最高のお祭り騒ぎだった! 何てったって、何てったって、何てったって、「ペテン」を! 聴けたんだよ!!
イントロが始まったとき、「マジで!? ウソ!! うわああああああああ」と叫びが口をついて出た。昨夜のライブで「ペテン」が演奏されることを知っていたが、ライブが発表されたとき、己は既に別のライブのチケットを手にしていた。その選択を後悔してはおらず、心の底から「行って良かった!!」と思い、存分に楽しんだが、いつかまた、「ペテン」をやってくれんかなぁと思っていたのだ。復活前に筋少を知って、何度も何度も繰り返し聴いた曲の一つが「ペテン」で、強い思い入れがあったのだ。どうしてもいつか聴いてみたかったのだ。
その「いつか」が来たのである。思いもがげず、ものすごく高速で。その機会はやって来たのだ。そりゃあ叫ぶよ。叫んでしまうよ。叫んでしまったよ!
そしてもちろん、「ペテン」で終わらず、その後も次から次へと興奮する事象がやってきたのであった。
以下はセットリストである。正直、ちょっと「ツアーファイナル」と「俺の罪」の位置に自信が無い。後半は多分合っていると思う。
サンフランシスコ
モーレツ ア太郎
ツアーファイナル
ペテン
俺の罪(オーケン&内田さんボーカル、メインオーケン)
スラッシュ禅問答(橘高さんボーカル)
ロシアンルーレット・マイライフ
日本印度化計画
スクリーン降臨~ライブ発表~ブルドッグ映像公開~新譜制作決定発表!
リテイク
孤島の鬼(サンダーユーの演奏)
機械(ゲスト:妖精帝國)
マタンゴ(シスベリ筋少/ゲスト:横関さん太田さん)
キノコパワー(シスベリ筋少/ゲスト:横関さん太田さん)
中2病の神ドロシー(ゲスト:太田さん/横関さん退場)
イワンのばか(現筋少/太田さん退場)
~アンコール~
電波ブギー(ゲスト:河塚さん)
仲直りのテーマ(オーケン着席のかわいいバージョン)
ドナドナ
釈迦
個人的目玉は念願叶った「ペテン」、橘高さんボーカルの「スラッシュ禅問答」、降臨するスクリーンとブルドッグ映像と新譜発表、「リテイク」、「孤島の鬼」、太田さんの語りから始まる「キノコパワー」、太田さんドラムの「中2病の神ドロシー」、そして激しい演奏の中椅子に座ってにこにこしながら頭をコテンコテン左右にゆっくり振りつつ甘えた口調で歌うオーケンの「仲直りのテーマ」。うーん、目玉だらけだ。
まず今日は登場SEが「21世紀の精神異常者」だったのも良かった。これはもう、パブロフの犬が如くテンションが上がる。気分が高揚する。その高揚した気分をさらなる高みへ押し上げる一曲目が「サンフランシスコ」! これはもう、後先考えず爆発するしか無い。
続いて二曲目は「モーレツ ア太郎」! 予想外の一曲に嬉しさが爆発した。大好きなんだよ! 特に、復活後のゴージャスなバージョンがたまらなく好きなんだ。歌詞も良い。狂えばカリスマ、吼えれば天才、死んだら神様、何もしなけりゃ生き仏! このフレーズを聴くたびにその皮肉っぷりにゾクゾクする。ライブでは大抵組み合わせが滅茶苦茶になっているのが若干残念だが、これはもう仕方が無い!
「モーレツ ア太郎」が終わった後のMCで、オーケンが「この曲いる?」「短いし、歌詞もモーレツア太郎って叫ぶだけだし」と言っていたとき、全力で「いるよーーーー!!!!」と叫んだのは自分である。いらないわけが無いじゃないか!
「ペテン」はもう、前述の通り、イントロを聴いた途端驚きと喜びで一杯になって、自分はこの世で一番ラッキーな人間なんじゃないか、と勘違いしそうになった。原曲の女性コーラスのところはオーディエンスが担当するが、オーケンが歌詞の頭を口にして先導してくれる。失礼を承知で言うが、その先導してくれている歌詞は合っているのだろうか、とつい思ってしまった。つい。
感無量だったなぁ。
何で自分はこの曲をこんなに好きなんだろう。それは「生も死も全てペテン!」という言葉に表されるように、今までの何もかもが幻だ、と突き放される喪失感と同時に、「死んだと思ったペテン師が生きていた」ように、再生・復活の暗示が含まれているからだと思う。つらいことや悲しいことがあっても、それすらペテンであり、覆される可能性があるという、回りくどい希望がそこに隠されているのだ。
このように思い入れたっぷりなのだが、聴いてみたら意外とふつーに「イワンのばか」や「トリフィド」と言った他の定番曲と溶け込んでいて、重苦しい感じも無く、楽しく清清しく聴くことが出来た。これはやはり、「再生・復活」を経た後だからこそかもしれない。凍結前、「生も死も全てペテン!!」と言い切った直後に聴かされたとしたら、受け取り方も違うだろうなぁ。
「スラッシュ禅問答」の前でお酒の話になり、昨夜レア曲満載のライブをやったおかげで普段よりお酒を呑めなかったことを告白し、「普段より飲まなかったこと」を橘高さんに褒めさせるオーケン。褒めてあげる橘高さんはというと禁酒を始めてから一滴もアルコールを口にしていないということで、そんな橘高さんにオーケンは「もう二日酔いの気分なんか忘れちゃったでしょ?」と振る。すると橘高さんは、「いいや覚えてる!」と反論。ここまで、ただのおもしろMCかと思っていたら、オーケンが「じゃあ、二日酔いってどんな気分だったの?」と振る。あ、これは、とここでようやく気付いた。
叫ぶ橘高さん。「二日酔いの、無念極まる僕のため、もっと電車よ真面目に走れ!!!! って気分だよ!」
直後、びっしりピックを貼り付けたマイクスタンドを手にステージの中央に駆けつけるスタッフ。その前に立つのはもちろんその大量のピックの所有者、橘高文彦である! スラッシュ禅問答をメキメキメキメキ早弾きしながらビブラートを利かせた声で歌う歌う! あんなに指先が高速で動いていて、そのうえであの歌を歌えるってどういうことだ………と思わず見入ってしまった。圧倒される光景だった。橘高さん何かもうすっげえ働いてるって思った。阿呆な感想だが。
袖に引っ込んでいたオーケンが戻ってきて「ロシアンルーレット・マイライフ」。この曲やるの久しぶりだなー。今回はアウトロ前で退場しようとするオーケンの小芝居は無かった。代わり……ではないが、曲中、エディが前に出てきて、おいちゃんのポジションでコサックダンスを披露してくれた。
「皆さんに残念なお知らせです。日本が印度になってしまいます」という変な入りで始まった「日本印度化計画」の後にMC。告知があるということだが、「他のバンドはスクリーンがドーンと出てきて告知が入るのに、筋少は紙ペラ一枚!」「裏に黒のガムテープを貼って透けないようにしてる紙だけ!」と大げさに愚痴る。毎度の自虐ネタにワハハとオーディエンスも沸き立つが、今回はいつもと違った。
何と、本当にスクリーンが下りてきた!!
上手と下手の壁に二つ。まるでUFOに遭遇したかのように沸き立ち、歓声が上がり、口笛まで吹かれる大盛り上がり。ちなみにこの段階ではまだ白いスクリーンが下りてきただけで、告知内容は一切表示されていない。純粋にスクリーンの登場に対して興奮しているのである。あまりの盛り上がりっぷりにオーケンも苦笑して「あのね、これくらい若手のバンドでも出るからね」と言っていた。
スクリーンの映像にオーケンが生でナレーションを入れるという筋少ファンにとっては豪華な仕様で、まずは次回のライブ日程が公開され、さらに次なる予定を公開!! と溜めに溜めて流されたのが、まさかのレア映像。「筋少メンバー四人によるブルドッグ」であった。
いつかの「のほほん学校」で筋少メンバー全員がゴム紐を使い、「ブルドッグ」のカラオケパフォーマンスをしたとのことで、そのときの映像である。この映像が公開されることについてメンバーがどこまで知っていたのか謎なのだが、内田さんは「全部流しやがった……」と毒づいていた。無論オーディエンスは死ぬほど盛り上がった。
「あ~面白いものを観た~面白かった~」と映像終了後ほのぼのしかけたところでついに本当の告知がなされた。内容は「今年秋、新譜発売決定!」というもの。ブルドッグ以上に歓声が上がった。自分も飛び上がった。皆が皆、雛鳥のようにぴよぴよ言いながらわーわーきゃーきゃー喜んでいて、それを見るおいちゃんの表情は嬉しげに見えた。あぁ、もう嬉しいなぁ。ずっと待っていたのだから。ブルドッグも嬉しいが、この告知こそを己は待ち望んでいたのだよ!
このふわふわした空気を一変させたのが「リテイク」。「少しシャンソン風に」ということで始められたのだが、演劇を観ているような迫力があった。歌というよりも語りに近いという点も大きいだろう。ちなみにものすごくどうでも良いが、助監督は退場していた。
次の「孤島の鬼」もすごかった。オーケン、おいちゃん、橘高さんが退場して、内田さん、エディ、長谷川さんのトリオ「Thunder You Poison Viper」による演奏。エディ曰く「筋少の曲をやってほしいと大槻に頼まれた」そうで孤島の鬼がセレクトされたそうだ。歌は無く、内田さんとエディによる「よいしょ」の掛け声だけが入る。序盤はアレンジが入りつつも耳慣れた「孤島の鬼」に近い形で、中盤から名残を残しつつも大胆に変形し、全く別物になりつつも、「孤島の鬼」として認識出来る素晴らしいアレンジだった。あの奇しい孤島が徐々に崩壊していく様を見せ付けられるようだった。
「機械」では妖精帝國の二人がゲストとして参加。ボーカルのゆい氏はデーモン閣下のような設定があるらしく、「○○なのだ」という口調で、敬語が使えないようで、ものすごく喋りづらそうに喋っていた。同期と後輩以外を相手にこの設定を貫き通すのは骨が折れそうだ……と余計な心配をしてしまった。ちなみにギターの紫煉氏は本来喋らない設定のようなのだが、オーケンに「喋っちゃいけないんだっけ」と問われ、「じゃあ喋ります」とあっさり設定を覆していた。ここで設定繋がりで、橘高さんが永遠の二十四歳であることをネタにされていた。
「機械」はゆい氏とオーケンのツインボーカル。女性の声が入ると印象が変わるなぁ、としみじみ思った。そして筋少の歌を筋少メンバー以外が歌う姿を観るのは、何やら不思議で面白い。
ゲストタイムはまだまだ続く。ここで横関さん、太田さんが登場し、おいちゃんと橘高さんが退場。SISTER STRAWBERRYの筋肉少女帯の再現である! うわーうわーうわーうわー。うわー!
まずは「マタンゴ」! トラブルにより横関さんのギターが鳴らないというアクシデントが起こり、一旦始めからやり直したが、「こういうのも八十年代っぽいよねえ」とオーケンが言っていてほのぼのした。とはいえほのぼの出来るのも束の間である。直後、怒涛のマタンゴがやってくるのだから!
自分の立ち位置からは横関さんが非常に良く見えて、指の動きも間近で見ることが出来た。頭の悪い感想だが、指がものすっごく動いていた。というより、激しい曲の中で思考を巡らす余裕が無かったというのが本当のところである。
「マタンゴ」の後、オーケンが「太田明ーーーーー!!!」と大声で名前を呼ぶ。それに応えて太田さんが台詞をつむぐ。
「昔ある歌手は遠くへ行きたいと歌って喝采を浴びたが、遠くへ逃げたいと歌う僕をシスターストロベリーは恥じているようだった」
「え、嘘?」と思ったのが正直なところである。直後、「うわー語ってくれた!」と非常に嬉しくなった。「マタンゴ」「キノコパワー」「ララミー」のどれかをやると思っていたので、「キノコパワー」は予想の範囲内だったが、この台詞まで再現してくれるとは! 無論自分は活動凍結中に筋少ファンになったので、今の今までこの台詞を生で聴いたことが無かった。昨今、「キノコパワー」が演奏されることがあってもこの台詞は無かったし、セルフカバーされたときにもこの台詞は入ってなかった。だから、自分にとっては遠い昔のものになっていたのだ。それが現代に蘇ったのである。
つくづく、何が起こるかわからんなぁと思った。「キノコパワー」終了後横関さんが退場し、太田さんとオーケン、内田さん、おいちゃん、橘高さん、エディで「中2病の神ドロシー」。レコーディングの際に太田さんがドラムを叩いてくれた曲である。この一年、ライブで何度も演奏されてきたが、太田さんがドラムを叩いたのは今日が初めてだ。うーん、感無量。
本編ラストは現在の筋少の編成で「イワンのばか」。定番の盛り上がりで締めくくられた。
アンコールでは飛び入りゲストで河塚さんが登場! おおー! そういえば自分が初めて観た筋少のライブのドラムは河塚さんだったんだよなぁ。原点に返った気分である。そして演奏されるのは「電波ブギー」!
河塚さんのドラムは「ドンシャン!」という音が一つ一つくっきりしていて、音がでかく聴こえた。長谷川さん太田さんより目立つ音がでかい気がする。結構好きだ。
「電波ブギー」が終わった後、オーケンが「次は激しい曲だけど、座りながら歌いたい」「あじゃん(河塚さん)に背中を押して欲しい」と謎の要望を出す。慌てるあじゃん様。「俺がこのライブの行く末を決めるんですか!?」
そしてあじゃん様に背中を押され、椅子に腰掛けたオーケン。いったい何が始まるんだ………と見ていたら御馴染みのイントロが始まり、「仲直りのテーマ」に! これがすごかった。
オーケンは椅子に膝を揃えてちょこんと座り、マイクを両手で持ち、首を左右にコテン、コテンと倒し、にこにこ笑いながら「仲直りのテーマ」を歌った。怒涛のコーラスと弾きまくりのピアノと、打ち鳴らすドラムと奏で上げるギターの嵐の中で。
内田さんが近寄ってきたとき、「いやいや~拗ねてちゃいやですよ~」と内田さんに向けて手をイヤイヤ振り、にっこにこしながら「心を素直に~本当は大好きなんだよね~」と正面を向いて歌っていたのがやけに印象に残っている。どこのMCだったか忘れたが、オーディエンスに向かって「筋少が大好きなんだろー!」と言っていた場面があって、これはまあ単なる感想なのだが、最近のオーケンは以前より「好かれている」ことに対する自信を持っているように思える。慢心じゃなくて自信。故に、それを素直に口に出せるというか。
頭の上に両手を掲げ、○を作ったり、ハートを作って胸から頭上に掲げたり、可愛さを前面に押し出した「仲直りのテーマ」は、歌い方も普段と違った。通常バージョンが「本当は大好きなん、だよ、ねえ!!!!」であるところが、「ほんとはだいすきなんだよねっ♪」になっていた。全体的に平仮名である。ロックの演奏の中でお歌をうたっているようだった。
椅子から立ち上がっての「ドナドナ」はいつもの歌い方に戻り、そのままド定番の「釈迦」で締め。最後、ゲストは登場しなかったが、筋少メンバーは普段よりも長い時間ステージに残り、追い出し曲に合わせて歌ったりふざけたりしていた。ほのぼのと終わりつつ全体を見返せば目玉ばかりの大盤振る舞いで、満足感たるや相当のもの! 確かにこれは「フェス」である。次回の開催を心待ちにしたい。