日記録2杯, 日常, 非日常

2014年11月10日(月) 緑茶カウント:2杯

十一月一日に、母が永眠しました。
奇しくもその日は母の誕生日で、時刻は明け方の五時。
十一月一日の明け方に生を受け、明け方にこの世を去った母の名前をここに記すことは出来ませんが、母を知る人であれば、名前の通りの人だったねと、きっと納得してくれるでしょう。

六年前に乳がんが発覚しました。がんはかなり進行し、リンパにまで転移していました。
手術は成功し、一度は安心したものの、抗がん剤治療は続きました。
治療中、髪の毛が抜けたり、味覚が変化したりと苦難が続きましたが、母は元気でした。
歩くのが大好きで、時間さえあればどこまでもどこまでも歩いて行ける人でした。
だから、治療は続いても、母はきっと大丈夫だと、信じきっていたのです。
与えられた時間が六年間とは夢にも思わず、
十年、二十年、一緒にいられると思い込んでいたのです。




八月に実家に帰省すると母の元気が無かった。皮膚に転移したがんが進行した影響も大きいが、それ以上にリンパを切除したためにむくんでしまった左腕が重く痛そうだった。右腕の三倍まで膨れ、重い左腕を支えるために、背を屈めて右腕で抱くように支えていた。声にもハリが無くなっていた。

九月に体調を崩して入院をした。一週間ほどで退院したが、歩き回る元気が無いようで、退院後十日も家から一歩も出ていないと聞かされたときには心底驚き、胸騒ぎを覚えた。普段、盆と正月とゴールデンウィークにしか実家には帰省しないが、十一月の母の誕生日には帰省することを決め、プレゼントに何が欲しいか聞いた。

伝聞が多いのはメールと電話でやりとりをしていたためだ。

十月中旬に、父が母のために階段とトイレに手すりをつけてくれた、と母が嬉しそうにメールを送ってくれた。いよいよ心配になり、父にスカイプの登録をしてもらい、テレビ電話で様子を見ることにした。画面越しに見る母は予想よりは元気そうに見えてほっとしたが、後から聞いたところによると、この時点で既に立ち上がれなくなっていたらしい。このスカイプが母と会話を交わした最後で、話題は誕生日プレゼントのリクエストと、よりにもよって津軽三十人殺しだった。

誕生日プレゼントのリクエストは綿百パーセントのパジャマ。百貨店に走り、ワコールの上等なパジャマを手に入れたが、着てもらうことは出来なかった。

このスカイプのたった数日後に母は入院した。がんの痛みを抑えるための薬が強く、頭が朦朧としてしまうため、自宅に一人でいることは危険であること、体力が低下したため抗がん剤治療が出来なくなったため、何よりもまず体力を回復しなければならない、この二つの理由のためだ。その日から己は毎日三回、朝昼夜に母にメールを送ったが、母がメールの長文を読むのもつらいほど、体力が無くなってしまっていたと言う。返信は無かった。

週末は破天荒な友人の結婚式だった。迷ったが、母が結婚式の感想を求めていたこともあり、出席した。何より、母はきっと回復すると信じていたのだ。そして結婚式の翌週は母の誕生日。プレゼントのパジャマを持って病院に駆けつけられる。やっと母に会える。早く会いたい。強く願っていた。

この頃、母の病状が心配で眠るに眠れず、食欲も無かった。しかし食べずに体調を壊して会えなくなっては元も子も無いので、宅配ピザを注文して無理矢理食べたり、結婚式の引き出物のバウムクーヘンを丸齧りするなどして、栄養を摂っていた。

あと一日で会えると思っていた十月三十一日の昼。父から電話があった。自分は外にいた。母の容態が急変したと言う。自分はプレゼントも持たず、新幹線に乗り、タクシーを使って病院に直行した。焦る余り面会申請書を書き間違えたが看護士は病室へと誘導してくれた。

母は目を瞑り、必死で呼吸だけをしていた。

会話は出来なかった。妹と、遠方の親族も駆けつけてきてくれた。祖父母と伯母達みんなが泣いていた。父は悲しみをこらえていた。

その日父が病室に泊まり、祖父母と伯母達は病院の近くのホテルに泊まり、自分と妹は実家に帰った。そして朝の五時に携帯電話の音で目を覚まし、母の呼吸が止まったと報せを受けた。玄関を出たときは真っ暗だった空がだんだんと明けていくのがタクシーの窓から見えた。病室に到着すると父と祖父母と伯母が揃っていた。母はまだ温かかったが、手を握っても握り返してはくれなかった。

このとき、妻を亡くした人と、母を亡くした人と、子を亡くした人と、姉を亡くした人を同時に見て、自分もその中の一人であることに現実感を得られず、ただただ悲しくて、あぁ、六年間もあったのに、自分は何も出来なかったと悔やみ、泣き疲れて、疲れた。



葬儀が終わり、お骨になった母と実家に帰ってからは、母の書棚にある本を読んで過ごしていた。本の中で紹介された別の本のタイトルに直感が働き、きっとこれは母が読んだに違いないと思い、書棚を漁ると該当の本が出てきて嬉しかったが、それを語る人はいなくなっていた。このときになって、自分は、趣味を語り合える人を亡くしたことを思い知らされた。面白い箇所を見つけ、普段であればそのおかしみを共有出来る人がいなくなってしまったのだ。

あぁ。年老いた両親が、白髪になっても仲睦まじく、二人で台所に立ったり、映画に行ったり、散歩をしたりする後姿を眺めていたかった。

通夜ぶるまいで、父とともに記憶をなくすまで呑み、お骨とともに日常に立ち返った気でいたが、その実呆然とし続けていただけかもしれない。喪失感と悲しみが表れては落ち着き、波のように繰り返され、どうにもまだ現実を受け止め切れていない。

生きて行くのは大変だと、思いながら生きている。
ただ。がんの痛みからようやく解放された母を、どうにか己は、祝いたい。



未分類0杯, インストアイベント, 筋肉少女帯, 非日常

「THE SHOW MUST GO ON」の発売を記念して、タワーレコード新宿店でインストアイベントが行われた。トークが九割、曲が一割という構成で、メンバーは普段よりもラフな格好で、楽器はアコースティックギターとウクレレベース。自分は下手の前の方で眺めていて、よく見えたのはおいちゃんだった。開始当初、おいちゃんがオーディエンスにカメラを向けて写真を撮っていたが、もしかしたらそこに写っているかもしれない。そんな位置である。

今回はトークがメインなので、覚えている内容を簡単にまとめてみようと思う。言い回しや順番が不正確である箇所もあると思われるが、だいたいこんな感じ、という風に見ていただけるとありがたい。



■ベストテンランクインありがとうコーナー
まずスタッフからランクインに関してのお礼の言葉が観客に伝えられ、その後メンバー登場。イベントスペースには立ち見の観客がみっしり。何度もスタッフから、「気分が悪くなったら手を挙げてください」とアナウンスされた。

橘「後ろの人見えるー?」客「見えなーい」
橘「距離があいちゃったね★」

オーケンより、10月12日のライブの前にスタッフが楽屋に飛び込んできて、何事かと思ったら「11位になりそう!」と伝えられた話が語られる。そしてライブでもMCでオーディエンスに「ベストテンに入れるかも!」と伝える。

橘「いつもの筋少のパターンなら、ここで11位になるのがお約束なんだけどね」

ベストテンランクインは二十年ぶり。では、二十年前にランクインしたのは何だったのかと言うと、「レティクル座妄想」で、順位は七位。
内「あんなアルバムが七位に…」

そしてランクインはめでたいことだが、「二十年間ベストテンに入ってなかったんだ…」という話に。しかし二十位以内にはわりと入っていて、「蔦からまるQの惑星」も二十位以内にランクインしていた。

大「でもベストテンはやっぱり違う。いろいろ紹介してもらえる!」
本「なんとかティーヴィーとか」

オーケン、「筋少が十位に入ったとき、十一位の人、誰か知らないけどきっと歯噛みしてるよ。筋肉少女帯なんかに! って!」と冗談めかしながら語る。



■アルバム収録曲を一曲一曲解説コーナー

「THE SHOW MUST GO ON」の曲を一曲ずつ解説していくことになるも、オーケンが曲順を覚えておらず、橘高さんとおいちゃんが「一曲目は日本印度化計画」「二曲目は高木ブー」「三曲目は釈迦」「こたつみかん」と嘘の曲順を教え出し、オーケンが「よくそんなにポンポン出てくるね~」と感心する場面が。その後、カンペ代わりに「THE SHOW MUST GO ON」のアルバムがスタッフよりオーケンに手渡される。

●オーディエンス・イズ・ゴッド

歌詞が乗る前から、お客様への感謝の気持ちがあった…というように語られていたような気がするが、だいぶ忘れてしまった。

●労働讃歌

オーケンの「OTODAMAと氣志團万博で練習した」という発言から「練習!? 流石ベストテン様は違うな!」というようなツッコミが入る。そこから、OTODAMAか氣志團万博のステージ横でも練習し、恥ずかしかったという話が内田さんから。

大「バンドをやる限りこの曲を練習し続けるんでしょうね」

●ゾロ目

大「ゾロ目が一曲目でも良かったかも」
橘高さんにとっては「くるくる少女」や「再殺部隊」のような世界観の曲。

●霊媒少女キャリー

橘高さんは怖い曲を作りたくて、そういう音をたくさん入れたとのこと。
オーケンはこの曲の聴かせどころがわからず橘高さんに質問した。「交渉人とロザリア」も同じく聴かせどころがわからなかった曲。「霊媒少女キャリー」はアーヴァンギャルドの容子さんが入ってくれたことで上手くまとまった。

●ムツオさん
本「ネット界で話題になってますね」
作曲者の内田さん曰く、レティクル座妄想収録の「ワダチ」の反省を生かして作られた曲。レティクル座のときは固くて、そのため重々しいワダチのような曲が出来てしまったとのこと。

●みんなのうた

ファンタさんがベースを弾き、オーケンが歌ってデモテープを作ったのに、スペシャルサンクスにファンタさんの名前を入れるのを忘れてしまった、とオーケン。そこで盤面に「ファンタ」と記入するように、とオーディエンスには命じられる。
橘「今日の宿題だよ★」

時間の都合上、全曲を解説は出来ないのでトークを「最近の話題」に変更。



■最近の話題コーナー

橘「WOWOWで月末に氣志團万博が放送されるからみてね!」

五十歳になったからというわけではないが、おいちゃんは最近、週二日はビールを呑まなくなった。ラーメンも今年はまだ四十杯しか食べていない。結果、体の調子が良いらしい。
大「ラーメンは健康食って言ってたのに!」

おいちゃん、夜中に咽喉は渇くものの、ビールを呑みたい欲求しか無いため咽喉がカラカラでも他に呑みたいものが無く、仕方なく水を飲んでいる。オーケンはどうしてもビールを呑んでしまって止めることが出来ないらしい。

お酒を呑まないと、呑んでいた頃の時間が余ってしまい手持ち無沙汰になるという話へ。おいちゃんも手持ち無沙汰になり、狂ったように勧告映画を三本続けて観てしまったことがあったそうだ。

大「韓国映画は狂わなくても見られるでしょ!」

内田さんは最近忙しくて休みがなかった。そして休めた日は一日家にこもってゲームをしていた。

いろいろやるが、歌舞伎町で悪い人になったりするゲームもするらしい。
橘高さんが「キャバ嬢育てるの楽しいって言ってたもんな!」と言った後、慌てて「実際は絶対できないもんな!」と内田さんのイメージを守るためか、フォローを入れていたのが面白かった。内田さんは両手で何かを掴んで持ち上げる仕草をし、「うん、看板で殴ったりする」と語っていた。

大「ずっと家の中にいて煮詰まらないの?」
内「ぜんぜん」
大「天気の良い日に散歩したりしたくならないの?」
内「したいときはする」

「ゲームの中でするんだろ!」「ゲームの中で釣りとかするんでしょ!」とツッコミが四方八方から。

ゲームの話の流れで、オリコンベストテンと勇者はどっちが偉いのか、という質問がオーケンから内田さんに。すると内田さん、「一位でも世界は救えない」と一言。その謎の重々しさに場内が水を打ったように静まり返り、一泊置いてから、勇者でも現実の世界は救えないだろう、というツッコミが入った。



■曲順についてのコーナー

オーケン、すかんちの「DOUBLE DOUBLE CHOCOLATE」の一曲目に驚いたが、すかんちのメンバーから「どんな曲でも慣れるよ」と言われさらに驚いたらしい。そこから曲順の話へ。

「意外と一曲目がゾロ目でも良かったかもしれない」
「一曲目がムツオさんでも良かったかもしれない」
「最初と最後がムツオさんでも良かったかもしれない」

曲順からムツオさんいじりになり、「ムツオ讃歌」「月に一度のムツオさん」といったタイトルが生まれ、橘高さんの言った「月に一度のムツオさん」にオーケンが大うけし、三十日ごとにやってくるムツオさんを想像して「嫌だ!」と笑っていた。

ここからまた曲順に話が戻る。

橘「曲順や曲間の間も何秒って、ちゃんと考えてるんだよ。取り込んでシャッフルで聴くと曲間も全部同じになるから、最初はCDで聴いてね、後で圧縮してもいいから。」
「今のところCDが一番良い音だからね」と、まずはCDで聴いて欲しいと念押し。



■どんな特典だと嬉しいかコーナー

オーケン、トレカがあんなに人気とは思わなかったそうで、他にどんな特典がついていたら嬉しいかを観客に募り始める。

●筋少カレー …まあまあ人気だが、食品は消費期限があるため難しいという結論に。
●ヌンチャク …需要はある様子。
●トレカとヌンチャクならどっち? …断然トレカ

橘「トレカ50種類くらい作れば良かったね!」

特典繋がりで、昔KISSのアルバムについていた「ラブ・ガン」の紙鉄砲は扱いに困ったらしい。橘高さんは畳んでしまいなおしたと言っていた。



■演奏コーナー

そろそろ曲をやりましょう、ということで、一曲目に入れても良かった「ゾロ目」。アコースティックのゾロ目は新鮮だった。

アルバムが売れたためレコード会社が喜んでくれ、来年の予定も立ち始めたとのこと。オーケンが「気もそぞろで待っててね」と言って「気もそぞろ」へ。

演奏終了後、オーケンは「決めぜりふを考えました」と言い、指でピストルを作りバシッと決める。

「次回もショーマストゴーオン!」

イベント終了後はサイン入りポスターをスタッフより手渡された。約一時間、あっという間のイベントだった。楽しかった!



未分類0杯, 核P-MODEL, 非日常

平沢のライブ最終日。とりあえずこれを先に言っておこう。銀髪に関する発言は無し! ゆえにその理由も、地毛かかつらかもわからないままライブは終わった。

とはいえ二回目ともなれば銀髪の平沢も見慣れるもので。もうずっと銀髪だった気さえしてくる。と、言うのは言いすぎか。

今回はびっくりするほど良い番号。百十番台という己にとっては奇跡の数字で、おかげで平沢の目の前、前から三列目からがっつり堪能することが出来た。頭のてっぺんから爪先までしっかり見えるこの贅沢。今まで観たライブの中で一番平沢に近い位置である。目尻の皺まで見えた。しかしその距離から見ても銀髪の正体が何かわからなかったのだ。

ちなみに初日の位置は真ん中の柵数歩前、という位置で、場所柄ゆったりとしたスペースが確保出来た。対して今回は前方スペースゆえ、しっかり圧縮されたが、前日が筋少のライブだったこともあり、押されるだけで楽だなーと思った。折りたたみやダメジャンプ、ヘドバンが発生しないだけ楽に観られる。無論、押し合いへし合い状態で、挙げた腕を仕舞えなくなることもあるのだが。この程度であれば自分にとっては想定内である。

ただライブ慣れしていない人にはきつかったかもしれない。平沢前三列目という位置にも関わらず、周囲には巨大なリュックサックや傘を持ち込んでいる人が少なくなく、多分これは、圧縮状態になることが想定外なのだろうと思われた。彼ら彼女らが心から楽しむことが出来たか、ちょっと気がかりである。

さて、以下はセットリストである。これは公式のTwitterより拝借した。


アンチ・ビストロン
SPEED TUBE
гипноза (Gipnoza)
排時光
それ行け!Halycon
ナース・カフェ
脳動説
王道楽土
アンチモネシア
庭師KING
帆船108
Astro-Ho! Phase-7
Big Brother
Parallel Kozak
フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ
Black in White
パレード
KINGDOM
救済の技法

~アンコール~

Town-0 Phase-5
Timelineの東

今回は前方に位置取り出来たこともあり、オープニングからの動きもしっかり目にすることが出来た。ヒラサワとPEVO1号は円錐型の巨大な筒を肩に担ぎ、その筒には銃を思わせる一つの取っ手があり、全体はマーブル模様に塗り込められていた。

そして筒を立てる形で地に置き、中央に鎮座するテスラコイルの両脇に配置される掛け軸、さらにその外側に垂らされた二本の紐を、ヒラサワとPEVO1号が掴んで腰を落として引くと、掛け軸に液体が充填される映像が映され、掛け軸はスクリーンに化ける。そして一曲目がアンチ・ビストロン!

かなりアレンジが効いていて、原曲よりも長く、どこか人を喰ったような印象があった。

二曲目はSPEED TUBE! 今回びっくりしたのは曲の入れ替わりが激しいこと。てっきり、前日ほぼ同じ曲で、曲順だけが入れ替えられるかと思いきや、嬉しい誤算である。聴きたくて聴きたくてたまらなかった「暗黒πドゥアイ」が今日なかったり、「排時光」が今日聴けたり。あぁ、やってくれるなぁ。ありがとうヒラサワ!

「それ行け!Halycon」ではスクリーンで踊り狂うHalyconを楽しみつつ、ヒラサワとPEVO1号の動きも面白かった。アルバムでキーボードソロの箇所、初日はギターで代替されていると思っていたのだが、活躍していたのはテスラコイルであった。

次からはソロの時間。これも初日は気付かなかったが、レーザーハープのレーザーはこれまで鳴りを潜めていて、「それ行け!Halycon」が終わって始めて、グリーンのレーザーがステージと客席を交差する。代わりに掛け軸が沈黙するという仕掛け。視覚的にもこんなに楽しませてくれるのが嬉しい。

ナース・カフェで盛り上がり、脳動説、王道楽土。王道楽土のシャウトはかつてのライブDVDで見たときよりも控えめのように見えた。単に目を伏せていたからそう見えただけかもしれないが。

そうだ! 初日と三日目、別の位置で見て気付いたこと。近くで観た方がヒラサワの地声が聴こえやすく、わかりやすい。初日は真ん中あたりで観ていたため、バックミュージックとヒラサワの声が同化して、まるでCDの音声をそのまま流しているかのように聴こえる箇所もあったのだ。ところが間近で聴くとやはり地声は地声で違いがわかり、あぁ、ヒラサワの声だ!! と嬉しくなったのだ。

アンチモネシアでは筒を持って地面を付く謎のパフォーマンス。今回、足元まで観られたが、やはりあれが何を意味するパフォーマンスなのかはよくわからなかった。

庭師KINGの次は帆船108、Astro-Ho! Phase-7で、聴かせていただきありがとうございます! と心の中でひれ伏した。

Parallel Kozakでの無表情のギタープレイが楽しい。手元がよく見えるのでしっかり凝視しつつ、挟み込まれる耳慣れたフレーズに期待が高まり興奮する。やってくれるか。今日もやってくれるのか。

フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッだ!

あー、もう。これをこの年でやってくれるってんだから、たまらないなぁ!!

「フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ」の後はさらに声が伸びやかになっているように聴こえたのは気のせいだろうか。特に「KINGDOM」の声の広がりが素晴らしく、この会場にいられることを心から感謝した。

本編ラストは「パレード」。「キミの影を食い」「キミの名の下に」の箇所がオリジナルより低い歌い方で、それがまた色気があった。もしかしたら高音が辛い、という理由のアレンジかもしれないが、それでも良し! 歳を重ねつつ、年齢にあわせたアレンジをしつつ、活動を続けてくれることを己は歓迎する。

アンコール一曲目に入る前、特にMCは無くサラリと「Town-0 Phase-5」へ。これも嬉しい! こんなにも曲を入れ替えてくれてありがとう!

最後の最後の曲の前にちょろっとMCが入った。台風で本日帰れなくなった人を挙手させ、「よし」と一言。そしてやや上がる口角。何が「よし!」なのかと思いつつ、すっかり魅了されるのだから困ったものだ。

そのうえでラストは大好きな「Timelineの東」で、多幸感に満ちたままライブが終わり、帰り道己のブーツは雨でびしょぬれになったのだが、そんなことなど物ともしないくらい、楽しい一日だった。

あぁ、濃い三連休だった。



未分類0杯, 筋肉少女帯, 非日常

いやあ楽しかった。

昨日が平沢進のライブだったこともあって昼過ぎに起床し、家にあったフルーツグラノーラに牛乳をかけてこれを食し、整体に行って本日の会場赤坂ブリッツに到着。しかしここで腹が減り、この後の運動量を考えるとフルーツグラノーラだけではエネルギーは足りなかろう、何か腹に入れなければ相成らん、とうろうろしていたら赤坂ブリッツのすぐ手前の小さな広場に屋台が出ており、ちょっとしたオクトーバーフェストが開催されている。ビールの祭典である。ビールの!

そこから先は言うまでもない。いそいそとドネルケバブとビールを買い求め、ライブ前の至福のひと時を過ごしたのであった。ライブ前に美味しいビールを呑めるなんて何て幸せなんだろう、と喜びを噛み締めつつ味わった。

しかし! 喜びの本番はこれからである。六月ぶりの筋肉少女帯のライブ! それも新譜発売直後! 四年四ヶ月待ちわびた新譜を引っさげてのワンマンライブである。新譜が発売されてから今日までひたすら新譜を聴いていた。ばっちり頭に入っている。そんなあの曲やこの曲を、どのように演奏してくれるのか。楽しみでたまらないじゃあないか!

では、まずはセットリストの方を。


オーディエンス・イズ・ゴッド
タチムカウ~狂い咲く人間の証明

ゾロ目
カーネーション・リインカーネーション
香菜、頭を良くしてあげよう

ゴーゴー蟲娘
ムツオさん
みんなの歌

青ヒゲの兄弟の店(おいちゃん橘高さんボーカル、オーケン退場)
愛の讃歌(血まみれ白ハット白スーツオーケン)
小さな恋のメロディ(橘高さんボーカル、オーケン退場)

労働讃歌
ハッピーアイスクリーム
これでいいのだ
パリ・恋の都
気もそぞろ

~アンコール~

霊媒少女キャリー
釈迦
トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く


「オーディエンス・イズ・ゴッド」と「みんなの歌」は、歌詞の性質もさることながら、ライブ映えする曲だと思った。特に「みんなの歌」は化ける。ライブでの定番の煽りがそのまま歌詞に取り入れられ、CDではそのおかしみを楽しむことができて、ライブでは歌詞のままスルリと煽られる状況に持っていかれるのが面白い。まるでライブをするために存在している曲のようだ。

今回のライブでは、オーケンは語りのシーンで本を持ち、それを朗読する形を取っていた。本の表紙は「ステーシー」で、恐らく内側に歌詞を挟み込んでいるのだろう。単にカンペを見るのではなく、本を持つことで「朗読」という演出になるのが良い。しかし同時に少しの違和感もある。それは今も自分はオーケンに「即興詩人」のイメージを抱いているせいである。実際に見たことが無いにも関わらず、過去の書籍や音源、映像作品に残っている、その場で物語を紡ぎ出し止まらなくなる、ちょっと目つきのおかしいオーケンのイメージが強く、その姿への憧憬があるのである。

ただ、今のオーケンと昔のオーケンが違うことはわかりきったことである、それは歌詞にも表れていて、興味の対象も一目瞭然だ。今はとにかくライブがやりたくて、怪しいものにも興味を引かれつつ、自分を慕ってくれる愛娘への憧れもありながら、何だかんだで生きるのが楽しい状況のように見える。

ただ、それが良いんだよなぁ。

クラスの女子と喋れず、映画館に通いつめ、表現欲と性欲を抱え込んでいた少年が。キノコを食べてバッドトリップし、心のバランスを崩し、メンバーと喧嘩してバンドを凍結した青年が。四十代になってニコニコ出来るのは素晴らしいことだ。その「変化」が存在していることに勇気をもらえる。だから自分は、過去の危ういオーケンに憧れを抱きつつ、今のオーケンを心底格好良いと思うのだ。

だいぶ話がそれてしまったので今日のライブの話をしようか。一曲目「オーディエンス・イズ・ゴッド」は、「のっけから神業~どうぞ!」の、「どうぞ!」と同時に橘高さんとおいちゃんがバリバリギターを弾き始めるのが非常に格好良かった。この歌詞も今の筋少ならではだよなぁ。

三曲目の「ゾロ目」に入る前のMCはオリコンチャートの話。ここに限らず、今回はこのオリコンチャートが話題に上ることが多かった。何と初日のデイリーランキング六位に入ったということで、もしかしたらウィークリーランキングのベストテンに入れるかもしれないとのこと。もし入ったら二十年ぶり、レティクル座妄想以来のベストテン入りだそうで、「ベストテンに入ったら俺達調子に乗っちゃおうか!」と楽しげに語らっていた。入って欲しいなぁ。入ってくれないかなぁ。

「ゾロ目」は流石にライブではヌンチャク歌唱はせず、普通に歌っていた。そりゃあまあそうだよな。そしてゾロ目で盛り上がった勢いでカーネーション・リインカーネーション! やったあ大好きな曲だ! この重低音が心地良い。

「香菜、頭を良くしてあげよう」を皆で合唱し、またMCへ。ここでもオリコンチャートの話。そこでオーケン、CDが売れたら少しお金が入ってくるだろうから、でも僕は高等遊民だからそんなの関係ないけど、内田さんもCD売れたら入ってくるでしょ、そしたら僕にウクレレ買ってちょうだい! と、よくわからないトークをした。ここのところ、本当に意味がわからなかった。

いや、高等遊民だから内田さんにウクレレを買ってあげるよ! という流れならわかるが、何で高等遊民に内田さんがウクレレを買ってやらねばならんのだ。無論これは本気のトークではなく、次の曲に繋げるための芝居なのだが、それにしてもよくわからなかった。

そんなオーケンの謎のおねだりを内田さんは一蹴し、代わりにと持ってきたのが! まさかの秘密兵器、一弦ベース! ということはあの曲である。やったあ! 「ゴーゴー蟲娘」だ!!

今日聴けるとは思わなかった曲第一位である。嬉しいなぁ。さらに、次は期待の一曲「ムツオさん」! ダンサブルで楽しい曲である。この歌をこんなに楽しく踊ってしまって良いのだろうか、という背徳感がまた楽しい。しかもオーケン、間奏で引っ込んだかと思ったら、頭に筋少タオルで鉢巻して、懐中電灯二本を差して再登場! やってくれたぜ!!

おかしかったのは次の「みんなの歌」もムツオさんコスプレのまま歌っていたことである。それでいいのか。そのままいくのか。

「みんなの歌」を歌った後オーケンが退場し、おいちゃんふーみんで「青ヒゲの兄弟の店」。さてもう一曲くらいあるかな、と思いきや、ステージに現れたオーケン! 血を浴びた真っ白なハットとスーツに白マイクという出で立ち! そしてマイクのコードをぴしゃんぴしゃんとまるで長縄跳びを波打たせるように操りつつ、非常に気持ち良さそうに「愛の讃歌」を歌ったのであった。

そのぴしゃんぴしゃんをやる仕草はコミカルで、くすくすと笑いが漏れ、オーケン自身も真面目に歌いつつ、ちゃかそうとしている面が感じ取れたが、オーケン本当に上手くなったよなぁ…としみじみ感じた。感じつつも笑った。

気持ちよく歌ったオーケンはサラリと退場し、今度は何と橘高さんがギターを弾きながら「小さな恋のメロディ」を熱唱! あの曲を弾きながら歌うのか! と圧倒されてしまった。橘高さんの働き振りがすごい。

労働讃歌は盛り上がった。「ぐーるぐる!」のところで腕を回すのが楽しい。ラップ部分ではワインライダーのように、メンバーが楽器を下ろしてマイクを片手に大熱唱! うーん格好良いおじさん達だ。

本編最後は「気もそぞろ」。和やかな雰囲気で終わるのも良いなぁと思いつつ、「みんな歌ってー!」と合唱を促すオーケンに、いくら何でも発売から一週間も経っていないのにそれは無茶振りだよオーケン、と思った。

アンコール一曲目は「霊媒少女キャリー」。エディのピアノが堪能出来る美しい曲だ。「THE SHOW MUST GO ON」は蔦Qよりもさらに、エディの見せ場が増えているように感じる。サポートとはいえ筋少にとってはなくてはならない存在であり、その存在が増していくのはファンとして嬉しい。

ラストは定番曲の「釈迦」「トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く」だったのだが、正直ちょっと拍子抜けした。何故なら最後に来るのも「恋の蜜蜂飛行」だと思ったからである。思った、というよりも願ったが正しいか。確かにトリフィドも好きなのだが、好きなのだが! 新譜のライブだし、「恋の蜜蜂飛行」、聴きたかったなぁ! ブンブン叫びたかったよ!

他、新譜では「月に一度の天使(前編後編)」「吉原炎上」「ニルヴァナ」が演奏されなかったので、これは次回のライブに期待するしか無いだろう。欲しがり神様は貪欲なのである。あぁ、是非、蜜蜂飛行は聴きたい!



未分類0杯, 核P-MODEL, 非日常

平沢が白かった。

いや、違う。いや、違わないが。本日参戦したライブ「HYBRID PHONON」。平沢進と核P-MODEL、同一人物による別名義のコラボライブというもので、シンフォニックで壮大なソロと、破壊的で刺激的なテクノサウンド、二つを一日で楽しめる非常にお得なライブだが、とにかく、何だ、平沢が白かった。

髪が真っ白なのである。

自分の整理番号は千番以降。開演当初、今日はゲストが二人いるのかと思っていた。下手が白髪。上手がスキンヘッド。そして後々平沢が中央に登場するのだろうと。しかしあにはからんや、下手の白髪が歌い出し、その声はまさにあの黒尽くめの印象が強い、平沢進その人の声だったのである!

遠目ゆえ、白髪のかつらを被っていたのか、地毛なのかは見極めることが出来なかったが、髪はふんわりとしていて、普段より長かったように見えた。恐らくかつらだろうと思うが、何でまたかつらを被ったのか。還暦記念にイメージチェンジか。単に度肝を抜きたかったのか。それともかつらではなく地毛で、真っ白なのが本来で今までは黒く染めていたのか。わからない。

白髪に白衣の真っ白な出で立ちがあまりに衝撃的すぎて、前回のライブ「パラレル・コザック」で聴けなかった「暗黒πドゥアイ」をついに聴けて嬉しいとか、「ナース・カフェ」の掛け声が「SWITCHED-ON LOTUS」バージョンで珍しく感じたとか、まさかの「Black in White」に興奮したとか、「Parallel Kozak」から「フ・ル・ヘッ・ヘッ・へッ」への流れがたまらなかったとか、いろいろあるにも関わらず、白髪に全てを持っていかれた。それほど衝撃的だったのである。

魔導物語・ぷよぷよのキャラクターであるシェゾ・ウィグィィが還暦を迎えたらこんな感じなのだろうか…。などと、ライブと全く関係のないことを思い浮かべもした。

以下はセットリストである。

アンチ・ビストロン
Rocket Shoot
гипноза (Gipnoza)
暗黒πドゥアイ
それ行け!Halycon
ナース・カフェ
ナーシサス次元から来た人
王道楽土
アンチモネシア
庭師KING
現象の花の秘密
聖馬蹄形惑星の大詐欺師
Big Brother
Parallel Kozak
フ・ル・ヘッ・ヘッ・ヘッ
Black in White
パレード
KINGDOM
救済の技法

~アンコール~

白虎野
Timelineの東

聴けて嬉しかったのは「暗黒πドゥアイ」「庭師KING」「現象の花の秘密」「フ・ル・ヘッ・ヘッ・へッ」「パレード」「救済の技法」「白虎野」「Timelineの東」である。特に「暗黒πドゥアイ」は嬉しかった。前回本当に聴きたくて聴きたくて、聴けずにがっかりしたのである。ついに満願成就の夜が来た! と言っても過言では無いだろう。

ステージの中央にはテスラコイルがあり、その両脇に掛け軸のような形状の縦長のスクリーンがあった。下から上へ文字や歌詞が流れたり、Halyconが踊り狂ったり、白虎野の風景が映されたりと凝った映像演出がされていた。

そして掛け軸の手前にはレーザーハープが設置され、上手と下手のステージを繋ぐレーザーが一本と、スタンディングエリアに向けて数本のレーザーが放たれていた。太い緑色の光線はド迫力で、スクリーンとあわせて視覚的な演出が非常に凝っており、ヒラサワワールドが全開に繰り広げられている。

下世話な話だが、ステージ演出のための予算が確保出来ているんだな、と思った。自分自身も例の「唯じゃない」発言がきっかけでヒラサワを知り、気付けばどっぷりはまっていたクチである。思いがけずとはいえ新規の流入が発生した結果なのだろう。年々、少しずつステージセットが壮大になっていくのが実に嬉しい。

で、ヒラサワである。白い。とにかく白い。

まぁ白いのは置いておいて。「アンチ・ビストロン」から始まり「гипноза (Gipnoza)」に至るまでもたまらなかったが、やはり目玉は「暗黒πドゥアイ」。どんだけ好きなんだ、と言われるかもわからないが、とにかくこれが聴けたのが嬉しくてたまらなかった。これに関しては特に特別なアレンジはされていなかったように思う。

そして「それ行け!Halycon」で、スクリーンで踊り狂うコミカルでキュートなHalyconさんを堪能した。今回、キーボードソロの箇所はギターに置き換えられていたように記憶しているが間違っていたら申し訳無い。

「ナース・カフェ」からしばらくはソロのターン。「王道楽土」のシャウトは実に格好良かった。自分はシャウトがどうしても好きでたまらないらしい。

さて。「アンチモネシア」でヒラサワとゲストのPEVO1号が、巨大な紙の筒のようなものを持ち、それで足元を突いたり、メガホンを構えるかのように口元に持ってきたりといった動作を繰り返していたが、あれがどういうパフォーマンスなのかはよく理解出来なかった。ヒラサワの上半身しか見えなかったゆえ足元に何があったのか確認出来なかっただけに気になる。しかしそれ以上に白髪が気になる。何で真っ白なんだ。何なんだいったい。

「現象の花の秘密」はわりと最近の曲のわりに随分久しぶりのように感じられたのは、「ノモノスとイミューム」のDVDを待ちわびているせいかもしれない。今日もあの、エンディングでの素晴らしいパフォーマンスが脳裏に浮かんだ。早くDVDを販売して欲しいものである。

「Big Brother」は前回のパラレル・コザックと同じアレンジ。次はギターを思う存分堪能できる「Parallel Kozak」。これが今回すごかった。

曲の最中でどこかで聴いたこのあるフレーズが入り、しかし正体を掴めず、何だろうと次を待っていると挟み込まれる音。あ、これはとついに気付き、期待値が高まる中で始まる「フ・ル・ヘッ・ヘッ・へッ」!

持ってくるか! ここで!!

六十歳、還暦のヒラサワによる「フ・ル・ヘッ・ヘッ・へッ」! これをこのタイミングで突っ込んでくるヒラサワの格好良さったら! 老いも疲れも知ったことかと我が道をひた走るヒラサワの姿が見えた気がした。まさかこれを生で観られるとは思わなかっただけに興奮した。

本編最後は「救済の技法」。これもライブで聴くのは初めてだ。一番最初に手にとったヒラサワのアルバムが「救済に技法」なだけに嬉しい。これがきっかけでどっぷりはまり、ここまで来てしまったのだ、自分は。

大歓声のアンコールの中現れたヒラサワはちょっとだけ喋ってくれ、さりげなく物販の宣伝をし、ギターのチューニングをし、とサービスしつつ、白髪の理由は全く語らないのが実にらしい。アンコールの二曲「白虎野」と「Timelineの東」はどちらも大好きな曲で、特に「Timelineの東」は己の中で鮮度の高い曲なので、終わりの寂しさを噛み締めつつ、多幸感に浸ったのだった。

とはいえやはり白髪の理由が気になって仕方がないので、どうか三日目には触れて欲しいと願っている。あぁ、思う壺だ!