未分類6杯, M.S.SProject, 非日常

会場に着いて思ったことは、まるで祭りのようだなぁ、ということだった。

九段下駅から徒歩数分で辿り着く日本武道館。改札を出て歩を進めるにつれ、般若の面をキーホールダーの如くぶら下げた人や、メンバーのぬいぐるみや缶バッジをつけた人々が己と同じ方向へ進むさまが目に入るようになる。ここまでは良く見る光景だが、流れに乗ってさくさく歩いて門をくぐった先は普段と異なる様相だ。祭りのように人がごった返し、物販用のテントが連なる先には長蛇の列。テントには「物販の整理券の配布は終了しました」との文字があり、親類縁者関係者仕事先から贈られた花輪の数々の前にも人が集まっていて、拡声器を持った係員があちこちで誘導の声かけをしている。おおおおおお……!

あぁ、そうか、武道館ってのはただのライブではなく、祭りなのだ。祭りなのか! 見渡せばこれまでに観た二回のライブよりも年齢層が広いようで、自分と同年代、それ以上の方々も多く見受けられた。武道館という特別な会場でやるなら是非と意気込んで来た人、せっかくだから都合をつけてどうにか来たいと思った人、いろいろな人がこの場に集まったのだろう。武道館という地の特別さを感じた一シーンであった。

座席は二階席の南西エリアで、売店でコーラを購入してよいよいと席に着いた。荷物を置くのも一工夫いる狭さで、人が行き来するのも一苦労。この広い会場いっぱいに人がぎゅんぎゅんに詰められて、巨大な日の丸の旗の下に設えられたステージに注がれる熱視線の熱量たるや。前回の反省を踏まえ余裕を持って着席した自分は、コーラを傾けながら周囲の興奮に何とはなしに耳を傾けていた。

程なくして暗転し、歓声とともに灯がともるスクリーン。ファンタジーな装いの四人が映り、正体不明の魔王を退治するためにだらだらと旅に出る。途中eoheohがおかしなテンションになって、擬音を駆使してセグウェイに肩車で四人乗りする描写を声だけでしていて、そのテンションとセグウェイ四人乗りの異常さがおかしくてゲラゲラ笑った。

映像が終わるとM.S.S. Projectのメンバーが登場! さてついに! 前回の公演で購入したペンライトをここで振ろうじゃないか! 袋からは取り出してあり、電池も確認済み。動作も家で数度チェックした。よっしゃーペンライトを振るぞ! と思ったものの己の手は止まった。

四人、突出して目立っている人がいない場面では何色を振れば良いんだ……?

例えばKIKKUN-MK-IIのテーマでは黄色にするのはわかる。FB777が歌っているときに青にするのもわかる。しかしこういうこれと言って何もない場面では何色にしとけば良いのだろうか。いわゆる「推し」がいる人であれば通常時には常にその色にしておけば愛と応援をアピールできてよろしいだろう。ペンライトにはそういった使い方もあるはずだ。しかし自分は……赤か? それともここは光の三原色を混ぜて全員カラーを白、と解釈すべきか……?

迷った挙句両隣の人の中間色にした。調和がとれて満足である。

そして満足している間に毎度の如く魔王を倒すためにゲーム実況を開始する宣言がされ、わーっと盛り上がる会場。ここでペンライトを振ろう、と思いつつまた手が止まる。

これって……縦に振るのか? 横に振るのか?

今までずっと盛り上がるときは拳を突き上げることしかして来なかったため、「何かを振る」ことで興奮を表現しようとすると体が混乱するらしい。言ってみれば、自分の体には「興奮」の表現として「ペンライトを振る」動作がプログラミングされていないため、エラーが発生するのである。縦に振ろうが横に振ろうがどっちだって良いじゃないかと今となってみれば思うのだが、エラーの結果自分は「え? え?」と混乱しながら眼下のペンライトの動きを確認していた。横だった。

そんな中で催されたゲーム実況。一つ目はカードゲームの「ナンジャモンジャ」で、単純明快で面白かった。ポップな化け物が描かれたカードをめくり、出た化け物に名前をつける。そして新しいカードをめくったときに既に名前をつけられた化け物が出た場合は、その名前を叫び、一番早かった人がカードを取得できる。カードの枚数が一番多い人が勝ち、というルールだ。これ、自分で作ることも出来そうだしやってみたい。

そうして名づけられた名前は「ライオン丸」「みるからに馬鹿」「うちのおかん」「バブルボンバー」「すね毛がすごい」「小さい方が本体」「バイバイ」などなど。あとうろ覚えなところで「キューティーピンキー」か「プリティーピンキー」、「ブルーサウザンドなんちゃら」「足長男」「もじゃお」と、黄緑色の化け物には白色要素が無いのに「ホワイト」が名前に含められていた。

このゲームは以前にもプレイしたことがあるようで、隣の席の男性がちょくちょくと改名前の名前を呟いていた。

次のゲームはビデオゲームで、M.S.S. Projectがテーマのゲームのようである。詳細は知らないが、小説とコラボしていたことを考えればゲームとのコラボも不思議ではない、と納得しつつステージを観ていると、きっくんに何かを囁かれたあろまほっとが口に含んだ水を勢いよくぶはあと吐き出してびっくりした。わざとやったようだが、何だ? 何か元ネタがあるのか? 衣装びっちゃびちゃだが良いのか???

タオルで拭くこともなくプレイを開始するあたりが潔い。ちなみにコントローラーも水で濡れていたようだ。すごい。勢いが。

ゲームは固定された画面の中で、M.S.S. Projectのメンバーを模したキャラクターが殴り合いをしつつポイント集めをし、ポイントが多い人が勝ち、といった内容だった。何回死んでも良いらしく、死ぬたびにキャラクターの肉片のようなものが画面外から四散されるが、次の瞬間には蘇って殴り合いを再開していた。

ゲームが終わったらメンバーはステージから退場。幕間に流される映像のテーマは「武道館のファンタジー」。なんと今回、eoheoh、FB777、あろまほっとの三人がネタ被りをし、三人とも頭部が武道館の怪人ないしはロボットを描いていた。そんな中で「ブドウ●カーン」という、頭部がブドウで逆日の丸カラーの怪人を描いたきっくんは一線を画していて見事だった。

さて、映像が終わりステージがしんと静まれば……ステージの前方と後方を区切る壁が門を開くように動き、現れるサポートミュージシャン。そして何とステージ中央、何も無い床からKIKKUN-MK-IIがせり上がり、登場する演出が! おおおおお! これは格好良い!

興奮しつつ、これは黄色にせねば! とペンライトを操作するも不慣れゆえうまく動かせない。そしてわちゃわちゃしていたらいつの間にか全員ステージに現れていた。振り回すべきペンライトに振り回されてどうするのだ、自分。

ちなみにペンライトの操作に慣れたのは本編後半に差し掛かった頃だった。そんなこともあり、曲順の記憶はあやふやであるがご容赦を。

一曲目は「Over Road」で、ソリッドなギターが格好良くも気持ち良い。そして二曲目はお約束の「踊れ!」のシャウトとともに始まる「ENMA DANCE」で、大人気「ボーダーランズのテーマ」へと続く。

「ボーダーランズのテーマ」ではステージの上手と下手に設置された櫓のようなものにあろまほっととeoheohがそれぞれ乗り、人力で押される櫓はアリーナ席に作られた通路を進み、大興奮の客席。二人は水蒸気を噴射する銃を構えそれを噴射していて、その様子が何かに似ていると思ったがすぐにわかった。除草剤を撒く仕草だ!

しかし撒かれるのは除草剤ではなく水蒸気。良いなーあれ、あの席の人嬉しかろうなぁ。通路の真ん中では櫓と櫓がくっつき、あろまほっととeoheohは柵を乗り越え乗り換える。ここでまたわーっと歓声が起こり、櫓はゆるゆると元来た道へと戻っていく。黒いジャンパーを着て真面目に櫓を押す人と周囲の空気の対比も面白かった。

四曲目ではちょっと珍しいことが。照明がワントーン暗くなり、サポートベーシストにスポットライトがあたる。一、二、と数を数えるように奏でられるベースソロ、そしてスポットライトはその隣のドラマーを照らし、激しいドラミングが終わるや否や、パッと灯りがついて始まったのは「幾四音-Ixion-」! このアレンジは面白い! 無機質なイントロから始まるイメージが強いだけに意外性があって楽しかった。また、この曲のときにだけ、ペンライトをピンク色に変える人がちらほらいるのも印象的だった。「幾四音-Ixion-」のイメージの由来する何かがあるのか、それともサポートミュージシャンに向けたものなのか。わからないが綺麗だった。

そして今まで思い思いの色で振られていたペンライトが一色に染まる瞬間! 「THE BLUE」だ! この一体感は気持ち良い。今回初めて二階席でM.S.S. Projectのライブを観たので、これまでペンライトによる絶景は後方を振り返らないと見られなかったが、実際目にするとすごい。オーケンが「大槻ケンヂと絶望少女達」の企画でアニメロサマーフェスティバルに出たとき、サイリウムの海の美しい景色を筋肉少女帯のメンバーとファンにも見せたいと思ったそうで、数年後筋肉少女帯でのアニサマ出演が叶い、それを実現できたとき喜んでいた話を思い出した。これか。この景色か。

初音ミクによる現実味のない早口の歌唱が非現実感を盛り上げて尚一層心地良い。暗い海の底から明るい光が差し込む水面を見上げているようだった。

非現実感を味わったあとはFB777が大活躍の「M.S.S.PiruPiruTUNE」! 別の曲でも思ったが、歌、上達してるよなぁ……。初めて観たライブにあった初々しさが徐々に削ぎ落とされて、自信を持って楽しく歌っているように見えて、それがまた素敵なのだ。アンコールの新曲メドレーの「WAKASAGI」でもそうだったが、あらゆるものから解放された歌のおにいさんのような清清しさがある。のびのび歌っていて気持ち良さそうだ。

ゾンビ曲「Phew!」ではあろまほっととeoheohが前回と同様にストーリーを演じるパフォーマンスを披露。狩りのシーンであろまほっとは普通に狩りをしていたが、eoheohはきっくんやベーシストに矢を放つ仕草をし、きっくんは倒れ、eoheohはその肉を喰らっていた。怖い。

この曲のキーボードソロのとき、キーボーディストの周りにメンバーが集まってその指先を眺めているシーンもあって、それが微笑ましかった。あのあたりの音色美しいよなぁ。ゾンビっぽくないよなぁ……。

ちょっと記憶が曖昧なのだが、「KIKKUNのテーマ」のときだったかな? キーボーディストがキーボードを弾きながら楽しそうに拳を振り上げていた姿が印象に残っている。バンドによってサポートミュージシャンの役割の度合いは違うが、自分はこんな風に、ステージにいる皆が楽しそうにしているのを見るのが好きなので何だか嬉しくなってしまった。

「KIKKUNのテーマ」は言うまでもなく盛り上がった。始まる気配がした途端ポツポツとペンライトの色が黄色に変わっていき、あっという間に黄色に塗り上げられる! そんな中でちょこちょこと黄色以外のカラーを固持する人もいて、徹底したこだわりを感じつつ、ふと、自分のペンライトが何色なのかわからない人もいるかもしれない、とも思った。

と言うのは昨日、日記に色覚異常を持つ友人の話を書いたばかりゆえの連想もある。ペンライトのボタンは三つで、「電源」と「色の確定」を指示する四角のボタンと、その左右に色を順繰りに変化させる三角のボタンがついているだけで、色の名称は表示されないのだ。色は全部で十二種類で、濃淡により見分けがつきにくいものもあってややこしい。色の見分けができなくても、今何色が表示されているかわかるペンライトがあったら良いな、と思った。

そして思うのは、この美しい青や黄色の景色もかの友人には別の景色に見えるだろうと言うことで。ライブの帰り道、今まで友人から聞いた話をもとにその景色を何とはなしに想像したのであった。

閑話休題。「KIKKUNのテーマ」が始まる前に、きっくんよりコールの練習タイムが設けられる。その間ずっとリズムを刻み続けるドラマーの仕事たるや! 日常で大声で叫ぶ機会はなかなか無いので、「きっくん! きっくん!」と大声を出してペンライトを振るのは実に楽しい。また、きっくんだけでなくメンバーのコールも行った。「きくえおきくえお!」「あろえびあろえび!」と楽しく叫びつつ、カップリング名称みたいだな、と思った。

特に格好良いと思ったのは「Glory Soul」! 舞台音楽のような曲調で、まるで今にもミュージカルが始まりそうで心が躍る。M.S.S. Projectのメンバー全員が上手と下手に分かれて先ほどの櫓に乗り、KIKKUN-MK-IIとFB777は楽器を担ぎ、あろまほっととeoheohは剣を持って殺陣を演じるパフォーマンス! おお、前回にはない動きも取り入れられている!

しかしこの櫓結構揺れるらしく、酔いそうになったとステージに戻ったKIKKUN-MK-IIは語っていた。

本編最後は「M.S.S.Phantasia」で締め。メンバーがステージからいなくなり、客席から湧き起こるアンコール。これがすごかった。ちゃんと「アンコール!」と叫んでいるのだ。と言うのも自分が行くライブでは「アンコール!」というコールはほとんど無く、手拍子だけでアンコールを要望することが多いのである。こんなアンコールらしいアンコールを聞いたのは久しぶりのような、もしかしたら初めてかもしれないような……。

そうして始まったアンコール一曲目は予想外! 新曲メドレーだった。KIKKUN-MK-IIから始まり、あろまほっとにバトンタッチし、eohoehへと繋がってそれぞれがソロを歌う! あろまほっとはよく通る声だが歌いなれていない様子が感じられ初々しく、eoheohは密閉空間から出しているとは思えない歌声が響いてきてびっくりした。「息もできないくらい」と高らかに歌ったときは「そりゃなあ」と思ったが、息ができているからすごい。

メドレーラストはFB777の「WAKASAGI」。さきにも書いたがすごく気持ち良さそうだった。

最後の最後は明るく楽しく「We are MSSP!」でおしまい。射出された色とりどりのテープが目線の高さまで飛び上がり、一度中空でわだかまった後、キラキラと光を反射させながら下りていく色のかたまりの美しさったら。下から見上げるのも良いが、こうして同じ高さから見下ろすのも美しい。

終演後もしばらくメンバーはステージに残ってくれた。恐らく一番武道館への憧れが強かったであろうきっくんは特にステージを去りがたいのか、ここでも、またその前の場面でも一つ一つ吐き出すようにしながら言葉を語っていた。そこには照れ隠しも混ざりつつ、隠し切れない喜びも滲み出ていて、故に言葉がまとまらず、まとまらない欠片がそのままにポロポロと漏れ出しているようだった。

外に出れば日はすっかり落ちていて、時計を見れば二十一時前。開演時間を思うと、何と長くこの空間に滞在したのだろう! 興奮冷めやらぬ人々がそこかしこで輪を作り感想を語り合う中、祭りの余韻を感じつつ九段下駅へと向かう。あぁ、楽しかった。

しかし最後の最後。うっかり道を間違えて反対方向へと進み、街灯が少なくやけに暗い車道の脇をほてほてと歩いていたら目の前にぼうと浮かぶ般若の面! ぎょっとして目を見開くとリュックサックにキーホールダーの如く般若の面をぶら下げた女性が闇の中で立ち止まり、携帯電話をいじっていた。びっくりした。怖かった。いつか都市伝説が生まれるかもしれない。



未分類2杯, インストアイベント, 内田雄一郎, 非日常

いやあ危なかった。家でだらだらしながら整骨院に行く準備をしていて気付く。そうだ! 今日は内田さんのインストアイベントの日だ! だらだらしている場合ではない、ってんで、一日の予定とルートを決めてさくさく整骨院に向かったのが十三時頃か。それから少々の買い物を終えて家に帰り、曲の感想を手紙にしたためて再度家を出た。目指すはタワーレコード錦糸町店。

ガタンゴトンと電車に揺られながら内田さんのアルバムを聴き返す。筋肉少女帯のベーシスト・内田雄一郎による筋肉少女帯のテクノカバーアルバムがピコピコビヨンビヨンフワフワと耳を震わす。今日はその発売記念イベントであり、内田さんのトークの後にはサイン会が開かれる。もともと予定していた楽しみをうっかり忘れかけていたおかげで降って湧いた楽しみに感じる愉快さ。先週の水戸さんの100曲ライブでも、水戸さんとワジーは自分達の活動や新譜もそっちのけで内田さんのアルバムについて熱心に語り、宣伝していた。同じミュージシャンが衝撃を受け、語らずにはいられなくなる作品の、その生まれた由縁を今日聴けるかもしれない、と思うとわくわくする。

そうして会場に着いたのがイベントの三十分前か。タワーレコードの入り口に足を踏み入れようとしたそのとき、目の前にビートサーファーズの三浦さんが立っていて、己の横をすっと通り過ぎた影はどこか見慣れた背格好。あ、と思ってその背中を見れば今日の主役、内田さんその人であった。ほぼ同時に会場入りすることになろうとは。偶然とはいえちょっと嬉しい。

ステージの前には既にたくさんの人が並んでいて、もっと早く来れば良かったなと思いつつもそれなりに視界は良好であった。イベントが始まる前から内田さんはひょいひょいとステージに姿を現し、機材の設置や調整を行っていて、またひょいひょいと既に消える。そんな様子を眺めつつ待つこと三十分。十八時になりステージに現れた内田さんは着替えを済ませ、何とジャケットと同じ格好に! おおー! 格好良い!

ステージにはパソコンと内田さん愛用のiPad。iPadに画像を映し、トークとともに画像を切り替え、ちょっとしたスライドショーのような楽しさがあった。このアルバムがどうしてこうなったか、と元ネタの解説がメインで、偏った音楽しか知らない自分にはとても新鮮だった。まずジャケットは1968年にリリースされた「Switched on Bach」のパロディをしようとしたが、結果的に今のデザインになったこと。「Switched on Bach」にジャケットに写っているバッハのおじさんこそが作者のカルロスその人かと思いきや、全然違う人だったこと。そしてカルロスが性別適合手術を越え女性に戻ったとき、「あのバッハのおじさんが!?」と内田さんは衝撃を受けたことが語られた。

この話を聞きつつ、もしかして平沢進のアルバム「Switched-On Lotus」のタイトルもそこから来ているのかなぁ、と思った。

ちなみに「Switched on Bach」のセカンドではバッハのおじさんは宇宙に行っているので、「SWITCHED ON KING-SHOW」もセカンドが出たら宇宙に行っているかもしれないそうだ。次回作がますます楽しみである。

元ネタ解説では主に「イワンのばか」について語られた。イントロはELPの「タルカス」とイエスの「危機」を同時に流すイメージで作られたとのことで、それぞれのイントロと、一緒に流したバージョンも聴かせてくれた。ここで内田さん、「自分だったら三十分聴いていられるけど……」というようなことを語って笑いながらスイッチを切った。内田さん、本当に好きなんだなぁ。

また、メタルですごく盛り上がるところをふにゃんふにゃんした感じにしたら面白いんじゃないか、ということでクラフトワークのMIXを元にアレンジしたそうで、このあたり、是非橘高さんの感想を聴きたいところである。

メタルと言えば、筋少のアルバムを取り込むとドドンと「METAL」と分類されるそうで、「SWITCHED ON KING-SHOW」は何に分類されるのだろうと思いつつ取り込んだら「POP」と表示されたそうだ。そこで内田さん「これからはポップミュージシャンとして生きて行きます」と冗談めかして語っていた。

そして楽しい時間は過ぎ、トークライブは終了。いったん内田さんはステージからいなくなり、会場の準備が整い戻ってきたと思ったら……黒い帽子に黒いマスクの黒尽くめ! 何故か目元しか露出していないという徹底振りである。しかしいつもの眼鏡は外されていたので目元に限って言えば若干露出が増していた。何故だろう。緊張していたのだろうか。

手紙を渡し、サインをしてもらいつつ内田さんと会話出来たのが嬉しかった。あぁ、ドキドキしたけどちゃんと話せて良かった! 握手をしてもらってその場を離れ、ふわふわしつつ反芻したのは「こういうのが楽しいお年頃」という内田さんの言葉。良いなぁ。いくつになっても新たな楽しいことを見つけ、遊べる心持ちは実に良い。そうして出来上がったものが同業者さえ驚かせる衝撃の一作という面白さ。筋肉少女帯の内田さんにはいつも安定感と安心感がある。しかしそれだけではない衝撃的なスパイスをぶっこんでくるバランス感。これこそが彼の魅力なのだろうな、とつくづく思った。次回作も楽しみである。



未分類14周年企画

2003年2月11日に開設したこのサイトが14周年を迎えました。人間で言えば中学二年生です。ハイハイをしていた子供が学生服に袖を通すまでに成長し、中二病を発揮して飲めないブラック珈琲に手を伸ばすほどの年月、自分は何をしていたのだろうと思い返してみれば毎日毎日カタカタと日記を書き続ける日々でした。最初はイラストサイトのつもりだったのに気付けば日記サイトになっていたのだから驚きです。さて、14周年と言うと半端ではありますが、先日アクセスカウンタが10万ヒットを迎え、これが地味に嬉しかったのでちょっとした企画を行うことにしました。

企画と言ってもただの訪問者アンケートですが、アンケートにご協力いただいたお礼に、「これについて語れ!」「あれについて書いて!」といったリクエストに応えて何かしらの記事を作成します。無茶振りするなら今のうちだぜ。

■渦輪み騙しアンケートページ※受付は終了しました。
※設問数は8問で、およそ5分程度の時間がかかると思われます。
※リクエストフォームはアンケートページの最後にあります。
※リクエストをせず、アンケートにだけ答えることも可能です。

■アンケート期間
2017年2月21日(火)まで

■リクエストについて
アンケートにご協力いただいたお礼に、日記・記事・文章のリクエストがございましたら承ります。いただいたリクエストを反映した記事はサイト上にアップし、Twitterでアナウンスしますが、個人的に連絡してほしい場合は連絡先(メールアドレスかツイッターID)をお知らせください。

※リクエストの例 …「○○をお題に日記を書け」「△△の感想」「××についてどう思うか」「○○をお題に詩を綴れ」などなど、単語だけでも良いですし、具体的な指定でもOKです。ご自由にどうぞ。
※重複するリクエストをいただいた場合は合体させる場合があります。
※全く知らないものについてのお題の場合は妄想力を爆発させて頑張ります。
※猥談系はご遠慮ください。



未分類

■2月6日23時のヤヨイさんへ

お返事が遅くなり申し訳ないです。ツイッターのオーケンイラストをご覧くださったんですね! ありがとうございます。あの絵が「音楽の人」の表紙と気付いていただけるとは、ありがたいやら嬉しいやら。自分は再結成前に筋少を知ったので、あの本は古本屋をめぐって手に入れたものでした。橘高さんのイラストはもう、あのライブでの高く蹴り上げるシーンがあまりにも格好良く、自分にとっての橘高さんを象徴するポーズだったので描きました。そのように言っていただけてとても嬉しいです。

「蜘蛛の糸」にあるようなオーケンの視点ってすごく良いですよね。まさしく自分も「蜘蛛の糸」のような曲にこそ励まされる人間なので、オーケンに出会えたことを本当にありがたいと思います。心の支えになってくれると言うか。

自由気ままなサイトですが、また是非遊びに来てください。お待ちしております!



未分類100曲ライブ, 6杯, 水戸華之介, 非日常

五日間で百曲を歌う、水戸さんの100曲ライブ第一夜。この100曲ライブも今年でついに五年目とのことで、当初は毎年恒例にするつもりはなかったが、大変であるにも関わらず終わればまたやりたくなるとのこと。このシリーズが始まったとき、大好きな水戸さんの曲を百曲堪能出来ることに非常に興奮し、参戦してみれば間近で水戸さんを観られる喜びで爆発し、先の約束が何も無いにも関わらず、来年も楽しみだな、と思ったものだ。その希望が叶えられてついに五年目。当たり前のように開催されることがとても嬉しい。

厚手の外套に身を包み、凍えるような寒さの中開場の時を待つ第一夜から二週間置いて第二夜、第三夜と徐々に外気がほころんでいき、最後の第五夜には淡い色合いの薄手の上着を人々は身にまとう。列に並ぶ人々は知らない人間ばかりだが、五年目ともなれば見覚えのある人達も多く、いつの間にか彼ら彼女らと過ごすこの時間に春の訪れを感じるようになっていた。

今回のゲストは人間椅子の和嶋慎治、通称ワジーである。以前のワジー回は渋めの選曲が多く、重くシリアスな印象だった。アルバムで言えば「ヨキコトキク」的と言えば良いだろうか。また今日のライブも水戸さん曰く、男っぽいと言うか愚痴っぽい曲ばかりになってしまったとのこと。

しかし今日はシリアスの比重が高めながらもパッと盛り上がる曲もあり、以前自分が参戦したときとはまた空気が違って面白かった。前回は聴き手も心して臨まなければならない緊張感があったが、そのあたりが軽くなっていて気軽に楽しむことができた。この空気の変化の由縁は選曲と水戸さんのテンションによるものだろう。

と言うのも水戸さんは現在新譜のレコーディング中で、レコーディングモードのままライブに臨んでいるため妙なテンションになってしまっているそうだ。水戸さんとワジー曰くレコーディングは今この世に無いものを新しく創る作業なので、ひらめきが生まれるたびに「自分は天才か!?」と興奮し、ライブとは全然違う心理状態になるそうだ。そのためレコーディングモードの水戸さんは普段であればMCもキリの良いところでまとめて次の曲に移るという風に自分をコントロール出来るのだが、今はそれが出来ないためワジーに任せるといった形になっていた。

とするとまぁ、水戸さんもワジーもお喋りだから曲と曲の合間に喋る喋る。重い曲の後に楽しい話題が発生したり、ふざけあった直後にシリアスな曲が始まったりと非常に空気がゆるゆるで、ゆるーい寒天の中を漂っているような楽しさがあった。

そんな中で印象的だったのは、水戸さんが三十年ぶりに知人と再会し思い出話に興じた流れで語られたこと。三十年前にベルリンの壁が壊された、でもまた壁が作られるのか、と。その小さく短い言葉がいやに耳に残った。

そうして始まったのは「人間のバラード」。水戸華之介&3-10Chainの曲である。

この後にもアメリカ大統領選の話題になり、そのときはワジーにより陰謀論と絡めてキャッチーに語られた。話を聞きつつ思ったのは、安寧に生きられると思っていられる瞬間は本当にラッキーで、ともすればそれは瞬間として簡単に切り取られてしまうかもしれないことである。

かと思えば、陰謀論を語ったワジーは秘密を暴露した者として始末されるかもしれない! 額に赤い光が点されたらまずい! 撃たれる! 狙われている! と悪ふざけ。ワジーが近付けば「巻き添えになる」と離れようとする水戸さん、そんな水戸さんにギターを弾きながらぐいぐい接近して死なばもろともを狙うワジー。男子高校生の休み時間のような光景が繰り広げられ、ゲラゲラ笑ったのだった。

一曲目は「夜と男と運命の魔の手」と、格好良くかつ痺れる選曲。意外かつ嬉しかったのは「猫とろくでなし」。屑の曲なのでてっきり吉田一休回でやるものと思っていたら、まさかワジーバージョンが聴けるとは! 原曲よりも緩やかに歌われていて、あたたかくも寂しい気持ちになった。あぁ、この曲大好きだ。

いろんな意味で衝撃だったのは「飛蝗」である。この曲が出来た経緯を全然知らなかっただけにびっくりした。水戸さんが長年出演していたラジオ「土曜ワラッター」の企画で生まれたもので、ある人かグループに対し「使ってください」といきなり送りつけられた曲を水戸さんが拾って形にしたものらしい。よってあまり時間をかけずに作ったものだが、ワジーはすごく良いと絶賛していた。そういった経緯もあり、3-10Chainのセットリストにあえて入れるのも……と言うことでなかなか出番が無いと水戸さんは語っていたが、いや飛蝗好きなのでやってくださいお願いします。

「ずっと愚痴しか言ってない」「何だこの曲」と水戸さんが笑っていたのは「眺めの良い場所」。愚痴を経て最後に逆転があるかと思いきや何も無い! とのことで、改めてじっくり聴いてみると確かにその通りだった。でもこの情けない感じ好きなんだよな。

本編最後は「グライダー、虹へ」で、アンコールはかつてトリビュートに参加した際にカバーしたブルーハーツの「情熱の薔薇」と「パンを一切れ」。「パンを一切れ」の水戸さんの声の伸びやかさの美しさったら無かった。そして二十面ダイスにより選ばれた本当に最後の一曲は「グライダー、虹へ」。

重さとゆるさの波を漂う楽しいライブをカチッと固めるのはやはりワジーの安定感に他ならない。水戸さんのテンションに引っ張られたのかワジーも若干テンションがおかしく、同じ箇所を何度も弾いてしまうミスが数回ありつつも、「それでも大丈夫」と思わせてくれるしっかりとした土台の重さ。水戸さんとのコーラスも美しく、澄田さんとはまた違った味わいがあって心地良かった。

あと、水戸さんもワジーも自分の新譜やその予定があるにも関わらず、内田さんの新譜を熱心に宣伝していたのが面白かった。「あのピコピコへの真摯さはすごい」「筋少のカバーなのに筋少のフレーズが少ない」「筋少である必要があるのか?」「頭がおかしい人が作ったアルバム」「怖かった」「筋少のライブや店頭で売ってると思うので是非買ってみてください」と二人して熱心に喋るのである。そんな内田さんが出演するのは第三夜。ちょうど一ヵ月後の三月の頭。また少し暖かくなるだろう。次回もまた楽しみである。