ニューアルバム発売記念ツアー「THE SHOW MUST GO ON」 (2014年11月16日)

あ、そうだ筋少のライブがあったんだ、と気付いたのは数日前。部屋の掃除をしている最中に仕舞いこんでいたチケットを発見してのこと。確かにそれを購入していたが、ライブを楽しみに待つ心の余裕を失っていたため、すっかり記憶の外に置いてきてしまっていたのだ。

気分転換を求めているが主体的に動く気力があまり無い。そんな自分を動かすためにこのチケットはあるのだろう。解釈の末、家を出た。

道に迷いながらライブハウス「新宿ReNY」に到着。西口を出てしばらく歩いた場所だ。あまり馴染みの無いビジネス街だ。何故ここにライブハウスを作ろうと思ったのだろう。

開場後ロッカーに荷物を預けスタンディングスペースへ。今回は中央上手寄り、内田さんの前に立った。ヘドバンの吹き荒れる上手の余波を受けながら、ほどほどに暴れたい気分だったのだ。

開演SEは「タチムカウ~狂い咲く人間の証明~」で、これがしばらく流れた後にメンバーが入場し、「オーディエンス・イズ・ゴッド」。そして以下がセットリストである。


オーディエンス・イズ・ゴッド
バトル野郎~100万人の兄貴~

ゾロ目
カーネーション・リインカーネーション
吉原炎上

くるくる少女
ムツオさん
みんなの歌

THUNDER YOU POISON VIPER

愛の讃歌
小さな恋のメロディ(橘高さんボーカル)
恋の蜜蜂飛行

ワインライダー・フォーエバー
労働讃歌

イワンのばか
気もそぞろ

~アンコール~

霊媒少女キャリー
釈迦
ツアーファイナル


やっと聴けた「吉原炎上」と「恋の蜜蜂飛行」の嬉しさったら。特に「恋の蜜蜂飛行」は多くの人が待ちわびていたのだろう、新曲とは思えない一体感と盛り上がりっぷりで、観客も随分聴き込んでいるように感じられた。

印象的だったのは「ムツオさん」。この新宿ReNYの天井にはミラーボールがついており、「ムツオさん」のとき、くるくると回転しながらキラキラと光を反射させ、まさにムツオさんの世界観。まさか本当にミラーボールの回る様を見られるとは思わなかったなぁ。

ただ、音はあまり良くなかったように思う。どの曲だったか、シンバルの音ばかりが響いて、ボーカルがとても聴きづらかった。あれは残念だったなぁ。

今回は新譜ツアーということで、労働讃歌は必ず入れるだろうと思っていただけに、ワインライダーをやったのには驚いた。まさかの筋少ラップ二連続! しかし何度もやっているワインライダーの方で間違えてしまう内田さん! 何故だ!!

「愛の讃歌」ではモデルガンを片手にポーズを決めながら、血まみれ白スーツ白ハットで歌うオーケンが面白くもあり、格好良かった。モデルガンは相当お気に召しているようであるが、音がちゃちいらしく、それを残念がっていた。内田さん曰く、運動会で使うピストルよりも音がしないということで。だが、効果音なら上手に効果音の魔術師がいらっしゃるので、彼に入れてもらえば良いじゃないですか、と思った。いつも律儀に入れてくれるじゃないですか。色々な効果音を。

MCのどこかでオーケンが「壁ドン」「顎クイ」「股ドン」をやっていたが、「股ドン」で結構な勢いをつけて空気を蹴り付けていて、どう見ても膝で急所を潰しているようにしか見えず、女性がくらっとくるロマンチックなシチュエーションと言うより、これはオーケンによる痴漢撃退講座ではなかろうか、と思った。

痴漢を壁際に追い詰め!(壁ドン) 注意を逸らせた瞬間!(顎クイ) 急所を打つ!!!!(股ドン) …というような。

あと、MCでは鼻うがいのおかげで声が出るようになったと喜ぶオーケンと、歌心発言をからかわれまくりマーシャルに八つ当たりをし出す橘高さんが非常にキュートだった。

新譜のタイトルが発表されたとき、己はオーケンの覚悟と義務感を感じた。何があってもショーを続けなければならない、筋少というブランドを守らなければいけない、というような。しかし新譜が発表され、ツアーが始まると、当時感じた「重さ」が消え、「まだまだ続く」という希望が感じられるようになった。そして今回のツアーのラストソングが「ツアーファイナル」。ファイナルだが、まだ続く。また会えるよという希望。覚悟も義務感もあるが、きっと「続けることを望まれている」自信や喜びもあるに違いない、と感じられた。そんなツアーだった。

最後にまた個人的な感傷に戻るが、確か後半だったと思う。オーケンが「今日のライブを楽しんで、また明日からいつもの日常に戻ってね」というようなことを叫んだ。それは普段であれば「楽しんでいるところで現実に引き戻しやがって! 鬼か!」と冗談めかしつつ脳内で悪態をつく場面であるが、しばらく非日常状態が続いていた己には違う聞こえ方がして、そうだなぁ、そろそろいつもの日常に戻りたいなぁ、戻れるようにならんとな、と背中を押されたように思えた。無論それは受け取り方によるもので発信者にその意図が無いことはわかるが、そのように受け取ろうと思ったのである。

いつものように楽しめたかと言えば、全くその通りとは言いがたく、まだ憂鬱は残っているが、笑い、叫び、手を伸ばし、くたくたになる時間を与えられたことを有難く感じた。

ありがとう、筋少。



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