未分類0杯, 平沢進, 非日常

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第9曼荼羅が開く時、9万音符の調べが降りる!

「9万打」と「曼荼羅」をかけた駄洒落のようなライブタイトルは、ヒラサワのツイッターのフォロワーが九万人に到達したことを記念した企画である。大阪・東京の全五公演を通してスネアドラムの打数が九万打に達すれば、九万音符により構成される楽曲が配信される。故に、我々オーディエンスはドラマーを精一杯応援するミッションが課せられている。

そしてまぁ、ステージの豪華なことと言ったら!

上手には曼荼羅が描かれたバスドラムの存在感が際立つドラムセット、中央にはヒラサワのギターとレーザーハープ、下手には会人の奏でるサイレントチェロ、エレキヴァイオリン、シンセサイザーにボタン類。ステージの奥には高々と曼荼羅が掲げられ、その下には打数をリアルタイムでカウントする巨大なモニター。いったいどこを見れば良いのやら。たった二つの目玉ではとてもじゃないが足りえない。

開場から開演まで、場内に流れる音楽を聴きながらゆるゆると待っていると、スタッフが機材のチェックのためにステージに現れてついそわそわしてしまう。よし、そろそろかそろそろか。時を経てスモークがもくもくと焚かれ出し、開演直前のアナウンスが流れる。そしてついに照明が落とされ、あぁ、待ちに待ったライブの時だ!

そうしてステージをぐっと見つめていると、下手側から髪のサラリとした真っ黒い衣装の美しい女性が現れ、中央を横切っていく。誰だろう、スタッフ……には見えないが、妙だなぁ……と思っていたら、その女性はドラムセットの前で体の向きを変え、着席した。

仰天した。女性ではなかった。元P-MODELのメンバーであり、本日ドラマーを務める上領亘さんだった。

P-MODELは聴いていたが、美しいとは耳にしていたが、己は彼の外見を知らなかった。故に驚いた。非常に驚いた。さらに、ライブが終わった後上領さんについて調べ、年齢を知って驚いた。五十三歳とな。見えない。全く見えない。

はーー……とびっくりしつつ暗闇の中でステージを見つめる。そういえば暗くなったがオーディエンスに動きがない。前に詰めないのだろうか……と思っていると、銀髪のヒラサワがステージに登場。瞬間、歓声とともにドッと人々が前へと詰めかけ、なるほどこのタイミングか! と納得しつつ足場を確保。前から五列目あたりの見晴らしの良い位置に立つことができた。

出囃子とともに始まったのは「オーロラ」。初っ端からヒラサワのデストロイギターが炸裂し、ギターへの膝蹴りが放たれる。二曲目は「確率の丘」、そして三曲目のイントロが始まった瞬間、ゾクゾクと喜びがこみ上げた。大好きな「CODE-COSTARICA」! この曲からヒラサワの咽喉が開き、ぐっと声量が増したように感じた。あぁ、何て美しいのか!

ずっと、いつかヒラサワのライブで生ドラムを聴いてみたいと思っていたが、まさか叶う日が来ようとは。ビリビリと地を這うリズムの衝撃が足の裏から背骨に響き、実に気持ちが良い。音が体にぶつかってくる圧力がたまらない。また、前に立つ人がちょうど体格の良い人で、その方がぴょんぴょんと飛び跳ねるたびに間近の振動が伝わって、その迫力も心地良かった。

「アディオス」では「空、空」と歌うところで会人の松と鶴がチェロとヴァイオリンの弓を高々と掲げ空を指差し、ステージいっぱいに真っ白な光が降り注ぐ。美しい光景だった。「罵詈喝采罵詈喝采」の箇所はレーザーハープにより奏でられていて、曲の終わりにヒラサワがひょいっと光線に触れ、「罵詈っ」をサービスしたのが実にライブらしくてわくわくした。

「灰よ」は流石の迫力で、そのままの勢いに乗って「聖馬蹄形惑星の大詐欺師」へ。驚いたのがまさかの! 「ハーイッハイッ! エハライェエッ!! ハーアハッハー フゥウウ~?」がオーディエンスによる合唱パートになったこと! ちなみにこの箇所の発声は歌詞カードに載っていないので耳で聴いたものをなるべく忠実に文字に起こしているが、人により違いがあるはずである。そのわりに声が揃っているのが何というか、不思議であった。

そういえばこの曲が発表されてからのライブでこの曲は必ずセットリストに入っているように思う。ヒラサワのお気に入りなのだろうか。

「人体夜行」で六万打寸前までいき、ふとステージから人がいなくなる。すると打数がカウントされていたモニターに映像が映し出され、ヒラサワとヒラサワの会話が展開される。何を言っているのかわからないかもしれないが、画面のヒラサワが画面外のヒラサワと会話しているのである。つまりヒラサワがヒラサワと会話しているのである。ご理解いただきたい。

平均して一日一万五千打で、このままでは九万打に到達しない。そこで打数モジュールを増設する許可をヒラサワがヒラサワに求め、予算がかからないという理由により許可が下ろされた。端的に言えばタイミングが訪れたときにドラムソロパートが追加されるとのこと。おおー!

と盛り上がりつつも気になることが。ん? あれ? この映像が流れる前に、どっかで「打数M増設」とモニターに映し出されたような……良かったのだろうかそれは。

「トビラ島」では下手側にヒラサワが座ってアコギを弾いて歌っていたのだが、残念ながら己の立ち位置からはよく見えなかった。レーザーハープと上領さんはよく見えるのだが、会人は見えづらいのである。明日はもっと会人も観たい。

とはいえ何と言っても「トビラ島」は後半の展開の迫力だ。ちょうどこのとき六万カウントを記録していたことにより、曼荼羅には六つの明かりが点灯していて、まるで闇夜の空に赤い月が六つ浮かんでいるようだった。重々しいドラムとヒラサワの歌声の迫力と相まって、怪しく恐ろしく、美しかった。

このときドラムと同じリズムで松と鶴がボタン類を押して演奏していた。正方形の方眼ノートのようなモニターがあり、一つ一つの四角のマスには赤や青や黄色や緑の色がついていて、タッチすると色のつく場所が移動し、またタッチすると移動する。あのボタン類が何の音を担当しているのかはわからなかったが、とにかくデフラグ中の画面にそっくりだった。

「トビラ島」は一曲で一つの映画を観たかのようなボリュームがあるが、もちろんここで終わらず息つく間もなく曲は展開していく。このスピード感が贅沢で、もったいなくて、心地良い。

「Archetype Engine」が始まった瞬間、脳が爆発するかと思った。ヒラサワの響く声の伸びやかさの美しさったら。そして「サイボーグ」! これ! これを生ドラムで聴きたかったんだよおおおおおお!! 今日演奏された中で一番期待していたものかもしれない。もともとオリジナルが生ドラムなこともあり、このタイプを聴いてみたいと思っていたんだよなぁ。念願叶って嬉しい。

「ホログラムを登る男」「白虎野」で本編は終了。大歓声によるアンコールを受けてステージに現れたヒラサワに「お足元の悪い中……」と言っていただきついどよめきそうになる。そんな風に言ってくださるとは……。

アンコールは「Wi-SiWi」と「鉄切り歌(鉄山を登る男)」。「鉄切り歌」では「鉄はだんだん切れ」がオーディエンスによる合唱パートになっていて楽しい。知らない人々と大勢で声を揃えて好きな歌を歌う多幸感に酔いしれた。

上領さんはどんなときもニコニコしていて、軽やかにドラムを叩いている姿がとても格好良かった。ヒラサワを観て、上領さんを観て、やはりとても目が足りない。明日は最終日。今日でやっと68,400に到達し、残り21,600打。さぁ、あともう少しだ! 九万打の達成をこの目で見届けるべく明日も新木場に向かおう。どうか9万音符の調べが降りますように。

ちなみに物販は小雨の降る中一時間並んで待った甲斐あって全種類購入することが出来た。はっはっはっ。ガラケーユーザーなのにスマートフォンケースまで買ってしまったぜ。ガラケーユーザーにまでスマートフォンケースを買わせてしまうヒラサワの魔力たるや何と恐ろしいことか。「唯じゃない」の一件で知って以来、ずっと魅せられ続けている。あれから八年か。早いような短いような。

無論これからも魅せられ続ける所存である。きっと予想だにせぬ世界を見せてくれるに違いないから。

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日記録0杯, M.S.SProject, 平沢進, 日常, 筋肉少女帯

2017年4月2日(日) 緑茶カウント:0杯

サイト創設十四周年を迎えてアンケートを実施し、いただいた回答を眺める中でふと気付いた。今でこそ日記サイトとして定着しているが、そもそも始まりはイラストの公開を目的にしていたはずで、オリジナルイラストや当時はまっていた漫画の絵の他に趣味で描いていた昆虫のイラストを公開していたが、もしや今は己が昆虫を描いていたことを知らない人の方が多いのではないか? と。

と言うことは。本来メインコンテンツだったものを今公開したら、それだけでエイプリルフールとして成り立つのではないか? 結構びっくりされるんじゃないか?

という思いつきのもと企画を決めた。架空の人物が採集した架空の昆虫を紹介するサイトにしよう、ということで昆虫のモチーフを音楽に決め、誰をどの昆虫にするかを考え、絵に起こし、設定を考え、サイトを作った。架空のサイトの管理人は散歩と音楽が好きな人間ということで「Mr.Walkman」と命名。もちろん携帯音楽プレーヤーが名前の由来である。

思いついたは良いが、間違いなく今までの企画で一番大変だった。昆虫の絵に時間と労力がかかるのである。まずコピー用紙にあれこれデザインを考えつつ昆虫の絵を描き、いったんそれをコピーする。そしてコピーした紙の裏を鉛筆で黒く塗りつぶし、水彩用の紙に乗せて上から線をなぞってトレースする。トレースした線を若干整えたら下塗り。徐々に色を重ねて完成。

企画を思いついたのが二月末。線画が出来たのが三月十日あたりで、以後休日はライブに行く以外はひたすら机に向かって色塗りをする日々が続いた。そうして絵が完成したのが三月三十一日の二十一時。そこから急いで絵をスキャンして、トリミングして、色調補正して原画の色合いに近付け、ダカダカとキーボードを叩いてサイトを作った。流石に日付が回って即公開は出来ず、二時間遅刻したがまぁ頑張った。頑張ったよ……!

あとはそれぞれの絵や設定について語っていこうかな。
ちなみに各画像をクリックすると嘘サイトの該当ページに飛ぶ。よろしければ。




オオヒビワレクワガタオオヒビワレクワガタ(モチーフ:大槻ケンヂ)
獲物をがっつり捕らえてムシャムシャする虫は違うな、ということで、格好良くて強そうな見た目をしているけど主食は樹液なクワガタをチョイス。オーケンの顔面のヒビを描きたかったので、大顎と足でヒビを表現した。格闘観戦が好き、という設定はプロレスや道場見学を趣味としているところから。



ウチダモノカミキリウチダモノカキミリ(モチーフ:内田雄一郎)
内田さんは難しかった。黒い触角は内田さんの髪の毛を表現し、黒の紋はサングラス、背中の紋は内田さんの物販「ウチダモノ」に。「地に響くような低い声で鳴く」設定はベースの音を表した。



タイヨウオイスズメバチタイヨウオイスズメバチ(モチーフ:本城聡章)
おいちゃんも難しかった。おいちゃんと言うと自分はドピンクのスーツのイメージが強いのだが、常にその衣装を着ているわけではないので共通認識にはなりえないのである。悩んだ結果、おいちゃんの衣装に多い原色と黒の組み合わせをチョイス。また、腹部の黒と白の配色はおいちゃんのギターをイメージ。
「タイヨウ」はおいちゃんの太陽のように眩しい笑顔から。



レースシロタテカマキリレースシロタテカマキリ(モチーフ:橘高文彦)
図鑑らしく、上からのショットで統一したかったものの、カマキリを上から描いてもつまらないのでレースシロタテカマキリは横から描いた。
イメージはすぐに湧いたものの、レースを描くのに苦戦。三百円ショップや靴下専門店を回り、網タイツや黒レースの靴下を探し回った挙句、東急ハンズの手芸コーナーで黒レース単体を購入して事なきを得た。



ヒラサワスズメガヒラサワスズメガ(モチーフ:平沢進)
ヒラサワといえば黒尽くめの衣装。とはいえ、ただ真っ黒じゃつまらないな、ということで、進化と変化を続ける彼の様相を表したいと思い、芋虫をチョイス。スズメガにしたのは名前が似ていることと、自分自身がスズメガスキーだから。
「幼形成熟幼虫」の設定は楽曲「幼形成熟BOX」が発想のもと。「MODEL ROOM」「ENOLA」「BIG BROTHER」はそれぞれのアルバムジャケットのデザインをモチーフにしている。「STEALTH MAJOR」が黒味がかった赤なのは、黒では隠れきれない情熱と溢れる魅力を表現した。



シッコクノダテンシモドキシッコクノダテンシモドキ(モチーフ:KIKKUN-MK-II)
漆黒の堕天使的存在ということは、漆黒の堕天使のような存在ということだろう、と解釈。そこでまず、「シッコクノダテンシ」という架空の毒蛾が存在することにして、その擬態をしている設定にした。
翅の色合いはKIKKUN-MK-IIのギターから。黄色の紋はギターのつまみをイメージしている。



ウェイウェイピルピルゼミウェイウェイピルピルゼミ(モチーフ:FB777)
「ぴるぴるちゅーん」という歌声が頭に残っていて、それがいつの間にかセミの鳴き声に変化したのですぐにセミに決定した。黒の紋はサングラス、その下の白は口と十字架をイメージ。また、翅はジャケットのつもりで描いた。



ハンニャアカアリハンニャアカアリ(モチーフ:あろまほっと)
「あろまさんぽ」から、よく歩く昆虫が良いな、ということでアリをチョイス。「あろまさんぽ」で日本全国を旅しているなら巣とは無縁だろう、ということで設定を練った。こういう設定を考えているときが一番楽しい。
般若はあえてうっすら見える程度に留めた。実際にこのアリがいたら何らかの伝承が生まれているかもしれない。



エオエオトンボエオエオトンボ(モチーフ:eoheoh)
告白すると、実はずっと前から「eoheohさんをモチーフにしてトンボを描きたい……」と思っていた。あの人を見るたびにトンボを連想していた。よってここで描けて満足である。
ちなみに今回一番苦労したのがエオエオトンボの翅である。すごく大変だった……。



以上。他にも水戸華之介モチーフの「ミトハナバッタ」、町田康モチーフの「マチダマチゾウムシ」といった構想があったが間に合わなかった。しかし久方ぶりに虫を全力で描けたので楽しかった。また時間を作って虫の絵も描いていきたいものである。

ところで今回の「MR.WALKMANの昆虫図録」で、エイプリルフール企画を始めてから十年目になったようだ。我ながらよく続けているものだ。来年も余裕があればやりたいものだ。


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未分類4杯, 平沢進, 非日常

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平沢進のファンクラブ限定イベント「景観する循環カフェ」に参加した。場所は吉祥寺のスターパインズカフェ。ステージ前に椅子が敷き詰められ、二階席からはステージを見下ろせる構造になっている、と、冷静に書き出そうとしているものの既に脳が爆発しているので指の動きもままならない。

平沢進のファンクラブに入会して六、七年経つが、これまでファンクラブ限定イベントが開催されたことはなかった。故に開催が発表されたときは大いに驚き、ファンクラブ限定の空間で平沢がどのように振舞ってくれるか興味深く思ったものだ。そして迷わず申込みをし、運よく当選し、運よく素敵な整理番号が割り振られ、運よく最前列で平沢進の姿を拝むことができた。

目と鼻の先。たった一メートルの距離に平沢進が存在していた。実在していた。
そうして、こぼれる笑顔を隠すことなく、柔らかな空気でトークをしてくれるのである。

よって己の脳は爆発したのである。幸福だった。

イベントは二部構成になっており、前半では事前に募集していたファンからの質問に答える形でトークが繰り広げられ、休憩を挟み、後半でライブ。楽器や声による音をその場で録音して再生し、次第次第に音を重ねていき、即興の多重録音にボーカルを乗せて歌う姿はミュージシャンの演奏というよりも、職人技を見せ付けられる見事さがあった。曲は「ロタティオン」「電光浴」「CHEVRON」の三曲で、最後の「CHEVRON」ではオーディエンスの声を録音し、楽曲の一部に取り込む催しも。平沢が「さん、はい!」と小声でタイミングを示し、「うーうっ」と会場全体で声をそろえること繰り返すこと数回。集ったファンの声は一つの音と化し、音楽の一部となって会場内をぐるぐる旋回し、さらにその上に平沢の声が重ねられたのであった。

「景観する循環カフェ」の名にふさわしく、演奏された三曲とも「循環」がテーマなこともにくい。上手に声を出せたことを平沢にお褒めいただき、電源を切れば消える多重録音はその空間でのみ旋回したのであった。

第一部と第二部では空気が全く違うのも印象的だ。第一部では眼鏡をかけ、事前に募集したリスナーからの質問が書かれた紙を見つつ、横に座る司会の女性が読み上げる質問に答えながら朗らかに話してくれた。しかし第二部が始まるや一変、眼鏡を外し、照明が落とされたステージで機材に囲まれながらギターを抱くその表情は、まるで弓を引き狙いを定め今にも矢を放つ寸前のよう。張り詰めた空気が漂い、自然と開場もその渦に呑まれたのであった。

かと思えば最後の最後。アンコールを要求されて却下した平沢が、代わりにとプレゼントお渡し会をやってくれたが、その方法がすごい。プレゼントのオリジナルピックについての説明を語った後、「間接的手渡しをする」と宣言した平沢。何が起こるんだとステージを見つめているとスタッフがわらわらと集まってきて流しそうめんのような装置が組み立てられた。

客席に放流するように設置された四本の樋。そして放流する側に立つ平沢。間接的手渡しとはそういうことか! と納得しつつ、このためにわざわざこんなものを作ってしまう平沢に感服しつつ、平沢によって放流されたピックを「ありがとうございます!」と言いながら受け取ったのだった。この光景、二階席から見たらさぞかし異様だったことだろう。こういうちょっと捻じ曲がったファンサービスが愛おしい。

トークでは、アウトテイクは公開するつもりがないからどんどん削除するという話が面白かった。本人はどんどん削除したいので現在はどんどん削除しているが、過去の楽曲は原盤権などの問題で、レコード会社から勝手にアウトテイクをくっつけたCDを販売されることもあり、そういうのは好ましくないそうだ。しかしスタッフから宮沢賢治の全集をプレゼントされたとき、全集の中にあった宮沢賢治のメモや草稿を見て「これが見たかった」と大喜びした話が司会者から明かされる。「私は見たかったけど、宮沢賢治も嫌だったと思いますよ」と笑っていた。

あと使わなくなったアミーガを処分しようとしてスタッフに止められたり、止められるのが分かっているから事後承諾の形でことを進めようとする話もこの流れで語られた。ちなみに過去にPV集を作って販売する話も上がってはいたが、権利問題がややこしく立ち消えになった話も。……PV集……欲しかったな……。

平沢がツイートした造語への質問に対して、「皆よく覚えているね」「みんんさって何のことかと思った」と自分のツイートを覚えていない発言も。そりゃあそうだろうと思いつつ、大勢から「みんんさ」とリプライをもらって首を傾げる平沢を想像すると微笑ましい。

己が投稿した質問も採用された。脳が爆発した。平沢が質問を読み、考えて、答えてくれたこの事実! 間接的にピックをプレゼントしてくれたり、間接的に質問に答えてくれたり、あまりにも贅沢すぎるイベントである。嬉しかった。ありがたかった。今日は良い夢が見られそうである。至福。

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日記録4杯, 平沢進, 日常

2016年5月25日(水) 緑茶カウント:4杯

Twitterなどで「速度制限がかかった」という書き込みを見るたびに、運転の話をしているものと思い込んでいたのだが、あれは通信の話だったということを今日知った。

今日一日P-MODELの「BA-DA-DHA」という一曲を聴き続けていたせいで、頭の中で平沢進の声がずっと鳴り響いている。「ばっだっだあああ~~~~~~あァッ!! ばっだっだあああ~~~~~~あァッ!! ばっだっだあああ~~~~~~あァッ!!」と、あの艶っぽい声が。

ばっだっだあああ~~~~~~あァッ!!

「BA-DA-DHA」が入っているアルバムはおよそ七年ほど前から所有している。もっと言えば、P-MODELの楽曲がほぼ揃っているCDセット「太陽系亞種音」は七年ほど前に購入している。ずっと持っているのにこの曲を聴いたのは昨日が初めてで、だからこそ今になって魅力に取り付かれてただ一曲を一日中聴き続けることになったのだ。

「BA-DA-DHA」が収録されているディスクを、己は太陽系亞種音を買う前に購入していた。中古屋で買ったものだった。そして大いにはまり、思い切ってほぼ全曲が揃ったボックスを買う決心をしたのである。そうして手に入れてからはちょこちょことCDをパソコンに取り込んでいったのだが、最初の頃に買ったアルバムは既に取り込んでいたので手を付けなかったのである。すると漏れが生じたのだ。何故ならそのディスクには、一枚のアルバム分の楽曲と、アルバムに入っていない曲が数曲含まれていたので。そのうちの一つが「BA-DA-DHA」だったのである。

ファンであるゆえ、「BA-DA-DHA」という文字列を目にしたことは今までに何度もあったのにどうして気にしたことがなかったのか。もっと早くに気付くきっかけだってあったはずなのにと不可思議さに首を傾げつつ、まるでドングリを埋めていたことを忘れていた間抜けなリスが、何年も経ってから埋めていたそれの存在を思い出し、喜んで食べているようだなぁと思うのだ。そうして頭の中で歌われる声を聴きながら軽く口ずさむ夜である。ばっだっだあああ~~~~~~あァッ。



未分類0杯, 平沢進, 非日常

サッカーや野球のようなスポーツ観戦とライブコンサートの違いの一つに勝敗の有無がある。前者にはあり、後者には無い。よって通常、ライブコンサートの場合、終了後に勝利の美酒に酔うこともなければ贔屓チームの敗北に肩を落とすこともない。だいたい「今日の演奏良かったなー」「あの曲をやってくれて嬉しかったー」と満足して終わるが、今日は帰りの電車の中で、確かに己はうなだれていたのである。

まさかの、二日連続バッドエンド。
しかも、ほとんど同じルートで。

初めて参戦したインタラ「ノモノスとイミューム」では、二日連続グッドエンドで、さらにそれぞれ別種のルートを観ることが出来たのでルンルン気分で帰宅したが今回は。橋が破壊されず安心したのも束の間、アヴァターのポケットから転がり落ちたΣ-12の目玉が谷底へ落ちた瞬間の絶望感と言ったら無い。もう一度チャンスをくれと叫びたい気分だが今日は公演最終日。もうチャンスは無いのである。

そしてこの二日間で己はすっかりアヴァターに愛着を持ってしまっていた。己が参戦した一日目でアヴァターは何度も谷底へ落ちた。家に帰ってストーリーを思い返しながら歌詞を読み曲を聴き、どうにか彼をグッドエンドへ連れて行きたい、自我が無く不安ばかり抱えているアヴァターが堂々と己の信じる道を歩けるようになってほしい、と思ったのに。己の選択ミスにより、アヴァターはふたたび谷底へ突き落とされたのであった。

悲しかった。

アヴァターが何度も谷底へ落とされたかと思えば火事場のサリーのところに戻り、また落とされ、といった繰り返しの映像を見た後の「鉄切り歌」。冒頭で「何度も落ちる人を見た」と歌われ、まさにさっきの映像そのものでともすればギャグになりかねないが笑う余裕が無い。過去向く士に利用され、過去向く士の差し向ける幻影の衛星からの声を頼りに必死にホログラムの断崖を登っていたアヴァター。実際その崖は崖でも何でもなかったが、確かにあいつは頑張ったと思うぜ。

平沢の全力の歌唱「ホログラムを登る男」は今日も迫力満点で、この一曲で全ての力を使いきろうとしているのではないかと思うほど。この曲もグッドエンドルートへ進めていれば、怯え迷いながらも断崖を登りきり、真実を見つめることが出来るようになったアヴァターを祝福する歌になっていたんだろうなぁと思うとまた切ない。

とはいえ悲しくて切ないばかりではない。バッドエンドは残念だったがライブそのものはとても楽しかった。昨日は二階席から俯瞰の眺めを楽しみ、本日はアリーナ九列目の中央寄り。真正面から平沢をガッツリ観ることが出来た。両方味わえてラッキーだった。

二階席から観たときは降り注ぎ旋回する光の雨を見下ろせたので、ステージと会場がキラキラと彩られる様を視界に収めることが出来た。対して本日はまさに光の雨の中にいると言った感じ。カラフルなスポットライトが平沢を照らし、ライトは色も形も変えて縦横無尽に動き回る。青いライトで照らされるとまるで海の中にいるような心地になり、幾本もの細く白いライトがステージを照らせばまるで平沢が後光に照らされているように見えた。神々しかった。

そしてとっておきが最後に一つ。今回自力で「WORLD CELL」を回すことが出来なかったが、アンコールでステージに再登場した平沢、「私はどの平沢でしょう?」と口にする。何とアンコールで登場した平沢は今までステージに立っていた平沢ではないそうで、さっきまでの平沢に頼まれて「WORLD CELL」を回しにやってきたという、別次元の平沢だそうだ。つまり谷底に落とされたショックで自我を取り戻し、元のタイムラインで「WORLD CELL」を回したアヴァターそのものか…!?

別次元の平沢は「コツをつかんだ」と言っていともたやすく「WORLD CELL」を回した。もしこの彼があのアヴァターであるなら、不安ばかり抱えていて、自分で考えることが出来ず、過去向く士についてきた挙句に利用された男が、我々の世界を救うためにまたタイムラインを飛び越えてやってきてくれた……と考えると、バッドエンドではあるが、ここまでの道は無駄じゃなかったのかもしれないと思える。

「WORLD CELL」はまるで花咲くように徐々に開き、回転し、「穏やかで創造的な知識活動」の象徴だろう、光の粒子を集めていく。光はWORLD CELLを中心に渦に飲まれるように回転し、気付けば平沢の頭上には銀色に輝くミラーボール。そしてスクリーンと会場が一体となり、まるで自分達がWORLD CELLの中心にいるかのような錯覚を覚える光景に包まれたのである。美しかった。

あぁ、でもこれをお情けでなく、自力で観たかったなぁ。

他に印象的だった場面も書き記しておこう。「オーロラ」の最後の繰り返しで、背が多少弓なりになりつつも、余裕の表情で歌っていたことに驚いた。まだまだ余力はたっぷりある、といった様子である。流石だなぁと舌を巻いた。

「火事場のサリー」ではPEVO一号と共にステージの段差に座り、タルボを抱えて弾き語り。足でトントンとリズムをとりながら歌っていたのがキュートで、サビの声の美しさに聴き惚れた。透明感があってたまらない。そして「ハッ!」と言うところでは真面目な表情で右を向く仕草。格好良かった。

特筆すべきは「鉄切り歌」。通常、ミュージシャンが観客に合唱を促す場合、観客にマイクを向けることが多いと思う。しかし平沢は歌っている最中に不意に口をつぐみ、明後日の方向を向いて黙った。ここでその様子から読み取れた。「おまえらがうたえ」という言葉が。そして発生した「だんだん切れ!」という楽しい合唱。腰に手を当てて仁王立ちをして客席を睨みつける平沢は合唱をしている我々の様子を見守っているようにも見えれば、二日連続でバッドエンドルートを選んでしまったことに対するお怒りの表情にも見え、「あぁごめんなさい平沢様!!」と叫びたい気持ちになりつつひたすら「だんだん切れ!」と合唱した。めっちゃ楽しかった。

あと、Σ-12が海水浴に行くと言っていたのが面白くもあり嬉しくもあった。白虎野で公開手術の刑を受けた別次元の平沢がΣ-12である。結構な悲劇である。そのΣ-12がノモノス・ハンターとして働いたり、海水浴に出かけたりと、何だかんだで楽しそうにしているのが嬉しい。

インタラクティブ・ライブから帰り、日常に戻りつつある今はひたすら「ホログラムを登る男」を流しながらちょくちょく歌詞カードを手にとって読んでいる。ライブの後からアルバムの聴こえ方が変わった。点と点が繋がったのである。ただ耳に心地良かっただけの音が意味を持って脳に入ってくる。

谷底に突き落とされるあの背中はきっと、誰のものにもなるのだろう。あの二日間であれだけの愛着をアヴァターに持ってしまったのは、彼の要素が自分の中にもあるからに違いない。また、平沢の発するメッセージと正反対の人物「アヴァター」もまた平沢進の姿そのものだ。彼は別次元の平沢という設定だが、平沢の中にもそういった部分があって、それを自覚しつつ外道であり邪道である道を選ぶ覚悟を持って進んでいるのだろうか。

バッドエンドの悔いがあるせいか、ついつい考えてしまう。グッドエンドを観たかった気持ちに変わりは無いが、この余韻はこれはこれで、少し楽しい。