが無いじゃないか。

水戸さんの氷の世界も格好良かった。三人で分担して歌っていたのだが、水戸さんが全部歌う氷の世界もいつか一度聴いてみたい。水戸さんの作る歌詞に自分は大きな魅力を感じているが、同時にその歌声もたまらなく好きで仕方が無いのだ。

歌詞と言えば、追い詰められて書くか否かの話。オーケンとワジーは追い詰められないと書けないタイプで、水戸さんは追い詰められる前に書くタイプとのこと。何でも、アンジー時代にロンドンでレコーディングを行ったとき、せっかくだからロンドンの空気を吸ってから歌詞を書こうと思い、歌詞を書かずにロンドンに行ったものの、ロンドンがあまりに楽しくてはしゃぎすぎて歌詞を全く書けず、大いに焦ったという経験があるからだそうだ。対してワジーは追い詰められて追い詰められて追い詰められると何かのスイッチが入るのか、書けるようになるそうだ。

トークについては、ひどい名前のバンドの話や、昔は馬鹿なバンドがいっぱいた話などが語られ、そうそう忘れてはいけないのがワジーの一輪車の話。ワジーは去年、筋肉少女帯と人間椅子で対バンをしたとき、筋少のステージを見て、大いに感銘を受けたそうだ。格好良いのに、どこか怪しく、それでいてコミカルでサーカス的。とにかくすごく良いと思ったそうで、その要素を取り入れようとして買ったのが「一輪車」。「一輪車に乗りながらギターを弾こうと思ったけど、結局乗れず部屋の片隅に置いてある」とのこと。それに対しオーケンと水戸さんが口々に、せっかくオズフェスで再ブレイクしてるのにそんな要素を取り入れなくても、というような内容のことを言っていた。

最後はゆるキャラが壇上に登場。頭部が巨大なナン、体が女性の「ナン子ちゃん」に、にんにくと猫のキメラ「十和田にんにん」に、長芋の「十和田ねばっち」のお三方を招き、「日本印度化計画」と「踊るダメ人間」を歌う。「踊るダメ人間」の前では、「ダメダメ~パパパヤ~」で手を振る動作と、ダメジャンプのやり方をゆるキャラの三人にオーケンが指導。結果、限りなく人間に近いナン子ちゃんは卒なくこなせたが、にんにんとねばっちはその体の形状から困難を極めたものの、にんにんは新しい萌えポーズ、ねばっちは猪木の物真似という特技を新しく習得した。成り行きで。

オーケンのすすめによって座っていた観客も立ち上がり、アコギに合わせてゆるゆるとダメジャンプ。イベント名にふさわしく、のほほ~んとした空気の中で和やかにイベントは終了。ステージから退場しようとするも、巨大なねばっちが舞台袖の通路につっかえてしまい、後ろの三人が前に進めなくなって苦笑するという場面もご愛嬌。およそ二時間半の楽しいイベントだった。



未分類筋少拡散波動砲2013, 筋肉少女帯, 非日常

「カーネーション・リインカーネーション」の演奏時、あまりの苦しさに「筋少が殺しにかかってきている」と思った。

場所は渋谷CLUB QUATTRO。見事な大入り満員で、前方はいつにも増してぎゅうぎゅう詰め。さらに、下手側にはまるでおいちゃんの視界を塞ぐかのようにでっかい柱が建っていてオーディエンスの動きを阻む。四方八方を赤の他人と密着するのはいつものことだが、それにしても余白が少ない。今までの筋少のライブの中で、一番過酷なライブだった。

そして自分の立ち位置はその悪名高い柱の近く。クアトロには邪魔な柱がある、という話は聞いたことこそあったものの、実際にクアトロに足を運んだのは今回が初めてで、一目見てこりゃあ邪魔だと納得。柱の後ろ側からだと下手側のステージが全く見えないのである。

しかし柱を避けて視界の広い位置に立ってもこいつは曲者だった。ノリに乗って跳ね回る観客。自然と立ち位置はそのときそのときで移動する。当初、柱より上手側に立っていた自分も流れに流され気付けば柱のすぐ隣、そして曲は「イワンのばか」。熱気と興奮の渦の中、揉み合ううちに体が飛んで、即頭部を柱の側面にガチンとぶつけたのだった。これには流石に一瞬、命の危機を感じた。いくら筋少ファンとも言えども、筋少のライブに行って柱に頭をぶつけて死にました、と親に報告されるのは避けたい。

幸いにも大したことは無く、コブが出来ることすら無かったが、柱があるのは仕方が無いとして、激しいライブのときには布かスポンジか薄いマットを巻いておいた方が良いように思う。いつか事故が起こるんじゃないか、あれ。

柱の話はここまでにして。今回のライブは筋肉少女帯拡散波動砲2013 FINAL。筋肉少女帯拡散波動砲は、筋少メンバーが在籍しているバンド・グループ・ユニットが二組以上揃った状態を指したもの。そして今回は「FINAL」ということで、ついに、筋肉少女帯のメンバーが全員揃った記念すべき公演とのことだ。

だが、ここでちょっと不思議なのが、筋肉少女帯のメンバーが全員揃っているのに今回の公演のバンド名は「中二病の神ドロシー」ということ。現筋少メンバーではないエディがいない状態を「中二病の神ドロシー」と名づけるのは、まるで筋肉少女帯にはエディの存在が不可欠と言っているようだ。

実際、そうだと思う。

実はここ一週間ほど、内田さんが在籍している水戸華之介&3-10Chainの音楽を聴きながら、筋少は楽器が多いなぁと思っていた。先に言っておくがそれは不満では無い。ただの感想だ。水戸華之介&3-10Chainの構成はボーカル、ギター、ベース、ドラムが基本。そのうえで、ベースの存在感が目立つ曲が結構多いのである。筋少で言えばここはきっとおいちゃんが弾いているだろう、と思うところにベースが入る。

対して筋少の構成はボーカル、リードギター、リズムギター、ベース、ドラム、ピアノ。リードギタリストがピロロロロロロロロと早弾きをする中でリズムギタリストがギュワギュワとかき鳴らし、ドラマーがツーバスをドコドコドコドコドコ踏み鳴らし、ピアニストもこれでもかと弾きまくり、さらにはボーカルがヘイヘイ叫び煽りながらあらゆる隙間を埋めていく。無論ベーシストも弾きまくっているのだが、筋少の後に3-10を聴くと「すごくベースが聴きやすい」と思うのだ。

だから今回、エディがいないライブというものを興味深く感じていた。楽器が一つ減るとどのように印象が変わるのだろう。それを楽しみにしていた。

さてその印象はと言うと。結論から言うと物足りなかった。ピアノのところをギターが補完している箇所に気付いて感動し、普段と違う面白味も感じたのだが、やっぱりどこか物足りない。エディがいないだけで、随分シンプルになってしまったような気がして寂しかった。一曲目は大好きな「モーレツ ア太郎」で、大いに気分は高揚し興奮したのだが、自分が一番好きなのは「どこへでも行ける切手」のライブDVDの、エディがピアノを弾きまくるバージョンなのだ。すごく好きな曲だ、何て格好良い歌詞だ、だが足りない! そう強く感じた。

今回のライブで、聴けて嬉しかった曲は「日本の米」「風車男ルリヲ」「ザジ、あんまり殺しちゃダメだよ」「タチムカウ―狂い咲く人間の証明―」、そして「トキハナツ」。特に「トキハナツ」に至っては! 密かに自分はこの曲をやってくれることを待ち望んでいたのだよ!

「タチムカウ」と「トキハナツ」は浪人時代によく聴いていた。ふさぎ込んだりはしていなかったが、鬱屈した気持ちは多少は抱えていて、その気分に合っていたのだ。聴くと気持ちが楽になり、よし頑張ろうと思えたのだ。この二曲をまさか同じ日に聴けるとは。嬉しかったなぁ。

しかし、「トキハナツ」の「OK!」と叫ぶところで、「オイ!オイ!オイ!オイ!」と煽るのは! ちょっとそこにその煽りを入れるのは違う! 「OK!」の方に合わせたい! やりづらい! と思った。そこは別に埋めなくても良いんだよオーケン!

「トキハナツ」を歌い終わった後、この曲は「最後の聖戦ツアー以来やってなかった曲」と語るオーケン。どうやらどんな歌詞だったか忘れていたらしく、あの「アイアムアトップオブブリーダー」について、「サビにアイアムアトップオブブリーダーって! こんな歌詞を思いついた俺はすごいよ、天才だよ」とオーケンが笑いながら言っていたが、自分は本気で「うん天才だ」と思っていた。初めて聴いたとき、「トップオブブリーダー」という言葉にこんな使い道があったなんて、と感銘を受けた。本当に。

「日本の米」に入る前も素晴らしかった。「正直好きなミュージシャンの曲でも飛ばす曲ってあるでしょ?」と観客に語り掛けるオーケン。「俺の曲だから言うけど、日本の米は飛ばされる曲だと思うの」。すると「えーーーーー」と観客から非難の声。「聴きたいの? 聴きたいの? でもなぁ、………え、やるの?」とメンバーにしらじらしく次の曲を確認。メンバーの言葉により、次の曲が日本の米と知るや否や、「いやだ~やりたくない~」と駄々をこね始めるオーケン。

ものすごく面白かった。

「やだ~アラフィフにもなって米米米米とかやだ~」「何で今になって『知らないのか納豆に! ネギを刻むと美味いんだ!』なんて言わなきゃいけないの!」「おらやだぁ~みんながやれって言ってもやだぁ~」と顔面をくしゃくしゃにさせながら、記録媒体でしか知らないナゴム時代を思わせるような奇声を発しつつ、嫌だ嫌だと拒否を続ける。段取りがあったのだろう、見かねた内田さんが助け舟を出す体で、「じゃあ……(僕が代わりに歌うよ)」とオーケンに声をかける。しかし。

「待って! これは俺のエチュードだから!」と制し、小芝居を続行。「やりたくねぇよ~」とイヤイヤしながら散々狭いステージを歩き回って、そしてそのままステージの外へ出て行ってしまった。小芝居だということはメンバーも観客も理解していただろう。しかし、あまりの力の入れようだったため、「え、今の何だったの…?」と、しばしぽかんとした空気が流れた。「帰っちゃったね…」と口火を切る内田さんに対して、「そうだね」と心の中で相槌を入れた。あのときのオーケンはまるで何かが乗り移っているかのようだった。

そしてオーケン抜きの内田さん、おいちゃん、橘高さんで「日本の米」! いやー格好良い! いやー馬鹿な曲! これは確かに、ボーカルは口が飽きそうだ、と納得しつつも嬉しかった。

中盤あたりだっただろうか。「日本の米」のときとは逆に、今度はステージにオーケンが一人。手にはアコースティックギター。そして奏で出すのは「ノゾミ・カナエ・タマエ」! 先日の谷山浩子のライブ「猫森集会」でも披露した一曲だ! また聴けて嬉しい反面、アコースティックギターでの演奏ではシャウトが抑え目になり、原曲よりも寂しげな歌声になるので、通常編成の状態でも聴きたかったなぁと思った。

「ノゾミ・カナエ・タマエ」の終盤でメンバーが入場。オーケンはギターを下ろさず抱えたまま次の曲へ。もしや、と期待を込めれば大好きな「風車男ルリヲ」! 前回ライブで聴いたときはまだギターに慣れていなかった頃だ! すごい。今はギターを弾きながら歌う姿に余裕が感じられる。ただ、慣れないギターに緊張して歌っていた頃の方がルリヲの曲には合っていたようにも感じられた。今回はちょっとゆとりがあったのか、焦燥感が軽減されていたのだ。

ふと思い出したが、「アウェーインザライフ」の「ホームにしてみろ」のところ、CDでは声を張り上げて叫ぶ箇所が、昨今では声を低くして伸ばすように歌うことが多かったのだが、今回はきっちり思いっきり叫んでくれていて思わずガッツポーズをとってしまった。これだよ! やっぱりこれが格好良いんだ!!

「ザジ、あんまり殺しちゃだめだよ」をライブで聴いたのは今回が初めて。改めて、「お祈りをしてあげよう」という言葉を好きだな、と思った。

MCではオーケンがおいちゃんとあまちゃんの話を、内田さんとはマー君の話を、橘高さんとはハードロック芸人の話をしていた。「あまちゃん」はどうやら本日最終回を迎えたそうで、そのことに喪失感を抱く現象を「あまロス」と呼ぶらしい。「あまちゃん」を観ていたのはメンバーではおいちゃんだけで、あまちゃんを観ていないオーケンが断片的な知識を繋ぎ合わせておいちゃんに「合ってる? 合ってる?」と質問していた。案外間違っていなかったらしい。

この後、オーディアンスに向けて「あまちゃん観てる人~」とオーケンが問いかけ、直後破顔。「あんまり観てないんだね」「流石筋少ファンだねえ」と挙がった手の数を見て感想を漏らすオーケン。オーケンの中の筋少ファンのイメージが垣間見える瞬間だ。

「俺内田君とよく知らないものについて話すの好きなの」と言って「マー君」の話へ。「マー君って知ってる?」「あれだよ、ハンカチの…」「違うよぉ~」と互いにおぼろげな知識で適当な会話を繰り広げる様子が非常に面白かったのだが、自分自身「マー君」をよく知らないため、何が正しく何が間違っているのか全く覚えることが出来なかった。野球関係の人で最近何かしらの良いことがあったらしい。

あと、ライブの後半でオリンピックの話題になったとき、筋少は2020年、オリンピックにどう接するか、取り組むか、関わるか、というような質問をオーケンが内田さんに投げたとき、「興味ない」とバッサリ切った内田さんに歓声を上げた一人は自分である。いや、別に良いんだよ盛り上がるのは。楽しそうな人に水を差すつもりは無い。ただ、そこまでスカッと言い切ってくれると嬉しくなるのだ。同じく全く興味が無い人間としては。

他に印象深いことと言えば、これも中盤あたりで、「皆さんがニコニコしていて嬉しいです」とオーケンが言ったこと。オーケンはもともといかにお客さんを楽しませるかを重要視するエンターテイナーだが、最近はそこに使命感さえ抱いているように見える。まれに、「この人は筋少ファンが筋少以外には何も楽しみが無くて常に日々を鬱屈した気分で生きていると思い込んでいるのでは無いか」「そこまで心配してくれなくても大丈夫だよ」と思うこともあるが、こうもストレートに言ってくれると、流石にちょっと射抜かれた。

オーケンの言う「煮込まれたおでんのような客」も「切ったばかりのシャキシャキの大根のような客」も等しく楽しませ、満足して帰ってもらおうとする姿勢が好きだ。「お前たちは『またカレー?』と思うかもしれないけど! 今日初めて来た人は、『わあ! あのカレーの曲が聴けたんだー!』って喜んでくれているんだよ!」「僕もねぇ、バンドをやる前は毎回違う曲をやれば良いのにって思ったけど、そういうわけにもいかないの! 照明さんの都合や音声さんの都合もあるの!」と大人の事情を吐露しつつ、「ザジ」と「トキハナツ」をやってくれるんだからなぁ。たまらないよ。