3900円
2017年6月10日(土) 緑茶カウント:0杯
後悔はしていない。後悔はしていないが、馬鹿だとは思う。
三千九百円かけて、うっちゃんのストラップを手に入れた。
街中をふらふら散歩していたら、あるゲームセンターの入り口に設置せられたガチャガチャに目が行き、一瞬で釘付けになったのだ。何と、らんま1/2のガチャガチャ。小学校高学年の頃に夢中になり、お小遣いを貯めて中古の単行本を集めた思い出が蘇る。確か当時のお小遣いは週に二百十円で、ぷよぷよのプラスティックケースを貯金箱代わりにしてちまちまお金を貯めていた。そうしてようやく千円貯まった頃、親にブックオフへと連れて行ってもらって、一冊百円か二百円の中古の単行本をこれまたちまちま買っていたのだ。
当時の自分からすれば大金の三千九百円。こいつをガチャガチャの投入口に三百円ずつ差込み、ハンドルを十三回まわした。うっちゃんが欲しかった。最初に出たのはシャンプーだった。可愛い。次に出たのは女らんまだった。可愛い。その次に出たのは男らんまだった。可愛い。しかし、うっちゃんが欲しかった。一番欲しいのがうっちゃんだった。そのうっちゃんが出てくるまでに十二回ハンドルを回し、うっちゃん以外の全員をコンプリートした。
そうして三千九百円かけて手に入れたうっちゃんのストラップ。可愛い。後悔はしていない。後悔はしていないが、馬鹿だとは思う。
その後、菓子屋でスナック菓子を二つ買った。二百円だった。ストラップ一個分にも満たない値段だった。次にドラッグストアでコンタクトレンズの洗浄液、牛乳石鹸、風呂用洗剤、整髪料、整腸剤など必要なものをたっぷり買った。三千二百円だった。次に通りすがりのバーにふらりと入り、ベルギービール二杯とピクルス、ソーセージを食べた。二千九百円だった。
鞄の中にある十三個のストラップ。子供の頃より愛した漫画のストラップ。ドラッグストアの品々よりも、バーでの飲食よりも高い値段。後悔はしていない。しかし馬鹿だとは思う。馬鹿だとは思うが、きっと今後も魅力的な品を見つければ繰り返すだろう。帰宅して机の上にストラップを並べる。好きだなぁ、と思う。そうしてきっと、あの頃コツコツ小遣いを貯めて中古本を買っていた自分も今の自分を知れば喜ぶに違いにない、と確信した。手にとってかえずがえす眺める。幸せだな、と思った。