■10月8日23時「最前おめでとうございます!ストリームホールは~」の方へ
ありがとうございます! おっしゃるとおりまさに絶景で、おいちゃんのピックもゲットできて最高に幸せでした!
Foo-Shah-Zooは水戸さんとの対バンで何年か前に観たことがあります。ボーカルの扇さんが格好良かったです。今週末に行くウタノコリでも扇さんが出演するので楽しみです!
■10月9日0時「素敵なレポありがとうございます」の方へ
こちらこそご覧いただきありがとうございます!
うずわみだまし
■10月8日23時「最前おめでとうございます!ストリームホールは~」の方へ
ありがとうございます! おっしゃるとおりまさに絶景で、おいちゃんのピックもゲットできて最高に幸せでした!
Foo-Shah-Zooは水戸さんとの対バンで何年か前に観たことがあります。ボーカルの扇さんが格好良かったです。今週末に行くウタノコリでも扇さんが出演するので楽しみです!
■10月9日0時「素敵なレポありがとうございます」の方へ
こちらこそご覧いただきありがとうございます!
半年ぶりの筋少ワンマンライブで、己は太陽に焼き殺された。真夏でもなく炎天下でもない九月下旬、ライブハウスの暗闇の中で太陽に焼き殺された。
何の心構えも無く、何気なく開いた封筒から出てきたのは最前列が約束された整理番号。え? あれ? 何だこの番号……とぼーっとしつつ現実を受け止め、「えっ、マジで」と一人部屋の中で呟いた。
再結成から筋少のライブに通い続けているが、今までスタンディングのライブで最前列に行けたことは一度も無かった。ハイストレンジネス・チケットメンバーズが発足されるまではだいたい八百番くらいの整理番号が常で、たまに四百を引き当てると嬉しくて小躍りしたものだ。
故に想像できるだろう。どれほど嬉しかったかを。
何かしらのうっかりで会場に入れなくなることが無いよう、小銭を大量に用意して現地に向かった。そして無事会場に着き、番号を呼ばれていそいそ並び、走り出したい気持ちを抑えて中に入った。
初めて見たよ、ステージの前がぽっかり空いていて、人々がパラパラと吸い寄せられるようにバーに掴まる嬉しげな光景を。
自分も大人だが、大人があんなに嬉しそうにしている背中を見たのは初めてだったかもしれない。
己も同じように吸い寄せられ、しっかりと最前列の柵を握る。わくわくして、そわそわして、落ち着かなかった。後ろを見やれば既に人々の列が出来ていて、まっさらだった空間にどんどん人が詰め掛けていく様子がどうにも不思議な心地がした。
何も遮るものがない視界を楽しみながら、スタッフの方々が準備をする様子を眺める。MC表だろうか、オーケンの手書きと思われる紙を黒いテープで入念にステージの床に貼る様子が見えて、今日はいったいどんなに面白いことが語られるだろうとわくわくしてたまらなかった。
自分が立ったのはちょうどおいちゃんとオーケンの間のあたり。
そして己は、おいちゃんという太陽に焼き殺されたのだった。
すごかった。やばかった。たまらなかった。
おいちゃんと目が合ったという錯覚に陥った瞬間、その一瞬の間、確かに己は恋に落ちた。心臓が止まりそうになった。まぶたの閉じ方を忘れてしまい、目を離すことが出来なくなった。
格好良かった……。
ド迫力の笑顔と時折見せる苦しげな表情。ガシッとスピーカーに足を乗せて前のめりになってオーディエンスを煽れば、そのブーツが己の目と鼻の先にあって、実体の生々しさが凄まじかった。いや、知ってるんだ。おいちゃんが実在することは。知っているのだが、それでもその迫力があまりにもすごくて、ブーツを編む糸目まで数えられるくらい近くて、圧倒されっ放しだったのだ。
そして本編最後。退場しようとするおいちゃんがひょいと投げてくれたピックが。「ディオネア・フューチャー」を演奏してゴリッと削れたピックが、すっぽりと手のひらの中に収まったのだ。
まるで、自分のために投げてもらえたかのように、錯覚しそうになるほどにそれは、すっぽりと手のひらに収まったのだ。
死ぬかと思った。
震えながら手のひらを開くと、本当においちゃんのピックが手の中にあった。おいちゃんのピックを手にしたのも初めてだった。信じられない宝物をもらった気持ちになった。
「ワインライダー・フォーエバー」から始まり、ワンマンでは珍しい「元祖高木ブー伝説」と最近あまり演奏されない「日本の米」が聴けたのが嬉しかった。「日本の米」はオーケンが咽喉の手術を受ける前にメンバーが歌っていたのを聴いたのが最後だろうか。こうしてまた、オーケンの歌う「日本の米」を聴けるようになって嬉しい。あの手術も思えば随分昔のことのように感じる。そう感じられるようになって本当に良かった。
中央にスタンドマイクが運び込まれ、何が始まるかと期待したら大好きな一曲、「僕の宗教へようこそ」! やったーーーーこれを聴けるとは! これ! これを歌うときのスタンドマイクを操る妖艶な手つきが美しくて好きなんだよなぁ。
新曲からは「ネクスト・ジェネレーション」と「オカルト」が披露された。さらに! 「オカルト」はMV撮影もここで行われたのでびっくりである。まず誰もいないステージで「オカルト」の録音を流してオーディエンスが曲の流れを把握し、その後メンバーとカメラマンがステージに現れ、曲を流しながらあて振りを行い、オーディエンスはさながらライブに参加しているかの如く腕を振り拳を突き上げ盛り上がるという演出だった。わー、面白いなぁ。
ちなみにプライバシーを配慮してオーディエンスの顔には全てモザイクをかけるとのこと。ど、どんなMVに仕上がるんだ……? 若干の疑問を残しつつ、最前列ということは己の腕が映っているかもしれない。おお、ドキドキしてしまう。見つけられるかな。見つけられたら嬉しいな。
「ネクスト・ジェネレーション」は歌詞が聞き取りづらかったため全容を把握できなかったが、故にCDで聴くのが尚更楽しみになった。早く歌詞カードをじっくり読みたい。
「ゾロ目」はまさかのおいちゃんと橘高さんの弾き語り! おいちゃんふーみんの弾き語りライブで圧倒されたそれをまさかまた筋少のライブで聴けるとは! 本当に、この曲を弾き語りで、アコースティックギターでやる凄まじさに脱帽する。橘高さんの迫力ある歌声に重なるおいちゃんの分厚いコーラスが美しい。
ちなみに弾き語りライブでは「あなたと愛したあの日まで」と橘高さんはよく歌っていたが、今回は原曲どおり「恋した」になっていた。
「ムツオさん」も久しぶりで嬉しかったし、「ハッピーアイスクリーム」は掛け合いの中で日常ではなかなか言えない言葉を大声で叫べるのが楽しくてたまらない。この叫ぶという行為もライブの醍醐味だよなぁ。
本編最後の「ディオネア・フューチャー」でステージ前に出てきてコーラスを絶唱するエディに夢中になった記憶はあるものの、前に書いたおいちゃんからのプレゼントにより、他の記憶のほとんどは吹っ飛んだ。
アンコールが終わった後、新しい赤い衣装に身を包んだおいちゃんが客席に手を伸ばしてくれて、おいちゃんがちょうど己の真上にいて、おいちゃんの衣装から垂れる何本もの赤い紐が雨のように降り注いで顔や手に触れて、わあ、わあ、わあ、わあ……と声にならないほど興奮して、最後、手を握ってもらえて、死ぬかと思った。
死ぬかと思った。
橘高さんにも手を握ってもらえて、ありがたくて、嬉しくて、頭がポワポワして、興奮でふらふらしながら物販に並んだらオーケンのチェキも買えて、一日にいろんなものを、絶景と握手とピックとチェキと最高の演奏と楽しいMCを一気に受け取ってしまって、ちょうど、今ちょっとへこんでいる時だったから、筋少はいつも、己が参っているときに素敵なものをくれるなあと嬉しくなって、がんばろ、と思いながら家路に着いた。
本当に最高の一日だった。ありがとう、筋肉少女帯。ありがとう、おいちゃん。
きっとこのピックがあれば、辛いときも乗り越えられるに違いない、と信じて。
ワインライダー・フォーエバー
トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く
LIVE HOUSE(おいちゃんボーカル)
元祖高木ブー伝説
日本の米
カーネーション・リインカーネーション
僕の宗教へようこそ
ネクスト・ジェネレーション(新曲)
ゾロ目(おいちゃん・ふーみん弾き語り)
サイコキラーズ・ラブ
イワンのばか
ムツオさん
ハッピーアイスクリーム
ディオネア・フューチャー
~アンコール~
オカルト(新曲。演奏はせず完成品を流す)
オカルト(当て振りでMV撮影)
香菜、頭をよくしてあげよう
釈迦
■9月4日9時「お疲れ様でした。せっかく楽しみにしていたフェスが~」の方へ
あの公園部分の人々も、駅から会場へ向かう先ではのどかに見えたものの、いざ会場に着いて事情がわかるや「あぁ、そういうことか……」とがっかりしました。本来であればそこへ行かずに会場で楽しめることがベストだろうにと思うこそ。
今回はがっかりが強かったため、ライブの感想を書く気力が削がれてしまったのであれ以外を書くことは無いと思います。己も本当はそっちを楽しく書きたかったのですが。いやはや。
そして皆様、たくさんの拍手をありがとうございます。ご心配をおかけしてすみません。
そこは夏フェスというよりも駐車場を借りて催される田舎の小規模な祭りのようで、真っ黒なアスファルトの上に大の大人がごろごろ転がり、屋台には長蛇の列が出来ていて、そこかしこから発せられる爆音が滅茶苦茶に混ざり合い、地獄のような環境だった。
呆然としながら歩く。来るまでのわくわくした気持ちは消え去り、あるのは困惑ばかりである。入り口近くに長蛇の列が伸びていて、何だろうグッズ販売かなと辿ってみたらその先にあったのはまさかのドリンク販売所。え? ドリンク買うためだけにこんなに並ぶのか? いやでも他にも売ってるところあるよな……とちょっと歩くとフードの屋台がいくつかあったがそこも長蛇の列。そしてフードの屋台ではドリンクの取り扱いがない。……ということは……食べ物と飲み物を買うには両方に長時間並ばねばならぬのか……。
午前中に用事があったため十五時前に来たのだが、その時点でビールは売り切れソフトドリンクも数少ない状態。フードの屋台も完売メニューが多く、もの悲しさがすごい。
これはいったん外に出て腹に何か入れてきた方が良さそうだ……。せっかくなので会場で演奏を聴きながら何か食べようと思っていたが予定を変更し、会場外に出てみるものの同じことを考える人は多かったようだ。一番近くのコンビニエンスストアーのレジにも長蛇の列ができていてドリンクの棚は空っぽ。それでもレジには夏の魔物の客と思われる様々なバンドTシャツを着た人々が並んでいて、その状況に圧倒されながら己は何も買わずに店を出て、のそのそと会場に戻ったのだった。
去年はあんなに楽しかったのになぁ。芝生が広がり、伸び伸びできて、目当てのバンドを観ていないときも楽しかった。芝生で休憩しながら離れたステージから届く演奏を聴いてちょっとした物を食べ、ビールを呑むひとときが気持ち良かった。恐らく、その空気を今回も己は求めていたのだろう。だからとてもがっかりしたんだ。
きっと目当てのバンドが複数あって、ずっとステージ前でノリノリになっていたら今回も楽しめたのだろう。自分も筋少を観ている間は本当に楽しくて、筋少の音だけが真正面から響いていたので他の何も気にならなかった。熱狂できて、白熱できた。
ところがステージから離れると混ざり合った爆音がとにかく耳障りで、「あ、あの演奏は誰だろう。聴きに行こうかな」と興味を持つにも持てず、不快な騒音として耳に届いてばかりいる。音楽を楽しむにも楽しめず手持ち無沙汰となり、入り口でドリンク代を払っている手前とりあえずドリンクを引き換えておくか……と長蛇の列に並んでようやく手に入れたハイボールをちびちび舐めるも、呑みなれていないため自身のチャレンジ精神を後悔した。程なくしてドリンクは完売したらしい。
そして悲しかったのは視界に広がるやるせなさ。シートとテントの持込みが禁止されているもののスペースの関係上椅子が少なく、故に大の大人がそのへんのアスファルトでごろごろ転がっているのである。何だろう、この悲惨な光景。まるで夏祭りが終わった閑散とした現場に眠りこける置いて行かれた酔っ払いのようだ。まだフェスの真っ最中だと言うのに。
地獄のようだなぁ、と思った。
去年が本当に楽しかった分、がっかりしたなぁ。今まで夏フェスに行ったことのない自分が楽しさに目覚め、他にも行ってみようと思ったきっかけが夏の魔物だったのに。期待しすぎてしまったのかなぁ。
寂しくてやるせない一日だった。
生きてるだけで汗をかく!
四時に起き、ろくろく睡眠をとれないままバスに揺られてひたちなかへ。初めてのROCK IN JAPAN FESTIVALに胸を躍らせつつ、チケットと交換した黄緑色のリストバンドを左手首に巻き、さぁ! と思って足を踏み入れれば地面から体内へ響き渡る大音響! 普段、都会の六畳一間に住んでいる人間には絶対に体感できない響きで、それは非日常の象徴に他ならず、ビリビリと地を這う振動を感じながら己は大いに興奮したのだった。
空は快晴。生きているだけで汗をかくような凄まじい気温。ただ、左右を見ればどの人もわくわくしていて、あぁ、己はフェスに来たのだなぁと実感しながら練り歩いた。どこへ行こう。まずはどこへ行くべきだろうか。初めて行ったフェスは去年の夏の魔物で、そのくらいの規模を想像していたので広さにびっくりした。うわぁ。ステージからステージに移動するのにこんなに時間がかかるんだなぁ。
とりあえずアーティストの物販エリアに向かってTシャツを買い、クロークへ移動。長蛇の列に慄いたが並ぶわりにスムーズに列が進んで事なきを得た。ありがたいことである。
タイムテーブルを眺めながらどこへ行こうかとあてどなくだらだら歩く。欅坂46を片耳に進みシシド・カフカの前を通り、少しずつ全体図を把握しながらゆるゆる歩き、ちょうど行き当たったのがMONGOL800だった。
おお! これは確か……群馬のバンドじゃなかったか!?
と思って見たものの全然違いましたね。沖縄でしたね。どうして群馬と間違えたんでしょうね。
と、言うのも、高校生の頃に同級生の誰かがカラオケでMONGOL800をよく歌っていて、同時によく歌われていたのが群馬出身のバンドだったから記憶が混ざったのだろうなぁ。MONGOL800の歌もね、聴き覚えがあるのに本家の声では再生されないんだ。あの日歌っていた複数人の誰とも判別できない同級生の声で再生されて、だから自分はこのフェスで初めてMONGOL800の声で、本家の声で本家の歌を聴いたんだ。
とっても格好良かったよ!
沖縄の風を吹かせましょう、という前置きで現れたのは赤いタンクトップと黒いブルマーを連想させる下着を身につけた男性。なんとなく、長州小力をイメージさせる。その方が大いに動き、盛り上げてくれた「せいうぉーうぉーうぉーうぉー」という曲がとても面白かった。あの方はいったい何者だったのだろうなぁ。
それでいて切なかった。過ぎ去りし青春を引き出されたような気がしたよ。
MONGOL800を堪能し、空腹を感じたのでふらふら歩いて屋台を探したら何とか屋台の並ぶ小さなエリアを見つけ、そこで小休止……をしたのだが……。
この、ね。線を描いてるマヨネーズがね! 溶けるのだよ! ものの数秒で液状になって、ケチャップと混ざってびっちゃびちゃになって紙の中に溜まって、食べようと傾けた瞬間だばーーーーっと膝の上に落ちてきてね!? 炎天下の野外の恐ろしさを思い知ったよ! あぁ、べっとべとさ!!
ちなみに己がロッキンに備えて準備した装備は以下の通りである。
ゴミ袋三つ
日焼け止め
携帯簡易枕(バス用)
塩タブレット
ポカリスエット三本
レインコート
ウエットティッシュ
ボディ用ウエットシート
ボディ用冷感スプレー
替えのシャツ一枚
この中でいらなかったのはボディ用冷感スプレーかな。瞬間的には涼しくなるものの、一瞬だけなので無くても問題ないと思った次第であった。
ゆるゆる歩きつつ、LAKEステージのフジファブリックへ。どこへ腰を落ち着けようかと悩みつつ、己は大分後ろの方にあった段差に腰を下ろした。右斜め前で女性がずっとノリノリで踊っていた。あぁ、この人はファンの方なのだろうなぁ、と微笑ましく眺めていた。
「サーファー気取りアメリカ~」「メメメメメメメ」が印象的な歌が格好良くて最高に楽しかった! 友人がフジファブリックのファンで、亡くなったボーカルの志村氏に並々ならぬ感情を抱いていることは知っていて、言い換えればそれしか知らないのだが、今このロッキンで歌うボーカルの方の歌のうまさも素晴らしいなぁ、と無邪気に思った。
次の曲も聴いたことはあったが、知らない曲だった。
最後に演奏されたのは「手紙」という新曲で、己はただただ淡々と聴いているだけだったのだが、あの楽しげに踊っていた女性がタオルを両手に泣き濡れていて、あぁ、そうか、そうなのか。きっと友人も同じようにこの場にいたら泣くに違いないのだろうな……と感じさせられた。
しんみりしつつ、てくてく歩いてサウンド・オブ・フォレストへ。筋少を観るために向かいつつ、その前のステージの大森靖子を目の前にして、彼女の話はほんの少しだけ聞いていたものの、ほんの少しだけだったために、……圧倒された。だって、知らなかったんだ。
彼女の語りを、想いを、この場にいた人のどれだけが受け止められただろうか。
己は受け止められなった。圧倒され、聴き惚れ、感情移入しながら一歩一歩よたよたと前へ進みつつも受け止められなかった。器からぼろぼろと零れゆく感覚を得た。
崩れゆく赤いドレスの女性を目にしながら、呟く言葉を耳にしながら、この後に筋少はどういった空気でその場に立てば良いのだろうと不安に思った。実際は三十分の時間を置いての登場だったため場の空気は薄められていたのだが。目の当たりにしていたその瞬間は、彼女の威力に圧倒されてそう思わされてしまったのだよ。
彼女の言葉を受け止めきれず、零れ落としてしまったのにね。
大森さんの出番が終わり、人が散る中前へと進み二列目へ。そうして炎天下の太陽を光を浴びながらじりじりとその場に立ち尽くし、筋少の出番を待つのは非常につらかった。
間違いなく、今回のフェスで一番つらかったのはこの時間だろう。十五時の容赦のない日差しを全身に浴び、木陰に逃れることもできず、ぐつぐつに温まったポカリスエットをちびちびと飲みながら開演を待つ。もともと開演待ちが苦手で、故に転換の発生する対バンライブにはほとんど参戦しないのだが、屋根があるなら随分ましだよぁ、と改めて思い知らされるに至った次第であった。
しかし、いや、だからこそか。開演し、筋少メンバーがステージに現れたときの喜びったら!
オーディエンスに背を向けて立つメンバーと、表を向いて立ちながら、あーそうだったとでも言うようにそそくさと背を向け、眩しく煌く白の特攻服の背中をオーディエンスに晒すオーケンを!
あぁ、そうだ。このために。この時間のために来たんだ!! と喜びが血液に浸透し、全身を駆け巡ってぐつぐつした。
そっから先はどうだって? 楽しくないわけがない! 楽しくて楽しくて仕方が無くて、時間が経つのが惜しくて惜しくて仕方が無かった。
オーケンは白の特攻服にサングラスで登場。橘高さんはFuture!の白と黒の衣装。おいちゃんは濃い目のブラウンのジャケットを羽織り、うっちーは黒の長袖シャツ。何故、それを着た!! と思いつつ、背中を向けての登場はあまりにも格好良い。
初っ端から「踊るダメ人間」で大いに盛り上がり、ダーメダメダメダメ人間のコールに合わせて思いっきり地面を蹴る爽快感。汗をだらだら流しながら飛ぶのは実に楽しく、苦しい。そうだ、苦しいんだ。夏フェスは楽しいが、苦しいんだ!
二曲目の「ワインライダー・フォーエバー」はオーケンの歌詞がめためたで、それに対し「暑さで歌詞なんか覚えちゃいられない!」とオーケンが叫び、笑いが起こる。MCでは久しぶりにロッキンに呼ばれたので楽屋にカンロ飴や乾パンのおもてなしがあったかと思えば何も無かった! しばらくロッキンに出られなかったのは渋谷判定のためだ! と時事ネタで笑わせつつ、カンロ飴も乾パンもいらないと豪語する。
豪語しつつも汗はだらだら流れる。そこへオーケン、「皆の推しアーティストは暑いって言うの?」と問いかければ「言うー!」とオーディエンスより返答があり、にやりと笑うと「根性がないねぇ」とばっさり。それではと逆に「言わない!!」オーディエンスが叫べば「うそつきだねぇ」と切り捨てる。
そのうえで、「意外とここ涼しいね?」と言えばうそつきコールが蔓延し、「ロッキンで頑張っているアーティストに向かってうそつきと言う奴があるか!」と一喝! ゲラゲラと笑いが起こり、和やかな空気に包まれた。
絶好調なオーケンは止まらない。パンクやロックではなく、この年になったらボサノバをやりたい、何故ボサノバをやらないのかとメンバーとオーディエンスに問えば、サポートドラムの長谷川さんがボサノバのリズムを刻み出し、「せっかくやっていただけたけど対応できないですごめんなさい」とオーケンが謝る一幕も。そのわいわいがやがやした流れで、実はここでバラードをやろうと思っていたと告白するオーケン。どよめく観客。だが、思いっきり叫ぶ曲を! ということで始まったのは「高木ブー伝説」!!
熱中症が危惧される気候の中で、「塩分とれよ!」「水分とれよ!」と叫ぶオーケン。そして、「高木!」とマイクをオーディエンスに差し向ければ、一斉に大声で叫ばれる「ブー」コール! こんなの、楽しくないわけがない!
今回はエディがいないためシングル盤アレンジで、エディがいないのは寂しいものの珍しいものを聴けたことは嬉しい。ブーが終わるとまたMCに入り、筋少なんてやってるけど中高生の頃はゆーみん先輩やサザン先輩を聴いてましたよ、と告白し、オーケンはうっちーに「ゆーみん聴きたいよね」と振る。するとあれこれと話が盛り上がり、ゆーみんの物まねをしだすオーケン。そして「サザン聴きたいよね」と橘高さんに聞けば今度はサザンを楽しげに歌う橘高さん! レアなものを見た。
最後はゆーみんの物まねで……と謎の裏声で歌いつつ、それで終わるわけにもいかない。怒涛の「釈迦」に転換し、モンキーダンスでガーッと盛り上がり、これで終わるかと思えば……ラストはディオネア・フューチャー!!
嬉しかったぁ!!
駆け抜けるようなドラミングと炎天下の太陽光を受け叫ぶコーラスの迫力と威力! そして、新曲のこの曲がここまで育ってくれた喜び! 拳を振り上げ、声の限りに叫びつつ、どうかどうか、初めて聴く人の胸にも届け! と思わざるを得なかった。
オーケンがマイクを両手で挟みつつ、ディオネアの花が咲く様子を、つぼみが開く様子を両手で再現しているのが最高にキュートで、格好良かった。
全身がびちゃびちゃだった。汗でTシャツはおろか、下着もズボンもびっしょり濡れていた。半ば放心状態になりながらふらふらと歩き、スカパラの清涼な音を聴きながら一休みをして、またふらふらと歩いてご飯とビールを腹に入れた。
この日、己は麦茶500mlにポカリ1000mlを腹に入れ、さらにビールを4杯呑んでかき氷を食べたが、一度としてお手洗いに行く必要が生じなかった。全てが汗に流れ出た。改めて凄まじい環境だと思う。
日が影ってきた頃、どうしようかと迷いつつクロークから荷物を受け取りTシャツを着替え、DJやついいちろうのステージへ。既に人が溢れんばかりで、リュックを下ろして後方で見ようとしたのだが、流れる音楽の勢いとやつい氏の巧みなトークにより、気づけば少しずつ前へ前へと移動していた。
そして最後には、筋少のTシャツを着ながらパリピのようにぴょんぴょんと踊っていた。知らない曲を全身に感じながら踊っていた。
そのことを不思議に思った。高校生の頃から筋少を愛し、その詩に共感してきた自分が、筋少のTシャツを着ながらぴょんぴょん跳ねて踊っている。それはとても意外で、楽しく、不可思議だった。
最後、ドーンと空に打ちあがった花火の美しさったら! こんなに、こんなにたったの一日で、汗を流して爆音を体感して、夏を楽しんでしまって良いのだろうかと思ったほどさ!
良かったのだろう。きっと。また、ここに来る人の多くもきっとそれを期待しているのである。
現地に着いたばかりの時、道を覚えようと練り歩きながら驚いたのはミュージシャンのTシャツを着ている人が少なく、ロッキンのシャツを着ている人が多いこと。つまり、ロッキンそのものへの愛が強い人が多いのだろう。それほどこの空間は特別で、ロッキンという空間をみんなが愛しているに違いない。筋少を観るためだけにこの場に来た自分はその温度差に驚きつつ、最後には空間のパワーと魅力に魅せられて、なるほどなと実感した。
素晴らしい夏だった。
全身を襲う倦怠感に浸りながらバスの背に体重を預け、とろとろと眠りに落ちるのは心地良いひとときだった。
ありがとう、ロッキン。また縁があればいつかにきっと。