未分類4杯, 筋肉少女帯, 非日常

今日は豪華な一日だった。昼には筋肉少女帯のインストアイベントに行ってトークを楽しみ、夜にはオーケンのサイン会に行って短いながらも至福の一時を過ごした。勤労感謝の日は筋少感謝の日に改めても良いのではなかろうか、と勝手に思う。

インストアイベントの開場はタワーレコード新宿店。番号が後ろの方だったためステージのメンバーを直接観ることはなかなか難しかったが、モニターのおかげで充分に楽しむことが出来た。

イベントが始まり、ステージにメンバーが登場。並び順はライブと同じで向かって左からおいちゃん、オーケン、うっちー、ふーみん。会場にはアルバム「再結成10周年パーフェクトベスト+2」が流れていたが、オーケンの「筋肉少女帯うるさいから止めてくださ~い」という声により止められた。BGMに負けてトークが聞こえなくことへの配慮とはいえ、バンド本人が「うるさい」と言うのはなかなか面白い。

イベントの開始時刻が正午だったため、ミュージシャンにとっては朝のようなもの、普段だったら寝ている、早くからようこそおいでくださいました、とご挨拶。オーケンは三十分前には到着していたが、内田さんは開始直前ギリギリに到着したという。ちなみにオーケン、早めに来たもののお腹が空いたため、近くの飲食店で食事を摂ったのだが、衣服と「イスラエルの護身術」にまつわる本が入った袋を失くしそうになったとのことである。そこで「護身術の本を買ったのに護身が出来ていない」とツッコミを入れられていた。

最初のトークは再結成十周年について。十周年を迎えた感想をメンバー一人一人に求めるオーケン。「あっという間だった」と答えるおいちゃんの後、「光陰矢の如し」とオーケンは答え、「あっという間を言い換えただけじゃないか」と橘高さんから鋭いツッコミが飛ぶ。

では、印象に残った話ではなく、特筆するでもないことを上げましょう、とかえって難しい話題にシフト。そこで橘高さんが「あった!」と声を挙げ、四年前の十二月二十三日のライブは定刻きっかりで始まったことを語った。それに対しオーケンは「筋少はわりと時間通りだよね」と話す。ちなみにそのときのライブは定刻通りを越えて二分早く出そうになったそうだ。ただ、押す分にはいくら押しても問題ないが、チケットに開演時間が印字されている手前早く始まるのは問題らしく、二分待ってから出たそうだ。

ここから、でも早く始まる方がお客さんもびっくりするよね、ロックだよねという話に。開場して入場したら既に最後の一曲が終わるところはどうだろう、長谷川さんがドジャーンって締めて、エディは既にステージからいなくなっている、オーケンもいつも早めにはけるからステージにはいなくて、ちょうどおいちゃんうっちーふーみんがいつまでもステージに残ってわちゃわちゃしているところ! あなた達いっつも遅くまで残っているけど何をしているの? と熱く語るオーケン。開場前、皆観てなくてももちろんフルで演奏しているからね! とふーみん。で、音だけライブハウスからちょっと漏れ聴こえているの、とおいちゃん。

また、曲の一部だけ演奏するのはどうだろう、ギターソロの直後で終わるとか、とオーケン。それに対し「ギターソロの前で終わるのは?」と橘高さんが言うと、会場から「えーーーー」と声が上がり、「あなたがそれ言っちゃだめでしょ!」とオーケン、「皆を試したんだよ!」と笑う橘高さん。おいちゃんが「全部メドレーにするのはどうだろう」と繋ぎ「それは……大変だ……」と誰かが口にした。

お客さんにも新しいことをして欲しい、ダメジャンプのとき、両腕でバッテンを作ったあと、くるっと回って飛んで欲しいとオーケンから無茶振りという名のリクエストが。でも、それで退場するはめになる人が出てきたら悲しいね、とも。あと、折りたたみで前のめりになってからそのまま勢いに乗って一回転して欲しいというリクエストも出た。

折りたたみでは橘高さんが熱く語っていた。曰く、筋少やその世代のバンドのオーディエンスは、折りたたみのときに体を反る方に命を賭けるが、筋少よりも若い世代のバンドのオーディエンスは前傾姿勢になる方に命を賭けており、よって最前列の客などは、本当に前転しそうになるほど前のめりになるという。そうなのか、知らなかった。

さらにそこに、前回りじゃなくて逆上がりをして欲しいと内田さんがリクエストをし、「柵どうするの!?」「バーをすごく高くしないといけないよ!?」とオーケンとふーみんからつっこまれていた。

折りたたみトークでさらにノリノリになる橘高さん。もし自分がカツラだったら、折りたたみでぐんぐんやってるときに思いっきりカツラを飛ばしてびっくりさせたい! もし自分がカツラを必要とする事態になったら、メンバーにも二年くらい内緒にしていきなりカツラを飛ばして、あたかもカツラが飛んだことに気付いていないフリをしたい! と語り、「えっこれどう反応すれば良いの?」とばかりに他のメンバーがたじろいでいるのが面白かった。その後橘高さんは「これは地毛だけどな!」と念のため強調していた。

カツラじゃないけど、眼鏡を落とした人いる? とオーケンが問いかけ、筋少椅子のライブでわじーが眼鏡を落とした話を橘高さんが披露。わじーが眼鏡を落としたのはちょうどギターソロに入る手前だったが、眼鏡を拾ってかけ直すまでの時間も問題なく繋がり、このあたりは流石熟練のバンドだね、と語られた。

ここからライブ中のアクシデントの話題に。十年間でアクシデントってあった? とオーケンが問いかける。メンバーはうーんと考えるがこれといったものが出てこないあたり、何かしらのアクシデントはあっても問題なく対処できたようだ。そんな中、オーディエンスから「マイクを落とした!」という指摘が入り、いつかのライブで「小さな恋のメロディ」の最後の最後、「きっと地獄なんだわーーーーー!」と叫ぶところでオーケンがマイクを取り落としてしまったハプニングが振り返られた。橘高さんが「あれはわざとだったの?」と冗談めかして尋ね、「あれは成海璃子ちゃんも観に来てくれてたからそんなことしないよう」とオーケン。

内田さんがベースを落としたこともオーディエンスから指摘が入る。ストラップが切れたそうで、これはよくあることらしい。また、この流れで内田さんが床に転がっていた話も。ある日の名古屋のライブハウスは空調の故障か何かが原因でステージに酸素が供給されず、内田さんは酸素を求めて床に転がり、長谷川さんは酸欠で鼻からみるみるうちに真っ赤になり、橘高さんはそれを目撃し、おいちゃんは背後のエディに酸素を全部吸われしんどかったと冗談めかして語っていた。オーケンは呼吸が出来ないのに歌は歌えたことについて、「あれは死んでたのかもしれない」と言っていた。

アクシデントつながりで、オーディエンスに対し「救急車で運ばれた人いない?」「眼鏡割れた人いない?」「会場間違えた人ー!」という問いかけも。救急車で運ばれた人と眼鏡が割れた人はいなかったようだが、会場を間違えた人はいたようだ。ちなみにオーケンは今日、マネージャーと連絡が着かず、会場があやふやだったのだが、「たわー……」という曖昧な記憶を頼りに勘で来たら無事辿り着いたそうだ。辿り着いてくれて良かった。

何がきっかけが、ジャンプアニメの主題歌を担当したバンドの人が、知人のギターを勝手に売って逮捕された話に。「バンド界隈だとよくある話だよね」としみじみ語られ、おいちゃんの布袋モデルのギターがオーケンの家にあり、何かの写真にオーケンがそのギターを持っている姿が写っていたという。そしてせっかくならおいちゃんは布袋モデルのギターを持ってライブに出ようよ! とオーケン。ふーみんは高見沢さんの天使ギターを借りて! と振ると、橘高さんが「あれ持たせてもらったことあるけど重いんだよ!」と言っていた。

そしてオーケンうっちーふーみんは坂崎さん、桜井さん、高見沢さん、おいちゃんは布袋さんになってメリーアンを演奏しよう! とオーケン。おいちゃんが「何で布袋さんなの!」と笑い、「布袋さんもメリーアンをやりたかったかもしれない!」と笑いが起こる。また、オーケンは内田さんに「ちゃんとヒゲつけてね」とリクエスト。

じゃあ、筋少でやりたい曲ってある? とオーケン。やってない筋少の曲でも誰かのカバーでも、とメンバーに振り、自身は「S5040」をやりたいとオーケン。やりたいが、ライブにおいて司会進行の役割も持っているオーケンとしては、あれをライブのどのタイミングで入れたら良いかわからず、やりにくいらしい。

そんな中でアルバム再現ライブの話も。アルバム再現ライブをやってみたいが、あれはMCはどのタイミングで入れるのか? そもそも他のミュージシャンのアルバム再現ライブではMCはやるのか? ちなみに陽水さんはMCをやるらしい。

ももクロのアルバム再現ライブはすごいらしい。全身覆面の衣装のアルバムでは全身覆面でライブをやりきったそうだ。すごい。それはすごい。そこから「筋少も仮面を被ってライブをやったらどうか」という話になり、おいちゃんが「そしたら仮面少女になっちゃうよ」と言うと「我々は少女じゃないから仮面おじさんだよ」とまさかの返し。その流れで「けっこう仮面」はどうか、キューティーハニーよろしくキューティー筋肉少女帯はどうか、キチガイ筋肉少女帯はどうか、などなかなかひどい話になり面白かった。

全裸だの女装だのの話で盛り上がる中、おいちゃんが「そもそも俺スカート履いてたよ」と有頂天時代の話を語りだす。スカートを履き、カーラーをつけてライブでお好み焼きを焼いていたそうだ。そして当時有頂天のPAだった人が後に筋少のPAになり、おいちゃんはずっとその人にライブでお好み焼きを焼いていた件について触れられていたらしい。「あたかも常にお好み焼きを焼いていたかのように言われていた」。

ここでおいちゃん、お好み焼きを焼いていた会場が「渋谷屋根裏」だったのに「渋谷公会堂」と言い間違え、メンバーに「渋谷公会堂で!?」と仰天されていた。

バンドは最終的には一つの印象になっていく、ミック・ジャガーも「サティスファクション」を語られるように、筋少はこのままだとカレー、間違ってボヨヨンロックの印象になってしまう、とオーケン。じゃあカレーボヨヨンではなく、「S5040」を、「ワダチ」を代表曲にしよう! かつてとある雑誌で、ハガキが集まった投稿者にはコーナーがもらえる企画があった、内田はオーケンのためにハガキを百枚書いてくれた、その内田のように! 皆で有線にS5040をリクエストしよう! 

「そしてパチンコ屋でS5040が流れてびょんびょん言うんだね」「今もパチンコ屋で有線って流れているのかなぁ」

最後の締めくくりでは、「今日のイベントの印象を一つにまとめると、おいちゃんが渋谷屋根裏と渋谷公会堂を間違えたことだね」とオーケン、笑うおいちゃん。週末のライブはリキッドルームじゃないですよ~六本木だよ~間違えないでね、と周知され、イベントは終わった。約四十分のほほんとした愉快なトークが聴けて実に楽しかった。

そして夕方はオーケンのサイン会。新宿から神保町に移動し、ドキドキしながら列に並んで何を話そうか考えて、ついに自分の番。「こんにちは」と挨拶をすると穏やかに「こんにちは」と返してくれるオーケン。どぎまぎしながら手紙を渡し、用意していた言葉を述べると! 会話が! 会話が出来た! オーケンが質問を返してくれて、じっくりゆっくり話が出来た! 今まで緊張してなかなか上手く会話を運べず、気を遣ったオーケンが話しかけてくれることが多かった中で、まともに会話を……会話を出来た……。嬉しくて死にそうになった。

帰りの電車の中では体温が急上昇していた。頭がくらくらした。楽しかった。嬉しかった。贅沢すぎる一日だった。まさに筋少感謝の日。ありがたい。ありがたい。




未分類4杯, 平沢進, 非日常

161117_1744

平沢進のファンクラブ限定イベント「景観する循環カフェ」に参加した。場所は吉祥寺のスターパインズカフェ。ステージ前に椅子が敷き詰められ、二階席からはステージを見下ろせる構造になっている、と、冷静に書き出そうとしているものの既に脳が爆発しているので指の動きもままならない。

平沢進のファンクラブに入会して六、七年経つが、これまでファンクラブ限定イベントが開催されたことはなかった。故に開催が発表されたときは大いに驚き、ファンクラブ限定の空間で平沢がどのように振舞ってくれるか興味深く思ったものだ。そして迷わず申込みをし、運よく当選し、運よく素敵な整理番号が割り振られ、運よく最前列で平沢進の姿を拝むことができた。

目と鼻の先。たった一メートルの距離に平沢進が存在していた。実在していた。
そうして、こぼれる笑顔を隠すことなく、柔らかな空気でトークをしてくれるのである。

よって己の脳は爆発したのである。幸福だった。

イベントは二部構成になっており、前半では事前に募集していたファンからの質問に答える形でトークが繰り広げられ、休憩を挟み、後半でライブ。楽器や声による音をその場で録音して再生し、次第次第に音を重ねていき、即興の多重録音にボーカルを乗せて歌う姿はミュージシャンの演奏というよりも、職人技を見せ付けられる見事さがあった。曲は「ロタティオン」「電光浴」「CHEVRON」の三曲で、最後の「CHEVRON」ではオーディエンスの声を録音し、楽曲の一部に取り込む催しも。平沢が「さん、はい!」と小声でタイミングを示し、「うーうっ」と会場全体で声をそろえること繰り返すこと数回。集ったファンの声は一つの音と化し、音楽の一部となって会場内をぐるぐる旋回し、さらにその上に平沢の声が重ねられたのであった。

「景観する循環カフェ」の名にふさわしく、演奏された三曲とも「循環」がテーマなこともにくい。上手に声を出せたことを平沢にお褒めいただき、電源を切れば消える多重録音はその空間でのみ旋回したのであった。

第一部と第二部では空気が全く違うのも印象的だ。第一部では眼鏡をかけ、事前に募集したリスナーからの質問が書かれた紙を見つつ、横に座る司会の女性が読み上げる質問に答えながら朗らかに話してくれた。しかし第二部が始まるや一変、眼鏡を外し、照明が落とされたステージで機材に囲まれながらギターを抱くその表情は、まるで弓を引き狙いを定め今にも矢を放つ寸前のよう。張り詰めた空気が漂い、自然と開場もその渦に呑まれたのであった。

かと思えば最後の最後。アンコールを要求されて却下した平沢が、代わりにとプレゼントお渡し会をやってくれたが、その方法がすごい。プレゼントのオリジナルピックについての説明を語った後、「間接的手渡しをする」と宣言した平沢。何が起こるんだとステージを見つめているとスタッフがわらわらと集まってきて流しそうめんのような装置が組み立てられた。

客席に放流するように設置された四本の樋。そして放流する側に立つ平沢。間接的手渡しとはそういうことか! と納得しつつ、このためにわざわざこんなものを作ってしまう平沢に感服しつつ、平沢によって放流されたピックを「ありがとうございます!」と言いながら受け取ったのだった。この光景、二階席から見たらさぞかし異様だったことだろう。こういうちょっと捻じ曲がったファンサービスが愛おしい。

トークでは、アウトテイクは公開するつもりがないからどんどん削除するという話が面白かった。本人はどんどん削除したいので現在はどんどん削除しているが、過去の楽曲は原盤権などの問題で、レコード会社から勝手にアウトテイクをくっつけたCDを販売されることもあり、そういうのは好ましくないそうだ。しかしスタッフから宮沢賢治の全集をプレゼントされたとき、全集の中にあった宮沢賢治のメモや草稿を見て「これが見たかった」と大喜びした話が司会者から明かされる。「私は見たかったけど、宮沢賢治も嫌だったと思いますよ」と笑っていた。

あと使わなくなったアミーガを処分しようとしてスタッフに止められたり、止められるのが分かっているから事後承諾の形でことを進めようとする話もこの流れで語られた。ちなみに過去にPV集を作って販売する話も上がってはいたが、権利問題がややこしく立ち消えになった話も。……PV集……欲しかったな……。

平沢がツイートした造語への質問に対して、「皆よく覚えているね」「みんんさって何のことかと思った」と自分のツイートを覚えていない発言も。そりゃあそうだろうと思いつつ、大勢から「みんんさ」とリプライをもらって首を傾げる平沢を想像すると微笑ましい。

己が投稿した質問も採用された。脳が爆発した。平沢が質問を読み、考えて、答えてくれたこの事実! 間接的にピックをプレゼントしてくれたり、間接的に質問に答えてくれたり、あまりにも贅沢すぎるイベントである。嬉しかった。ありがたかった。今日は良い夢が見られそうである。至福。

161117_1744



日記録4杯, 日常

2016年9月29日(木) 緑茶カウント:4杯

収入の半分以上を外食に費やし毎週毎週下駄を新調、家事も仕事も勉強もせずひたすら浪費をし、金が足りなくなったら贅沢のために借金までせがみ望みが叶えられなければ泣き出す女とそれを止められない男が「大きいベビちゃん」「可愛いパパさん」と言い合いながら垢染みた衣服が散乱し悪臭がこもる部屋でイチャイチャする地獄を見せ付けられている。

谷崎潤一郎の「痴人の愛」を半分まで読みながら、何て下品な女性の描写が達者なのだろうか、と己は圧倒されていた。「下品」という言葉はそれを発するだけで自らの品性も貶められるパワーがあるので積極的に使いたくはないのだが、「品が無い」では正しく形容できないのである。彼女においては「下品」と言い切るしかない、そんな強烈さ。大して本を読んでいる方ではないとはいえ、ここまでの存在に出会ったのは初めてだ。

読み進めれば進めるほどナオミちゃんの横暴さと下品さにほとほと嫌気が差してきて、この娘の言葉を読むだけで嫌な気持ちになり、関わり合いたくないものだとつくづく思いながら読んでしまう。愉快かと言えば愉快ではない。むしろ不快である。しかしページをめくってしまう。それは面白いと愉快はイコールではなく、つまらないと不快もイコールではないためだ。あぁ、早く読み終わりたいような、解放されたいような、先が知りたいような知りたくないような。苛まれながら楽しんでいる。

この主人公も最初の頃は下心のない光源氏のようだったのに、と思うと虚しさまで募ってくる。地獄である。つらい。



未分類4杯, 筋肉少女帯人間椅子, 非日常

オーケンが「ボヨヨォオオーーーーーーーーーーン!!!!」とシャウトしたとき、己は胸の前で両手の指を交互に組んで、祈るような気持ちでいた。

まさかこの「ボヨヨン」という叫びを聞いてここまで感動する日が来ようとは、誰が思っていただろう。
でも、とにかく嬉しかったんだ。

「私事ですが」と前置きしていた通り、オーケンは五月に声帯ポリープ除去手術を受けている。そしてリハビリを経て、ロックの舞台に戻ってきた。たかだか三ヶ月だが、ずっと待ち望んでいたその声。思い出すのは先日の弾き語りライブで若干、辛そうに歌っていたこと。きっと大丈夫、時間をかけてゆっくり治してもらえれば、と思いつつ。思いつつも。

良かったなぁ。

見所がたくさんある公演だった。人間椅子の重厚な演奏、迫力のグリグリメガネ、いつまでも新鮮な日本印度化計画、ブラックサ・サバスにKISSのカバーに、長谷川さんのドラムがおどろおどろしいりんごの泪に地獄のアロハ、豪華絢爛な釈迦。全力で楽しんでいる大人達の素敵な姿に憧れ、自らもそうありたいと思い、この暗闇の中にある確かな居場所に感謝しつつ、しかし、やはり一番、今回心に残ったのはオーケンの声だった。

座席の都合でステージは遠く、メンバーの表情は読み取れない。それでも必死で目で追って、音を聴き、こうしてまた筋肉少女帯を歌うオーケンを観られることを喜びつつ、まだどこかしんどそうな場面もあって、心が苦しくなりつつも、待とう、と思った。

筋肉少女帯のセットリストは「イワンのばか」「カーネーション・リインカネーション」「日本印度化計画」「週替わりの奇跡の神話」「ワインライダー・フォーエバー」「踊るダメ人間」「サンフランシスコ」。何度も何度も繰り返し聴いた定番曲の安定感が嬉しかった。そしてしっくりくるその歌声に、ただしみじみと幸福を感じたのだった。

ありがとうオーケン。お帰りなさいオーケン。あなたの声が聴けて、とにかく嬉しい。



未分類4杯, 水戸華之介&3-10Chain, 非日常

160730_1813

アルバム「人間ワッショイ!」の発売記念ツアーのファイナルであり、久しぶりの3-10Chainのワンマンライブ。チケットの整理番号がかなり良い方だったので、二列目あたりに立つことが出来た。終盤に差し掛かるにつれ盛り上がった水戸さんが柵に足をかけ身を乗り出すたびに、歌う水戸さんの奥歯まで見えて距離の近さに非常に興奮した。この日は水戸さんに向けて振り上げた拳を水戸さんの拳でガツンとぶつけてもらうこともできたので、もう、たまらなかった。嬉しかった。

オープニングでは不死鳥でも流れた例の萌え萌えボイスが流され、可愛らしい声で「さもなきゃくたばっちまえ!」と叫ばれるや否やメンバーが登場! 水戸さんは右手のおもちゃの銃でシャボン玉を撒き散らし、日の丸が描かれた扇子を左手で振って拍子を取る。そうして沸き起こる歓声の中始まった第一曲目が「Lesson」! アンジーの曲から始まり、二曲目が新譜の表題曲「人間ワッショイ!」で、三曲目が前作の収録曲「ぶっぽうそう」という流れであった。

セットリストはこのような感じである。ただし多少曲の順番が間違っているかもしれない。


Lesson
人間ワッショイ!
ぶっぽうそう

魂に訊け
この汗を笑うんじゃねえ
壷から抜け出せ

光あれ
泥の河
風天 Rollin’ (feat.山頭火)

心臓の囚人

雑草ワンダーランド
ジュージュー
前しかないだろ
あるがまま

ミミズからメドレー
~恋のメロディ
~愛の賛歌
~シャ・ラ・ラ
~ミミズ

ジョニーは鼻毛がヒッピースタイル
素晴らしい僕ら

~アンコール~

できそこなった
マグマの人よ

~ダブルアンコール~

アストロボーイ・アストロガール


新譜「人間ワッショイ!」を中心に前作の「楽観 Roll Show!!!」が多めのセットリストである。合間合間に「人間ワッショイ!(reprise-1,2,3)」が挟み込まれ、どんどんヒートアップしていくのが非常に楽しい。ワッショイワッショイ叫びながら拳を振り上げ全力を出し切ったので、暗い地下にいるにも関わらず夏祭りを満喫した気分になった。

最初のMCでは夏の話が語られた。水戸さん曰く、夏が好きで夏の曲も少なくないが、自分が好きなのは「思い出の中の夏」であって実際の夏ではない。インタビューなどで夏が好きかと聞かれることがあるが、好き嫌いではなく体力的にきついとのこと。ただ、年々一年が早くなっていっているので、もう何年か経ったら「そろそろ扇風機出そうかな」と思ったときには夏が終わっているかもしれないと話していた。ちなみに「思い出の中の夏」が好きなのは、思い出は思いでなので暑くないためだそうである。

「魂に訊け」「この汗を笑うんじゃねえ」はストレートに格好良かった。「壷から抜け出せ」を歌い終わった後には、この曲は長いことしっくり来ていなかったと水戸さんが語った。「壷から抜け出せーあーあー」と低い声で歌って終わってしまうのでいまいち盛り上がりに欠けるように感じられ、セットリストから外れて行ったと言う。しかし若い頃は激しい曲か静かな曲、どちらかに極端な方が盛り上がりやすかったが、今はお客さんも激しさばかりを求めていないことがわかるのでこういう曲も出番ができるそうである。

「光あれ」からゲストの扇さんが参加。ここの曲に入る前のMCではポケモンGOの話で盛り上がった。今日のライブ前に扇さんがコンビニの近くでポケモンを捕まえようとしている姿を澄ちゃんに発見されてしまったとのことで、扇さんが非常に恥ずかしそうにしていた。

それを受けて水戸さんが、ポケモンGOは「何となくやっている」体を装えない、知らない人しかいないところでポケモンを捕まえていても恥ずかしくないが、街中で必死にポケモンを捕まえようとしている姿を知人に発見されたらすごく恥ずかしい、とスマートフォンを操作する仕草をしながら語る。明言はしていなかったが、水戸さんもどうやらポケモンGOをプレイしているようで、内田さんと車に乗っているときに窓の外に時速六十キロで去り行くポケモンの姿を見つけ、「あー!」と叫んでしまったことがあるそうだ。

そして長々とポケモンGOトークで盛り上がった後に、「光あれ」へ。「人間ワッショイ!」の公式の推し曲は「この汗を笑うんじゃねえ」で、MVもそれで作っているのだが、水戸さんの公式の推し曲は「光あれ」とのこと。しかし会議か何かで「光あれ」を推してもスルーされてしまったらしい。

ちなみにこの「光あれ」についてはこんな話も。「光あれ」と口にするのは本来は神様のはずなのに、この曲では救いを求めている人間が「光あれ」と言うと神様がやってくる構造になっていて、録音した後に気付いてしまったとのこと。確かに。でも己はここに違和感はなかったなぁ。これだけおちゃらけた雰囲気の神様ならかるーく呼んで出てきてくれそうな感じがする。その軽さが良いよね。

「泥の河」は盛り上がるバラードを作りたいという思いから生まれた曲とのこと。盛り上がるタイミングは自分で判断してくださいと言われたので、自分で考えて拳を振り上げた。この曲で激しくベースを弾き鳴らす内田さんが格好良かったなぁ。

今回のゲスト扇さんの一番の見せ場が「風天 Rollin’ (feat.山頭火)」である。水戸さん曰く、この曲のために扇さんを呼んだと言っても過言ではないとのことで、その言葉に違わず非常に格好良かった! 「分け入っても分け入っても!」のコーラスの力強さと美しさ! これを生で聴けて良かった。

「心臓の囚人」でしっとりした後、内田さんの家の話へ。植物が茂りまくっていることで知られる内田さんの家だが、夏はさらに植物が勢いを増し、森のようになっていると言う。水戸さん曰く、ポケストップにならないのが不思議なほどすごいらしい。流石にこればかりは公開されることはなかろうが、一度その外観を見てみたいものだ……。

そして内田さん家の森の話から繋げて「雑草ワンダーランド」へ。この後立て続けに曲が続いた後の「ミミズ」のメドレーが最高に良かった! 「ミミズ」「恋のメロディ」「愛の賛歌」「シャ・ラ・ラ」と繋げて「ミミズ」に戻るこの贅沢! 特に「ミミズ」と「恋のメロディ」は大好きな曲なのでこうして聴けるのは本当にたまらない気持ちになる。格好良かった……!!

メドレーで盛り上がった直後、「ジョニーは鼻毛がヒッピースタイル」! 水戸さんも話していたがこの曲の威力は凄まじい。まるで十年も二十年も前からあった定番曲のような安定感と爆発力がある。これ、コミカルで楽しくて、切ないのが実に良いんだよなぁ。それでいて「生涯LOVE & PEACE」のキャッチーさ!

本編ラストは「素晴らしい僕ら」。実はこの日は己の三十歳の誕生日だった。よってこの曲に至る前も一人特別感を抱きながらライブを楽しんでいたのだが、「素晴らしい僕ら」は誕生日を迎えたその日に聴くとバースデーソングのように聴こえるなぁ、と感じた。それもとてつもなく生を祝福されているような。

嬉しかった。

アンコールは「できそこなった」「マグマの人よ」。そしてダブルアンコールの「アストロボーイ・アストロガール」で締め。終わるかと見せかけて、内田さんのベースが何度も何度もかき鳴らされて爆発を繰り返し、間に「ワッショイワッショイ!」を挟んで叫びに叫んで全力を出し切って終わった。祭りだった。夏祭りだった。ここは地下で、神輿もないが、確実に夏祭りだった。まだ八月に入る前だと言うのに夏を堪能しきってしまった。「人間ワッショイ!」「楽観 Roll Show!!!」の曲が多いだけに、全体的に明るく盛り上がる調子なのも祭りっぽさの由縁だろう。

あぁ、満喫した。楽しかった。