ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018 (2018年8月4日)

生きてるだけで汗をかく!

四時に起き、ろくろく睡眠をとれないままバスに揺られてひたちなかへ。初めてのROCK IN JAPAN FESTIVALに胸を躍らせつつ、チケットと交換した黄緑色のリストバンドを左手首に巻き、さぁ! と思って足を踏み入れれば地面から体内へ響き渡る大音響! 普段、都会の六畳一間に住んでいる人間には絶対に体感できない響きで、それは非日常の象徴に他ならず、ビリビリと地を這う振動を感じながら己は大いに興奮したのだった。

空は快晴。生きているだけで汗をかくような凄まじい気温。ただ、左右を見ればどの人もわくわくしていて、あぁ、己はフェスに来たのだなぁと実感しながら練り歩いた。どこへ行こう。まずはどこへ行くべきだろうか。初めて行ったフェスは去年の夏の魔物で、そのくらいの規模を想像していたので広さにびっくりした。うわぁ。ステージからステージに移動するのにこんなに時間がかかるんだなぁ。

とりあえずアーティストの物販エリアに向かってTシャツを買い、クロークへ移動。長蛇の列に慄いたが並ぶわりにスムーズに列が進んで事なきを得た。ありがたいことである。

タイムテーブルを眺めながらどこへ行こうかとあてどなくだらだら歩く。欅坂46を片耳に進みシシド・カフカの前を通り、少しずつ全体図を把握しながらゆるゆる歩き、ちょうど行き当たったのがMONGOL800だった。

おお! これは確か……群馬のバンドじゃなかったか!?

と思って見たものの全然違いましたね。沖縄でしたね。どうして群馬と間違えたんでしょうね。

と、言うのも、高校生の頃に同級生の誰かがカラオケでMONGOL800をよく歌っていて、同時によく歌われていたのが群馬出身のバンドだったから記憶が混ざったのだろうなぁ。MONGOL800の歌もね、聴き覚えがあるのに本家の声では再生されないんだ。あの日歌っていた複数人の誰とも判別できない同級生の声で再生されて、だから自分はこのフェスで初めてMONGOL800の声で、本家の声で本家の歌を聴いたんだ。

とっても格好良かったよ!

沖縄の風を吹かせましょう、という前置きで現れたのは赤いタンクトップと黒いブルマーを連想させる下着を身につけた男性。なんとなく、長州小力をイメージさせる。その方が大いに動き、盛り上げてくれた「せいうぉーうぉーうぉーうぉー」という曲がとても面白かった。あの方はいったい何者だったのだろうなぁ。

それでいて切なかった。過ぎ去りし青春を引き出されたような気がしたよ。

MONGOL800を堪能し、空腹を感じたのでふらふら歩いて屋台を探したら何とか屋台の並ぶ小さなエリアを見つけ、そこで小休止……をしたのだが……。


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この、ね。線を描いてるマヨネーズがね! 溶けるのだよ! ものの数秒で液状になって、ケチャップと混ざってびっちゃびちゃになって紙の中に溜まって、食べようと傾けた瞬間だばーーーーっと膝の上に落ちてきてね!? 炎天下の野外の恐ろしさを思い知ったよ! あぁ、べっとべとさ!!

ちなみに己がロッキンに備えて準備した装備は以下の通りである。

ゴミ袋三つ
日焼け止め
携帯簡易枕(バス用)
塩タブレット
ポカリスエット三本
レインコート
ウエットティッシュ
ボディ用ウエットシート
ボディ用冷感スプレー
替えのシャツ一枚

この中でいらなかったのはボディ用冷感スプレーかな。瞬間的には涼しくなるものの、一瞬だけなので無くても問題ないと思った次第であった。

ゆるゆる歩きつつ、LAKEステージのフジファブリックへ。どこへ腰を落ち着けようかと悩みつつ、己は大分後ろの方にあった段差に腰を下ろした。右斜め前で女性がずっとノリノリで踊っていた。あぁ、この人はファンの方なのだろうなぁ、と微笑ましく眺めていた。

「サーファー気取りアメリカ~」「メメメメメメメ」が印象的な歌が格好良くて最高に楽しかった! 友人がフジファブリックのファンで、亡くなったボーカルの志村氏に並々ならぬ感情を抱いていることは知っていて、言い換えればそれしか知らないのだが、今このロッキンで歌うボーカルの方の歌のうまさも素晴らしいなぁ、と無邪気に思った。

次の曲も聴いたことはあったが、知らない曲だった。

最後に演奏されたのは「手紙」という新曲で、己はただただ淡々と聴いているだけだったのだが、あの楽しげに踊っていた女性がタオルを両手に泣き濡れていて、あぁ、そうか、そうなのか。きっと友人も同じようにこの場にいたら泣くに違いないのだろうな……と感じさせられた。

しんみりしつつ、てくてく歩いてサウンド・オブ・フォレストへ。筋少を観るために向かいつつ、その前のステージの大森靖子を目の前にして、彼女の話はほんの少しだけ聞いていたものの、ほんの少しだけだったために、……圧倒された。だって、知らなかったんだ。

彼女の語りを、想いを、この場にいた人のどれだけが受け止められただろうか。

己は受け止められなった。圧倒され、聴き惚れ、感情移入しながら一歩一歩よたよたと前へ進みつつも受け止められなかった。器からぼろぼろと零れゆく感覚を得た。
崩れゆく赤いドレスの女性を目にしながら、呟く言葉を耳にしながら、この後に筋少はどういった空気でその場に立てば良いのだろうと不安に思った。実際は三十分の時間を置いての登場だったため場の空気は薄められていたのだが。目の当たりにしていたその瞬間は、彼女の威力に圧倒されてそう思わされてしまったのだよ。

彼女の言葉を受け止めきれず、零れ落としてしまったのにね。

大森さんの出番が終わり、人が散る中前へと進み二列目へ。そうして炎天下の太陽を光を浴びながらじりじりとその場に立ち尽くし、筋少の出番を待つのは非常につらかった。
間違いなく、今回のフェスで一番つらかったのはこの時間だろう。十五時の容赦のない日差しを全身に浴び、木陰に逃れることもできず、ぐつぐつに温まったポカリスエットをちびちびと飲みながら開演を待つ。もともと開演待ちが苦手で、故に転換の発生する対バンライブにはほとんど参戦しないのだが、屋根があるなら随分ましだよぁ、と改めて思い知らされるに至った次第であった。

しかし、いや、だからこそか。開演し、筋少メンバーがステージに現れたときの喜びったら!
オーディエンスに背を向けて立つメンバーと、表を向いて立ちながら、あーそうだったとでも言うようにそそくさと背を向け、眩しく煌く白の特攻服の背中をオーディエンスに晒すオーケンを!

あぁ、そうだ。このために。この時間のために来たんだ!! と喜びが血液に浸透し、全身を駆け巡ってぐつぐつした。
そっから先はどうだって? 楽しくないわけがない! 楽しくて楽しくて仕方が無くて、時間が経つのが惜しくて惜しくて仕方が無かった。

オーケンは白の特攻服にサングラスで登場。橘高さんはFuture!の白と黒の衣装。おいちゃんは濃い目のブラウンのジャケットを羽織り、うっちーは黒の長袖シャツ。何故、それを着た!! と思いつつ、背中を向けての登場はあまりにも格好良い。

初っ端から「踊るダメ人間」で大いに盛り上がり、ダーメダメダメダメ人間のコールに合わせて思いっきり地面を蹴る爽快感。汗をだらだら流しながら飛ぶのは実に楽しく、苦しい。そうだ、苦しいんだ。夏フェスは楽しいが、苦しいんだ!

二曲目の「ワインライダー・フォーエバー」はオーケンの歌詞がめためたで、それに対し「暑さで歌詞なんか覚えちゃいられない!」とオーケンが叫び、笑いが起こる。MCでは久しぶりにロッキンに呼ばれたので楽屋にカンロ飴や乾パンのおもてなしがあったかと思えば何も無かった! しばらくロッキンに出られなかったのは渋谷判定のためだ! と時事ネタで笑わせつつ、カンロ飴も乾パンもいらないと豪語する。

豪語しつつも汗はだらだら流れる。そこへオーケン、「皆の推しアーティストは暑いって言うの?」と問いかければ「言うー!」とオーディエンスより返答があり、にやりと笑うと「根性がないねぇ」とばっさり。それではと逆に「言わない!!」オーディエンスが叫べば「うそつきだねぇ」と切り捨てる。
そのうえで、「意外とここ涼しいね?」と言えばうそつきコールが蔓延し、「ロッキンで頑張っているアーティストに向かってうそつきと言う奴があるか!」と一喝! ゲラゲラと笑いが起こり、和やかな空気に包まれた。

絶好調なオーケンは止まらない。パンクやロックではなく、この年になったらボサノバをやりたい、何故ボサノバをやらないのかとメンバーとオーディエンスに問えば、サポートドラムの長谷川さんがボサノバのリズムを刻み出し、「せっかくやっていただけたけど対応できないですごめんなさい」とオーケンが謝る一幕も。そのわいわいがやがやした流れで、実はここでバラードをやろうと思っていたと告白するオーケン。どよめく観客。だが、思いっきり叫ぶ曲を! ということで始まったのは「高木ブー伝説」!!

熱中症が危惧される気候の中で、「塩分とれよ!」「水分とれよ!」と叫ぶオーケン。そして、「高木!」とマイクをオーディエンスに差し向ければ、一斉に大声で叫ばれる「ブー」コール! こんなの、楽しくないわけがない!

今回はエディがいないためシングル盤アレンジで、エディがいないのは寂しいものの珍しいものを聴けたことは嬉しい。ブーが終わるとまたMCに入り、筋少なんてやってるけど中高生の頃はゆーみん先輩やサザン先輩を聴いてましたよ、と告白し、オーケンはうっちーに「ゆーみん聴きたいよね」と振る。するとあれこれと話が盛り上がり、ゆーみんの物まねをしだすオーケン。そして「サザン聴きたいよね」と橘高さんに聞けば今度はサザンを楽しげに歌う橘高さん! レアなものを見た。

最後はゆーみんの物まねで……と謎の裏声で歌いつつ、それで終わるわけにもいかない。怒涛の「釈迦」に転換し、モンキーダンスでガーッと盛り上がり、これで終わるかと思えば……ラストはディオネア・フューチャー!!

嬉しかったぁ!!

駆け抜けるようなドラミングと炎天下の太陽光を受け叫ぶコーラスの迫力と威力! そして、新曲のこの曲がここまで育ってくれた喜び! 拳を振り上げ、声の限りに叫びつつ、どうかどうか、初めて聴く人の胸にも届け! と思わざるを得なかった。

オーケンがマイクを両手で挟みつつ、ディオネアの花が咲く様子を、つぼみが開く様子を両手で再現しているのが最高にキュートで、格好良かった。

全身がびちゃびちゃだった。汗でTシャツはおろか、下着もズボンもびっしょり濡れていた。半ば放心状態になりながらふらふらと歩き、スカパラの清涼な音を聴きながら一休みをして、またふらふらと歩いてご飯とビールを腹に入れた。

この日、己は麦茶500mlにポカリ1000mlを腹に入れ、さらにビールを4杯呑んでかき氷を食べたが、一度としてお手洗いに行く必要が生じなかった。全てが汗に流れ出た。改めて凄まじい環境だと思う。

日が影ってきた頃、どうしようかと迷いつつクロークから荷物を受け取りTシャツを着替え、DJやついいちろうのステージへ。既に人が溢れんばかりで、リュックを下ろして後方で見ようとしたのだが、流れる音楽の勢いとやつい氏の巧みなトークにより、気づけば少しずつ前へ前へと移動していた。

そして最後には、筋少のTシャツを着ながらパリピのようにぴょんぴょんと踊っていた。知らない曲を全身に感じながら踊っていた。
そのことを不思議に思った。高校生の頃から筋少を愛し、その詩に共感してきた自分が、筋少のTシャツを着ながらぴょんぴょん跳ねて踊っている。それはとても意外で、楽しく、不可思議だった。
最後、ドーンと空に打ちあがった花火の美しさったら! こんなに、こんなにたったの一日で、汗を流して爆音を体感して、夏を楽しんでしまって良いのだろうかと思ったほどさ!

良かったのだろう。きっと。また、ここに来る人の多くもきっとそれを期待しているのである。

現地に着いたばかりの時、道を覚えようと練り歩きながら驚いたのはミュージシャンのTシャツを着ている人が少なく、ロッキンのシャツを着ている人が多いこと。つまり、ロッキンそのものへの愛が強い人が多いのだろう。それほどこの空間は特別で、ロッキンという空間をみんなが愛しているに違いない。筋少を観るためだけにこの場に来た自分はその温度差に驚きつつ、最後には空間のパワーと魅力に魅せられて、なるほどなと実感した。

素晴らしい夏だった。
全身を襲う倦怠感に浸りながらバスの背に体重を預け、とろとろと眠りに落ちるのは心地良いひとときだった。
ありがとう、ロッキン。また縁があればいつかにきっと。



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