塗りつぶす快楽

2014年2月8日(土) 緑茶カウント:2杯

こんな大雪、見たことが無かった。

故郷の群馬県は雪が降らない。新潟との県境にある山に雲がかかり、新潟側に雪を降らす。そして水分を失い、カラッカラに乾いた風が県境の山から群馬の土地へ吹き降ろされる。これが群馬名物空っ風。よって、群馬はほとんど雪に見舞われず、年に一度か二度雪が降ることがあっても、大して積もることが無く溶けてしまうのが常だった。

だから経験したことが無かったのだ。こんな、脛まで埋まるような大雪は。

どうしても外せない用事があっていやいや外に出ると、外階段が雪に埋もれて坂になっていた。雪を落としつつ苦労して下に降り、大地を踏みしめようとすると足が脛まで埋まった。あたり一面が白銀に染まり、踏み荒らされた形跡すら無い。誰も外に出ていないのか、足跡さえ塗りつぶされたのか。一瞬、呆気にとられながら、こんなことならさっさと長靴を買っておくべきだったと深く後悔しつつ、用事を済ませるために先に進んだ。

視界は爽快であった。こまごまとしたもの、石も、ブロックも、雑草も、ゴミ捨て場に設置されたカラス避けの網も、アスファルトもコンクリートも、白線も横断歩道も、マンホールも空き缶も空き瓶もコンビニのビニール袋も何もかもが、全て一色に塗りつぶされているのは圧巻だった。この雪がもしも自分の力によって降らされたものだとしたら、きっと征服欲が充足されるだろう、と思うような。そしてまた、何かを征服したいと思う人の欲求の結果の快楽を垣間見たような気がして面白くも感じた。

あぁ。雪が溶けて、泥に混じって、ぐっちゃぐちゃに色が混じる景色を見るのが楽しみだ。



日記録2杯, 日常