20×5=100 LIVE with 澄田健 (2016年4月30日)
100曲ライブ最終日、ということで安定の澄田さん回である。内田さん回でテクノをやってから、何もアコースティックにこだわることもないと気付いた水戸さん。そのためか今回はアコギとエレキが半々ほどの構成で、新曲あり、定番曲あり、珍しい曲ありの大盤振る舞い。非常に盛り上がって非常に楽しかった!
五月十八日発売のニューアルバム「人間ワッショイ!」からは「生傷エトセトラ」「光あれ」「あるがまま」の三曲が披露された。「生傷エトセトラ」はDNAに刻まれた昭和歌謡を歌いたいという欲望が詰め込まれ、「光あれ」は予想外の展開に驚きを隠せない一曲。「あるがまま」は水戸さん曰くいつまでも歌っていたい曲で、皆が飽きてしまうので四番までしかないが、十八番まで歌えるそうだ。
新曲を歌うにあたって、アルバムを発売する前にバンドバージョンではない方を先に聴かせるのもどうかと迷ったそうなのだが、とにかく水戸さんがこの曲達を早く歌いたかったとのこと。ある曲などは風呂掃除のとき、風呂を磨きながらご機嫌で歌っているという。作者が何よりも気に入っているって良いよなぁ。
ちなみに新曲では「生傷エトセトラ」がすごく気になっている。早くアルバムを入手したい。
聴けて嬉しかったのは「銀の腕時計」「夜の行進」「天井裏から愛をこめて」「ミミズ」「地図」「見事な夜」。「雨のパレード」「バラ色の人生」も好きだ。「小さな罪の小さな罰」はぐっと来たなぁ。
「夜の行進」では学生時代の予想外のエピソードも。まさかあの曲があんな青春の思い出から作られていたとは……と驚きを隠せない。「風船」はものすごく好きな人が何人かいて、ものすごく熱く水戸さんに「風船」への想いを語ってくれたことが今までに何回かあったそうで、「そうかそんなに好かれているのか」と思ってやってみると反応がそうでもない……というコアなファンがついている曲だそうだ。
そしてもう一つ。「この曲のおかげで乗り切ることができた」などの熱い声が届くことのある曲……ということで始まったのが「地図」! うわーーーーー!!!! それ! そこまで熱くないかもしれないけど! 「地図」への想いは手紙に書いたことがある! はい自分です「地図」大好きな人間はここにいますよ水戸さん! と挙手しそうになりつつ拳をグッと握り締めガッツポーズをし、曲に聴き入った。
狭いライブハウス。水戸さんの指差すすぐ先には低い天井があり、ライブハウスの外は黒い夜空が広がるばかりなのだが、明るい真っ青な空が見える気がしてならなくなる。
「雨のドライブ」「雨のパレード」「夜の行進」「見事な夜」。水戸さんは、自分の曲には雨の曲と夜の曲が多いと話していた。夜型人間で、午前中は寝ているから昼の曲がないと冗談めかして語っていたが、己は水戸さんの声には青空のイメージも強くある。どこまでも広がって行ってどこまでも行けるような。そんなのびのびした力強さを感じる。それは、雨と夜の世界から抜け出した先のイメージを見せてくれているからかもしれない。
最後の曲を歌う前に水戸さんは熊本への想いを語った。熊本は青春に深く関連づいている土地で、思い入れも深い。それゆえに今回の地震にはとりわけ感じるところがあったと言う。そんな中で、デビュー前に初めて熊本に遠征した先の学園祭で、大いに盛り上がり気に入ってもらえた一曲「見事な夜」が演奏された。
水戸さんは歌う前に言った。「革命の歌なのでそぐわないかもしれない」「不謹慎に聴こえるかもしれない」と。だが、「今夜切り崩せ!」という叫びは、きっと現状を切り開く力になってくれると聴いている己は思った。
アンコールはコアなファンがついている「風船」、そしてダブルアンコールでは「涙なんか海になれ」が歌われ、明るく気持ちよく終わった。
最近水戸さんは野球に夢中になっているそうで、一時は遠のいていたのだが、選手を親目線で見るようになってから感情移入するようになったと言う。今日もライブが始まる前まで、野球の試合の行く末が気になって仕方なかったのだが、始まってみればすっかり歌に夢中になって野球のことなどすっかり忘れてしまい、そんな自分を偉いと自画自賛していたのがキュートだった。とはいえやはり気になっていたそうで、アンコールで楽屋から戻ってきた水戸さんはニコニコ笑顔。楽屋に戻っている間に試合の状況を確認したら勝っていたらしい。嬉しそうな水戸さんに観客も歓声をあげ、100曲ライブはハッピーに大団円で終わったのであった。
水戸さんは言う。春だけでなくこの100曲ライブを一年間ずっと続けてみたらどうなるかと。「いつまでついて来てくれるかな」「年末には三人しか残らなかったりして」と笑いつつ、ただやってみたいけど、やったらツアーが出来ないし、そしたら地方のお客さんに悪いし、ということで、もしやるとしたら機材車移動がつらくなった七十歳あたりだろうと。
そしたら己はきっと時間を見つけて通うだろうな。何より先のことを話してくれるのが嬉しい。どうか七十歳になっても八十歳になっても、その歌声を聴かせて欲しいと願いつつ、水戸さんが八十歳だと己は六十歳であることに気付いてふはっと息が漏れる。
あぁ、先はまだまだあるななぁ!