未分類0杯, のほほん学校, 筋肉少女帯, 非日常

最高に楽しかった。最初から最後までゲラッゲラ笑った。

台風の吹き荒れる中どうしたものかと思ったが、幸運にも己が外に出たときは雨風が弱まり、普段の雨の日と同じ調子で外に出ることができた。長靴を履いて水溜りも気にせずカポカポ歩く。電車も遅れることなく通常どおり運行し、何一つ不自由することなく目的地に着いた。

今回の会場「座・高円寺2」。一度来たことがあったおかげで、さらっと地図を見るだけで辿り着くことができた。己の席は真ん中寄りのそれなりに前の方で、うわあこんなに広々観られるなんて! と喜びを抱きつつやわらかな椅子に腰を下ろす。十二分に近い。嬉しい。

開演まで、まずは今回のゲストの氣志團・綾小路翔にまつわる映像が流され、次にオーケンが参加しているROOTS66が手がけるエンディング「おそ松さん」の映像、そして新譜「Future!」のMV「エニグマ」が大きなスクリーンに映された。「おそ松さん」は音が先に流れ、映像がスクリーンに出るのが遅れたため、肝腎のオーケンの声が目立つ部分ではスクリーンが白紙だった。このゆるい感じがのほほん学校らしい。

会場が暗くなり、まずオーケン一人が登場。先日のタワレコでのインストアイベントと同じように、「香菜、頭をよくしてあげよう」を弾き語ってくれた。筋少の大ファンで音楽なしでは生きられない人間でありつつ、音楽の技巧については全く詳しくない人間なのだが、それでもオーケンのギターはたまに聴くと上達しているなぁ、すごいなぁ、と感じさせられる。愛あってのものだろう。

そして筋少メンバーが呼び込まれ、楽しいトークタイムに。皆、筋少のライブとは違うゆるっとした格好で、普段着とライブの中間をイメージさせる出で立ちだ。まずは高円寺フェスということで各々の高円寺の思い出や印象が語られる。大阪出身の橘高さんにとって高円寺は「日本らしさ」の象徴に近いイメージがあるらしく、怖い印象もあったそうだ。曰く、都会であれば渋谷もどこも大差ないが、高円寺にはその色が出ていると。故に中央線より南側にしか住んだことがないらしい。そこにオーケン、「そうだよ高円寺は怖いんだよ!」と色々なエピソードを披露してくれた。

ツイートできない危ない話を交えつつ爆笑トークは続く。昔々、インベーダーゲームの大きな筐体を購入したオーケンのために、おいちゃん達がその筐体を自転車に乗せて、えっちらおっちらオーケンの家に運んだことがあったそうだ。また、有頂天の芝居の練習をどこどこでしていたとおいちゃんが高円寺の思い出を語り、空手バカボンでは単純なコントをケラさんを差し置いてオーケンが書いていたが、ある日ケラさんが書いてきた台本があまりにもシュールだった話などが長々と語られ、こんなにケラさんの話ばっかりしてケラさん大好きかよ! と笑いが起こった。

今回せっかく筋少メンバーが揃ったので、とアコースティックで演奏されたのは「3歳の花嫁」と「サイコキラーズ・ラブ」。ケラさんの話題が出たのは「3歳の花嫁」の後だったかな? オーケンがこれを映画にしたいと語りだし、キャストは誰が良いかとメンバーに問う。困惑するメンバー。その中で演出はケラさんかな? と名前が上り、ケラさんだとシュールになっちゃうからなぁ、という話から有頂天や空バカの思い出になったのだ。

ちなみに「3歳の花嫁」での神父のセリフは今回内田さんが担当。橘高さんがちらっと内田さんを見て、セリフへと促している姿が印象的だった。この曲は本当に美しく、今日この場で聴けないかな聴きたいな、と期待していただけに嬉しい。

「サイコキラーズ・ラブ」は新譜発売前から披露されていただけに歌い慣れた印象があった。コーラスが重なっていく気持ちよさと、内田さんにより導かれるハンズクラップの美しさがたまらない。

盛り上がるトークの中、氣志團のボーカル・翔やんこと綾小路翔さんが拍手に迎えられ登場! 己はこの方をきちんと存じ上げないのだが、あえて翔やんと呼ばせていただこう。翔やんはこの日ハーフマラソンを終えてステージまで来てくれたそうで、脚が棒のようになっているそうだ。この雨の中ハーフマラソンを完走するとは……何て根性のある方なんだ……。

あえて言うと、己は氣志團についてほとんど知らない。ただ、筋少ファンであると同時に氣志團ファンである方は少なくないので、その方々の声により、真面目な好青年のイメージを抱いている。また、氣志團が開催するフェス「氣志團万博」のおもてなしは素晴らしく、ケータリングはどれも美味しいらしいことも聞いていた。故に良い人なんだろうなーという漠然としたイメージを抱いていた。

そしてこのステージに登場した翔やんのイメージといえば、当初のものと変わらない好青年そのものであった。

印象的だったのはハーフマラソンを走る中でのエピソード。翔やんは走り続ける中で、完走したもののずっと追い越され続けたという。そして走りながら走馬灯のように巡ったのは自分の過去。真面目で勉強ができたお子さんで、氣志團でデビューしてからはとんとん拍子に進み、早い段階から大きなステージに立つことが出来た。ところが近年、同じ時期にデビューしたバンドがようやく大きなステージに立てるようになったとき、そこにようやく至ったという熱意に敗北感を抱いたという。自分はこれから追い越される人生なのではないかと不安を抱いたそうだ。

その中で語られたのは、自分は千葉出身で東京をまるで敵のように、何が東京かという思いをエネルギーにしてきた。しかし今良い調子の人々は東京の育ちの良い人々で、それこそ「明日食べられるのか」と不安を抱いたことのないような、冷蔵庫を開ければ必ず食べ物が入っていて、一人暮らしをしていても仕送りをもらえるような、そんな安心の中で生きてきた人。そういった人と自分は違うとハーフマラソンを走る中で思ったと言う。

ハングリー精神を持つ地方出身者による東京を敵役としてみなす歌に対し、東京出身のうちださんが「しょうがないじゃん! 東京に住んでいるんだから、他にどこに行けばいいの?」と語ったエピソードも披露された。そんな中でオーケンは、東京のおぼっちゃんの僕と千葉出身の翔やんには他にない共通点がある、仮面ライダーに出演したことだ! と綺麗にまとめた。

ちなみにこの日、仮面ライダーの予告篇もスクリーンに出され、オーケンが仮面ライダーに出演するに至った経緯も語られた。芝居が出来ないことを自覚しているオーケンは断りに断り、「朝早くなんて起きられないですから」とまで言ったが、スタッフに「今はそんなこと全然ないですよ!」と押し切られたものの、撮影のため朝七時四十五分にダム集合、と指定され「ブラック企業か!」と突っ込みが入った。記念にと撮影されたオーケンの自撮りも公開されたが、見事にまぶたがむくんで眠そうだった。

最後オーケンと翔やんが二人で語るコーナーに入る前、筋少メンバーと翔やんが一対一で語る姿を見たいというオーケンによる無茶振りがあり、橘高さん、内田さん、おいちゃんの順でトークが行われた。橘高さんは翔やんの格好にシンパシーを感じる話で、それに対し翔やんは「中学生のときから見ているけど橘高さんは全然変わらない!」と褒めちぎった。

内田さんは「空手バカボンを聴いてくれてたんだね」と話を振り、内田さんの作ったソロの話へ移行しつつ、翔やんから「オーケンさんと内田さんはどこに引かれ合ったのか、どうして長く続いているのか」という質問が発せられる。オーケンと内田さんは「火事」「バッドマン」と答えるもさらに深堀りを要求され、二人して首を傾げるも答えは出ない。そこから翔やんのちょっと切ない話になり、オーケンが翔やんと橘高さんはバンドをファミリーと捉えるタイプ、うっちーとおいちゃんもそれに近い、僕は全然違う、死ぬときは別! と語った。

意外だったのがおいちゃんと翔やんで、SNSで繋がっていること、おいちゃんが韓国に行きたいなと思っていたところで翔やんが韓国に旅行に行ったエピソードが語られた。翔やんは今まで全く映画を観ず、スターウォーズも観たことがないほどだったが、映画を観ようと思い立ち、映画を観続ける中で韓国映画にはまったそうだ。それからおいちゃんと翔やんで韓国の話で盛り上がる盛り上がる。おいちゃんはこの日一番楽しそうで、笑顔がキラキラしていて眩かった。

メンバーが退場してからオーケンと翔やんで前述のハーフマラソンの話になり、最後に「オンリー・ユー」を二人で演奏して締め。ここに記した以外にもたくさんの面白トークがあり、特に氣志團万博運営の裏話、芸能人にオファーするうえでの難しさ、スポンサーとのいろいろな兼ね合いなど、聞き応えのある話が盛りだくさんだった。

帰り道は雨も弱まっていて平和そのもの。あぁ、楽しかったとニコニコしながら帰路に着いた。それにしても、あんなに成功していて、華やかに見える人でも大きな不安を抱えているのだなぁ。そうして当初、自分がイメージしていた以上に「こちら側」に近しい人のように感じる。だからこそ筋少ファンであると同時に氣志團ファンである人も多いのだろう、と思った。

意外なところに意外さを感じた一夜である。どっとはらい。



未分類8杯, インストアイベント, 筋肉少女帯, 非日常

「Future!」の発売記念インストアイベントがタワーレコード新宿店にて開催された。幸運なことに整理番号がかなり良く、前から二列目に立てたおかげで充分な視界を得ることが叶った。嬉しい。とても嬉しい。

今日はいつもの徳間のお姉さんではなく、男性のスタッフがイベント開始前の注意事項をアナウンスしていた。会場は人でいっぱいで、少しずつ前に詰めるように促される。時間は二十一時。さぁ、もう間もなくだ。

そして拍手に呼び込まれ、ふらりとステージに現れたのがオーケンだ。もう何度もこういったイベントに参加する機会には恵まれているが、やはりこうして間近でオーケンを観るとドキドキする。血行が促進され毛細血管の隅々まで栄養が行き届き全身が健康になってしまう。ありがたい。

オーケンは四つ並べられた椅子のうち向かって左から二番目に腰を下ろすと、壁に立てかけられていたアコースティックギターをごく自然な仕草で手にとって、ゆるりと「香菜、頭をよくしてあげよう」を弾き語ってくれた。思わぬサプライズである。曰く、今日は演奏をする予定がないけどせっかく集まってくれたのだから、というオーケンの優しさとのことで、タワーレコードにほわりと広がるオーケンの歌声に聴きいりつつ、全く、素敵な人だなぁとしみじみした。

ちゃんとメンバーも来るから安心してくださいね、とオーケンが釘を刺すとドッと笑いが起こる。オーケンによるミニライブが終わるとおいちゃん、うっちー、ふーみんの三人がステージに現れ、いつもの立ち位置と同じ順で椅子に腰掛けた。

今日はせっかくなので、これまで受けた取材やニコ生ではまだ話していない、「Future!」の楽曲それぞれにまつわるエピソードや裏話を肩っていこう、ということで収録順に一つずつ丁寧に話してくれた。発売されてからずっと、それこそ寝る間も惜しんで「Future!」を聴き続けているので本当に嬉しい。聴けると思って期待して来たわけだが、やはりこう、希望が叶えられるとたまらないものがある。さぁ、どんな話が聴けるだろう!

■オーケントレイン
おいちゃんはこの曲を「オーケンに普通に歌わせない」ことをテーマに作っていたとのことで、語りやシャウトだけで構成される曲にするつもりだったそうだ。ところが、ここはオーディエンスでオイオイ盛り上がるだろう、と思っていたところで「オ~ケントレイ~ン」と歌われてしまったそうだ。

「フューチャー!」のところや、高い声のコーラスにブースカ声のオーケンが混じっている。このブースカ声のオーケンと今回コーラスに参加してくれた扇愛奈さんの高さが同じくらいで、ブースカボイスを扇さんの声でコーティングしていると橘高さんは語っていた。また、オーケンはブースカ声の方が何故かピッチが良いとのことで、それを聞いたオーケンがたははとなっていた。個人的には、あの声がブースカとして認識されていることが面白かった。

■ディオネア・フューチャー
筋少コーラスの「無意識 電波 メッセージ 脳Wi-Fi」を録音するとき、橘高さんは「無意識 電波 メッセージ」までは「これくらいやったらもういいだろう」というノリだったのだが、「脳Wi-Fi」が口が気持ちよく、何度シャウトしても楽しかったらしい。橘高さんが熱く「脳Wi-Fi最高!!」と語っていた。

Wi-fiについて、数年後には新しい技術が開発されて古い言葉になっているかもしれないね、という話に。さながら歌詞に出てくる「ポケベル」に時代性を感じるような。「若いコとドライブの歌詞にあるTwitterもそろそろ古くなっているかもしれないね」という言葉も。いやいやいやいや、Twitterはまだ大丈夫。これからもしばらく大丈夫であってほしい、とTwitterヘビーユーザーは思った。

また、オーケンがWi-Fiという言葉を知っていたことで得意がっていたが、「Wi-Fiが流通している」と口を滑らしてしまい、すかさずそこに橘高さんのツッコミが入り、会場が笑いの渦に飲み込まれた。わっはっはっ。

しかし己はオーケンを笑えない。己はあれを「うぃーふぃー」と読んでいた。

■人から箱男
このイベントの前日にあったニコ生での放送で、内田さんは初めて完成版の「人から箱男」のMVを観たとのこと。完成前に何度もチェックをするので、意外と完成版を見ていないことはあるそうだ。おいちゃんと「知らないカットがあったね」と盛り上がっていた。

■サイコキラーズ・ラブ
何故か曲の終わりに拍手がわーっと起こってわいわいひゅーひゅー盛り上がる声を入れる予定になっていたそうで、そういう盛り上がる音を録音していたが、結局使わなかったとのこと。それを聞いたオーケンが「曲に合わないでしょ!?」と困惑しつつ、「でもエヴァンゲリオンの最終回みたいだね」「あれはエヴァだ、って言われていたかもしれない」と言っていた。

■ハニートラップの恋
「サイコキラーズ・ラブ」で入らなかったわいわいひゅーひゅーが「ハニートラップの恋」に入ったとのこと。とはいえ使いまわしではなく、きちんとこの曲のために撮り直したそうだ。

オーケンが内田さんに「内田くんはわーとかひゅーとか入れるの好きだよね」と話したところから内田さんはパリピということになり、内田さんとパリピという言葉の組み合わせの破壊力により会場で爆笑が起きた。

■3歳の花嫁
歌詞の「フラッシュ・ゴードン」についての解説があった。「フラッシュ・ゴードン」はあのクイーンが音楽を担当した映画で、それはもう壮大なスペース・オペラになるはずだったが……とのこと。その仕上がりがトラウマになった者も多いそうで、映画「テッド」でもパロディにされているそうだ。また、「フラッシュ・ゴードン」は公開当時にも既にネタにされていて、「フレッシュ・ゴードン」なる映画が作られたそうだ。「観たことある人~」とオーケンが挙手を募ると内田さんが手を挙げる。見えなかったが観客もちらほら手を挙げていたようだ。ちなみにこちらはポルノだそうである。

■エニグマ
一発録りで作られているとのことで、それぞれ1チャンネルしか使っていないそうだ。

トコイトコイのところを仮歌では内田さんが「See Emily Play」と歌っていたのだが、内田さん以外の全員が「死にたい」と聴き取っていて、おいちゃんは「死にたい死にたい」という仮歌を聴きながら俺は死にたくない、と死にそうな気持ちで真面目にギターを弾き、オーケンは呪い返しのため呪いの言葉「トコイ」を歌って対抗したそうだ。ちなみに「See Emily Play」はピンク・フロイドの楽曲の名称である。

「アイアイアイアイ」の後の箇所はきちんと元ネタを調べてきっちり同じ綴りにしたそうで、意味は「これから殴りにいく」とのこと。また、それ以外の暗号部分も、今後「あ、これかあ!」とわかる展開があるそうだ。いったいどんな種明かしがあるのか実に楽しみである。

■告白
内田さんにとってのテクノであるYMOやクラフトワークの影響が強い曲。ここでオーケンより内田さんに、どんなテクノのイメージなのか具体的に教えてあげてほしいと要請があり、そこからテクノとテクノポップの違いなどが語られたが、最終的には「内田さんが作ったアルバムを聴いたら理解できる」という結論に至った。というわけで皆、内田さんの「SWITCHED ON KING-SHOW」を聴こう!

「ボクの告白は以上さ~」のところは最初無かったが、オーケンのリクエストによりこの部分が追加されたそうである。ちなみにここは喫茶店で話しているシーンだそうだ。

■奇術師
「太陽にほえろ!」をイメージしているのかと問うオーケンに、違うと答える橘高さん。強いて言うなら夕方のイメージとのこと。また、当初はエディのピアノソロはなく、ギターのみの構成だったそうだ。

橘高さんはもっと長くても良いと思っていたがこの長さにしたとのこと。ライブではもっと長くなる可能性もあるそうだ。聴きたい! ぜひ聴きたい!
また、ライブの構成を考えるうえでは、長くできる曲があると便利という話もあった。

■わけあり物件
クライアントの依頼を受けて作った曲で、「この曲のイメージで」とピックアップされた曲が「球体関節人形の夜」「踊る赤ちゃん人間」「くるくる少女」「再殺部隊」などなど。しかしクラシックを聴かない人にとってクラシックが全て同じに聴こえるがそれぞれ違いがあるように、橘高さんにとってはそれらは全て別の種類の曲なので、イメージを固めるのに苦労したそうだ。タイアップする作品のショートアニメを何時間も観続けてイメージを練り上げたそうだ。

■T2
プロレスラー入江茂弘選手の入場テーマ曲、ということでプロレスと縁の深い新木場や両国、入江選手が遠征したウィスコンシン州やサウス・ミルウォーキーといった地名が入っている。……これはもう、入江選手はたまらなく嬉しいだろうなぁ!

そうしてアルバム全曲にまつわるトークが終了し、いそいそとメンバーが椅子を立つ。今回は演奏はないけど……と断りが入りつつ全員マイクを持って始まったのは……「じーさんはいい塩梅」! 歌って歌って、と合唱を促され、朗らかな歌詞を歌い上げる楽しさ。橘高さんは「脳! Wi-Fi!!」とシャウトを挟み大サービス。最後にぺこんとお辞儀をして楽しい時間は終了した。あー、大満足。楽しかった。

ちなみに会場に貼られていたポスターはなかなかレアなものだそうで、なんと、アルバムにディオネアが印刷されていないバージョンとのことだ。これから配布されるものはきちんとディオネアが印刷されているそうで、ディオネアなしバージョンはここでしか見られないらしい。「貴重だから写真撮っといた方が良いよ!」「保存しといてなんでも鑑定団に出そうかな!」と盛り上がるメンバーは実に楽しげだった。

そのポスターがこちら。せっかくなのでイベント終了後に撮影した。うん、確かにディオネアが無い。

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日記録4杯, 日常, 筋肉少女帯

2017年10月17日(火) 緑茶カウント:4杯

好きなものについて徒然なるままに語り書き記すことを愛してはいるが、好きなものを人に勧めようとはあまり思わない。何故ならそれは、自己を基準に考えればさほど意味のない行為であるためだ。勧められる側に立って考えてみれば、「これはとても素敵なので一度見てほしい!」と頼まれたところで、それはあくまでも勧める側の好みでしかなく、勧められる側のことを考えての行為ではないからだ。

故に、相手方に興味を持ってもらうためには、相手方の好みを把握したうえで、その人が本当に喜んでくれるものを勧めるべきである。そうでなければただの好みの押し付けでしかない。

しかしその好みの押し付けを、したくてしたくてたまらなくなっている。

筋肉少女帯の新譜「Future!」に収録される一曲、「エニグマ」のミュージックビデオが本日公開された。それはわかりやすいコンピューターグラフィックスによる装飾もなければ、愛嬌のようなお笑い要素もない。ボーカル、ベーシスト、リードギタリスト、リズムギタリスト、ピアニスト、ドラマーの六名がスタジオに集い、演奏する様を収めただけのもの。彩度を落とし、黒と白を基調としたシンプルかつシックな色調と暗号のような歌詞に、変調を繰り返すプログレッシブ・ロック。積み重ねた技術と迫力が呪文のように渦巻く怪しさ漂うビデオである。

あぁ、叶うことならこのミュージックビデオのURLをQRコードに変換し、厚紙に刷って名刺代わりに誰彼ともなく配り歩きたい。これが己の愛するバンドの素晴らしい曲であると触れて回りたい! それが出来ないからここで、せめてここで。

プログレッシブ・ロックが好きな人。変わった音楽が好きな人。呪文のような歌詞に魅力を感じる人、筋肉少女帯をかつて聴いたことのある人、大槻ケンヂの本が好きな人へ。駆け巡る暗号を脳髄に浴びる夜はいかが? 困惑するも一興、心奪われるのも一興。どう転ぶかは、君次第。





日記録0杯, 日常, 筋肉少女帯

2017年9月30日(土) 緑茶カウント:0杯

嬉しいなぁ嬉しいなぁ。筋肉少女帯の新譜「Future!」のジャケットデザインと曲目が発表された。デザインは何と食虫植物のハエトリグサ! 過去に植物図鑑で食虫植物のページをわくわくしながら眺め、ハエトリグサの鉢植えを育てていた己にとっては何ともたまらないデザインである。虫好きなので虫要素があるのも嬉しい。食虫植物ならば虫が苦手な人でも抵抗感がなさそうだ。

最初に「Future!」というタイトルを聞いたとき、前作「おまけのいちにち(闘いの日々)」で過去と未練を描いた筋少が、五十歳を越える筋少が、今度は未来を描くのか! と大いに喜んだ。過去もあるが今もあり、未来もある。その先を示してくれるのが嬉しい。

もちろんタイトルから想像したのは前向きで明るい未来だ。それは今の筋肉少女帯の精力的で、楽しそうで、笑顔こぼれる姿からの連想である。

しかし流石筋少、一筋縄ではいかない。良い意味で予想を裏切ってくれた。「Future!」とポップな文字と共に描かれたのは真っ赤な口を開けた食虫植物。そしてこれは二曲目のタイトル「ディオネア・フューチャー」がモチーフになっているとのこと。ディオネアはハエトリグサのことである。ハエトリグサのある未来とは、いったいどんな未来だろうか。

だが、この真っ赤なジャケットデザインを見たときに抱いた印象は、毒々しさよりもパキッとした鮮やかさだった。色使いとフォントもあるが、描かれたハエトリグサが全て口をパカリと開ききっていることが大きいだろう。ハエトリグサは口を開いた姿より、トラバサミのような口をガッツリと閉じ、歯が互い違いに噛み合わさった姿の方がより禍々しさを増す。ジャケットのハエトリグサはトゲのような歯よりも真っ赤な口の中の方が印象的で、上を向いて大きく口を開ける様には開放感すら感じる。毒々しさはあまりない。

しかしパッカリと口が開かれているのはあくまでも「現在」である。この数秒後か数時間後、数日後の未来にはガッツリと閉ざし、獲物を消化液でトロトロと溶かす日が来るだろう。それはトリフィドに襲われた星の未来か否か。筋肉少女帯の示す未来とは何か。ますます、発売日が待ち遠しい。



未分類10杯, 筋肉少女帯, 非日常

楽しかった。楽しかった。楽しかった、が。体力の衰えを実感せざるを得ず、流石にこれはまずかろうと焦る次第である。
何がつらいって、腕を挙げっぱなしにするのがつらいのだ。

「筋少シングル盤大戦!」なるライブタイトルのとおり、シングル曲のみで組まれたセットリスト。シングル限定、なれば定番曲ばかりかと言えばそうでもなく、久しぶりに聴く曲もあればレア曲もあり、「筋肉少女帯のシングルの意味とは」というオーケンのMCに納得しつつも笑いがこみ上げる。ライブのコンセプトゆえ再結成後の曲は少なめで、「混ぜるな危険」「人から箱男」「ツアーファイナル」「仲直りのテーマ」の四曲のみ。前回の「猫とテブクロツアー」はセカンドアルバムの「猫とテブクロ」を完全再現するライブであったこともあり、存分に楽しみつつも再結成後の曲の数々にも恋しさが募る。あぁ、だって欲しがり神様だから!

とはいえ行きの電車の中ではシングルのあれこれを頭に思い浮かべ、あれが聴けるかこれが聴けるかとわくわくし、一曲目で待望の「暴いておやりよドルバッキー」が始まったときはもう喜びもひとしおで、「待ってました!!」と叫び出したくなりながら、内田さんの野太いコーラスに合わせてバッキーバッキードルバッキー! と拳を振り上げたのである。

そしてこれが今日のセットリストである。改めて見ると「これがシングルだったのか」と気付かされて面白い。と言うのも己は筋肉少女帯の活動休止中にファンになってアルバムを買い揃えていったため、リアルタイムでシングルの発売を見てこなかった。故に「シングル曲」への意識が薄いのである。


暴いておやりよドルバッキー
君よ!俺で変われ!

混ぜるな危険
小さな恋のメロディ
僕の歌を総て君にやる(ふーみんver)

人から箱男
バトル野郎~100万人の兄貴~
元祖高木ブー伝説

氷の世界(アコースティックver)
蜘蛛の糸(アコースティックver)

トゥルー・ロマンス
ツアーファイナル
タチムカウ -狂い咲く人間の証明-

サボテンとバントライン
221B戦記

~アンコール~
香菜、頭をよくしてあげよう
仲直りのテーマ
釈迦


立ち位置は真ん中の四列目あたりで、パワフルな人々がぎゅんぎゅんづめのゾーンである。誰かの振り上げた腕で首や顔を圧迫され、腕を下ろすにも下ろし場所がない、そんな密集地帯である。とはいえ最前付近は毎度その様子なので己も慣れていて、無理に腕を下ろすのを諦め、ドルバッキーで挙げた腕をそのまま挙げっぱなしにしていた。していたら。

腕が痛い。じりじり痛い。

今まで挙げっぱなしにしていても何もしんどさを感じることのなかった腕が。無理矢理下ろすよりもむしろ楽に感じることさえあった腕が。痛いのである。特に二の腕がつらい。

これは……明らかに筋力が低下している……。

身に覚えはある。最近運動出来ていなかった。引き締めねばまずいとも感じていた。しかしそれにしてもこの程度で。たかだか腕を挙げているだけで!

下ろせない腕を掲げながらステージの上にいる二十歳年上の方々を観る。パワフルである。パワフルである。鍛えよう、と思った。次の秋のツアーまでには、腕を挙げっぱなしにしても耐えられる筋力をつけようと心に誓った。

このように序盤から腕の痛みに苛まれ体力の低下に絶望的な気分を抱いていたが、腕が痛くても体力がなくても筋少のライブはやはり楽しい。ちなみに今回演奏されなかったシングル盤は「踊るダメ人間」「リルカの葬列」「週替わりの奇跡の神話」の三つ、加えて筋少以外では「ボヨヨンロック」と「地獄のアロハ」。「リルカの葬列」は今日も聴けるかなと期待していたのだが念願叶わず。だが! きっとまた機会があるはずだ!

今回MCが結構長めで、それぞれのシングルにまつわるエピソードを一つ一つ丁寧に語ってくれた。筋肉少女帯は不思議なバンドで、シングルになっているけどPVは作られていない曲、PVは作られているけどシングルにはなっていない曲がある、という話が興味深かった。例えば「ストリートファイターII」のタイアップ曲「バトル野郎~100万人の兄貴~」は、CMがあるからPVはいらなかろう、という判断のもと、B面の「じーさんはいい塩梅」のPVが作られたという。

それにしても何故B面に「じーさんはいい塩梅」を入れたのか、むしろそちらの方が不思議である。ストIIに惹かれてシングルを購入した人はかなり面食らったのではなかろうか。

と言いつつ、そういうことをしてしまう筋少ちゃんが好きなのだ。

PVについての話も。「蜘蛛の糸」「リルカの葬列」「トゥルー・ロマンス」のPVもあるのだが、これらはあまり表に出ていないという。「観たことある人いるー?」というオーケンの問いかけにちらほら手を挙げている人がいたが、数は多くないようだった。これらがあまり露出していないのは、当時「MCAビクター」在籍時に作られたもので、MCAビクターがなくなったことにより、幻の作品になってしまったとのことである。「トゥルー・ロマンス」は石井聰亙監督(現在は石井岳龍の名で活動)の作品で、後にオーケンが石井監督のイベントに呼ばれたとき、オーケンか石井監督が所持していた「トゥルー・ロマンス」のVHSを流そうとしたことがあったそうだ。ところが劣化していて映像は真っ白。観られなくなってしまったそうである。

また、「蜘蛛の糸」のPVはメンバーが回転する映像を撮るために、カメラを回すのではなく実際にメンバーをぐるぐる回したため、撮影後気持ち悪くなったそうだ。そんな中華の回転テーブルの上に立たせるような手法で撮影するとは、何てアナログなのだろうか……。

「小さな恋のメロディ」は最近橘高さんの担当曲になっていたため、オーケンの歌唱を聴くのは久しぶりである。本来は橘高さんの歌唱がレアなはずなのに、「お! オーケンが歌うんだ!」とわくわくする自分がおかしかった。そして意外や意外、次の「僕の歌を総て君にやる」でオーケンがステージからいなくなり、中央にピックがずらりと並んだマイクスタンドが設置される。なんと今回は橘高さんが! 橘高さんの歌を総てくださるそうだ!!

いやー良かった。橘高さん独特の力強く響く声で、噛み締めるように紡がれる言葉。そして「僕の歌を総て君にやるよ」の「君に」のところで指差す手の先がちょうど自分のいる場所で、勝手に総ていただいた気分になれ、ぐわっと胸中から湧き起こり全身に浸透する多幸感。こういうのは思い込んだ方が良い。

思い込みつつも、「僕の歌を総て君にやる」のあるシーンでエディがキーボードに背を向けながら素早い腿上げのような不思議な踊りを踊っていて、熱唱する橘高さんの後ろでそんなコミカルなエディが見えるので、それが大層面白く、このシリアスなだけではなく、一筋縄ではいかないところが筋肉少女帯だよなーなんてことを思ったりした。

「人から箱男」もレコード会社から不思議なタイミングで提案されたシングルだったそうだ。確かに、発表されたときに「嬉しいけど何故?」と思ったものなぁ。この曲は「ボックスマン! ボックスマン!」と畳み掛けていく迫力が最高に好きだ。オーケンの歌いなれていない様子も初々しい。

久しぶりだから対応できるかな、と前置きの後オーケンがマイクをオーディエンスに向け、投げかけられた名前に呼応して力いっぱい叫ばれたのは「ブー!!」の一声。高木ブー伝説! 「高木ブー伝説」はエディのきらびやかなピアノの音色が印象的な一曲で、ライブで聴く機会は少ないものの、聴くたびにエディの音色を耳で追ってしまう。綺麗なんだよなぁ。

アコースティックコーナーでは「氷の世界」と「蜘蛛の糸」。「氷の世界」ではおいちゃん、オーケン、うっちー、ふーみん四人全員がアコースティックギターを爪弾くという貴重なシーンを観ることが出来た。しかしオーケン、ギターは持つものの自信がないのかスピーカーには繋げずにギターを抱いて、「聴かせてあげないよ!」とオーディエンスに笑っていた。

シングルに収録されている「氷の世界」を仮にロック版と言うならば、アコースティックの「氷の世界」は、ロック版の身を削られる苦しさがない代わりに、ゆったりと色っぽかった。ロック版はそれこそ吹雪の中、外で身を凍えさせながら苦しさに叫ぶ姿が想起される。対してアコースティック版は暖炉のある暖かい部屋の中で窓の外を眺めながら、蒸留酒とともに胸中の苦しさを舌の上で転がしている、そんな苦さが感じられるのである。

「氷の世界」の後、内田さんはアコースティックギターからウクレレベースに持ち替え、オーケンが「歴史にたらればは無いですが、もし高木ブー伝説の後にこの曲が発表されていたら、筋肉少女帯はシリアスなイメージを持たれていたかもしれないですね」と語り、でも今の筋少が良い、と笑って一呼吸後に始まったのが「蜘蛛の糸」だった。

「蜘蛛の糸」。昨今は「皆で歌おう!」というオーケンの呼びかけのもと、「大丈夫大丈夫……」と合唱することが多く、歌詞があの内容にも関わらずハッピーな気分になってしまっている曲である。全く大丈夫じゃない状況を「大丈夫大丈夫」と大勢で合唱するのは楽しくもあり、不安感が煽られる怪しい行為でもある。それは楽しくもあり、違和感もあった。

少女の嘲笑はなく、しっとりと始まる。アコースティックギターの調べの中で存在感を示す重いベースの音。ゆったりと暗く紡がれる音色にはゾッとする危うさがあり、少年がぐらぐら心を揺らし、大丈夫大丈夫と自分に言い聞かせながら、眠れないまま布団の中で息をしている様が感じられた。激情に駆られていないだけに、怖い。

「トゥルー・ロマンス」の始まりの、鐘の音を再現した橘高さんのギターの音色が好きだ。あぁ、死んだ恋人がゾンビになって戻ってくる歌なのに、どうしてこんなに多幸感に包まれるんだろう。それはきっと、優しい「肯定」だけがある世界だからだろうか。この明るくあたたかな色合いがたまらなく大好きだ。

「サボテンとバントライン」では緑のライトによってステージが彩られ、底抜けに明るい音楽と寂しい物語の対比が美しかった。

本編最後は221B戦記。もしかしたら初めて聴いたかもしれない。アンコールでは「仲直りのテーマ」で驚いてしまった。そうだ、これもシングルだったんだ! 初めて買った筋少のシングルなのに、シングルという意識が抜けていたのはアルバムで繰り返し聴くことの方が多いからだろう。「なーなーななー♪」と合唱するのが楽しい。

「釈迦」で全力を出し切り大いに盛り上がり、燃え尽きるように終演。ステージから次々とメンバーが立ち去って行く中で、いつものようにおいちゃんとふーみんが残ってピックを投げたりしてくれた。そして! おいちゃんが! 目の前でしゃがみこんで! 手を伸ばすオーディエンスに応えてくれて! おいちゃんの腕を! がっつり! 触れた!!!!

おいちゃんの腕はがっしりしていて熱くて固かった。
鍛えようと思った。

次のツアーは十一月。およそ半年後のその日が来るまでに、挙げっぱなしにしても疲れない筋力を手に入れよう。頑張ろう。頑張る。