デビュー25周年記念ファイナルLIVE KST26 since 1988 (2014年6月28日)

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あぁ、素晴らしき多幸感。

やっぱり筋肉少女帯のライブは自分にとって特別なものだ。刷り込みと言っても良い。「格好良い!」「素晴らしい!」「気持ち良い!」「何て楽しいんだ!」と思うライブを己はいくつも知っている。しかし、「しっくり来る」のは筋少のライブだけのようなのだ。一番しっくり来て、あぁこれだ、とずっと欲しかったものを与えられたかのような感覚。自分にとってのライブの原点が筋少なのである。

今日はデビュー二十五周年記念最後のライブで、二十六周年へと突き進む、新たな旅路へ向かうライブである。ライブの中でオーケンは、今後の活動のネックとして「ボーカルオーケンの老人化現象」を冗談のように挙げ、ファンがネットでオーケンをおじいちゃんと呼んでいることを知っていると告白し、傷ついた傷ついたガラスのハートが傷ついたと嘆きつつ、オーディエンスに「おじいちゃーーーん!」コールをさせた。そして同時に、「四十五年後」という途方も無い数字を出して、未来への活動を示唆してくれたのである。

自分の好きなバンドやミュージシャンは自分より二十三十年上の人ばかり。だからたまにふっと先を思って悲しくなるのだ。十年後二十年後、自分が中年になったとき、活動をし続けてくれているミュージシャンがどれだけいるのだろうと。ライブに通う楽しみを持っていられるのだろうかと。だからこそ、今日のオーケンの発言は、例えファンサービスの一貫だとしても嬉しかったな。

開演SEは「21世紀の精神異常者」。これも刷り込みで、自分にとっては筋少のライブの始まりを知らせる鐘のような存在だ。筋少のライブでは必ずこのSEが流れるわけでは無い。だからこそ、これを聴くと気分が高揚し、とてつもなく嬉しくなるのである。

そこから始まったのが「サンフランシスコ」。あぁ、もうたまらないったら。

「サンフランシスコ」は橘高さんのギターとエディのピアノの鍔迫り合いが最大の見所だが、内田さんのベースソロも見逃せない。筋少は楽器が多いため、ベースの存在が他の楽器に比べるとあまり目立たないのだが、「サンフランシスコ」ではスポットライトの当たるベースソロがあるのである。この歪んだ音がたまらなく格好良い。紫のライトに照らされた内田さんは、朴訥とした印象のある人だが、一転、いつもこのベースソロでは艶かしく見える。それは何か、まるで普段見えないある一面が炙り出されたかのようだ。

このあたりでおぼろげなセットリストを記しておこうか。順序に間違いがあるやもしれないがご容赦を。


サンフランシスコ
アウェーインザイラフ

暴いておやりよドルバッキー
飼い犬が手を噛むので
労働者M(内田さんボーカル)
カーネーション・リインカーネーション(おいちゃんボーカル)

君よ!俺で変われ!
これでいいのだ

香菜、頭をよくしてあげよう
Guru
ワインライダー・フォーエバー

ツアーファイナル
バトル野郎~100万人の兄貴~
機械
イワンのばか

~アンコール~

新人バンドのテーマ
中2病の神ドロシー
釈迦
トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く


嬉しかったのは「飼い犬が手を噛むので」「暴いておやりよドルバッキー」、驚いたのは「カーネーション・リインカーネーション」。「飼い犬が手を噛むので」をライブで聴いたのは初めてで、イントロを聴いたとき、何が始まったのかわからなかった。ライブではあまりに耳慣れないものだったので。

ライブアレンジとして「素敵な審査員の皆さん」でメンバー紹介。おおー、筋少メンバーに審査されるのか、と思いつつ聴いていると、ラストに何と「日本青年館に来ているあなた達」も素敵な審査員に加わり、バーンと終わった。「ダメな奴はダメだよーーーー!!」と言う叫びは無く、あれ、これライブの流れとしては面白いけど、ストーリー的には良いの? 叩き潰されるべき我々が素敵な審査員の列に加わっちゃって良いの? と思った。

あと、「飼い犬が手を噛むので」で、エディが曲中にパイプ椅子を持って歩いて橘高さんの横にどっかり座り、橘高さんのギターソロをじーっと見て、ソロが終わったらまたパイプ椅子持って今度はおいちゃんの横に移動して、おいちゃんに背を向けて何もない下手を眺めていた。その他でも今日のエディは一段とフリーダムで、奇怪な動きに気付いて目が釘付けになることが多々あった。

「暴いておやりよドルバッキー」はひそかにずっと聴きたいと思っていたので、始まったときの興奮たるや! あの「バッキーバッキードルバッキー」の、内田さんの野太いコーラスが耳に心地良くて大好きなのだ。とても満足した。

そういえばドルバッキーで、オーケン変声器使ってなかったね、今回は。

さて。最近のライブではオーケンが途中でステージから脱出し、代わりに他のメンバーが歌う形が定型化されているが、今回は内田さんが「労働者M」を、おいちゃんが「カーネーション・リインカーネーション」を歌ったのだが、おいちゃんのカーネーションがとても素晴らしかった。

と言うのも、自分は「カーネーション・リインカーネーション」が大好きで、それこそライブのたびにやってくれても構わないが、大好きなので出し惜しみして欲しい、という厄介な欲求を抱いているほど。だから今日、オーケンじゃなくおいちゃんが歌うと聞いて、瞬間がっかりしたのである。あぁ、せっかくのカーネーション、オーケンのカーネーションを聴きたかったな、と。

ところが。始まりと同時にがっかりは消し飛んだ。おいちゃんの「カーネーション・リインカーネーション」が凄まじく良かったのである。

あの低い声がバツグンに合うのだ、そして間奏では声をひそませ、だんだんとボリュームを上げていき、最後に弾けるような声でシャウト。オーケンの歌い方をなぞるのではなく、おいちゃんならではのアレンジが入った「カーネーション・リインカーネーション」。背筋が続々した。

「Guru」は人気のわりに、自分はあまりグッと来ず、何となく筋少ファンの中でアウェーを感じる曲なのだが、背もたれに体重を預け、ゆったりとしながら脳を空っぽにして聴くと、純粋に音が心地良かった。

そうだ。そういえば今日のオーケンは咽喉の調子が良かったように思う。「アウェーインザライフ」の「ホームに変えろ!」の箇所は、ライブでは低音で歌うことが多かったが、今回はCDのように! 高音でシャウトしてくれて、それがとても嬉しかったんだ。無論、現在の自分に合わせて歌い方を変えるのはありだと思うが。それでも嬉しかったんだ。

MC中もやたらと高音を張り上げる箇所があったので、今日のオーケンは絶好調だったのかもしれない。

MCで印象に残った箇所は、何かの拍子か、突如オーケンと内田さんが、お互いに「オーケン」「うっちー」「オーケン」「うっちー」と呼び合い、それが非常に楽しそうだった。オーケンはその流れで、「中学の頃、ディクシ! と言って相手の二の腕を抜き手で突くのが流行って、それをやろうとしたけど、五十なのでやめました」と言った。そこに内田さんが「ディクシやってくれよ」と言い、オーディエンスからも「やってー!」と言う声。照れ笑いするオーケン。それを誤魔化すかのように「五十からはBL禁止!」と宣言するオーケン。オーケンの言うBLって何だかよくわからんなぁ。

大人になってもあだ名で呼び合える友人ってのは、貴重なもんだな、と改めて思った。大事にしないといけないね。

そうだ。あと、メンバー紹介のとき、今まではオーケンがメンバーを紹介し終わった後、自分で「ボーカル大槻ケンヂー!」と叫んで締めていたのだが、橘高さんや内田さんが「ボーカルオーケンー!」とオーケンの代わりに紹介してくれるようになっているのが、何だかグッと来たな。

五年前の武道館のときか。正直自分は、デビュー二十周年ったって、そのうち八年間は活動休止していたよなぁ…と思っていたんだ。二十分の八は結構大きい。しかし二十五分の八になったら八もだいぶ薄まって。あぁ、そのうち活動休止していた八年間なんて、誤差の範囲に感じられる日が来るのかもしれないと。メンバー同士のやりとりを観ながら思ったのだ。

秋には新譜が出る。ツアーも発表された。まだまだ活動は続く。あぁどうか、全員が全員、ずっと健康で、楽しくやってくれますようにと、終演SEを聴きながら思った。



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