INTERACTIVE LIVE SHOW 2013 『ノモノスとイミューム』 (2013年1月25日)



インタラクティブライブ「ノモノスとイミューム」に行ってきた。ヒラサワのライブに参戦するのはこれで二度目だが、一度目はいわゆる普通のライブコンサート、通称「ノンタラ」こと、ノン・インタラクティブライブであるので、インタラに参加するのは初めてである。

インタラとは物語形式のライブコンサートであり、途中途中に分岐が与えられ、観客の選択により物語が変質していくというものだ。さらに、インターネットとも連携をしており、会場にいなくてもネット環境さえあればライブのストーリーに関与することが出来る。参戦したことは無いものの、インタラのDVDは一枚持っており、若干ではあるがその雰囲気は知っていたので、今日の日をとても楽しみにしていた。

が、不安もあった。自分はヒラサワの作る物語を一発で理解出来るのだろうか。それというのも公演前に公開された「ノモノスとイミューム」の特設サイトに、今回の物語の概要や用語などが記されていたのだが、多いのである。造語が。ヒラサワ独特の造語が。本で読むなら前のページに戻ることも出来るが、ライブに巻き戻し機能は無い。置いていかれないか心配だった。特に、唯一所有しているインタラのDVD「白夜野」も、初見では物語を把握しづらかったので。

この心配に関して、結論から言うと杞憂だった。無論、細かいところは理解しきれていないが、物語の大筋には付いて行くことができた。むしろシンプルだったように思う。エンディングもびっくりするような大サービスで腹を抱えて笑った。あんなに格好良く殺虫スプレーを噴射する男を自分は他に知らない。

さて、今回のライブの感想を簡単にまとめてみようか。まず驚いたこと。物販の列が長い。ものすごく長い。物販は開場後に販売が開始されるのだが、まず開場待ちの列がとんでもない。そして並んでいる人々のうちのほとんど、と感じられるくらいの人間がそのまま物販に並ぶのである。すごかった。この施設は階段が入り口から向かって右と左の両端にあるのだが、まず一階から右手側の階段で二階へ上がり、二階の右端から左端へ移動して、左手の階段から三階に上り、三階の左手側から右手側の端まで移動しUターン、さっきのぼった階段を使って二階に降り、また端から端へ移動しUターン、二階から一階に降りてようやく物販に辿り着く、という非常に長い道のりで、物販の列で左手側の階段の人口密度がえらいことになっているのである。こんなに並んでまで欲しいのか、と問うならば欲しいと答える。自分が買ったのはカレンダーとタオルとハットピン。欲しいものを全て買えて満足した。並んだ甲斐があったというものだ。

物販を購入してからは大人しく席で待っていた。場所は一階後方下手側。何をするでもなくゆったり待っていたのだが、開場十分前あたりだろうか。音楽がいかにも、物語が始まる前奏のようなものに変化して、まだ人が席に立ったり座ったりする中、このまま開演の合図も無く唐突に始まってしまっても面白いなと思った。実際はきちんとブザーが無り、照明が落とされたので非常にわかりやすかったが。

特筆すべき点は今回のゲスト、折茂さんだろう。とはいえ自分は折茂さんのことをほとんど知らない。彼女の曲もヒラサワのソロCDボックス「ハルディン・ドーム」に収録されている一曲「ガーベラ」しか聴いたことが無い。ただ、ヒラサワのツイートや、特設サイトにある物語の記述などから、「ノモノスとイミューム」は彼女無しでは発想されなかっただろうとは感じていた。この物語におけるもう一人の主役と言っても過言ではないだろう。

折茂さんの姿は初めて見たが、年齢がよくわからない人だと思った。声からは甘い雰囲気の女性をイメージしていたが、どちらかというと格好良いと言う言葉の方がふさわしい。そして赤いスカートから見え隠れするスラリとした黒い義足が美しいのだ。この義足から着想された物語について思ったことを書きたいが、材料が少ないのでそれについては明日の公演を観てからにしよう。

ところですごく驚いたこと。まさか今回の物語に、あの白虎野に登場した強烈な印象を見る人に与えるキャラクター「Σ-12」が再登場するとは思わなかった。しかもほとんど出ずっぱりの大活躍。あのビジュアルをDVDで初めて見たときの衝撃は忘れられない。白虎野で分岐マニアとして主人公であるヒラサワを導いたΣー12は、外見は人ではないものに変えられていたが、人間的な感情を持っていた。それが「ノモノスとイミューム」ではサファオン(思考、感情、記憶の混合物に生じるある種のパターンを指す物語中の造語)を持たない存在になってしまっていたのが、何だか寂しい。

映像について思ったこと。比較対象が「白虎野」しか無いが、コミカルと言うか、ギャグ要素が多かったように思う。エンディングも綺麗にオチがついてあの大サービス。異空間に幽閉されたヒラサワが正しい分岐を辿ることにより、元の世界に戻ることが出来たが、注文していた果物の入った箱を開けると中身がすっかり腐ってしまっていて、ハエが大量発生。スクリーン上を飛び回るハエの群れを両手に構えた殺虫スプレーを武器にスタイリッシュにポーズを取りつつ戦いながらステージ所上を練り歩きつつ歌うヒラサワ。それはダンスのようにも見え、どうしたらこんなことを思いつき、かつ実行しようと思うのだろうかと考えつつゲラゲラ笑った。

笑うといえば「Amputeeガーベラ」で、歌い出しを間違えて固まるヒラサワを見られてすごく得をした気分になった。しかもこの後、折茂さん演ずる「サンミア」が、「台無しだわ!」と言ってのけるのである。この「台無し」はあくまでも物語上の台詞なのだが、まるでヒラサワのミスを言っているようで笑ってしまった。グッドタイミングと言うか何と言うか。

だが、歌い出しを間違えたからこそヒラサワの声のすごさがわかるわけで。固まった途端に当然のことながらヒラサワの歌が聞こえなくなり、あんな声が人間から出ているのだなぁ、と改めて思わされたのだった。

そういえば三曲目、四曲目あたりでは咽喉を振り絞って無理矢理歌っているように見え、だいぶ辛そうで心配したのだが、五曲目六曲目と進むにつれ悠々と声が出るようになっていた。そういうところを見るとあぁ、ちゃんと人間なんだなぁ、と思う。ただアンコールの「Aria」は歌いづらそうだったな。

初日は行けなかったが、MCによると初日と二日で同じエンディングを迎えてしまったそうなので、明日は別のルートに行けるよう試行錯誤しようと思う。殺虫スプレーもまた見たいが、それではDVDになるときボーナストラックが減ってしまって寂しい。まぁ成功ルートを選べているので三日連続バッドエンドでDVD化されず、などという真の意味でのバッドエンドを迎えずに済むのは確定しているのでちょっと気楽だ。明日も楽しむぞ。

未分類平沢進, 非日常