いやあ楽しかった。
昨日が平沢進のライブだったこともあって昼過ぎに起床し、家にあったフルーツグラノーラに牛乳をかけてこれを食し、整体に行って本日の会場赤坂ブリッツに到着。しかしここで腹が減り、この後の運動量を考えるとフルーツグラノーラだけではエネルギーは足りなかろう、何か腹に入れなければ相成らん、とうろうろしていたら赤坂ブリッツのすぐ手前の小さな広場に屋台が出ており、ちょっとしたオクトーバーフェストが開催されている。ビールの祭典である。ビールの!
そこから先は言うまでもない。いそいそとドネルケバブとビールを買い求め、ライブ前の至福のひと時を過ごしたのであった。ライブ前に美味しいビールを呑めるなんて何て幸せなんだろう、と喜びを噛み締めつつ味わった。
しかし! 喜びの本番はこれからである。六月ぶりの筋肉少女帯のライブ! それも新譜発売直後! 四年四ヶ月待ちわびた新譜を引っさげてのワンマンライブである。新譜が発売されてから今日までひたすら新譜を聴いていた。ばっちり頭に入っている。そんなあの曲やこの曲を、どのように演奏してくれるのか。楽しみでたまらないじゃあないか!
では、まずはセットリストの方を。
オーディエンス・イズ・ゴッド
タチムカウ~狂い咲く人間の証明
ゾロ目
カーネーション・リインカーネーション
香菜、頭を良くしてあげよう
ゴーゴー蟲娘
ムツオさん
みんなの歌
青ヒゲの兄弟の店(おいちゃん橘高さんボーカル、オーケン退場)
愛の讃歌(血まみれ白ハット白スーツオーケン)
小さな恋のメロディ(橘高さんボーカル、オーケン退場)
労働讃歌
ハッピーアイスクリーム
これでいいのだ
パリ・恋の都
気もそぞろ
~アンコール~
霊媒少女キャリー
釈迦
トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く
「オーディエンス・イズ・ゴッド」と「みんなの歌」は、歌詞の性質もさることながら、ライブ映えする曲だと思った。特に「みんなの歌」は化ける。ライブでの定番の煽りがそのまま歌詞に取り入れられ、CDではそのおかしみを楽しむことができて、ライブでは歌詞のままスルリと煽られる状況に持っていかれるのが面白い。まるでライブをするために存在している曲のようだ。
今回のライブでは、オーケンは語りのシーンで本を持ち、それを朗読する形を取っていた。本の表紙は「ステーシー」で、恐らく内側に歌詞を挟み込んでいるのだろう。単にカンペを見るのではなく、本を持つことで「朗読」という演出になるのが良い。しかし同時に少しの違和感もある。それは今も自分はオーケンに「即興詩人」のイメージを抱いているせいである。実際に見たことが無いにも関わらず、過去の書籍や音源、映像作品に残っている、その場で物語を紡ぎ出し止まらなくなる、ちょっと目つきのおかしいオーケンのイメージが強く、その姿への憧憬があるのである。
ただ、今のオーケンと昔のオーケンが違うことはわかりきったことである、それは歌詞にも表れていて、興味の対象も一目瞭然だ。今はとにかくライブがやりたくて、怪しいものにも興味を引かれつつ、自分を慕ってくれる愛娘への憧れもありながら、何だかんだで生きるのが楽しい状況のように見える。
ただ、それが良いんだよなぁ。
クラスの女子と喋れず、映画館に通いつめ、表現欲と性欲を抱え込んでいた少年が。キノコを食べてバッドトリップし、心のバランスを崩し、メンバーと喧嘩してバンドを凍結した青年が。四十代になってニコニコ出来るのは素晴らしいことだ。その「変化」が存在していることに勇気をもらえる。だから自分は、過去の危ういオーケンに憧れを抱きつつ、今のオーケンを心底格好良いと思うのだ。
だいぶ話がそれてしまったので今日のライブの話をしようか。一曲目「オーディエンス・イズ・ゴッド」は、「のっけから神業~どうぞ!」の、「どうぞ!」と同時に橘高さんとおいちゃんがバリバリギターを弾き始めるのが非常に格好良かった。この歌詞も今の筋少ならではだよなぁ。
三曲目の「ゾロ目」に入る前のMCはオリコンチャートの話。ここに限らず、今回はこのオリコンチャートが話題に上ることが多かった。何と初日のデイリーランキング六位に入ったということで、もしかしたらウィークリーランキングのベストテンに入れるかもしれないとのこと。もし入ったら二十年ぶり、レティクル座妄想以来のベストテン入りだそうで、「ベストテンに入ったら俺達調子に乗っちゃおうか!」と楽しげに語らっていた。入って欲しいなぁ。入ってくれないかなぁ。
「ゾロ目」は流石にライブではヌンチャク歌唱はせず、普通に歌っていた。そりゃあまあそうだよな。そしてゾロ目で盛り上がった勢いでカーネーション・リインカーネーション! やったあ大好きな曲だ! この重低音が心地良い。
「香菜、頭を良くしてあげよう」を皆で合唱し、またMCへ。ここでもオリコンチャートの話。そこでオーケン、CDが売れたら少しお金が入ってくるだろうから、でも僕は高等遊民だからそんなの関係ないけど、内田さんもCD売れたら入ってくるでしょ、そしたら僕にウクレレ買ってちょうだい! と、よくわからないトークをした。ここのところ、本当に意味がわからなかった。
いや、高等遊民だから内田さんにウクレレを買ってあげるよ! という流れならわかるが、何で高等遊民に内田さんがウクレレを買ってやらねばならんのだ。無論これは本気のトークではなく、次の曲に繋げるための芝居なのだが、それにしてもよくわからなかった。
そんなオーケンの謎のおねだりを内田さんは一蹴し、代わりにと持ってきたのが! まさかの秘密兵器、一弦ベース! ということはあの曲である。やったあ! 「ゴーゴー蟲娘」だ!!
今日聴けるとは思わなかった曲第一位である。嬉しいなぁ。さらに、次は期待の一曲「ムツオさん」! ダンサブルで楽しい曲である。この歌をこんなに楽しく踊ってしまって良いのだろうか、という背徳感がまた楽しい。しかもオーケン、間奏で引っ込んだかと思ったら、頭に筋少タオルで鉢巻して、懐中電灯二本を差して再登場! やってくれたぜ!!
おかしかったのは次の「みんなの歌」もムツオさんコスプレのまま歌っていたことである。それでいいのか。そのままいくのか。
「みんなの歌」を歌った後オーケンが退場し、おいちゃんふーみんで「青ヒゲの兄弟の店」。さてもう一曲くらいあるかな、と思いきや、ステージに現れたオーケン! 血を浴びた真っ白なハットとスーツに白マイクという出で立ち! そしてマイクのコードをぴしゃんぴしゃんとまるで長縄跳びを波打たせるように操りつつ、非常に気持ち良さそうに「愛の讃歌」を歌ったのであった。
そのぴしゃんぴしゃんをやる仕草はコミカルで、くすくすと笑いが漏れ、オーケン自身も真面目に歌いつつ、ちゃかそうとしている面が感じ取れたが、オーケン本当に上手くなったよなぁ…としみじみ感じた。感じつつも笑った。
気持ちよく歌ったオーケンはサラリと退場し、今度は何と橘高さんがギターを弾きながら「小さな恋のメロディ」を熱唱! あの曲を弾きながら歌うのか! と圧倒されてしまった。橘高さんの働き振りがすごい。
労働讃歌は盛り上がった。「ぐーるぐる!」のところで腕を回すのが楽しい。ラップ部分ではワインライダーのように、メンバーが楽器を下ろしてマイクを片手に大熱唱! うーん格好良いおじさん達だ。
本編最後は「気もそぞろ」。和やかな雰囲気で終わるのも良いなぁと思いつつ、「みんな歌ってー!」と合唱を促すオーケンに、いくら何でも発売から一週間も経っていないのにそれは無茶振りだよオーケン、と思った。
アンコール一曲目は「霊媒少女キャリー」。エディのピアノが堪能出来る美しい曲だ。「THE SHOW MUST GO ON」は蔦Qよりもさらに、エディの見せ場が増えているように感じる。サポートとはいえ筋少にとってはなくてはならない存在であり、その存在が増していくのはファンとして嬉しい。
ラストは定番曲の「釈迦」「トリフィドの日が来ても二人だけは生き抜く」だったのだが、正直ちょっと拍子抜けした。何故なら最後に来るのも「恋の蜜蜂飛行」だと思ったからである。思った、というよりも願ったが正しいか。確かにトリフィドも好きなのだが、好きなのだが! 新譜のライブだし、「恋の蜜蜂飛行」、聴きたかったなぁ! ブンブン叫びたかったよ!
他、新譜では「月に一度の天使(前編後編)」「吉原炎上」「ニルヴァナ」が演奏されなかったので、これは次回のライブに期待するしか無いだろう。欲しがり神様は貪欲なのである。あぁ、是非、蜜蜂飛行は聴きたい!