未分類初参戦, 平沢進, 非日常


 
行ってきた。平沢進のライブ、「東京異次弦空洞」二日目に。ライブが終わって既に何時間も経っているというのに未だぼうとしたままだ。しかし体内では神経が興奮し、心臓がドクドク動いていて落ち着かない。ライブの興奮と感動と、一年間に渡って続けられた還弦イベントが終わってしまったことを惜しむ寂しさと喪失感、これらがない交ぜとなるが故の作用である。

あぁ、終わってしまったんだなぁ。

思えば一年半ほど前か。Twitterで何やら騒がれている人がいるぞ、と知って興味を持ったのがきっかけだ。どんな人物かよくわからないままにフォローして、興味を持ち、氏の情報を調べて公式サイトに辿り着き、彼の書く文章に魅力を感じてSP-2本を購入。そうだ。音楽よりも先に文章を好きになったんだ。後にアルバムに手を出して、どこかで耳にした夢の島思念公園の歌声を思い出し、「あぁ、この人か」と気付きはしたが、最初は文章だったのだ。

まず平沢進という人の情報を得ようと検索をかけ、Wikipediaなどでざっと調べたときは、「師匠」「エコ」「反戦」「ベジタリアン」「メンバー変更が頻繁」といったキーワードのコンボから、若干引いたのも今となれば懐かしい。「どうしよう。変な人なのかもしれない…」とこれ以上深入りして良いものか迷ったが、結局変な人ではあるものの、大変好ましいタイプの変な人であることがわかった。今、自分にとって一番「興味深い人」は平沢進である。好奇心がそそられる。何て面白い人なのだろうか。

そうして平沢進という人物にはまり、アルバムを買い、DVDを買い、ついに念願のライブに参戦することが叶ったこの喜び。ライブハウスという一つの空間、同じ空間にこの興味深い人がいて、己の目の前で実在することを証明してくれている。何て素晴らしいことだろうか! そのうえ、大好きな音楽を、歌声を! 生で聴くことが出来るのだ!!

あぁ、だめだ。興奮が収まらない。サイン会で初めてオーケンを見た後も、こんな感じだったなぁ。あのときも数日体内で異常作用が働き続けていたなぁ。

そろそろライブの感想を書こうか。以下、公式サイトから持ってきたセットリストである。

「凝集する過去 還弦主義8760時間」フィナーレ

東京異次弦空洞

2011年1月14日(金) 18:00 開場 19:00 開演
会場: SHIBUYA-AX
ゲスト: Neng, Rang

01: アート・ブラインド (Neng & Rang) / 突弦変異
02: DUSToidよ歩行は快適か? / 突弦変異
03: CHEVRON / 突弦変異
04: MOTHER / 変弦自在
05: Another Day / 突弦変異
06: ミサイル / 突弦変異
07: サイレン*Siren* / 変弦自在
08: 金星 / 変弦自在
09: GOES ON GHOST / 突弦変異
10: 夢みる機械 (Neng & Rang) / 変弦自在
11: バンディリア旅行団 / 変弦自在
12: LEAK (Rang) / 突弦変異
13: Solid air / 突弦変異
14: ASHURA CLOCK / 突弦変異
15: 環太平洋擬装網 / 変弦自在
16: トビラ島(パラネシアン・サークル) (Neng) / 変弦自在

EN
17: WIRE SELF / 突弦変異
18: ルクトゥン OR DIE (Neng & Rang) / アルバム未収録 (2001)

FCの先行販売で入手したものの、番号は千より先の遅い方。それが己のチケットだったが、何だかんだで前から五列目に行くことが出来た。下手側の中央寄りで、特にASHURA CLOCKからは波が動いてびっくりするほど視界良好。それまでも平沢さんの胸から上や、ギターを弾く手元を見ることは出来ていたのだが、ASHURA CLOCK以降は常に頭から爪先、周辺の機材まで、ばっちり眺めることが出来た。感無量である。

ところで、今回はライブ慣れしていない人が非常に多かったように思う。平沢ライブに来たのはこれが初めてなので今までどうだっだかは知らないのだが、それにしても大荷物をスタンディングスペースに持ち込んで足元に置いたり、上着を抱えたまま立っている人が多かったなぁ。開演直後の押しでも、「ちょっとこれどういうことなの?」「信じられない!!」と憤慨している人がいた。自分も初めて筋少のライブに行ったときは波に飲み込まれて「何じゃこりゃ!?」と驚いて慌てたものだが、今日は「何じゃこりゃ!?」な人が大勢いたために、ライブ慣れした人々の波に乗せて何となく皆あわあわ移動とならずに、塊と塊が衝突してしまっていたように感じられた。動くことを前提としている人達としていない人達の衝突である。ちょっとした混乱が起きていたよな。

閑話休題。さて、「凝集する過去 還弦主義8760時間」のフィナーレを飾るこのライブ。当然8760時間中に作られた二枚のアルバムの曲が演奏されることになるわけだが、中でも己が一番期待していて、一番聴きたかったのは、「金星」である。

本当に嬉しかった。

椅子に座り、組んだ足の上にアコギを乗せ、爪弾きながら歌う平沢進を目の前にしたときの感動は並大抵のものでは無かった。一音ちょっとおかしかったな、と感じられたところもあったが、そんなことはどうでも良い。あのギター嫌いを自称する平沢が。泣きはしなかったが、泣くかと思った。愛らしい音色だ。優しい声だ。胸がいっぱいになった。

金星の他でも、アコギを爪弾くシーンはあった。「あの」平沢進が珍しいことである。さらには、トビラ島でアコギを爪弾いた後、機材が設置されたステージセットが退場し、スタンドマイク一本を前に歌い叫ぶ姿には、圧倒以外の言葉は出ない。様々な怪しい機材に囲まれ、それらを操る姿も格好良いが、だからこそのシンプルイズベストの演出。音楽使い平沢進が、ボーカリスト平沢進の面を曝け出した瞬間を見せ付けられたように感じた。この人の歌が素晴らしいことは知っている。知っているが、こうもまざまざと見せ付けられると、ついには、圧倒されるより他に無くなってしまうのか。

書きたいことはたくさんあるが、どこから手をつければ良いのかわからない。「DUSToidよ歩行は快適か?」「MOTHER」「Another Day」が前半に出てきたときには、「もうこれをやってしまうのか!」ともったいなくも感じたものだ。「夢みる機械」のイントロはライブ用にアレンジされていて、あのイントロがピアノの重低音で奏でられる中、NengさんとRangさん、そしてテスラコイルが登場する。そして同じテンポのまま機械的な音に変貌し、平沢進の語りが始まるのだ。ゲストであるNengさんとRangさんのパフォーマンスがまた面白く、平沢を見たり二人を見たり、しまいにはどっちを見れば良いのかわからなくなって楽しかったなぁ。

イントロが変わっていたものと言えば「LEAK」である。言葉で説明できないのがもどかしい。原曲よりもずっと長くなっていて、始まりは原曲とは違うものなのだが、だんだんと近付いてきて「LEAK」になるのである。このバージョンの音源も欲しいくらい、格好良いものだった。

「Solid air」のギタープレイは凄まじかった。一段高いステージからぴょんと飛び降り、客の近くにやってきてくるりと回ってくれたときには凄まじい大歓声が起こった。

ただちょいと残念だったのは、曲と曲の繋がりがあまり無いというか、一曲一曲が全て分断されているように感じたことだ。もうちょっと繋がりがあったらより燃えただろうなぁ。

それと、「あれ、ここも音源に歌わせてしまうのか」と感じる部分が結構あった。平沢さんの生の声で聴きたい部分が音源で流されるとやや、寂しい。とはいえ、もしかしたら体力的な問題なのかもしれない。五十六歳だものなぁ。無論、それにしたって十二分にすごいのだが。

そうそう、「DUSToidよ歩行は快適か?」のオリジナルの「でぃーやっでぃーやっでぃーやいやいやい」にあたる部分での、レーザーハープの手振りが優雅で非常に美しかった。舞っているような手の動きに思わず見惚れてしまったよ。あの動きはDUSToidだけだったなぁ。

レーザーハープを見るのは初めてだったので興味深く眺めていたのだが、あれには「切る」「握る」「はたく」「くすぐる」「すくう」動きがあるようだ。個人的には「切る」と「すくう」が好きである。

大合唱が起こったのは「Another Day」と「ルクトゥン OR DIE」。特に最後の「ルクトゥン OR DIE」では、タガが外れたかのように観客が大爆発。一曲中ずっと飛び跳ね、拳を振り上げての「ルクトゥン OR DIE!」の大合唱。それにしてもアルバム未収録曲がキラー・チューンってのもすごい話である。あんまり無いと思うのだが。

最後のMCはNengさんとRangさんの紹介から始まり、Twitter継続の嬉しい告知と、Twitterでの「唯じゃない」発言によりフォロワーが増えて開催するに至った今回のライブを「思わぬアクシデント」と称され、「マイナーなのにこんな大勢の前に引きずり出されて憤慨」といった素敵な発言をいただいた。ステージから一度下がりながらも、また戻ってきて客席に向かってサービスするRangさんと話すときには、大変珍しい笑顔なんてものも見られて嬉しくも驚いてしまった。平沢進の笑顔だ!

あと、今回のライブに隠されたメッセージを教えてくれもした。それは「使ったものは片付けましょう」であるとのこと。そうそう。ステージ上に、機材やアコギの設置された「動かせる」ステージがあり、それが曲に合わせて幕の中から出てきたり引っ込んだりしていたのだが、まさか平沢進本人がせっせとステージを引っ張ってくるなんて誰が予想するだろうか。特に、本編ラストのトビラ島でスタンドマイク一本のみとなったステージに、アンコール後せっせとでかいステージを運んできたときには笑ってしまった。あの灼熱の歌に圧倒された直後のことだから、特におかしかったんだな。全くサービス精神旺盛な人である。

このメッセージに歓声が上がり、「当たり前のことを言っただけですよ」としれっと答える平沢進。面白いなぁ。最後の最後には「帰りなさい」と帰宅を促し、「えーーーー!!」という声が起こる中、颯爽とステージから去っていった。ヒラサワさんがいなくなった後も拍手はしばらく鳴り止まず、ダブルアンコールを望む声が続いたが、終演のアナウンスが流れ、惜しまれながらライブは終了した。

あぁ、本当に楽しかった! 日記に吐き出して少々落ち着いたが、まだまだ余韻の中にいる。この人のライブを観ることが出来たことが心から嬉しい。平沢進は実在するんだなぁ、なんて言ったら笑われるかもしれないが。実感し体感出来たことがこの上なく嬉しいのだ。この様子ではなかなか平静に戻れそうにないな。

未分類電車, 非日常

初詣にも行っていないのに初ライブに行ってきた。昨日幼馴染と遊んだとき、そいつは明日御祓いに行くと言っていたので、ついでにこちらの分も祓っといてもらえないかと頼んであっさりと却下されてしまったのだが、そうして御祓いもせず辿り着いた先が吉祥寺のSTAR PINE’S CAFE、ライブタイトルは「小畑ポンプ芸歴20周年記念興行第弐弾【電車セッション おかわりの回 フューチャリングただすけ】」だ。そして内容はと言うと、年の初めから死体に鳥葬に失恋に植物人間、御祓いどころか穢れも倍増な大変素晴らしい曲目であった。

以下、やや曖昧なセットリストである。

クレイジーケンバンドの「オレの話を聴け~」という歌
アタイばっか

あのこが遊びにくる前に
喰らわれた女の歌
死体のこもれび

パティー・サワディー

(ぽんすけ曲一曲目/空と雲と君と(?))
(ぽんすけ曲二曲目)

ヨロコビとカラスミ
夢見るショック!仏小僧

お別れの背景
OUTSIDERS

人間のバラード

~アンコール~

電車のヘイ・ユウ・ブルース
アザナエル

ところで今回、己は夜から予定があるため十八時にはライブハウスを出なければならなかった。しかし開場は十四時。開演は十五時。タイムリミットは十八時だが、三時間もあれば何とかなるだろう。せいぜい二時間半といったところではなかろうか、と読んでいた。読んでいたのだが、甘かった。

大変名残惜しかったがアンコール一曲目のヘイ・ユウ・ブルース途中で己は退場し、ライブハウスを後にした。最後までいたかったが仕方が無い。だが致し方の無いことだ。さしもの己もMCがこんなにたっぷりあるなんて予測することは不可能だ!

小畑ポンプさんがメインのイベントでこのようなことを言うのもいかがなことかと思うが、それでもあえて言うならば、MCならぬトークタイムはゲストが盛りだくさんののほほん学校を見ているようでもあった。今回セッションメンバーが五人だったのだが、うち三人が喋る喋る。そして二人も振られれば喋る喋る。演奏そのものよりもMCの時間の方が長かったのではないかと思うほどである。結局、ライブは三時間ちょっと行われたそうだが、その間演奏されたのは十五曲前後である。普段の筋少のライブは長くても二十曲やって二時間半といったところだ。筋少のMCも決して短くは無い。いかにMCが長かったかおわかりいただけるかと思う。

トークは抜群に面白く、わっはっはっはと笑いながら聴いてはいたが、今回ばかりはタイムリミットがあったので、後半は特に早く曲を! 早く曲を! と願いながら時計を見つつハラハラしていた。これでアンコールラストの曲がお別れの背景だったら己は涙を流していたかもしれない。

と、言うほどに楽しみにしていて、今日やってくれんかなやってくれんかなと期待して、イントロを聴いて大喜びしたのが「お別れの背景」なのである。お別れの背景が聴きたくてこのライブに来たと言っても過言では無い。筋少以外のオーケンの曲で、一、二を争うほど好きな曲なのだ。これを聴けて本当に良かった。一度生で聴きたいと思っていたのだ。嬉しかった。嬉しかったなぁ。

「お別れの背景」はとある恋人同士の二人組みが街へと出かけ、楽隊が歌い紙吹雪が舞い、ファンファーレが鳴り怒声が飛び交う華やかで騒々しい人ごみの中で、ひっそりと繋いだ手を離してお別れをするという曲だ。これの一番と二番の対比、称えられる英雄と怒声を浴びせられる罪人の描写が悲しい。そして何より切ないのは、英雄が昔人を殺したこと、罪人が昔人を愛したことを知っていながら、「だけどもういいじゃないか」と突き放すように、共に泣いたり笑ったりした恋人も、他人として思い出の中に消えていくことだ。「僕達」が「僕と元恋人」になる瞬間が描かれている曲なのである。

感無量の一曲だった。ここからOUTSIDERSに繋がるのがまた、切なくて良かったなぁ。OUTSIDERSを聴く度に感じるのはオーケンのマイノリティへの優しさだ。それは守ってあげようとしたり、権利をあげようとしたりするのとは違う、ただ存在を認識するという形の優しさだ。力強さは無く、やるせないばかりだが、やるせなさに同調してくれる。だからと言って慰めてはくれない距離感が実にオーケンらしいと思う。

今回初めて聴いたのは「あのこが遊びにくる前に」と「死体のこもれび」である。初めてというのはライブで初めてでは無く、本当に初めてという意味だ。というのも自分は電車のアルバムはライブ盤である電車英雄しか聴いていないからである。では何故二枚のオリジナルアルバム「電車トーマソ」と「勉強」を聴いていないかと言えば、持っていないからである。持っていない理由はと言うと、廃盤になっているからである。

あぁ、思えば筋少が再結成する前のこと。まだ筋少のアルバムを集めきる前で、筋少以外のアルバムにはさして興味が無かった頃。あの頃、タワレコで、棚に刺さった電車のアルバムを手にとって「うーん筋少じゃないんじゃなぁ」とレジに持って行かずにそっと棚に戻した自分の行動を思い返すと、何てもったいないことをしているのだと説教してやりたくもなるが、出会いにはタイミングがあること、悔いたところで仕方が無いことも理解しており、それでも、あぁもったいないことをした、と思わずにはいられない複雑な心境。次の出会いはいつだろうか。

閑話休題。この初めて聴いた二曲だが、特に「死体のこもれび」がすごかった。妖しい迫力のある曲で、キラキラしたキーボードの音が気味の悪さを強調し、それでいて優しく美しいのだ。これを聴いてますますオリジナルアルバムが欲しくなってしまった。中古屋を一所懸命回って探さなければならないな。

電車は筋少とも特撮ともまた一風変わった、オーケンが言うところの「ひねくれた」曲が多い。切なさともの悲しさと、やるせなさと妖しさと、優しさと気味の悪さが渾然一体となり、異様な迫力を持ってふらついている。言うまでもなく正月らしさは微塵も無い。が、紅白や正月特番バラエティの浮ついた華やかさにも少々飽きてきたのも事実。御節も良いけどカレーもね。一月三日に電車のライブを観るのはなかなかちょうど良いタイミングの毒の処方と言えるだろう。

MCの方でも毒の効いた発言があったなぁ。今年の正月、餅を食べて死んだ人間が東京都だけでも六人いるという話になったとき、オーケンが「正月に餅を食べるのは、昔からのそういう、人口の調節というか、正月に老人を殺そうみたいな」というような危ない発言をしていて笑えた。

そして今回、MCで大いに盛り上がったのがアルフィーの話題である。キーボードのただすけさんはアルフィーのキーボードもしており、そういった繋がりでアルフィーの話が出てきたのだが、アルフィーはライブ中に物販の販売を促進するためにコントをやるのだそうである。そうである、と言いつつ自分は妹がアルフィーファンであるため、そういった話は聞いたこともあったのだが、まさか一回のライブで二十分近くもコントの時間があるとは思わず、驚いた。ちなみに台本は高見沢さん作だそうである。

その流れで、アルフィーほどの大御所だってここまで物販に力を入れているんだから筋少も何かしなくてはいけない、筋少も最近ライブ中に物販のためのコーナーを作ったが、メンバー個人の物販を槍玉に挙げてネタにしたらそちらばかりが売れてしまって、筋少物販の売り上げは上がらなかった、なんて話をしていた。

あと、アルフィーがライブ中にコントをやる話を聞いたり、アニメの世界のライブを観たりしたことで、ライブってのは何をやっても良いのだと気付かされた、なんて話もしていたかな。その気付きが今後のライブに反映されることはあるのだろうか。コントが導入されたらどうしよう。

これもまたアルフィー関連で。ライブ中のコントの話から、オーケンが有頂天もライブ中に芝居があり、筋少のおいちゃんも有頂天に在籍していたのだが、いつの間にかギターを弾く時間よりも芝居の稽古をする時間の方が長くなり、それが嫌になって有頂天を辞めたという、一部で有名な話をしていた。そういえば有頂天もまだ聴いたことが無いんだよなぁ。

ライブの始まりはクレイジーケンバンドの「おれのはなしをきけ~」という歌詞の歌を一人ステージに登場したポンプさんが歌い、曲が流れる中で他メンバーが登場、全員揃って配置につき、中央に立ったオーケンがまた「おれのはなしをきけ~」と歌うという、ちょっと変わった演出だった。オーケンが今年最初にステージで歌った歌はクレイジーケンバンドだそうである。おれのはなしをきけ~。

ライブハウスは一階と二階に分かれていて、一階にも二階にも丸いテーブルと椅子が置いてあり、食べたり飲んだりしながらライブを観られるようになっていた。カップに入ったコーヒーなどを飲めるのが普段のライブハウスと違ったところか。とはいえ己はいつものようにハイネケンを呑んでいたのだが。後ろの方の番号だったため、見えるかどうか心配だったが、段差があったおかげで見晴らしも良く、耳も目もしっかり満喫することが出来た。スタンディングも好きだが、こういうまったり楽しめるのも良いものだよな。楽しかった。

未分類筋肉少女帯, 非日常

せっかく名古屋まで観に行ったのだが、移動に疲れてうっかり書き逃してしまったのでセットリストだけをドン。

パリ・恋の都
サンフランシスコ

ハッピーアイスクリーム
タチムカウ~狂い咲く人間の証明
221B戦記

さらば桃子
再殺部隊
モコモコボンボン

山と渓谷
ベティー・ブルーって呼んでよね
星座の名前は言えるかい

SAN FRANCISCO(Be Sure To Wear Flowers In Your Hair)
これでいいのだ

サーチライト
カーネーション・リインカーネーション
トゥルー・ロマンス

~アンコール~

愛のためいき
小さな恋のメロディ
僕の歌を総て君にやる
機械
釈迦

未分類筋肉少女帯, 非日常

せっかくだから2daysに参戦したいということで、大阪名古屋のチケットをとってしまったのだが、いやはや。大阪と名古屋って意外と距離があるんだな。もうちょっと近いものだと思っていたよ。

そんな地理に疎い人間による初めての大阪参戦記、というほど大したものではない。移動以外は基本のライブと同じであるので書き記すことも普段通りだ。と、いうことでセットリスト。記憶に間違いが無ければ以下のはず。

サンフランシスコ
タチムカウ~狂い咲く人間の証明

ハッピーアイスクリーム
パリ・恋の都
トゥルー・ロマンス

小さな恋のメロディ
僕の歌を総て君にやる
機械

フィスト・オブ・ヒューリー
愛のためいき
蜘蛛の糸
おもちゃやめぐり

SAN FRANCISCO(Be Sure To Wear Flowers In Your Hair)
これでいいのだ
カーネーション・リインカーネーション
サーチライト
221B戦記

~アンコール~

山と渓谷
さらば桃子
再殺部隊
モコモコボンボン
釈迦

昨年の初期曲限定レアライブに続く、後期曲中心お座敷ありライブ。一番の期待と注目はやはり、ツアータイトルに冠されているサーチライトをやるか否か、ということだった。このツアータイトルを目にするまで、まさか今後ライブでサーチライトを演奏される可能性が出てこようとは思っていなかっただけに、期待感と不安感で心躍らされたものだ。筋肉少女帯にとっても、大槻ケンヂにとっても特別な位置づけにある曲ではないか、と個人的には思っている。これをやるのか。やれるのか。

そしてついに、己の目と耳で、今のサーチライトを体感した。
それはとても豪華で楽しく、健康的なサーチライトだった。

やれるのか、と思った所以はここにある。同時になるほどと納得した。筋肉少女帯は本当に健康になったのだ。それをしみじみと実感し、サーチライトで語られる言葉は、当時のオーケンの心情を表したもので、今のオーケンの言葉とは少し違っているのではないか、と思わされた。

具体的に言うと、今のオーケンは「俺みたいになるなよ」とは思ってないんじゃないかな、と感じたのである。いや、あくまでも自分の主観であるのだが。その主観のままに語るのなら、既にオーケンはサーチライトの閉塞感と狂気と自虐を通過して、「やあ詩人!」と語りかける声に対し、「そうだねぇ~」と笑いながらにこにこと受け止められるところまで来たのではないかと感じさせられたのである。だから自分には、あのサーチライトの語りを聴いて、現在の大槻ケンヂの語りでは無く、当時のオーケンの言葉を語る現在の大槻ケンヂ、というものが見えたような気がした。誤解を恐れず言うならば、他者の言葉を他者になりきって語っているように見えたのだ。

「サーチライトは月の光と共に」の部分で観客がゆらゆらと手を左右に振る動作が、和やかで楽しげな雰囲気を作り出し、視覚的にもサーチライトの雰囲気を変えたのかもしれない。同じ曲でもこうも印象が変わるのか、と驚きながら自分も左右に揺れていた。

正直に言えば、物足りなさを感じもした。ちょっと寂しくもあった。とはいえ、予想していたことでもあり、あぁ、本当に筋少は健康になったんだな、と安心しもした。自分は当時を体感していないので本やMC、ライブレポートによる情報でしか知らないが、凍結前の後期筋少はそれは危うい状態だったらしい。だからこそ一度凍結するはめになり、再結成まで八年かかったのだ。その当時の空気を脱却した証拠が健康的なサーチライトである。逆に、サーチライトの頃の筋少が、再結成後の筋少曲を演奏することなるとしたらどのような仕上がりになるのだろう。それこそ空想の話でしか無いが、無理が出るだろう、と己は思う。

さて、サーチライトばかり長々と語ってしまったが、他にも語りたいことがあるので、そろそろ最初から順を追って語るとするか。スタンディングでもお座席でも照明が落とされると歓声が沸くのは変わらない。メンバーが登場。第一曲目はまさかのサンフランシスコ! いきなりのド定番で盛り上がらないわけがない。ここのベースソロで内田さんに透明感の無い、紫がかったドピンクのライトが当たっていて、それが何とも怪しげで格好良かった。何度も言うがベースソロはもっとあっても良いと思う。いや、たまにあるからこそ際立つ良さというものもあるかもしれないが、もっと聴きたいと思うのだよ。

サンフランシスコの次がタチムカウ。タチムカウは思い入れのある曲なので感慨深い。これを浪人時代に聴いて受験にタチムカっていたのだよ。懐かしいなぁ。あの頃は生で筋少の音楽を聴けるなんて夢にも思っていなかった。あの頃からも時は流れているのである。変わるというのは良いものだ。

タチムカウの後には何と盛り上げるためにビールにイッキが行われた。これは確か、初めて参戦した中野サンプラザの復活ライブでも行われたので、イッキコールに参加するのはこれで二回目になると思う。嬉しい。嬉しいが、大槻さん大丈夫っすか。通風平気なんすか、とハラハラしてしまう。大阪名古屋のどっちだったかは忘れたが、後期に比べて心は健康になったが体は不健康になってしまったとオーケンが語っていた通り、年齢も年齢だし、あまり無理はしないで欲しい。いつまでも元気で筋少をやって欲しいのだ。

お次は亡霊ゾーンとでも言うべきか、ハッピーアイスクリーム、パリ・恋の都、トゥルー・ロマンスの三連打。ハッピーアイスクリームの合いの手が綺麗に決まったときの快感といったら無い。パリ・恋の都ではエディが変なダンスを踊っていたのだが、具体的にどんなダンスだったかは忘れてしまった。揺れていたような気がするのだが。

この後のMCで紳士協定が結ばれた。「ジプシー男爵」という宝塚か何かの劇のポーズらしきもの、という大変曖昧な認識なのだが、脇を締めて右手の肘を折りたたみ、右の手の平が左側を向くように指をそろえて右耳の前あたりで立てるポーズが、タチムカウの後のMCのときから流行っていて、何かに付けてメンバーがジプシー男爵ポーズを決めていたのである。だが、あまりにも笑いを誘うのでオーケンによって「真面目な曲のときにやるのはやめましょう」と約束されたのである。余談だが、このジプシー男爵ポーズは東京公演のときにも行われていて、大阪で爆発的ヒットをし、名古屋で飽きられたようである。とにかく今回の大阪ライブでは、何度も何度もジプシー男爵ポーズが色々な場面で決められていたのだ。

しかしニコニコな筋肉紳士達、紳士協定は守られ、お次のオーケン曰く「神セトリ」三曲中ではジプシー男爵は封印された。小さな恋のメロディ、僕の歌を総て君にやる、機械の三つである。小さな恋のメロディ以外は準定番なのでよく聴いたことがあり、あまり目新しさは無いが、「機械」のキーが原曲キーよりも低くなっていたという驚きがあった。「天使、その羽」のところだったかな。この歌い方は確か今回が初めてでは無いだろうか。少なくとも自分が参戦しているライブでは初めてのはずである。

恒例のアコースティックゾーンではお座席を有効活用してしっとりと聴き入る。ステージからおいちゃんがいなくなり、オーケン、内田さん、橘高さんの三人になる。内田さんがいるのは珍しいなと思っていると、オーケンが「あ、内田はいてもいいんだ」と確認をしていた。しかし内田さん、楽器は持っていない。いったい何をやるのだろうか。

アコースティック一曲目はまさかの! オーケンのギターによるフィスト・オブ・ヒューリー! ……あれ、このときはおいちゃんいたっけか。この後においちゃんが退場したのか? 記憶が曖昧である。

内田さんの役柄の謎は「愛のためいき」で解けた。ギターは橘高さん。ボーカルはオーケン。内田さんは指揮。ゆるやかな曲調でありながらも観客との掛け合いがある曲なので、客の「入り」を合図する必要があるのだ。その前にオーケンが初っ端の入りを間違えたのでオーケンを導く仕事もあったのだが。愛のためいき終了後、内田さんはジプシー男爵ポーズを決めながら退場し、しっとりした空気に笑いを起こして去っていった。

入れ替わりでおいちゃんが登場。アコースティック三曲目は蜘蛛の糸! おお! 蜘蛛の糸は初めて聴いた筋少曲で思い出深い! でも、一度アコースティックではない形式でも聴いてみたいものだ。「笑ってろ、見てろよ」の担当はおいちゃん。後日、おいちゃんの歌う「笑ってろぉ、見ぃてろぉよ、ぉお~」が耳に残ったまま、アルバムの蜘蛛の糸を聴いたら、やけにさっぱり終わるように聴こえて違和感を覚えた。おいちゃんバージョンに耳が慣れてしまったようである。

内田さんが入場し、おもちゃやめぐりへ。ここで観客は立ち上がったのだが、オーケンはおもちゃやめぐりでも座ったままやるつもりだったらしく、慌てて立ち上がったそうだ。おもちゃやめぐり終了後、これくらいの曲が盛り上げ曲なポップスもあるのに、やっぱり筋少は激しい、とオーケンが言っていた。

ここでまたオーケンによるギター演奏が。ベストアルバム「SAN FRANCISCO」一曲目、片仮名ではない方の「SAN FRANCISCO(Be Sure To Wear Flowers In Your Hair)」だ。ギターを構えるオーケンを、おいちゃん、内田さん、橘高さんがドラム台に座って保護者のように眺めている。それに対し、「この後続くんだから前に出た方が良いよ!」とオーケンが良い、三人はドラム台から腰を上げて定位置に。

オーケンのギターに合わせて、自然と観客の手拍子が始まる。が、手拍子を止めるオーケン。人にリズムをとられるとわからなくなってしまうらしい。橘高さんが「好きにやらせてやって!」と言っていて、まるで本当に保護者のようで笑ってしまった。

オーケンのSAN FRANCISCOは、原曲よりもややテンポが速めではあったが、予想以上に上手い。ちょうど去年に行われた、初期曲ライブでのルリヲ前のギターとは比べ物にならない。これがオーケンなのだろうか、と思ってしまうほどである。

しかしオーケンはちゃんとオーケンだった。SAN FRANCISCOの終わり、思いっきりシャウトした次の曲名が「SAN FRANCISCOからの………サンフランシスコー!!」だったのだ。サンフランシスコは本日一曲目にやっている。何だ? これはどういうことだ? またサンフランシスコをやるのか、もしかして仏陀Lバージョンをやるのか、と頭上にハテナを浮かべながらステージ上の動きを待つも、見てみればメンバーも困っているようであり、何故か悶絶しているオーケンに「からの? からの!?」と橘高さんが軌道修正をしようとしていた。

流石にサンフランシスコを二回やるとはなく、これでいいのだが正解だった。オーケンが悶絶していたのは外そうとしたギターを鼻にぶつけたせいだったそうだ。せっかく格好良かったのに、全く、実にオーケンらしいなぁ。

と、一時ぐだぐだっと和やかになったが、ここからは怒涛の展開である。これでいいのだ、カーネーション・リインカーネーション、そして本日の目玉サーチライト! 本編ラストは221B戦記で締め! どこかにジプシー男爵ポーズがあったかもしれないが、全く覚えていられなかった!

アンコール一曲目は和やかに山と渓谷。ライブハウスでやっほーコールなんてもんをすることになろうとは思わなかった。メンバーが各々好き好きにやっほーやっほー言っていて楽しい。橘高さんのやっほーは非常に漢らしかった。

和やかムードから一転して次がすごい。さらば桃子と再殺部隊のこの二曲。今回のライブで一番良かったのは個人的にはこの二曲だ。さらば桃子は絶対にCDよりも格好良くなっている。再殺部隊は語りに力がこもっていてゾクゾクした。実はこの二曲とも、アルバムでしか聴いていなかった頃は筋少曲の中での好きさ加減で言えば普通くらいだったのだが、橘高さんの二十周年記念ライブで聴いて以来グンと急上昇したのである。そしてまたこうしてアルバムを聴き返すと印象が変わるのだから面白い。

モコモコボンボンでは内田さんがボーカルをとり、全身キンキラキンの謎の衣装に身を包んだオーケンが曲の途中に登場するという演出があったのだが、何よりもエディである。エディが! ステージを下りて! 無表情で客席を練り歩いてくれたのだ! 位置が良かったおかげで二回もエディに触れてしまった! 予想出来なかったサプライズに大興奮してしまったよ。間近で見るエディはとても大きかった。背中にチャックは無かった。

ラストはキラーチューンで釈迦。大盛り上がりの大団円で終了し、終演のアナウンスによる一本締めで綺麗に幕が閉じられた。去年の初期曲ライブほどのレアさは無かったが、やはり筋少のライブは楽しい。変化を再認識することも出来た。はるばる大阪まで足を運んだ甲斐があったというものだ。

しかしまだ終わらない。明日は名古屋が待っているのだ。大阪に続き人生初の名古屋の地。無事に辿り着けるかな。

未分類橘高文彦, 非日常

橘高文彦とは筋肉少女帯のリードギタリスト。そして筋肉少女帯とは己にとって音楽にはまるきっかけとなったバンドであり、これまでの人生の中で一番聴いた音楽である。つまり、自分にとってのギターの音色とはこれ即ち橘高さんの音ということ。その後にも範囲は狭いもののいろいろな音楽を聴いたが、やはりギターと聞いて連想するのはあのギュゥ~ンと唸り、駆け上るような音色である。

そんな橘高さんのデビュー二十五周年を祝うめでたいライブ、行かないわけにはいかなかろう。しかも今回はオーケンもちゃんと参加するのである。二十周年の時はまだ、筋少が活動凍結中、仲直り前で、オーケンは参加予定だったもののドタキャンしてしまったのだ。しかし今度はその心配が無い。ははははは。その点においても嬉しいなぁ、めでたいなぁ。うきうきしながらライブへ出かけた。

前日、久し振りにサークル仲間と集まって馬鹿騒ぎをし、そのまま友人宅で一泊して当日を迎えたのでライブ前に銭湯に行き、ひとっ風呂浴びてからリキッドルームへ向かった。銭湯で頭に塗りたくったワックスを落とし、さっぱりした頭にまたワックスを塗りたくろうとする己を見た友人達から「何の意味があるのか」「そのままで良いじゃないか」なる意味のことを言われたが、どうせライブが始まったらボッサボサの汗みどろになるってのはわかっていたって、最初っから湯上がりそのまんまは嫌だよ、己は。

して、到着リキッドルーム。ゆっくり風呂に浸かっていたせいか少々ギリギリになってしまったが、モスコミュールを飲むくらいの余裕は持てた。さて、開場後はどこへ向かおうかな。やはり橘高さんのお祭りだから上手かな。ヘドバンはやり慣れていないため得意じゃないが頑張ってみようじゃないか。と、決めて、実際上手に立ったのだが、ここに来るまでちょっとしたトラブルがあった。

入場はファンクラブのFC番、A番、B番という順番で、己はAの半ばよりちょい手前、くらいの番号だったのだが、いつまで経っても己の番が来ないのである。いや、己の番というよりA番が。いや、正確に言えばFC五十五番より先が。何故か知らぬがどうしたわけか、ずーっとFC五十五番で止まっているのである。

「FC五十五番までの方、お入りくださーい」
「FC五十五番までの方、お入りくださーい」
「FC五十五番までの方、お入りくださーい」

FC五十五番に何が起こっているのか。この人ごみの先、整理番号を呼ばう人の身に何が起こっているのか。それも五分や十分じゃない。結構な時間FC五十五番様コールが続いていた。「聞こえませーん!」「もっと大きな声でー!」と横の人が叫ぶ。その反対側ではベテランと思われるスタッフがFC五十五番を呼ぶ人に指示を出している。確か、この時点で開場から三十分近く経っていたのでは無かろうか。我々は開演前に中に入ることは出来るのだろうか。リキッドルームが屋内では無く、屋外で待つタイプのライブハウスであったら寒さのために暴動が起きていたかもしれない。いや、実際結構、空気がピリピリしていて、恐ろしかったよ。なかなか。

ついにFC六十番が呼ばれたときには歓声と拍手が起こり、それからは今までの様子が嘘であったかのように、スルスルと淀みなく入場が進んでいった。中では橘高さんがプロデュースしたバンド、Pan-d-raがライブを行っている。開演前のお楽しみ、ということらしい。外見が全員橘高さんのバンドのようであって驚いた。おおおおお。何やらわからん迫力があるな…。

Pan-d-raのお次はこれまた橘高さんプロデュースのバンドZig+Zagの演奏だ。開演前にこういったサービスがあると待ち時間も楽しめて良いなぁ。いつも一人で行くから時間潰しが大変なんだよね。Zig+Zagは眼鏡をかけたまま勢いよくヘドバンしていたことが印象的だった。あと小物というか、アイテムがやたらと多い様子であったな。

さて、前座も終わり、暗闇の中で開演を待ち続け、ついに始まった橘高文彦二十五周年記念ライブ! しかし、だ! 己は筋肉少女帯は全部聴いているが、X.Y.Z.→Aは「Learn from Yesterday! Live for Today! Hope for Tomorrow!」だけ。他は「NEVER ENDING STORY」しか聴いておらず、今回発売されたベストも終演後の物販で買うつもりであり、実際物販で購入したため予習が出来ていないため、知らない曲が盛りだくさんだったのである。つまりAROUGEとEuphoriaは完全未聴の状態でライブに臨んだのだ。

そんなわけでセットリストもきちんと覚えられたのは筋少だけである。一応下に記録しておこうか。

さらば桃子
アンクレット
再殺部隊
小さな恋のメロディ
イワンのばか

で、だ。これを言わせて欲しい。橘高さんのライブの感想で初っ端これかよ、と思われそうだが、もう、びっくりしたのが! 感動したのが! 「再殺部隊」の語りを、オーケンがきちんと語ってくれたんだよ! あの! 最近語りたがらないオーケンが!!

すげーよオーケンやれば出来るじゃん! 実際、橘高さんも「やれば出来る子なんだよ」とオーケンを指して言っていたが、いやーもう。いやーもう。しばらくこの感動の余韻に浸りっ放しだったね。オーケンすごいじゃないかああああ!!

まさか再殺部隊を生で、しかも語り付きで聴ける日が来ようとは。橘高さんが選曲したからこその曲目である。いやぁ、すごかったなぁ。特に己がいた上手側は、さらば桃子の開始から爆発したようにヘドバンの嵐で、普段の筋少ライブよりも狂乱しているように感じられた。熱暴走を起こしているというか。すごかったなぁ。

もしかしたらあの語りは、オーケンなりに橘高さんを祝おうとした気持ちなのかもしれない。それで頑張ってくれたのかなぁ、なんてことを思ったりもする。特に、二十周年ではドタキャンで不参加だったわけであるし、オーケンも今回同じステージに立ってお祝いすることが出来たことを嬉しく思っていたのかもしれない。なかなか素直に「おめでとう」と言わず、「橘高文彦二十五周年記念ライブに見せかけたファンキー末吉殺害ライブ」とちゃかしたりしていたが、ずーっとにやにやにやにやしていたんだよ、オーケンが。照れ笑いのような照れ隠しのような。最初は何でこんなににやにやしてるのだろうと思ったが、むず痒かったのかもしれないなぁ。

そういえば、てっきり散々ネタにするかと思いきや、二十周年でオーケンがドタキャンした話を橘高さんが持ち出さなかったのが意外だったな。いや、一回くらいは言っただろうか。記憶が定かでは無いが、ほとんどネタにされていなかったのは覚えている。どうしてだろう、と思ったが、これもまた、持ち出すと照れくさくなるからかもしれない、と思った。知らないけどね。

橘高さんメインのライブということもあり、お色直しを除いては橘高さんが出ずっぱりで、こんなに喋る橘高さんを見たのは生まれて初めてだった。基本、トークの中心は橘高さんで、これは筋少では見られない光景だ。ギターに対する想いや人生観、自身のトラウマについて語る姿は、とても真面目で、ギターに対して、人生に対して、ファンに対して、真摯に向き合っている人なのだな、と感じさせらた。さらに、ライブバーX.Y.Z.→Aで行われた太田さんセッションのときのMCで、一緒に飲み歩いていると橘高は金髪だからよく因縁をつけられて、それで因縁をつけてきた相手と喧嘩をすることはあったけど、自分のために喧嘩をしたことはない、と太田さんが語っていたのを思い出した。あの派手な外見で軽んじられたり、見くびられたり、誤解を受けたりしたことは何度と無くあったのだろう。筋少自伝でも、AROUGEはアイドルメタルということで風当たりが強かったと書かれていた。ずっとそういった偏見の目と戦いつつ、今に至るまで自己のスタイルを貫き通してきた人なのだなぁ。格好良い。

AROUGEのベースとドラムスは橘高さん曰く、「今はカタギの人」とのこと。既に別の世界で生きている人も、この日は橘高さんのために駆けつけてきてくれたのだと想うと感慨深い。同窓会のようなどこか気恥ずかしく、そして温かい空気は次のEuphoriaにも、さらにはX.Y.Z.→A、筋肉少女帯にも引き継がれて、最後の最後の大合唱では紅白歌合戦のフィナーレといっちゃ失礼だが、十月後半であるにも関わらずこのまま年を越せてしまいそうなめでたさと温かさでいっぱいになっていた。橘高さんが「ドリームキャッスルの住人」とステージに集ったメンバー全員を指して言っていたが、まさに、親戚一同が大終結してのパーティーのような状態であった。

五年後も、同じような、もしくはそれ以上の温かい、和やかなパーティーが見られたら良いなぁ、という思いとは似つかない、汗だく汗まみれふらふらの状態で、半ば朦朧としながら輝くステージを眺めていた。このライブは後日DVDになるそうだ。位置的に映っていそうで恐ろしい。ははは。

橘高さん、二十五周年おめでとうございます。同時に、ありがとうございます。