何を見たのか、その人は

2016年3月5日(土) 緑茶カウント:2杯

ズジスワフ・ベクシンスキー。「終焉の画家」なる異名を持つポーランドの画家。彼の作品の一枚は「三回見たら死ぬ絵」としてインターネットで話題になったこともあるので、どこかしらで見たことがある人も多いだろう。己は彼の画集を一冊所有している。

命が尽きた世界。廃墟と同化する人間は骸骨のように痩せ細り、悲壮感だけを身にまとっている。胃の腑の底がぐらぐら揺れるような気持ち悪さと、言い知れぬ不安感。心臓がざわめき、不快すら感じるのに食い入るように見つめてしまう絵の数々。ページをめくるたびに引き込まれ、いつの間にか没頭している。そして、ざわめきの中で静かになっている心に気付くのだ。

さて。ある人に好きな画家がいるかと質問をされた。その人とは知り合って一ヶ月程度である。己はちょっと考えてベクシンスキーの名を挙げた。するとその人はスマートフォンで画像検索をかけ、出てきた絵を見ながら言う。「あーわかります。すごくウヲさんみたい! いかにもって感じです!」と。画像検索をかけ、出てきた絵を見ながら。出てきた絵を見ながら。

たった一ヶ月の間にその人は、己の中にいったいどんな闇を見たと言うのか。

ええー。と思いつつ。しかも本人、褒め言葉のつもりらしいことが後のやりとりで知れた。仮に自分の描く絵がベクシンスキーのようであるという評価ならまだしも、その人に絵は見せていないし、己の絵はベクシンスキーのような絵ではない。つまり、だ。

喜んで良いのかどうなのか、若干悩んだ出来事だった。いや、好きだけどさ。好きだけどさ!



日記録2杯, 日常