未分類0杯, のほほん学校, 筋肉少女帯, 非日常

最高に楽しかった。最初から最後までゲラッゲラ笑った。

台風の吹き荒れる中どうしたものかと思ったが、幸運にも己が外に出たときは雨風が弱まり、普段の雨の日と同じ調子で外に出ることができた。長靴を履いて水溜りも気にせずカポカポ歩く。電車も遅れることなく通常どおり運行し、何一つ不自由することなく目的地に着いた。

今回の会場「座・高円寺2」。一度来たことがあったおかげで、さらっと地図を見るだけで辿り着くことができた。己の席は真ん中寄りのそれなりに前の方で、うわあこんなに広々観られるなんて! と喜びを抱きつつやわらかな椅子に腰を下ろす。十二分に近い。嬉しい。

開演まで、まずは今回のゲストの氣志團・綾小路翔にまつわる映像が流され、次にオーケンが参加しているROOTS66が手がけるエンディング「おそ松さん」の映像、そして新譜「Future!」のMV「エニグマ」が大きなスクリーンに映された。「おそ松さん」は音が先に流れ、映像がスクリーンに出るのが遅れたため、肝腎のオーケンの声が目立つ部分ではスクリーンが白紙だった。このゆるい感じがのほほん学校らしい。

会場が暗くなり、まずオーケン一人が登場。先日のタワレコでのインストアイベントと同じように、「香菜、頭をよくしてあげよう」を弾き語ってくれた。筋少の大ファンで音楽なしでは生きられない人間でありつつ、音楽の技巧については全く詳しくない人間なのだが、それでもオーケンのギターはたまに聴くと上達しているなぁ、すごいなぁ、と感じさせられる。愛あってのものだろう。

そして筋少メンバーが呼び込まれ、楽しいトークタイムに。皆、筋少のライブとは違うゆるっとした格好で、普段着とライブの中間をイメージさせる出で立ちだ。まずは高円寺フェスということで各々の高円寺の思い出や印象が語られる。大阪出身の橘高さんにとって高円寺は「日本らしさ」の象徴に近いイメージがあるらしく、怖い印象もあったそうだ。曰く、都会であれば渋谷もどこも大差ないが、高円寺にはその色が出ていると。故に中央線より南側にしか住んだことがないらしい。そこにオーケン、「そうだよ高円寺は怖いんだよ!」と色々なエピソードを披露してくれた。

ツイートできない危ない話を交えつつ爆笑トークは続く。昔々、インベーダーゲームの大きな筐体を購入したオーケンのために、おいちゃん達がその筐体を自転車に乗せて、えっちらおっちらオーケンの家に運んだことがあったそうだ。また、有頂天の芝居の練習をどこどこでしていたとおいちゃんが高円寺の思い出を語り、空手バカボンでは単純なコントをケラさんを差し置いてオーケンが書いていたが、ある日ケラさんが書いてきた台本があまりにもシュールだった話などが長々と語られ、こんなにケラさんの話ばっかりしてケラさん大好きかよ! と笑いが起こった。

今回せっかく筋少メンバーが揃ったので、とアコースティックで演奏されたのは「3歳の花嫁」と「サイコキラーズ・ラブ」。ケラさんの話題が出たのは「3歳の花嫁」の後だったかな? オーケンがこれを映画にしたいと語りだし、キャストは誰が良いかとメンバーに問う。困惑するメンバー。その中で演出はケラさんかな? と名前が上り、ケラさんだとシュールになっちゃうからなぁ、という話から有頂天や空バカの思い出になったのだ。

ちなみに「3歳の花嫁」での神父のセリフは今回内田さんが担当。橘高さんがちらっと内田さんを見て、セリフへと促している姿が印象的だった。この曲は本当に美しく、今日この場で聴けないかな聴きたいな、と期待していただけに嬉しい。

「サイコキラーズ・ラブ」は新譜発売前から披露されていただけに歌い慣れた印象があった。コーラスが重なっていく気持ちよさと、内田さんにより導かれるハンズクラップの美しさがたまらない。

盛り上がるトークの中、氣志團のボーカル・翔やんこと綾小路翔さんが拍手に迎えられ登場! 己はこの方をきちんと存じ上げないのだが、あえて翔やんと呼ばせていただこう。翔やんはこの日ハーフマラソンを終えてステージまで来てくれたそうで、脚が棒のようになっているそうだ。この雨の中ハーフマラソンを完走するとは……何て根性のある方なんだ……。

あえて言うと、己は氣志團についてほとんど知らない。ただ、筋少ファンであると同時に氣志團ファンである方は少なくないので、その方々の声により、真面目な好青年のイメージを抱いている。また、氣志團が開催するフェス「氣志團万博」のおもてなしは素晴らしく、ケータリングはどれも美味しいらしいことも聞いていた。故に良い人なんだろうなーという漠然としたイメージを抱いていた。

そしてこのステージに登場した翔やんのイメージといえば、当初のものと変わらない好青年そのものであった。

印象的だったのはハーフマラソンを走る中でのエピソード。翔やんは走り続ける中で、完走したもののずっと追い越され続けたという。そして走りながら走馬灯のように巡ったのは自分の過去。真面目で勉強ができたお子さんで、氣志團でデビューしてからはとんとん拍子に進み、早い段階から大きなステージに立つことが出来た。ところが近年、同じ時期にデビューしたバンドがようやく大きなステージに立てるようになったとき、そこにようやく至ったという熱意に敗北感を抱いたという。自分はこれから追い越される人生なのではないかと不安を抱いたそうだ。

その中で語られたのは、自分は千葉出身で東京をまるで敵のように、何が東京かという思いをエネルギーにしてきた。しかし今良い調子の人々は東京の育ちの良い人々で、それこそ「明日食べられるのか」と不安を抱いたことのないような、冷蔵庫を開ければ必ず食べ物が入っていて、一人暮らしをしていても仕送りをもらえるような、そんな安心の中で生きてきた人。そういった人と自分は違うとハーフマラソンを走る中で思ったと言う。

ハングリー精神を持つ地方出身者による東京を敵役としてみなす歌に対し、東京出身のうちださんが「しょうがないじゃん! 東京に住んでいるんだから、他にどこに行けばいいの?」と語ったエピソードも披露された。そんな中でオーケンは、東京のおぼっちゃんの僕と千葉出身の翔やんには他にない共通点がある、仮面ライダーに出演したことだ! と綺麗にまとめた。

ちなみにこの日、仮面ライダーの予告篇もスクリーンに出され、オーケンが仮面ライダーに出演するに至った経緯も語られた。芝居が出来ないことを自覚しているオーケンは断りに断り、「朝早くなんて起きられないですから」とまで言ったが、スタッフに「今はそんなこと全然ないですよ!」と押し切られたものの、撮影のため朝七時四十五分にダム集合、と指定され「ブラック企業か!」と突っ込みが入った。記念にと撮影されたオーケンの自撮りも公開されたが、見事にまぶたがむくんで眠そうだった。

最後オーケンと翔やんが二人で語るコーナーに入る前、筋少メンバーと翔やんが一対一で語る姿を見たいというオーケンによる無茶振りがあり、橘高さん、内田さん、おいちゃんの順でトークが行われた。橘高さんは翔やんの格好にシンパシーを感じる話で、それに対し翔やんは「中学生のときから見ているけど橘高さんは全然変わらない!」と褒めちぎった。

内田さんは「空手バカボンを聴いてくれてたんだね」と話を振り、内田さんの作ったソロの話へ移行しつつ、翔やんから「オーケンさんと内田さんはどこに引かれ合ったのか、どうして長く続いているのか」という質問が発せられる。オーケンと内田さんは「火事」「バッドマン」と答えるもさらに深堀りを要求され、二人して首を傾げるも答えは出ない。そこから翔やんのちょっと切ない話になり、オーケンが翔やんと橘高さんはバンドをファミリーと捉えるタイプ、うっちーとおいちゃんもそれに近い、僕は全然違う、死ぬときは別! と語った。

意外だったのがおいちゃんと翔やんで、SNSで繋がっていること、おいちゃんが韓国に行きたいなと思っていたところで翔やんが韓国に旅行に行ったエピソードが語られた。翔やんは今まで全く映画を観ず、スターウォーズも観たことがないほどだったが、映画を観ようと思い立ち、映画を観続ける中で韓国映画にはまったそうだ。それからおいちゃんと翔やんで韓国の話で盛り上がる盛り上がる。おいちゃんはこの日一番楽しそうで、笑顔がキラキラしていて眩かった。

メンバーが退場してからオーケンと翔やんで前述のハーフマラソンの話になり、最後に「オンリー・ユー」を二人で演奏して締め。ここに記した以外にもたくさんの面白トークがあり、特に氣志團万博運営の裏話、芸能人にオファーするうえでの難しさ、スポンサーとのいろいろな兼ね合いなど、聞き応えのある話が盛りだくさんだった。

帰り道は雨も弱まっていて平和そのもの。あぁ、楽しかったとニコニコしながら帰路に着いた。それにしても、あんなに成功していて、華やかに見える人でも大きな不安を抱えているのだなぁ。そうして当初、自分がイメージしていた以上に「こちら側」に近しい人のように感じる。だからこそ筋少ファンであると同時に氣志團ファンである人も多いのだろう、と思った。

意外なところに意外さを感じた一夜である。どっとはらい。



未分類8杯, インストアイベント, 筋肉少女帯, 非日常

「Future!」の発売記念インストアイベントがタワーレコード新宿店にて開催された。幸運なことに整理番号がかなり良く、前から二列目に立てたおかげで充分な視界を得ることが叶った。嬉しい。とても嬉しい。

今日はいつもの徳間のお姉さんではなく、男性のスタッフがイベント開始前の注意事項をアナウンスしていた。会場は人でいっぱいで、少しずつ前に詰めるように促される。時間は二十一時。さぁ、もう間もなくだ。

そして拍手に呼び込まれ、ふらりとステージに現れたのがオーケンだ。もう何度もこういったイベントに参加する機会には恵まれているが、やはりこうして間近でオーケンを観るとドキドキする。血行が促進され毛細血管の隅々まで栄養が行き届き全身が健康になってしまう。ありがたい。

オーケンは四つ並べられた椅子のうち向かって左から二番目に腰を下ろすと、壁に立てかけられていたアコースティックギターをごく自然な仕草で手にとって、ゆるりと「香菜、頭をよくしてあげよう」を弾き語ってくれた。思わぬサプライズである。曰く、今日は演奏をする予定がないけどせっかく集まってくれたのだから、というオーケンの優しさとのことで、タワーレコードにほわりと広がるオーケンの歌声に聴きいりつつ、全く、素敵な人だなぁとしみじみした。

ちゃんとメンバーも来るから安心してくださいね、とオーケンが釘を刺すとドッと笑いが起こる。オーケンによるミニライブが終わるとおいちゃん、うっちー、ふーみんの三人がステージに現れ、いつもの立ち位置と同じ順で椅子に腰掛けた。

今日はせっかくなので、これまで受けた取材やニコ生ではまだ話していない、「Future!」の楽曲それぞれにまつわるエピソードや裏話を肩っていこう、ということで収録順に一つずつ丁寧に話してくれた。発売されてからずっと、それこそ寝る間も惜しんで「Future!」を聴き続けているので本当に嬉しい。聴けると思って期待して来たわけだが、やはりこう、希望が叶えられるとたまらないものがある。さぁ、どんな話が聴けるだろう!

■オーケントレイン
おいちゃんはこの曲を「オーケンに普通に歌わせない」ことをテーマに作っていたとのことで、語りやシャウトだけで構成される曲にするつもりだったそうだ。ところが、ここはオーディエンスでオイオイ盛り上がるだろう、と思っていたところで「オ~ケントレイ~ン」と歌われてしまったそうだ。

「フューチャー!」のところや、高い声のコーラスにブースカ声のオーケンが混じっている。このブースカ声のオーケンと今回コーラスに参加してくれた扇愛奈さんの高さが同じくらいで、ブースカボイスを扇さんの声でコーティングしていると橘高さんは語っていた。また、オーケンはブースカ声の方が何故かピッチが良いとのことで、それを聞いたオーケンがたははとなっていた。個人的には、あの声がブースカとして認識されていることが面白かった。

■ディオネア・フューチャー
筋少コーラスの「無意識 電波 メッセージ 脳Wi-Fi」を録音するとき、橘高さんは「無意識 電波 メッセージ」までは「これくらいやったらもういいだろう」というノリだったのだが、「脳Wi-Fi」が口が気持ちよく、何度シャウトしても楽しかったらしい。橘高さんが熱く「脳Wi-Fi最高!!」と語っていた。

Wi-fiについて、数年後には新しい技術が開発されて古い言葉になっているかもしれないね、という話に。さながら歌詞に出てくる「ポケベル」に時代性を感じるような。「若いコとドライブの歌詞にあるTwitterもそろそろ古くなっているかもしれないね」という言葉も。いやいやいやいや、Twitterはまだ大丈夫。これからもしばらく大丈夫であってほしい、とTwitterヘビーユーザーは思った。

また、オーケンがWi-Fiという言葉を知っていたことで得意がっていたが、「Wi-Fiが流通している」と口を滑らしてしまい、すかさずそこに橘高さんのツッコミが入り、会場が笑いの渦に飲み込まれた。わっはっはっ。

しかし己はオーケンを笑えない。己はあれを「うぃーふぃー」と読んでいた。

■人から箱男
このイベントの前日にあったニコ生での放送で、内田さんは初めて完成版の「人から箱男」のMVを観たとのこと。完成前に何度もチェックをするので、意外と完成版を見ていないことはあるそうだ。おいちゃんと「知らないカットがあったね」と盛り上がっていた。

■サイコキラーズ・ラブ
何故か曲の終わりに拍手がわーっと起こってわいわいひゅーひゅー盛り上がる声を入れる予定になっていたそうで、そういう盛り上がる音を録音していたが、結局使わなかったとのこと。それを聞いたオーケンが「曲に合わないでしょ!?」と困惑しつつ、「でもエヴァンゲリオンの最終回みたいだね」「あれはエヴァだ、って言われていたかもしれない」と言っていた。

■ハニートラップの恋
「サイコキラーズ・ラブ」で入らなかったわいわいひゅーひゅーが「ハニートラップの恋」に入ったとのこと。とはいえ使いまわしではなく、きちんとこの曲のために撮り直したそうだ。

オーケンが内田さんに「内田くんはわーとかひゅーとか入れるの好きだよね」と話したところから内田さんはパリピということになり、内田さんとパリピという言葉の組み合わせの破壊力により会場で爆笑が起きた。

■3歳の花嫁
歌詞の「フラッシュ・ゴードン」についての解説があった。「フラッシュ・ゴードン」はあのクイーンが音楽を担当した映画で、それはもう壮大なスペース・オペラになるはずだったが……とのこと。その仕上がりがトラウマになった者も多いそうで、映画「テッド」でもパロディにされているそうだ。また、「フラッシュ・ゴードン」は公開当時にも既にネタにされていて、「フレッシュ・ゴードン」なる映画が作られたそうだ。「観たことある人~」とオーケンが挙手を募ると内田さんが手を挙げる。見えなかったが観客もちらほら手を挙げていたようだ。ちなみにこちらはポルノだそうである。

■エニグマ
一発録りで作られているとのことで、それぞれ1チャンネルしか使っていないそうだ。

トコイトコイのところを仮歌では内田さんが「See Emily Play」と歌っていたのだが、内田さん以外の全員が「死にたい」と聴き取っていて、おいちゃんは「死にたい死にたい」という仮歌を聴きながら俺は死にたくない、と死にそうな気持ちで真面目にギターを弾き、オーケンは呪い返しのため呪いの言葉「トコイ」を歌って対抗したそうだ。ちなみに「See Emily Play」はピンク・フロイドの楽曲の名称である。

「アイアイアイアイ」の後の箇所はきちんと元ネタを調べてきっちり同じ綴りにしたそうで、意味は「これから殴りにいく」とのこと。また、それ以外の暗号部分も、今後「あ、これかあ!」とわかる展開があるそうだ。いったいどんな種明かしがあるのか実に楽しみである。

■告白
内田さんにとってのテクノであるYMOやクラフトワークの影響が強い曲。ここでオーケンより内田さんに、どんなテクノのイメージなのか具体的に教えてあげてほしいと要請があり、そこからテクノとテクノポップの違いなどが語られたが、最終的には「内田さんが作ったアルバムを聴いたら理解できる」という結論に至った。というわけで皆、内田さんの「SWITCHED ON KING-SHOW」を聴こう!

「ボクの告白は以上さ~」のところは最初無かったが、オーケンのリクエストによりこの部分が追加されたそうである。ちなみにここは喫茶店で話しているシーンだそうだ。

■奇術師
「太陽にほえろ!」をイメージしているのかと問うオーケンに、違うと答える橘高さん。強いて言うなら夕方のイメージとのこと。また、当初はエディのピアノソロはなく、ギターのみの構成だったそうだ。

橘高さんはもっと長くても良いと思っていたがこの長さにしたとのこと。ライブではもっと長くなる可能性もあるそうだ。聴きたい! ぜひ聴きたい!
また、ライブの構成を考えるうえでは、長くできる曲があると便利という話もあった。

■わけあり物件
クライアントの依頼を受けて作った曲で、「この曲のイメージで」とピックアップされた曲が「球体関節人形の夜」「踊る赤ちゃん人間」「くるくる少女」「再殺部隊」などなど。しかしクラシックを聴かない人にとってクラシックが全て同じに聴こえるがそれぞれ違いがあるように、橘高さんにとってはそれらは全て別の種類の曲なので、イメージを固めるのに苦労したそうだ。タイアップする作品のショートアニメを何時間も観続けてイメージを練り上げたそうだ。

■T2
プロレスラー入江茂弘選手の入場テーマ曲、ということでプロレスと縁の深い新木場や両国、入江選手が遠征したウィスコンシン州やサウス・ミルウォーキーといった地名が入っている。……これはもう、入江選手はたまらなく嬉しいだろうなぁ!

そうしてアルバム全曲にまつわるトークが終了し、いそいそとメンバーが椅子を立つ。今回は演奏はないけど……と断りが入りつつ全員マイクを持って始まったのは……「じーさんはいい塩梅」! 歌って歌って、と合唱を促され、朗らかな歌詞を歌い上げる楽しさ。橘高さんは「脳! Wi-Fi!!」とシャウトを挟み大サービス。最後にぺこんとお辞儀をして楽しい時間は終了した。あー、大満足。楽しかった。

ちなみに会場に貼られていたポスターはなかなかレアなものだそうで、なんと、アルバムにディオネアが印刷されていないバージョンとのことだ。これから配布されるものはきちんとディオネアが印刷されているそうで、ディオネアなしバージョンはここでしか見られないらしい。「貴重だから写真撮っといた方が良いよ!」「保存しといてなんでも鑑定団に出そうかな!」と盛り上がるメンバーは実に楽しげだった。

そのポスターがこちら。せっかくなのでイベント終了後に撮影した。うん、確かにディオネアが無い。

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未分類0杯, ウタノコリ, 水戸華之介, 非日常

新大久保駅から歩いてしばらく行ったところにあるこじんまりとしたライブホール。去年も訪れたにも関わらず道に自信がなく、地図を片手に雨の中よちよちと歩いた。

赤くやわらかな椅子に腰を下ろし、ゆったりと開演を待ちながら、しばしうつらうつらと舟を漕いだ。去年の日記を読み返したところ、当時も己はこの会場でまどろんでいたらしい。夏の暑さから急激に寒くなり、ちょうど体が疲れるタイミングなのかもしれない。

会場の照明が落とされて生まれる期待感のこもったざわめきを耳にしながら瞼を開ける。ステージにぼうと光が灯り、夢から夢へと移動するかのような不思議な感覚を得た。そして程なくして現れたのはギターの澄田さん、キーボードの扇さん、そして本日の主役・ボーカルの水戸さんこと、水戸華之介である。

「猛き風にのせて」から始まり、新譜「知恵ノ輪」の一曲「イヌサルキジ」へ。「イヌイヌイヌイヌ!」「サルサルサルサル!」と拳を振り上げるのが楽しい。毎度のことながら、水戸さんのアコースティックライブはアコースティックという概念を覆す熱量が凄まじい。どんな会場であれ汗だくで跳ね、飛び、歌う水戸さんは芯からロックボーカリストなのだ。

「イヌサルキジ」は桃太郎のお供である三匹の動物に対し、良い気になっているようだがお前らなんか本当は大した存在じゃないくせに、と苦言を呈す曲である。さて、ではこの動物達に厳しい言葉を投げつけているのは誰だろう? 己は鬼ではないかと思う。桃太郎が来るまでは鬼も畜生も似たような存在だったはずなのに、桃太郎に黍団子をもらった途端、あたかも自分は立派な存在ですよ、と言わんばかりに正義面をしやがって、本当は俺らと大差ないくせに! と怒る鬼の歌ではなかろうか。

三曲目は「抱きしめる手」。「手!」とパッと手のひらを開いて腕を挙げるとき、自然と笑顔になってしまう。「ヨイヤサコラサ」の後はアンジーの「サカナ」で、明るく気楽な曲調から一転して暗い海の底のような雰囲気に。この緩急がたまらない。

しっとりどんよりしてしまった観客に、そこまで落ち込まなくてもと笑う水戸さん。そしてまたここで空気が変わる! 「腹々時計」のダッダッダーッ! という明るいイントロでわっと沸き立つ観客。何度か出し惜しみをする水戸さんと、歓声を上げるオーディエンスのやりとりを経て、熱く歌う水戸さんの声の迫力! 熱気がむんむんと伝わってくるようである。

「腹々時計」の後は「涙は空」へ。今日はあいにくの雨模様だったが、「知恵ノ輪」のジャケットのように、美しく晴れ渡った青空をイメージさせる曲が多かった。次の「ドラゴンパレード」もそうである。開いた絵本から明るい色彩が広がり、そのまま空を染め上げていくような。やさしく、軽やかで明るい歌だ。

歌詞を読めば決して底抜けに明るい内容ではない。死の近づきを感じさせる曲だ。雨雲を砂漠へ運ぶため、銀色の鱗を落としながら年老いたドラゴンが空を飛ぶ。千羽のヒバリが後を追い、若い天使達がエールを送る。このドラゴンは間もなく死ぬだろう。しかしヒバリと天使に愛されたドラゴンは砂漠に雨が降るのを見届けたらきっと満足して眠るのである。そこに悲しみはなく、あるのは充実した生の終わりだ。その温かさが感じられるからこそ、この曲は明るく軽やかなのである。

ここに来るまで気付かなかったが、己はこの「ドラゴンパレード」を今日一番、聴きたかったのかもしれない。

空つながりでもう一つ。水戸さんが小さな手帳を取り出し、じっと見つめながら人々のあだ名を読み上げていく。それはきっと小学校のクラスメイトや幼馴染のような、そんな幼いあだ名で、そんな彼らが四十代五十代の大人になり、今どんな状況であるかを端的に紹介していく。大工をしている人、教師になった人。子育てを終えた人、多重債務により自己破産をした人、リハビリ中の人、ガンで亡くなった人。そして彼らの名前を読み上げて、続く曲は「青空を見たとき」。

ここで連ねられる名前は恐らく架空の人物である。水戸さんは十五年前からこの曲を歌うときにかつて幼かった人々のあだ名を読み上げるようになったそうだ。だが十五年経ち、自分と観客が歳を重ねたことで手帳の人物の年齢が歌に合わなくなってしまった。そこで十五年ぶりに年齢と近況を更新したそうである。「また十五年経ったら書き直すかもしれないけど、その頃には(手帳の人物は)みんな死んでるかもしれない」と水戸さんは冗談を飛ばして笑っていた。今五十五歳の水戸さん、十五年後ともなれば七十歳だ。深い皺を刻み、指を舐めながらページをめくる水戸さんを観られる未来。きちんと生き残らねば、と思う。

「蝿の王様」の曲中、「可能性はゼロじゃない」に変化し、そこで澄ちゃんによるアコギによるギターソロ、扇さんによるキーボードソロ、そしてカズーで歌い踊る水戸さん!! どこかアダルトな雰囲気漂う妖しい時間の美しさ!! かーっこよかったなぁ!!

水戸さんがステージを下りて客席を練り歩くとき、扇さんもマラカスを掲げて赤いスカートを翻し、水戸さんの後について踊っていたシーンがあり、それがどうにもあでやかで格好良かった。キーボードを弾く力強さも美しい。

アンコール一曲目は、以前にも水戸さんのライブで聴いた覚えがあるものの曲名がわからないもの。「アモーレ!」と叫ぶ水戸さんのお気に入りの曲だそうで、水戸さんは今日この曲を歌いたくて歌いたくて、早くこの曲の時間になって欲しい! と願っていたそうだ。どなたか、タイトルをご存知だったら教えてほしい。

「ひそやかに熱く」は水戸さんによるストレートな応援歌だ。これも頭上に広がる青空を連想させる。水戸さんの伸びやかな歌声をこれでもかと堪能できて気持ちが良い。何度も書いていることだが、本当に水戸さんの歌声は素晴らしい。素敵だ。たまらない。

ダブルアンコール、最後の一曲は明るく「雑草ワンダーランド」。そうだ、これも青空の歌だ。夏の高い湿度、草いきれ、直撃する太陽光。アメニモマケズ、祝福せよ。あぁ、水戸さんに強烈な太陽光の、夏の日差しの祝福がありますように、と心から願う。水戸さんの歌がもっと多くの人に届いてほしい。そう願わずにはいられない。

そうそう。アンコールのときだっただろうか。澄ちゃんがハンドスピナーを得意げに回しながらステージに現れて、その様子が実にキュートだった。機材車移動をしている最中、どこかのインターチェンジか道の駅で五百円で購入したものだそうで、ストレスの溜まりやすい機材車の中でハンドスピナーは小さな癒しになったらしく、シュルシュル回る様子を見ているうちに水戸さんも欲しくなったそうだ。次回見かけたら俺は千五百円のやつを買ってやる! と意気込んでいた。

そしてダブルアンコール終了後、澄ちゃんはハンドスピナーを回しながらステージを去って行った。楽しそうで実に良いな、と思った。



未分類0杯, 平沢進, 非日常

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その日空に上がった花火は、まるで九万音符の調べの降臨を祝福しているかのように見えたのさ。

楽しかった。全ての言葉がこの一言に凝縮されてしまう。そんな素晴らしいライブであった。

「Archetype Engine」から始まり、「サイボーグ」へと繋がる容赦のない展開により一曲目から打数カウントの回ること回ること。第9曼荼羅最終日の当日は開演前から人でいっぱいで、前へ詰めるように詰めるようにとスタッフに促され、1800番台の己もそこそこ前方に進むことができた。今回は下手側の中央寄りに立ち位置を決め、会人の二人をじっくり観ようと意気込んだのであった。

そんな己の出で立ちとしては、首にはポケットマフラータオル、上半身はロングスリーブカットソー、下半身はMANDALA-MINOなるオリジナルラップパンツ、そして黒のパンツに黒のブーツという完全なる様相。ラップパンツなど履いたのは生まれて初めてで、恐らく今後履くことも二度となかろうと思ったが、せっかくの機会だと意気込んで買ってみた結果、あれ意外と似合うじゃん、と新たなトビラが開いたのであった。そうでなくとも今日この日、全身をヒラサワで包み込んでの参戦、後悔など一つもなく、ただただ馬鹿になって良かった、満喫して良かった、と心から大いに満足した。

楽しかった。とんでもなく楽しかった。一曲目から「Archetype Engine」と「サイボーグ」、そして「灰よ」へ続く出し惜しみのない構成。「灰よ」で真っ赤に染まったステージが、ヒラサワが「灰舞え」と叫んだ途端真っ白に色が変わる。それはまるでステージから客席まで真っ白な灰が舞ったようで、その演出効果に息を呑んだのであった。

かと思えば、「確率の丘」では入りを間違えるチャーミングな場面も。こういったところを観ると、ヒラサワも人間なのだなぁと安心してしまう。そして次の「アヴァター・アローン」では打数モジュールが増設され、上領さんのドラムソロが炸裂する。先日の公演でムービーの前に打数モジュールが増設されたことに違和感を抱いたが、どうやらこれはこれで問題ないようだ。

打数モジュール増設は「アヴァター・アローン」と「アディオス」の二曲で行われた。どちらも上領さんを応援すべく手拍子が湧き起こり、めっちゃ盛り上がって良いなーと思いつつ、いや何か手拍子でドラムソロ聞こえづらいな、ドラムソロの迫力のわりに手拍子が牧歌的だな……と違和感を抱きもした。

「人体夜行」はアルバムと全く違った印象だ。ヴァイオリンとチェロの重い響きが愛おしい。そしてこの曲の後にステージが真っ暗になり、ヒラサワ、上領さん、会人の二人松と鶴が退場し、打数カウントが表示されていたモニターに映像が映し出される。内容は昨日と同じで、ヒラサワならではの難解な言い回しをしていたが、「ヒラサワがTwitterをやる前の世界には戻れなくなった善男善女善LGBTX」と呼ばれ、沼扱いされたことは理解できた。このように男女だけでなく。LGBTXを言葉に挙げてくれるヒラサワの何とありがたいことか。彼の視界には男女以外も映っている。それは希望以外でありよすがである。ありがたい。

打数モジュール増設の許可が下ろされるもしばらく増設はされずに進む。「トビラ島」では真っ赤に照らされたステージでヒラサワがアコギを爪弾き、定位置に戻ったかと思えばステージは青に照らされ、上空には七つの赤い月が浮かぶ。そして力強く叩かれるドラムの迫力! 先日の感想にも書いたが、トビラ島一曲で一つの映画を観たかのような満足感があり、たまらない。

「聖馬蹄形惑星の大詐欺師」では例の箇所で例の如くオーディエンスによる合唱が起こったが、面白いことに昨日のは違う発声が聴こえた。この箇所には歌詞がない、ゆえに皆それぞれの解釈がなされ、それぞれの解釈で発声しているのだろう。故にそんな違いが起こるのだ。面白いなぁ。

次の「アディオス」で打数モジュールが増設された。「アヴァター・アローン」では細かく刻まれ、音が小さくなるも途切れることなくひたすら続くドラムの丁寧さが印象的で、「アディオス」はより力強く感じた。

「ホログラムを登る男」でだっただろうか? 気付けば、会人の鶴が弾くヴァイオリンの弓の弦が切れて、ふぁっさーとたなびいていた。しかし鶴は演奏を中止することなく壊れた弓で弾き続ける! いつの間にそんなことになった……!! 驚きながら彼を見つめた。

そして最後の曲「オーロラ」へ。この時点で打数は85000あたりだっただろうか。とても90000には届かない。しかし、何と言うことだろう! アウトロでちょちょいと指先を操り煽るヒラサワ、終わらないドラムソロ、熱狂するオーディエンス!! ドラムソロが始まるや否やオーディエンスはドッと飛び跳ね、興奮し前へ詰めかけ、大声で「ワタルー!! ワタルー!!」と叫びながら、9万打へと駆け上るドラムソロが展開されたのである!!

まさかこのオーロラという曲で。この、美しく、駆け上がるような多幸感がある曲で、こんなに格好良いドラムソロが延々と繰り広げられることになろうとは! 曲の雰囲気も何もかもぶっ飛ばして、我々はひたすら飛び跳ね、拳を振り上げながら「ワタルー!! ワタルー!!!!」と応援した。それはもう、先日ヒラサワに指示されたとおりの呼び名で忠実に。ワタルこと上領さんはリズミカルにひたすらにドラムを叩き続け、しかし鬼気迫る様相は全くなく、最後まで涼しげで、美しくも完璧に、九万打ぴったりを叩ききったのであった。

美しかった。

彼の人が男性であることは知っている。当初、確かに見間違えたが男性であることは知っている。しかしここまで来て、美しいお姉さんにしか見えず、それでいてこのパワフルで涼しげなドラム捌きが鮮烈で、己は息を呑むしかなかった。

かくして九万音符の調べは降りた。楽曲はリアルタイムで配信され、無人のステージに新曲が流された。それに聴き入りながら、待望の一曲を耳にしながら、好きなミュージシャンのライブに行って無人のステージを目の前にしながら新曲を聴くって妙な状況だな、と思った。

アンコールは「現象の花の秘密」と「鉄切り歌(鉄山を登る男)」。MCでヒラサワが上領さんを指して「流石元P-MODEL」と言ってくれたのが嬉しかった。

年々、ステージに演奏陣が増えている。それはDVDを観るファンを飽きさせないようにというヒラサワの工夫であり、サービスだと思う。その中でついに、生ドラム。するとどうしても、P-MODELの再結成を期待してしまう自分もいる。

だが同時に思う。きっと今が一番良いバランスなのだと。P-MODELのヒラサワと、ソロのヒラサワが綺麗に両立している今。長い月日を経てやっと、ちょうど良いバランスに行き着いたのではないか、と短いファンながらに思う。

また思う。白髪のヒラサワの美しさを。それは髪の色だけではなく、スタイルも、そして顔の皺も込みでの美しさだ。齢六十三歳の彼は、紛うことなく美しい。

しかし過去を顧みると、歳を重ねた人の美しくあろうとする努力を己は笑ったことがあった。それは十五年ほど前で、今では本当に恥じているが、確かにそれは事実であった。五十を手前にダイエットを志し、ダンベルを振った亡き母が「おばちゃんなのにダイエットなんておかしいよね」と言ったとき、口にこそ出さなかったものの「そんなに頑張らなくても」と思ったのだ。

だがあのとき、本当は「そんなことないよ」と言うべきであり、そう言われることを母も望んでいたはずなのである。

美しくあろうとすることはいくつになろうとも何もおかしいことではない。自分に手をかけることは抗うことではなく、自分自身を大事にすることだ。それに何故当時気付かなかったのだろう。背筋を伸ばし、レーザーハープを操るヒラサワ。にこにこ笑いながら涼やかにスティックを振る上領さん。二人とも美しく、二人とも違うように美しい。彼らがそれを目指していたかはわからないものの、結果として美しいことは確かである。

あのように生きたいものだ、と思った。帰り道の橋の上には人だかりがあり、彼らの視線の先にはまんまるに光る白い月と、ドーンと上がる花火があった。まるで九万音符の調べの降臨を祝福しているかのような夜空。ほうと眺めつつ、魅せられつつ、まっすぐに進もう、と思った。



未分類0杯, 平沢進, 非日常

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第9曼荼羅が開く時、9万音符の調べが降りる!

「9万打」と「曼荼羅」をかけた駄洒落のようなライブタイトルは、ヒラサワのツイッターのフォロワーが九万人に到達したことを記念した企画である。大阪・東京の全五公演を通してスネアドラムの打数が九万打に達すれば、九万音符により構成される楽曲が配信される。故に、我々オーディエンスはドラマーを精一杯応援するミッションが課せられている。

そしてまぁ、ステージの豪華なことと言ったら!

上手には曼荼羅が描かれたバスドラムの存在感が際立つドラムセット、中央にはヒラサワのギターとレーザーハープ、下手には会人の奏でるサイレントチェロ、エレキヴァイオリン、シンセサイザーにボタン類。ステージの奥には高々と曼荼羅が掲げられ、その下には打数をリアルタイムでカウントする巨大なモニター。いったいどこを見れば良いのやら。たった二つの目玉ではとてもじゃないが足りえない。

開場から開演まで、場内に流れる音楽を聴きながらゆるゆると待っていると、スタッフが機材のチェックのためにステージに現れてついそわそわしてしまう。よし、そろそろかそろそろか。時を経てスモークがもくもくと焚かれ出し、開演直前のアナウンスが流れる。そしてついに照明が落とされ、あぁ、待ちに待ったライブの時だ!

そうしてステージをぐっと見つめていると、下手側から髪のサラリとした真っ黒い衣装の美しい女性が現れ、中央を横切っていく。誰だろう、スタッフ……には見えないが、妙だなぁ……と思っていたら、その女性はドラムセットの前で体の向きを変え、着席した。

仰天した。女性ではなかった。元P-MODELのメンバーであり、本日ドラマーを務める上領亘さんだった。

P-MODELは聴いていたが、美しいとは耳にしていたが、己は彼の外見を知らなかった。故に驚いた。非常に驚いた。さらに、ライブが終わった後上領さんについて調べ、年齢を知って驚いた。五十三歳とな。見えない。全く見えない。

はーー……とびっくりしつつ暗闇の中でステージを見つめる。そういえば暗くなったがオーディエンスに動きがない。前に詰めないのだろうか……と思っていると、銀髪のヒラサワがステージに登場。瞬間、歓声とともにドッと人々が前へと詰めかけ、なるほどこのタイミングか! と納得しつつ足場を確保。前から五列目あたりの見晴らしの良い位置に立つことができた。

出囃子とともに始まったのは「オーロラ」。初っ端からヒラサワのデストロイギターが炸裂し、ギターへの膝蹴りが放たれる。二曲目は「確率の丘」、そして三曲目のイントロが始まった瞬間、ゾクゾクと喜びがこみ上げた。大好きな「CODE-COSTARICA」! この曲からヒラサワの咽喉が開き、ぐっと声量が増したように感じた。あぁ、何て美しいのか!

ずっと、いつかヒラサワのライブで生ドラムを聴いてみたいと思っていたが、まさか叶う日が来ようとは。ビリビリと地を這うリズムの衝撃が足の裏から背骨に響き、実に気持ちが良い。音が体にぶつかってくる圧力がたまらない。また、前に立つ人がちょうど体格の良い人で、その方がぴょんぴょんと飛び跳ねるたびに間近の振動が伝わって、その迫力も心地良かった。

「アディオス」では「空、空」と歌うところで会人の松と鶴がチェロとヴァイオリンの弓を高々と掲げ空を指差し、ステージいっぱいに真っ白な光が降り注ぐ。美しい光景だった。「罵詈喝采罵詈喝采」の箇所はレーザーハープにより奏でられていて、曲の終わりにヒラサワがひょいっと光線に触れ、「罵詈っ」をサービスしたのが実にライブらしくてわくわくした。

「灰よ」は流石の迫力で、そのままの勢いに乗って「聖馬蹄形惑星の大詐欺師」へ。驚いたのがまさかの! 「ハーイッハイッ! エハライェエッ!! ハーアハッハー フゥウウ~?」がオーディエンスによる合唱パートになったこと! ちなみにこの箇所の発声は歌詞カードに載っていないので耳で聴いたものをなるべく忠実に文字に起こしているが、人により違いがあるはずである。そのわりに声が揃っているのが何というか、不思議であった。

そういえばこの曲が発表されてからのライブでこの曲は必ずセットリストに入っているように思う。ヒラサワのお気に入りなのだろうか。

「人体夜行」で六万打寸前までいき、ふとステージから人がいなくなる。すると打数がカウントされていたモニターに映像が映し出され、ヒラサワとヒラサワの会話が展開される。何を言っているのかわからないかもしれないが、画面のヒラサワが画面外のヒラサワと会話しているのである。つまりヒラサワがヒラサワと会話しているのである。ご理解いただきたい。

平均して一日一万五千打で、このままでは九万打に到達しない。そこで打数モジュールを増設する許可をヒラサワがヒラサワに求め、予算がかからないという理由により許可が下ろされた。端的に言えばタイミングが訪れたときにドラムソロパートが追加されるとのこと。おおー!

と盛り上がりつつも気になることが。ん? あれ? この映像が流れる前に、どっかで「打数M増設」とモニターに映し出されたような……良かったのだろうかそれは。

「トビラ島」では下手側にヒラサワが座ってアコギを弾いて歌っていたのだが、残念ながら己の立ち位置からはよく見えなかった。レーザーハープと上領さんはよく見えるのだが、会人は見えづらいのである。明日はもっと会人も観たい。

とはいえ何と言っても「トビラ島」は後半の展開の迫力だ。ちょうどこのとき六万カウントを記録していたことにより、曼荼羅には六つの明かりが点灯していて、まるで闇夜の空に赤い月が六つ浮かんでいるようだった。重々しいドラムとヒラサワの歌声の迫力と相まって、怪しく恐ろしく、美しかった。

このときドラムと同じリズムで松と鶴がボタン類を押して演奏していた。正方形の方眼ノートのようなモニターがあり、一つ一つの四角のマスには赤や青や黄色や緑の色がついていて、タッチすると色のつく場所が移動し、またタッチすると移動する。あのボタン類が何の音を担当しているのかはわからなかったが、とにかくデフラグ中の画面にそっくりだった。

「トビラ島」は一曲で一つの映画を観たかのようなボリュームがあるが、もちろんここで終わらず息つく間もなく曲は展開していく。このスピード感が贅沢で、もったいなくて、心地良い。

「Archetype Engine」が始まった瞬間、脳が爆発するかと思った。ヒラサワの響く声の伸びやかさの美しさったら。そして「サイボーグ」! これ! これを生ドラムで聴きたかったんだよおおおおおお!! 今日演奏された中で一番期待していたものかもしれない。もともとオリジナルが生ドラムなこともあり、このタイプを聴いてみたいと思っていたんだよなぁ。念願叶って嬉しい。

「ホログラムを登る男」「白虎野」で本編は終了。大歓声によるアンコールを受けてステージに現れたヒラサワに「お足元の悪い中……」と言っていただきついどよめきそうになる。そんな風に言ってくださるとは……。

アンコールは「Wi-SiWi」と「鉄切り歌(鉄山を登る男)」。「鉄切り歌」では「鉄はだんだん切れ」がオーディエンスによる合唱パートになっていて楽しい。知らない人々と大勢で声を揃えて好きな歌を歌う多幸感に酔いしれた。

上領さんはどんなときもニコニコしていて、軽やかにドラムを叩いている姿がとても格好良かった。ヒラサワを観て、上領さんを観て、やはりとても目が足りない。明日は最終日。今日でやっと68,400に到達し、残り21,600打。さぁ、あともう少しだ! 九万打の達成をこの目で見届けるべく明日も新木場に向かおう。どうか9万音符の調べが降りますように。

ちなみに物販は小雨の降る中一時間並んで待った甲斐あって全種類購入することが出来た。はっはっはっ。ガラケーユーザーなのにスマートフォンケースまで買ってしまったぜ。ガラケーユーザーにまでスマートフォンケースを買わせてしまうヒラサワの魔力たるや何と恐ろしいことか。「唯じゃない」の一件で知って以来、ずっと魅せられ続けている。あれから八年か。早いような短いような。

無論これからも魅せられ続ける所存である。きっと予想だにせぬ世界を見せてくれるに違いないから。

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