未分類4杯, 筋肉少女帯, 非日常

今日は豪華な一日だった。昼には筋肉少女帯のインストアイベントに行ってトークを楽しみ、夜にはオーケンのサイン会に行って短いながらも至福の一時を過ごした。勤労感謝の日は筋少感謝の日に改めても良いのではなかろうか、と勝手に思う。

インストアイベントの開場はタワーレコード新宿店。番号が後ろの方だったためステージのメンバーを直接観ることはなかなか難しかったが、モニターのおかげで充分に楽しむことが出来た。

イベントが始まり、ステージにメンバーが登場。並び順はライブと同じで向かって左からおいちゃん、オーケン、うっちー、ふーみん。会場にはアルバム「再結成10周年パーフェクトベスト+2」が流れていたが、オーケンの「筋肉少女帯うるさいから止めてくださ~い」という声により止められた。BGMに負けてトークが聞こえなくことへの配慮とはいえ、バンド本人が「うるさい」と言うのはなかなか面白い。

イベントの開始時刻が正午だったため、ミュージシャンにとっては朝のようなもの、普段だったら寝ている、早くからようこそおいでくださいました、とご挨拶。オーケンは三十分前には到着していたが、内田さんは開始直前ギリギリに到着したという。ちなみにオーケン、早めに来たもののお腹が空いたため、近くの飲食店で食事を摂ったのだが、衣服と「イスラエルの護身術」にまつわる本が入った袋を失くしそうになったとのことである。そこで「護身術の本を買ったのに護身が出来ていない」とツッコミを入れられていた。

最初のトークは再結成十周年について。十周年を迎えた感想をメンバー一人一人に求めるオーケン。「あっという間だった」と答えるおいちゃんの後、「光陰矢の如し」とオーケンは答え、「あっという間を言い換えただけじゃないか」と橘高さんから鋭いツッコミが飛ぶ。

では、印象に残った話ではなく、特筆するでもないことを上げましょう、とかえって難しい話題にシフト。そこで橘高さんが「あった!」と声を挙げ、四年前の十二月二十三日のライブは定刻きっかりで始まったことを語った。それに対しオーケンは「筋少はわりと時間通りだよね」と話す。ちなみにそのときのライブは定刻通りを越えて二分早く出そうになったそうだ。ただ、押す分にはいくら押しても問題ないが、チケットに開演時間が印字されている手前早く始まるのは問題らしく、二分待ってから出たそうだ。

ここから、でも早く始まる方がお客さんもびっくりするよね、ロックだよねという話に。開場して入場したら既に最後の一曲が終わるところはどうだろう、長谷川さんがドジャーンって締めて、エディは既にステージからいなくなっている、オーケンもいつも早めにはけるからステージにはいなくて、ちょうどおいちゃんうっちーふーみんがいつまでもステージに残ってわちゃわちゃしているところ! あなた達いっつも遅くまで残っているけど何をしているの? と熱く語るオーケン。開場前、皆観てなくてももちろんフルで演奏しているからね! とふーみん。で、音だけライブハウスからちょっと漏れ聴こえているの、とおいちゃん。

また、曲の一部だけ演奏するのはどうだろう、ギターソロの直後で終わるとか、とオーケン。それに対し「ギターソロの前で終わるのは?」と橘高さんが言うと、会場から「えーーーー」と声が上がり、「あなたがそれ言っちゃだめでしょ!」とオーケン、「皆を試したんだよ!」と笑う橘高さん。おいちゃんが「全部メドレーにするのはどうだろう」と繋ぎ「それは……大変だ……」と誰かが口にした。

お客さんにも新しいことをして欲しい、ダメジャンプのとき、両腕でバッテンを作ったあと、くるっと回って飛んで欲しいとオーケンから無茶振りという名のリクエストが。でも、それで退場するはめになる人が出てきたら悲しいね、とも。あと、折りたたみで前のめりになってからそのまま勢いに乗って一回転して欲しいというリクエストも出た。

折りたたみでは橘高さんが熱く語っていた。曰く、筋少やその世代のバンドのオーディエンスは、折りたたみのときに体を反る方に命を賭けるが、筋少よりも若い世代のバンドのオーディエンスは前傾姿勢になる方に命を賭けており、よって最前列の客などは、本当に前転しそうになるほど前のめりになるという。そうなのか、知らなかった。

さらにそこに、前回りじゃなくて逆上がりをして欲しいと内田さんがリクエストをし、「柵どうするの!?」「バーをすごく高くしないといけないよ!?」とオーケンとふーみんからつっこまれていた。

折りたたみトークでさらにノリノリになる橘高さん。もし自分がカツラだったら、折りたたみでぐんぐんやってるときに思いっきりカツラを飛ばしてびっくりさせたい! もし自分がカツラを必要とする事態になったら、メンバーにも二年くらい内緒にしていきなりカツラを飛ばして、あたかもカツラが飛んだことに気付いていないフリをしたい! と語り、「えっこれどう反応すれば良いの?」とばかりに他のメンバーがたじろいでいるのが面白かった。その後橘高さんは「これは地毛だけどな!」と念のため強調していた。

カツラじゃないけど、眼鏡を落とした人いる? とオーケンが問いかけ、筋少椅子のライブでわじーが眼鏡を落とした話を橘高さんが披露。わじーが眼鏡を落としたのはちょうどギターソロに入る手前だったが、眼鏡を拾ってかけ直すまでの時間も問題なく繋がり、このあたりは流石熟練のバンドだね、と語られた。

ここからライブ中のアクシデントの話題に。十年間でアクシデントってあった? とオーケンが問いかける。メンバーはうーんと考えるがこれといったものが出てこないあたり、何かしらのアクシデントはあっても問題なく対処できたようだ。そんな中、オーディエンスから「マイクを落とした!」という指摘が入り、いつかのライブで「小さな恋のメロディ」の最後の最後、「きっと地獄なんだわーーーーー!」と叫ぶところでオーケンがマイクを取り落としてしまったハプニングが振り返られた。橘高さんが「あれはわざとだったの?」と冗談めかして尋ね、「あれは成海璃子ちゃんも観に来てくれてたからそんなことしないよう」とオーケン。

内田さんがベースを落としたこともオーディエンスから指摘が入る。ストラップが切れたそうで、これはよくあることらしい。また、この流れで内田さんが床に転がっていた話も。ある日の名古屋のライブハウスは空調の故障か何かが原因でステージに酸素が供給されず、内田さんは酸素を求めて床に転がり、長谷川さんは酸欠で鼻からみるみるうちに真っ赤になり、橘高さんはそれを目撃し、おいちゃんは背後のエディに酸素を全部吸われしんどかったと冗談めかして語っていた。オーケンは呼吸が出来ないのに歌は歌えたことについて、「あれは死んでたのかもしれない」と言っていた。

アクシデントつながりで、オーディエンスに対し「救急車で運ばれた人いない?」「眼鏡割れた人いない?」「会場間違えた人ー!」という問いかけも。救急車で運ばれた人と眼鏡が割れた人はいなかったようだが、会場を間違えた人はいたようだ。ちなみにオーケンは今日、マネージャーと連絡が着かず、会場があやふやだったのだが、「たわー……」という曖昧な記憶を頼りに勘で来たら無事辿り着いたそうだ。辿り着いてくれて良かった。

何がきっかけが、ジャンプアニメの主題歌を担当したバンドの人が、知人のギターを勝手に売って逮捕された話に。「バンド界隈だとよくある話だよね」としみじみ語られ、おいちゃんの布袋モデルのギターがオーケンの家にあり、何かの写真にオーケンがそのギターを持っている姿が写っていたという。そしてせっかくならおいちゃんは布袋モデルのギターを持ってライブに出ようよ! とオーケン。ふーみんは高見沢さんの天使ギターを借りて! と振ると、橘高さんが「あれ持たせてもらったことあるけど重いんだよ!」と言っていた。

そしてオーケンうっちーふーみんは坂崎さん、桜井さん、高見沢さん、おいちゃんは布袋さんになってメリーアンを演奏しよう! とオーケン。おいちゃんが「何で布袋さんなの!」と笑い、「布袋さんもメリーアンをやりたかったかもしれない!」と笑いが起こる。また、オーケンは内田さんに「ちゃんとヒゲつけてね」とリクエスト。

じゃあ、筋少でやりたい曲ってある? とオーケン。やってない筋少の曲でも誰かのカバーでも、とメンバーに振り、自身は「S5040」をやりたいとオーケン。やりたいが、ライブにおいて司会進行の役割も持っているオーケンとしては、あれをライブのどのタイミングで入れたら良いかわからず、やりにくいらしい。

そんな中でアルバム再現ライブの話も。アルバム再現ライブをやってみたいが、あれはMCはどのタイミングで入れるのか? そもそも他のミュージシャンのアルバム再現ライブではMCはやるのか? ちなみに陽水さんはMCをやるらしい。

ももクロのアルバム再現ライブはすごいらしい。全身覆面の衣装のアルバムでは全身覆面でライブをやりきったそうだ。すごい。それはすごい。そこから「筋少も仮面を被ってライブをやったらどうか」という話になり、おいちゃんが「そしたら仮面少女になっちゃうよ」と言うと「我々は少女じゃないから仮面おじさんだよ」とまさかの返し。その流れで「けっこう仮面」はどうか、キューティーハニーよろしくキューティー筋肉少女帯はどうか、キチガイ筋肉少女帯はどうか、などなかなかひどい話になり面白かった。

全裸だの女装だのの話で盛り上がる中、おいちゃんが「そもそも俺スカート履いてたよ」と有頂天時代の話を語りだす。スカートを履き、カーラーをつけてライブでお好み焼きを焼いていたそうだ。そして当時有頂天のPAだった人が後に筋少のPAになり、おいちゃんはずっとその人にライブでお好み焼きを焼いていた件について触れられていたらしい。「あたかも常にお好み焼きを焼いていたかのように言われていた」。

ここでおいちゃん、お好み焼きを焼いていた会場が「渋谷屋根裏」だったのに「渋谷公会堂」と言い間違え、メンバーに「渋谷公会堂で!?」と仰天されていた。

バンドは最終的には一つの印象になっていく、ミック・ジャガーも「サティスファクション」を語られるように、筋少はこのままだとカレー、間違ってボヨヨンロックの印象になってしまう、とオーケン。じゃあカレーボヨヨンではなく、「S5040」を、「ワダチ」を代表曲にしよう! かつてとある雑誌で、ハガキが集まった投稿者にはコーナーがもらえる企画があった、内田はオーケンのためにハガキを百枚書いてくれた、その内田のように! 皆で有線にS5040をリクエストしよう! 

「そしてパチンコ屋でS5040が流れてびょんびょん言うんだね」「今もパチンコ屋で有線って流れているのかなぁ」

最後の締めくくりでは、「今日のイベントの印象を一つにまとめると、おいちゃんが渋谷屋根裏と渋谷公会堂を間違えたことだね」とオーケン、笑うおいちゃん。週末のライブはリキッドルームじゃないですよ~六本木だよ~間違えないでね、と周知され、イベントは終わった。約四十分のほほんとした愉快なトークが聴けて実に楽しかった。

そして夕方はオーケンのサイン会。新宿から神保町に移動し、ドキドキしながら列に並んで何を話そうか考えて、ついに自分の番。「こんにちは」と挨拶をすると穏やかに「こんにちは」と返してくれるオーケン。どぎまぎしながら手紙を渡し、用意していた言葉を述べると! 会話が! 会話が出来た! オーケンが質問を返してくれて、じっくりゆっくり話が出来た! 今まで緊張してなかなか上手く会話を運べず、気を遣ったオーケンが話しかけてくれることが多かった中で、まともに会話を……会話を出来た……。嬉しくて死にそうになった。

帰りの電車の中では体温が急上昇していた。頭がくらくらした。楽しかった。嬉しかった。贅沢すぎる一日だった。まさに筋少感謝の日。ありがたい。ありがたい。




未分類4杯, 平沢進, 非日常

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平沢進のファンクラブ限定イベント「景観する循環カフェ」に参加した。場所は吉祥寺のスターパインズカフェ。ステージ前に椅子が敷き詰められ、二階席からはステージを見下ろせる構造になっている、と、冷静に書き出そうとしているものの既に脳が爆発しているので指の動きもままならない。

平沢進のファンクラブに入会して六、七年経つが、これまでファンクラブ限定イベントが開催されたことはなかった。故に開催が発表されたときは大いに驚き、ファンクラブ限定の空間で平沢がどのように振舞ってくれるか興味深く思ったものだ。そして迷わず申込みをし、運よく当選し、運よく素敵な整理番号が割り振られ、運よく最前列で平沢進の姿を拝むことができた。

目と鼻の先。たった一メートルの距離に平沢進が存在していた。実在していた。
そうして、こぼれる笑顔を隠すことなく、柔らかな空気でトークをしてくれるのである。

よって己の脳は爆発したのである。幸福だった。

イベントは二部構成になっており、前半では事前に募集していたファンからの質問に答える形でトークが繰り広げられ、休憩を挟み、後半でライブ。楽器や声による音をその場で録音して再生し、次第次第に音を重ねていき、即興の多重録音にボーカルを乗せて歌う姿はミュージシャンの演奏というよりも、職人技を見せ付けられる見事さがあった。曲は「ロタティオン」「電光浴」「CHEVRON」の三曲で、最後の「CHEVRON」ではオーディエンスの声を録音し、楽曲の一部に取り込む催しも。平沢が「さん、はい!」と小声でタイミングを示し、「うーうっ」と会場全体で声をそろえること繰り返すこと数回。集ったファンの声は一つの音と化し、音楽の一部となって会場内をぐるぐる旋回し、さらにその上に平沢の声が重ねられたのであった。

「景観する循環カフェ」の名にふさわしく、演奏された三曲とも「循環」がテーマなこともにくい。上手に声を出せたことを平沢にお褒めいただき、電源を切れば消える多重録音はその空間でのみ旋回したのであった。

第一部と第二部では空気が全く違うのも印象的だ。第一部では眼鏡をかけ、事前に募集したリスナーからの質問が書かれた紙を見つつ、横に座る司会の女性が読み上げる質問に答えながら朗らかに話してくれた。しかし第二部が始まるや一変、眼鏡を外し、照明が落とされたステージで機材に囲まれながらギターを抱くその表情は、まるで弓を引き狙いを定め今にも矢を放つ寸前のよう。張り詰めた空気が漂い、自然と開場もその渦に呑まれたのであった。

かと思えば最後の最後。アンコールを要求されて却下した平沢が、代わりにとプレゼントお渡し会をやってくれたが、その方法がすごい。プレゼントのオリジナルピックについての説明を語った後、「間接的手渡しをする」と宣言した平沢。何が起こるんだとステージを見つめているとスタッフがわらわらと集まってきて流しそうめんのような装置が組み立てられた。

客席に放流するように設置された四本の樋。そして放流する側に立つ平沢。間接的手渡しとはそういうことか! と納得しつつ、このためにわざわざこんなものを作ってしまう平沢に感服しつつ、平沢によって放流されたピックを「ありがとうございます!」と言いながら受け取ったのだった。この光景、二階席から見たらさぞかし異様だったことだろう。こういうちょっと捻じ曲がったファンサービスが愛おしい。

トークでは、アウトテイクは公開するつもりがないからどんどん削除するという話が面白かった。本人はどんどん削除したいので現在はどんどん削除しているが、過去の楽曲は原盤権などの問題で、レコード会社から勝手にアウトテイクをくっつけたCDを販売されることもあり、そういうのは好ましくないそうだ。しかしスタッフから宮沢賢治の全集をプレゼントされたとき、全集の中にあった宮沢賢治のメモや草稿を見て「これが見たかった」と大喜びした話が司会者から明かされる。「私は見たかったけど、宮沢賢治も嫌だったと思いますよ」と笑っていた。

あと使わなくなったアミーガを処分しようとしてスタッフに止められたり、止められるのが分かっているから事後承諾の形でことを進めようとする話もこの流れで語られた。ちなみに過去にPV集を作って販売する話も上がってはいたが、権利問題がややこしく立ち消えになった話も。……PV集……欲しかったな……。

平沢がツイートした造語への質問に対して、「皆よく覚えているね」「みんんさって何のことかと思った」と自分のツイートを覚えていない発言も。そりゃあそうだろうと思いつつ、大勢から「みんんさ」とリプライをもらって首を傾げる平沢を想像すると微笑ましい。

己が投稿した質問も採用された。脳が爆発した。平沢が質問を読み、考えて、答えてくれたこの事実! 間接的にピックをプレゼントしてくれたり、間接的に質問に答えてくれたり、あまりにも贅沢すぎるイベントである。嬉しかった。ありがたかった。今日は良い夢が見られそうである。至福。

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未分類

■10月24日2時「M.S.S Project。又今年も音楽ライブツアーを開催しています。」の方へ

お返事が遅くなってすみません。ライブ情報ありがとうございます。しかし……ふっふっふっ。既にチケットを入手しております。ライブのその日を楽しみに待つ予定です。



未分類0杯, ウタノコリ, 水戸華之介, 非日常

何て歌のうまい人なんだろう……と今更ながら惚れ惚れした。こじんまりとした温かい色合いのホール。もぎりのおじさんにチケットを渡したとき、「いらっしゃいませ」と上品に半券を返してくれたのが妙に嬉しかった。流れ作業のように半券をもいでいくライブハウスのスピード感もわくわくして高揚するが、この落ち着いた空気も心地良い。そして逸る気持ちを抑えながら、駆け出したい心を制しつつ階段を下りて会場に入る。並べられた赤い椅子はゆったりと配置されていて窮屈さを感じさせない。そして約一時間、空間に流れるボブ・ディランの音楽をそれと知らずに聴きながら、己はうつらうつらしていたのであった。最近どうにも慌しく、とても体が疲れていたので。

そうして始まったアコースティックライブ。ボーカル、ギター、キーボードの三人の編成。己は前から四列目の端に座り、ステージ全体を眺めながら空間全体に響き渡る水戸さんの声に聴き惚れていた。シンプルな編成だからこそ、より一層際立つ水戸さんの歌唱力。広々とした声の豊かさ。気持ちよくその声を全身に浴びながら背もたれに体重をかける安心感。それでいて、シンプルながらも決して物足りなくない音の重厚感。幸せだなぁ、と思った。

そんな、この日のセットリストは下記の通りである。


地図
カナリア

ぶち抜けBaby!!
人間ワッショイ!
ムードは最低

光あれ
大事な人よ
ふたりは

あるがまま
銀の腕時計
ホテルカリフォルニア

奈々
ヴィヲロン
知らない曲(「アモーレ」という言葉が出てきた。イタリアっぽい。カバー?)
天井裏から愛をこめて
でくのぼう
センチメンタルストリート

~アンコール~
知らない曲(インストゥルメンタル。)
雑草ワンダーランド
素晴らしい僕ら

~ダブルアンコール~
袋小路で会いましょう


「ヴィヲロン」の位置にやや自信を持てないが、だいたいこのあたりで間違いないはずである。本編は「地図」で始まり「センチメンタルストリート」で終わったのが印象的だった。一日一日を消費しつつ、地図という名の夢を掴むためひた走る男の歌と、青春の中で挫折を味わい続け、夢を諦めることを考えながらも、何とか前に進もうとする男の歌。前者は力強く勇気付けられ、後者は切なくも願いたくなる。この「センチメンタルストリート」を聴いて、また本編の一曲目に戻りたいと思った。そして自然と、アンコールの手拍子をしながらも、一曲目から順々に反芻したのである。

タイトル通り、アンジーの曲から最新アルバムまで楽しめるアコースティックライブ。アンジーのレア曲では「ムードは最低」が歌われた。セットリストを作るにあたり自分の曲目を見直したところ発掘した曲だそうで、水戸さん自身も忘れかけていたそうである。冒頭の「ムードは最低!」まではわかるにしても、それからどのように繋がるか思い出せなかったそうだ。

「光あれ」は水戸さん押しの一曲で、人生に絶望した男が神に祈ったら、異常に明るい神が下りてきてしまってホンジャラマカホイホイ、な楽しい曲。この一曲の中でのテンションの変わりっぷりはいつ聴いてもすごい。

今回の目玉の一つは「ふたりは」。演歌歌手が握手をしながら客席を回る姿を見て作ったため、ライブでの客席めぐりありきの曲とのことである。ただ、水戸さんが客席を練り歩きながら歌い、手を握ったり顎を持ち上げたりとサービス全開のパフォーマンスを行うため客がそっちに集中してしまい、「曲の良さ」が伝わっていないのではないか? ということで今回だけはパフォーマンスなし、ステージから離れず歌に徹したとのことである。

これがすごかった。「ふたりは」と言えば、あのパフォーマンスがある曲、という印象が強かっただけに、ステージにどっしりと構え、朗々と響く歌声を聴かせてくれる水戸さん。十一回目の不死鳥で、水戸さんとオーケンが「ふたりは」のバラードを歌ったときも、客席めぐりがなかった。そこで「あ、これこういう曲だったんだ」と気付いたことがあったのだが、今日このとき。この曲が本来持っていた魅力を知ったのだった。

そして「ふたりは」以上に圧倒されたのが「ホテルカリフォルニア」。この曲は今までのライブでも一回か二回聴いたことがある。しかし聴いたことがあるだけで、歌詞を把握しているわけではない。だが、歌詞がスッと頭の中に入ってきて、物語が胸に浸透する。水戸さんの歌の言葉の聞き取りやすさに感服すると共に、歌による説得力と声に精神を揺さぶられる。この曲が終わってから、ずっと後ろの席の人が泣き続けていた。

会場全体がしょんぼりした空気に包まれてしまい、水戸さんもそこまでするつもりはなかったと言いつつ、長めのトークで盛り上げて「奈々」へ! 大好きな「奈々」! 楽しかったーー!! この「奈々」の中では客いじりも。皆で「なーななーななななーなー♪」とヴィジュアル系バンドのファンの如く手扇することを求められ、精一杯それをやる! 楽しかった。

「ヴィヲロン」は途中で別の曲になったのだが、何の曲だかわからなかった……。何かのカバーのような気はするのだが……。

「ヴィヲロン」の次、だったかな? これも知らない一曲で、何となく何かのカバーのような気がしたが、違うかもしれない。イタリアっぽい曲で、「アモーレ」などの単語が入った陽気な曲。ここで! 「ふたりは」でなかった客席めぐり! が!

てをにぎってもらえてとてもうれしかったです。

「ティー・アモ」だったかな? 何かを英語で言うと「アイラブユー!」という流れで「天井裏から愛をこめて」に! 久しぶりに聴いた気がするなぁ。この当たり前のように客席が盛り上がる感じ、とても楽しい!

「でくのぼう」「センチメンタルストリート」と盛り上がって終わり、アンコール一曲目はインストゥルメンタル。「名曲!」と紹介されていたものの、どの曲かわからなかった……! カバーだったのかもしれないが、そうじゃないかもしれない。何て言うかな。「大槻ケンヂと切望少女達」の「きまぐれあくびちゃん」冒頭の「デッデッデッデッデッデッデデデッ」という重い音、それが思い出された。

ダブルアンコールは「良い曲で」ということで「袋小路で会いましょう」。客席を練り歩き、歌いながらオーディエンスとタッチをしつつ、水戸さんは後ろのドアーを出て退場する。その後も曲は続き、ギターの澄ちゃんが締めるという珍しい演出。MC以外の場面で、彼がこんなに語っているのを見るのは初めてだった。

そして改めて感じさせられるのが澄ちゃんの声の美しさ。アコースティックで際立つ水戸さんとのコーラスの味わい。好きだなぁ。

水戸さんはボブ・ディランに思い入れがあるそうで、このツアーの中でもノーベル賞を受賞したボブ・ディランに対する祝福の意を込めて歌っていた、と冗談交じりで語っていた。よって開場から開演までボブ・ディランの曲を流したとのこと。先に書いた通り、己はそのときうつらうつらしていたためほとんど耳に残っていなかったが、自分が憧れている水戸さんにも、憧れている人がいる、と思うと急に近しい存在に感じられ、何だかとても嬉しかった。

気持ちよく帰路に着く。雑踏の中を歩きながらも満ち足りていた。



未分類2杯, 町田康, 非日常

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ライブに通い出してから十年経つが、開演前から最前列の柵を握れたのは今日が初めてのことである。視界を遮るものが何もない爽快感と、この先の演奏への期待感。柵にわずかに体重をかけながら、ひたすら開始の時を待つ。

ステージとの距離を目で測る。こんなに近くで観られるんだ、と思うたびに嬉しかった。

オープニング・アクトは「砂漠、爆発」。ステージの後ろに張られた白い布をスクリーンの代用とし、サイケデリックな映像をバックにアジアンテイストの布を被ったボーカルが迫力ある声で歌い踊る。編成はボーカル・ドラム・ギターの三人で、MCによると楽曲にはインドのテイストが入っているらしい。ボーカルはキャップを前後ろに被り、サングラスをかけ、肩にはタトゥー、胸には大きくNIKEと書かれたシャツ、そしてだぼっとしたハーフパンツの下にはレギンスを穿いていて、タトゥーとサングラスを除けば朝や夕方に見かけるジョギングをしている人の格好のようだった。そして運動しやすい出で立ちを充分に生かした熱量溢れるパフォーマンス! バスドラの上に立って煽り出したときは度肝を抜かれつつ興奮してしまった。未だかつてあの上に乗りあがった人など見たことがなかったのだ。

一曲目が終わり、二曲目に入る前にマシントラブルが発生。ドラマーが奮闘する中、ボーカルとギターが話を繋ぐ。その中で観客に気を遣ったのか町田康を話題に出していたのが面白かった。

無事マシントラブルも解決し、大いに盛り上がって「砂漠、爆発」の演奏は終了。メンバーはステージから一旦去ったものの、スタッフと共にすぐにステージに現れて機材を片付け始めた。そうして片付いた後は次のバンドの機材の設置が始まる。バンドメンバーと思われる人物が続々とステージに登場し、あっちやらこっちやらで作業を進める。その様子をぼーっと眺めていたら、実にさらっと、ナチュラルに町田康も入ってきて、メンバーと一緒に演奏の準備を始めたから驚いた。おおー。すっごく普通に入ってきた!

準備が終わると町田康はステージ中央の椅子に腰掛け、まだ準備の終わらないバンドメンバーの様子を見ながらゆるーく存在していた。目と鼻の先、たった二メートルの距離に町田康。その町田康がまるで百貨店のエスカレーター脇に設置されたベンチに腰掛けるようなムードで無造作に存在している。ステージは下手からキーボード、ベース、ドラム、ギター、サックス。そして中央に椅子に座った町田康。

ついに準備は整い、演奏へ。町田康はジャケットを脱ぎ、Tシャツ姿になった。先ほど町田康が座っていた椅子の上には歌詞が書かれているであろう紙の束。演奏はムーディーなジャズを思わせるもので大人っぽい雰囲気である、ちなみに「思わせるもの」と書いたのは己がジャズをよく知らないためだ。

ライブはアップテンポの曲もありつつ、全体的にゆったりとした曲調のものが多かったが、では激しくないかと言えばそうでもない。随所で町田康独特の、あの震えるような叫び声が響き、ぎゅーっとつぶられた瞼には熱量が圧縮されている。去年ライブを観たときも、彼はぎゅーっと目をつぶりながら歌っていた。いったいいつから目をつぶるようになったのだろう。

多くが新曲だったのでどれが何の曲なのかほとんどわからなかったのだが、町田康の公式サイトに掲載されている歌詞を見る限り、今日演奏された新曲は「かくして私の国家は滅んだ」「白線の内側に下がってお祈りください」「試される愛」「いろちがい」「急に雨が降ってくる」である。「かくして私の国家は滅んだ」「白線の内側に下がってお祈りください」が特に格好良かったのを記憶している。ちなみに発売時期こそ明確ではないものの、CD制作への意欲はあるようだ。わあ! 楽しみである。

今回のライブはほとんどが新曲ということもあったのだが、曲の構成として「どこで終わるのか」がわかりづらいのが印象的だった。今の曲が終わって次の曲に移ったものかと思いきや、一曲の中で雰囲気がガラリと変わっただけで、元の調べに戻ったときにようやく「あ、これさっきの曲がまだ続いていたのか!」と気付くのである。その振り回される感じも愉快であった。

MCでは歌詞についての話も。現代のJポップやラップは、日本語で歌いながら、いかに日本語っぽく聴こえないようにするかに注力されているという話から始まり、詩歌について考えるとなると現代だけでは足りず、昭和歌謡やフォークについても考える必要が生じる、という話から浅川マキや憂歌団が好きでよく聴いていたこと、そして考えるだけではわからず、実践をしてみなくてはならない、という流れで憂歌団の「嫌んなった」がカバーされた。

このとき、ぼそぼそっとした喋りのままMCから曲への境目なしにそのまま演奏が開始され、気付いたら知らない世界に突っ込まれたかのような唐突を味わい、息を呑んだ。この曲中、「嫌んなった」のときだけ町田康はギターを抱えて演奏していた。途中、ストラップが外れてギターが落ちそうになり、演奏が中断されるアクシデントもあったがご愛嬌である。このふらっとした何気なさで空気を変える威力と茶目っ気のギャップがキュートだ。

こうして新曲をたくさん聴ける喜びに浸りつつも、知っている曲を演奏してもらうとやはりそれはそれで盛り上がる。特に「犬とチャーハンのすきま」収録の「俺はいい人」。「犬とチャーハンのすきま」が大好きなだけでにたまらなく嬉しかった。あともう一曲は「つるつるの壷」で、確かアンコールだったかな。この爆発力たるや凄まじかった。

「汝、我が民に非ズ」は長い助走期間を経てようやく本格的な活動を開始したとのことで、また二月にライブをやる予定らしい。嬉しいなぁ。あと願わくはCDも。今日聴いた曲を反芻できる日を心待ちにしながら日々を過ごそう。可能であれば、少しでも早く聴きたいものだ。もう一度。