2015年7月5日(日) 緑茶カウント:4杯
アパートの設備改修のため室内にて工事が行われることとなった。人が来るためそれなりに掃除はしたが、襖に貼ったポスターやサイン色紙はそのまま、本棚の中身も丸見え、フィギュアも置きっぱという状態。まぁ、別に見られて困る趣味ではない。存分に見るがよろしい、と余裕の姿勢を崩さず、壁にドリルで穴を開けるおじさんの背後で己は小説を読みながら工事が終わるのを待った。
工事も八割方終わり、残りの作業は別の担当者にバトンタッチすることに。そのもう一人の担当者が来るまで工事のおじさんは床に散らばった壁の粉を片付けつつ、襖のポスターが気になるようで、じっとポスターを見つめていた。
「筋肉少女帯、好きなんですか?」
おじさんの問いに対し、えぇ、大ファンですと己は答えた。壁に貼っているのは筋肉少女帯のサイン入りポスター。「THE SHOW MUST GO ON」の発売記念インストアイベントに参加した際に入手したものだ。ステージの立ち位置と同様、向かって左からおいちゃん、オーケン、うっちー、ふーみんが並んでいて、各々のサインが金色のマジックで記されている。
「高木ブー伝説しか知らないんですけど…ギターの人変わらないなぁ」
橘高さんを見ながらしみじみと言い、「あ、でも、前はもっと髪の毛ふくらんでいませんでした?」と付け加える。「大槻ケンヂって昔テレビに出ているのをよく観ましたよ。メイク変わってないんですねえ……」
最近はテレビへの露出は少ないですが、バンドはずっとやっていますよ。最近ではうしおととらってアニメのオープニング主題歌を担当したんですよ、と言うとおじさんはちょっと目を大きく開いて「そうなんですか…!」と感嘆した。
「メンバーはずっと同じなんですか?」「ドラマーが脱退しましたけど、昔脱退したピアニストが今はサポートで参加していて、あともう一人サポートドラマーがいて、その六人で今はほぼ固定ですね」「そうなんですねぇ…」
工事のおじさんは恐らく四十代くらいだろう。もしかしたらオーケンと同年代かもしれない。高木ブー伝説しか知らないと言いつつ、橘高さんのヘアースタイルを記憶しているあたりに、この人の過去に何かしらの青春があったのかもしれない。
もう一人の担当者がやってくるとおじさんは去っていった。「良かったら今の筋少の曲も聴いてみてくださいね」と言えば良かったな、と思ったのは工事が終わってからのこと。高木ブー以外にも、どれか、聴いてくれたら嬉しいな。