夏の魔物2018 in TOKYO (2018年9月2日)
そこは夏フェスというよりも駐車場を借りて催される田舎の小規模な祭りのようで、真っ黒なアスファルトの上に大の大人がごろごろ転がり、屋台には長蛇の列が出来ていて、そこかしこから発せられる爆音が滅茶苦茶に混ざり合い、地獄のような環境だった。
呆然としながら歩く。来るまでのわくわくした気持ちは消え去り、あるのは困惑ばかりである。入り口近くに長蛇の列が伸びていて、何だろうグッズ販売かなと辿ってみたらその先にあったのはまさかのドリンク販売所。え? ドリンク買うためだけにこんなに並ぶのか? いやでも他にも売ってるところあるよな……とちょっと歩くとフードの屋台がいくつかあったがそこも長蛇の列。そしてフードの屋台ではドリンクの取り扱いがない。……ということは……食べ物と飲み物を買うには両方に長時間並ばねばならぬのか……。
午前中に用事があったため十五時前に来たのだが、その時点でビールは売り切れソフトドリンクも数少ない状態。フードの屋台も完売メニューが多く、もの悲しさがすごい。
これはいったん外に出て腹に何か入れてきた方が良さそうだ……。せっかくなので会場で演奏を聴きながら何か食べようと思っていたが予定を変更し、会場外に出てみるものの同じことを考える人は多かったようだ。一番近くのコンビニエンスストアーのレジにも長蛇の列ができていてドリンクの棚は空っぽ。それでもレジには夏の魔物の客と思われる様々なバンドTシャツを着た人々が並んでいて、その状況に圧倒されながら己は何も買わずに店を出て、のそのそと会場に戻ったのだった。
去年はあんなに楽しかったのになぁ。芝生が広がり、伸び伸びできて、目当てのバンドを観ていないときも楽しかった。芝生で休憩しながら離れたステージから届く演奏を聴いてちょっとした物を食べ、ビールを呑むひとときが気持ち良かった。恐らく、その空気を今回も己は求めていたのだろう。だからとてもがっかりしたんだ。
きっと目当てのバンドが複数あって、ずっとステージ前でノリノリになっていたら今回も楽しめたのだろう。自分も筋少を観ている間は本当に楽しくて、筋少の音だけが真正面から響いていたので他の何も気にならなかった。熱狂できて、白熱できた。
ところがステージから離れると混ざり合った爆音がとにかく耳障りで、「あ、あの演奏は誰だろう。聴きに行こうかな」と興味を持つにも持てず、不快な騒音として耳に届いてばかりいる。音楽を楽しむにも楽しめず手持ち無沙汰となり、入り口でドリンク代を払っている手前とりあえずドリンクを引き換えておくか……と長蛇の列に並んでようやく手に入れたハイボールをちびちび舐めるも、呑みなれていないため自身のチャレンジ精神を後悔した。程なくしてドリンクは完売したらしい。
そして悲しかったのは視界に広がるやるせなさ。シートとテントの持込みが禁止されているもののスペースの関係上椅子が少なく、故に大の大人がそのへんのアスファルトでごろごろ転がっているのである。何だろう、この悲惨な光景。まるで夏祭りが終わった閑散とした現場に眠りこける置いて行かれた酔っ払いのようだ。まだフェスの真っ最中だと言うのに。
地獄のようだなぁ、と思った。
去年が本当に楽しかった分、がっかりしたなぁ。今まで夏フェスに行ったことのない自分が楽しさに目覚め、他にも行ってみようと思ったきっかけが夏の魔物だったのに。期待しすぎてしまったのかなぁ。
寂しくてやるせない一日だった。